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短編集  作者: JUST A MAN
2/7

真・蟻とキリギリス

 とある大地に、音楽家のキリギリスと、働き者の蟻さん達がいました。


 春が来て夏が過ぎ…秋が訪れると同時に、収穫の時期も訪れました。

 蟻さん達は極寒の冬に備えて、一生懸命に餌を巣に貯めました。その一方でキリギリスは、溢れる食べ物を前にいつも遊んでばかりで、好きな音楽だけを楽しんでいました。


 しかし遂に極寒の冬がやって来て、辺りには餌がなくなってしまいました。

 想像通り、食べる物がなくなったキリギリスはお腹を空かせていました。その一方で、蟻さん達は巣に貯めた餌のお陰で、寒い冬を乗り越えていました。


 日に日に痩せこけていくキリギリスは、今日も餌を求めて外を歩くのですが、食べ物なんて見つかるはずもありません。


(もう、倒れそうだ…。)


 と思ったその時、彼の目の前に現れたのは、秋の間一生懸命餌を貯め、この寒い冬を乗り越えていた蟻さん達でした。


「キリギリスさん!」


 蟻さん達は膝から倒れるキリギリスの下に集まり、彼を囲みました。


「大丈夫!?キリギリスさん!?食べ物がないんでしょ?僕らの巣に来なよ。食べ物はいっぱいあるから!」


 そう言って蟻さん達は全員で、キリギリスを巣まで運びました。


(しっしっし。しめしめ。これで食べ物には困らない…。)


 今のはキリギリスの心の声。実は、秋の内に働きもしないで遊んでいたキリギリスは、食べ物がない冬を乗り越える為に、優しい蟻さん達を利用しようとしたのです。


 真面目な蟻さん達を騙す事に成功したキリギリスは、彼らの腕の中で大きく安心した様子でした。

 でも、何日もお腹を空かせていたのは事実で、キリギリスはもうクタクタでした。


(あぁ…早く食べ物が欲しいなぁ…。)


 キリギリスは蟻さん達が早く、巣に連れて行ってくれる事を望みました。

 そしてやっとの事、蟻さん達の巣に到着しました。


「ここが僕達の家です。キリギリスさん、もう安心して下さい。」


 そう言って蟻さん達はキリギリスを巣の、一番大きな部屋に連れて行きました。

 だけどそこには何もなく、ただただ大きな部屋でした。


「ここで、暫く待っていて下さい。食事の準備をしますから。」


 蟻さん達はそう言って、キリギリスを部屋に残して何処かへ行ってしまいました。

 蟻さん達がいなくなった途端、笑いが止まらなくなるキリギリス…。


「うひゃひゃひゃひゃ~!これでこの冬も、食べ物に困らず暮らせる!って言うか蟻達って、真面目で馬鹿だよな~。」


 彼は笑って、蟻さん達が食べ物を運んで来るのを待つ事にしました。




「…。」

「……。」

「…………?」


 しかし待てども待てども、蟻さん達は食べ物を運んで来ません。


「それにしても遅いな…?もう、お腹がペコペコだよ…。」


 いつまでも現われない蟻さん達を待ちながら、キリギリスは、もう死にそうなくらいお腹が減っていました。


「早く来てよ~!」


 お腹が空いて動けないキリギリスは、大きく叫びました。




「ねぇ、お母さん。ご飯まだなの!?」


 この巣にいる幼い蟻さんが、お母さんに尋ねます。


「もうちょっと待ってね。すぐ食べられるから。」


 と、優しく返事をするお母さん。


 しかし子供は大きくごねて…


「え~~!早く食べようよ~!今日はご馳走でしょ!?」


 と、手足をジタバタさせました。


「あのキリギリス、さっさと食べようよ~!ちょっと痩せていたけど、美味しそうだったよ?」


 するとお母さんはニッコリ笑って、こう答えました。


「もう、食いしん坊なんだから。もうちょっと待ちなさい。お父さん達が今、キリギリスに止めを刺しに行ったはずだから。」

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