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短編集  作者: JUST A MAN
4/7

侵略者

 その日は、突然訪れました。


 彼らは人の半分ほどの身長に、皮膚は緑色でブツブツだらけ…。目は、黒猫のように黄色い眼球、鋭く尖った瞳孔をしていました。地球上の凶暴で、気味が悪い生物を全て足し合わせたような姿でした。

 所謂エイリアンです。


 彼らが何処から来たのか分かりませんが、世界各国の政治機関に、突然姿を現しました。言葉は通じず、金切り声のような、悲鳴のような言葉を発します。

 驚いた国々は非常体勢を敷き、警察や軍隊は早急に彼らを射撃し、1度は難を逃れました。


 しかし、その後も彼らは毎日のように政治機関に訪れました。幸い、各国家機関には2匹ずつぐらいの数で訪れたので対応には無理がなかったのですが、日に日に彼らは凶暴になり、国家機関の建物の中に入り込もうとし始めました。

 警備はもっと厳重になり、人々は不安を覚え始めました。



 そしてその数日後、今度は人と同じ容姿をした、しかも地球の言語が話せるエイリアンが訪れました。彼らはとても紳士で、しかも美男子達ばかりでした。

 彼らは言います。


「今、この星を苦しめているエイリアンがいます。私達が退治する方法を知っています。是非、この星の代表に会いたい」…と。



 地球人は喜んで彼らを国連に招待し、各国の代表、重要人物を収集させました。


 国連の人達は救いを求め、こう言いました。


「貴方達が何処から来たのか知りませんが、感謝します。早速、奴らの退治方法を教えて下さい。」


 すると紳士な彼らはこう答えました。


「今、集まって頂いた人々が、この星を代表する重要人物らでしょうか?」

「はい。その通りです。貴方達に協力する為、財政家や学者など、その全ての人物を集めました。」

「そうですか…それはありがとう御座います。」


 会話は、とても短いものでした。

 そこまでの会話をすると彼らは黙り込み、持って来たカバンをゆっくりと持ち上げ、中身を取り出しました。


「これは、とても強力な爆弾なんです。」


 彼らが取り出したものは、それ程大きくもない、爆弾のようなものでした。


「おお!それで奴らを退治する事が出来るんですね?」

「…いえ、退治されるのは、貴方達です。」


 地球人が「え?」と聞き返す暇もなく、次の瞬間に国連の建物は跡形もなく吹っ飛んでしまいました。勿論、そこにいた人々全てを飲み込んで…。


 世界はあっけに取られてしまいました。そして地球人は、明日からどうして良いのか分からなくなりました。

 しかし、それと同時に緑色をした彼らも姿を消しました。理由は分かりませんが、結果的に彼らを退治出来たのかも知れません。どうなったのか分かりませんが、国連や重要人物が吹き飛ぶ事で、緑色の彼らは消えていなくなったのです。

 地球の人は当惑しましたが…もうこれ以上、侵略者がいない事に安心しました。




 そしてここは、とある惑星…。ここの住人は人の半分ほどの身長に、皮膚は緑色でブツブツだらけで、目は黒猫のように黄色い眼球に、鋭く尖った瞳孔をしています。地球上の凶暴で、気味の悪い生物を全て足し合わせたような姿です。


「結局…失敗に終わったか…。」

「侵略を伝え…彼らの兵器力で応戦して欲しいと伝えるだけだったのに…。そんな簡単な事が失敗に…。本当に申し訳御座いません…。」


 これは、この惑星の大統領と将軍の会話。


「止むを得ん…。私達が、彼らの言語を理解出来なかったのが原因だ…。君達のせいではない。むしろ、亡くなった者達に対して申し訳なく思っている…。」

「しかし…これで彼らは…奴らに支配される事でしょう…。」

「それも止むを得ん…。残念だが私達には、そこまでの攻撃力もない…。奴らの本隊が地球に上陸するのも時間の問題…。そうなると手に負えん…。それを事前に防ぎたかったのだが、地球人が対応してくれなかった…。しかし、私達は最善を尽くしたのだ。君達を彼らの星へ送る事自体…危険を顧みない行為だった。充分じゃないか?私達はベストを尽くしたのだ。」

「しかし彼らは何故…相手もしてくれなかったのでしょうか…?」

「うむ…。それが悔やまれるところだ…。何故彼らは、平和的な対応をしてくれなかったのだろう…?何故彼らを救おうとしている私達を…殺したのだろうか…?」


 …と、そこに、この惑星の科学者が駆けつけて来ました。


「たっ、大変です!今、重大な事が分かりました!」


 科学者は、今にも腰を抜かしそうな表情でした。


「どうした?何が分かったのかね?」

「はい…。実は、彼らの生態パターンを分析していたのですが…こんな事が分かったのです。彼らは、見た目で判断する行動を行います。つまり、自分と似ているものを善と見なし、自分とかけ離れて見えるものを悪と見なす傾向があるのです…。」

「何と!?そのような生態が彼らには…?一体、見た目で何が分かると言うからそのような行動を…!?」


 大統領も腰を抜かし、大きく落胆しました。


「ならば我々では、彼らを助ける事が出来なかったと言う事か…!?我らの善意や犠牲は、全く意味がないものだったと言う事か!」


 科学者の言葉に大統領だけでなく、軍隊、そしてこの星の住民全てが涙しました。




 そして数日後…。

 ここは、地球に程近い宇宙…。大きな宇宙船が、数十隻ほど集まっていました。


「ここか…?地球と言う星は。」

「はい…全てが私達の星に似た…住み易く、扱い易い星です。」


 この会話の主人公らは、人と同じ容姿をした、しかも地球の言語が話せるエイリアンです。彼らは、数時間後には地球に到着するほどの距離にいます。


「数日前に偵察に出たのですが…何と彼らは私達を歓迎し、この星の重要機関にまで招待してくれました。それだけではなく、世界中の重要人物を1度に集めてくれました。目的は…どの人物を殺せば侵略し易くなるかでしたが…何と彼らの計らいで、全ての人物を殺す事に成功したのです!」

「ははぁ…それは愉快…。しかし…彼らは何故そんな行動を執ったのだ?」

「それは良く分かりませんが…自爆した調査員の通信報告によると…彼らと私達は、見た目がよく似ているそうです。そして、私達を見て大歓迎をしてくれたそうです。」

「似ているから歓迎??そんな馬鹿な…。」

「私もそう思うのですが…しかし驚いた事に私達の侵略を見抜き、事前に地球を救おうとした緑色の奴らを…地球人は攻撃したそうなのです。偵察隊はそれに便乗し、今回の作戦を成功させたと言う訳なのです。」

「うむ…信じ難い話だが…このような喜ばしい結果が出たと言う事は…そうなのかも知れんな。ましてやあの忌まわしき緑の奴らを退治してくれたとは…。奴らは常に、私達の侵略の邪魔をする。まぁ…どうでも良い。これからはこの星を立派な植民地にし、我々の好き放題にしようじゃないか!」

「はい!今、この星には重要人物がおりません。重要機関も動いておりません。早急に侵略すれば…1度に大量の武力と奴隷を手にする事が出来ます!」

「はっはっは、その通り!これだけ簡単に落とせた星は他になかった。我々は何も失わず、何も破壊せず、全て我らの物にする事が出来た!素晴らしい!」


 こうして数時間後、地球はエイリアンに支配されてしまいました。

 地球人によくある、しかし馬鹿げた習性によって…。

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