プロローグ
「どこだ、ここ」
目が醒めると和室のような空間に座っていた。
目の前には卓袱台と湯気立っている湯呑みが置かれている。
「おお、ようやくお目覚めかの。まあまずは一杯飲みなさい」
「あ、ありがとうございます。いただきます……ってあんた誰!?」
一応ノリツッコミをしてみたものの、この状況で流石にツッコミを入れないわけにはいかなかった。
「ふぉっふぉっふぉっ。よくぞ聞いてくれた、わしは神じゃよ」
「あっ、わかりました。どうやら俺は死んで、神様からなんらかの能力を授かり異世界に転生して世界を助ける為にここに呼ばれたっていうお話ですね?」
「ふぉっふぉっふぉっ。流石現代っ子じゃ、物分かりが早くて助かるわい」
「俺を誰だと思ってるんですか。アニメ、ラノベ、漫画、全てのオタク文化の生みの親ですよ。この状況を考察すれば一発でわかっちゃいますよ」
「なるほどのぉ。まあワシ、神じゃから本当の生みの親知っとるけどな」
「え?! 誰ですか!? 是非教えてください!!」
「お主嘘下手くそじゃの」
「よく言われます」
「じゃがお主の考察は間違っておらぬ。だいたい合っとるからのぅ。とりあえずここいらでお茶でも飲んで一息ついたらどうじゃ」
真っ白な長いお髭を蓄えたダン○ルドア校長みたいなお爺さんにお茶を勧められる。
神様の注いでくれたお茶なんて飲む機会ないだろうし、せっかくなので頂くことにする。
「……なんか味しないんですけど?」
「そうかの? 流石に気のせいじゃないかのぅ」
これが神と人の味覚の差なのかとふと考える。
だとしたら神はよほど薄味が好きなのだろうか。
焼肉とかタレつけずに食べるのだろうか。
しゃぶしゃぶしても、「お前ポン酢派? ゴマだれ派? 」「断然ポン酢派。ゴマだれは最近胃がもたれるんだよなぁ」「同じ同じ!めっちゃわかるー!」
って会話出来ないんだろうなぁ。
なんて考えてると、
「お主、なぜ死んだのか覚えてないかの?」
「えーっと、家の牧場で牛と戯れてたとこまでは憶えているんですが……」
「お主、その牛に殺されたんじゃよ」
「えぇーーーっ! うぇぉーーー!! ちょっと意味がよく分からないんですけど?! 普通トラックに轢かれてとかじゃないの?!」
「残念ながら死因はその牛に押し潰されたのじゃ」
「なるほど……。ム○ゴロウさんごっこしてたのがいけなかったのかな……?」
「自分でもよく分かってるじゃないかの!」
まさか神にツッコまれる日が来るとは夢にも思わなかった。
アニメ・漫画・ラノベ。全てのオタクの生みの親である俺はもちろんオタク文化を愛してやまない。
だが実家の手伝いを通じて、農畜産業もわりと好きだったのだ。
まさかこんなことで農畜産業を手放すことになるとは思わなかったけどなぁ。なんて心で思っていると、
「安心せい。お主に与える能力はもう決まっておる。ユニークスキル【農畜産業】じゃ」
「え?! 俺がもらうの【勇者】とか【大賢者】とか【能力吸収】とかチート的な能力で俺TUEEEEEできるんじゃなかったの?! ていうかユニークスキル【農畜産業】って何?!」
これはあまりの意味不明なスキルだった為さすがにツッコまざるをえない。
いくら農畜産業が好きでも、普通異世界行ってまでやらないよね?魔獣とかワンパンで倒して強くなって可愛いヒロインにけもフレ仲間にしてハーレムハーレムキャッキャウフフするのが普通じゃないの?!
「残念じゃが魔獣とかはワンパンできんのじゃ。むしろワンパンされるじゃろうて」
「ちょっと勝手に人の心読まないでくれるぅぅ?!」
「じゃがハーレムできるかどうかはお主次第じゃがおなごやけものっ子もいるから安心せい」
「心読んでくれてあざっす!!!!」
「さて、質問に答えるとするかの。お主に行ってもらう世界は豊かさに少々欠けていての、飢餓に苦しんでおる人々が多すぎるのじゃ。もちろん豊かな地もあるが差が激しいのじゃよ。そこでそろそろどうにかしようと思ってたんじゃが、お主がちょうど牛の下敷きになっていたから呼んだとこじゃったのよ」
「それに勇者とかは他の世界ではもう充分すぎるほど足りてるからの……」
なんか余計な情報もぼそぼそ呟いている。
もっと早く死んでたら勇者になれたのかなぁ。
「まあ仕方ないですよね。理由は分かりました。して、ユニークスキル【農畜産業】とは?」
「うむ。そのユニークスキルさえ持っていれば、農畜産に関しては最強じゃ。それを土台にして色んなスキルを覚えられるのじゃよ」
「おお、それはすごいですね」
「まああとはお主の使い方次第ってとこかの。ああそれと、事情が事情じゃからお主にはサービスしとくぞい」
「お! なんかいいスキルくれるんですか?」
「お主には村の領主の地位をサービスしておこう。その方が色々とやりやすいじゃろうて」
なるほど。村の領主……。さしずめ、飢餓から皆を救い人口を増やし領土拡大して税金でスローライフをってところか。
よし!これなら悪くないかも!
ただ漫画とかアニメとかがないのだけがちょっと寂しくなるなぁ。
生みの親だし。
「まだそんなこと言うとるんかの。お主は他の子らに比べ長居しすぎじゃ、そろそろ行くがよい。もしかしたらわしの気まぐれでまた会うかもしれんのぉ。ではの」
そういうと神は立ち上がり
「あっ、ステータス画面は『オープンステータス』で呼び出すんじゃぞ」
と言い残し、手をパンッと叩いた。
そこで俺の視界は闇に閉ざされ、1つの人生を終え、新たな人生の幕開けとなった。
まずはこの作品を読んでいただきありがとうございます!
半分以上見切り発車ですが、面白くできたらと思います!