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58話 7時のニュース


「あなたは神を信じますかー?」


「信じてません。」


俺は爽やかな笑顔で、そう言い放つと

樫材で出来た扉を、バタンと閉める。


「誰だったのでありまするか?」


クリスマス・パーティーの為に

ホカホカと湯気を上げる料理を運んでいた、式神の銀色が尋ねてくる。


「なんか変なロン毛のオッサンだった。」


「?」


彼女は首を傾げながら

再びせわしそうにテーブルへと料理を並べる作業へと没頭する。


「神を信じぬなど……ようもウチの前で、そがい事抜かせたもんぞ。」


スルメをクチャクチャと噛みながら

豪快に芋焼酎のお湯割りを飲んでいた、絶世の美女がそうのたまった。


「クリスマスに人んち来て酒盛りしてる、日本の女神様にだけは言われたくないセリフですね。」


絶世の美女の正体は木之花咲耶姫。


レッキとした日本の神様である。

この街の神社の祭神でもあるのだが

何故か妙に気に入られて、我が家に出入りしている。


「なんでん飲めれば良か。」


そんな事を抜かして、並々と注がれたコップの酒をクッとあおる。

何というアバウトさ。

しまいにゃ泣くぞコラ。


「てか日本の妖怪や神が、クリスマスに宴会してるってどうよ?」


そんな俺の言葉に

黄金の髪と蒼玉の瞳を持つ美女、狐神の玉藻さんは

プシュ!と缶ビールのプルタブを開けながら


「飲めれば良いのじゃ。」


銀髪の髪をゆったりとお下げにし、翠玉エメラルドの瞳を妖しく揺らせ

真っ赤な赤ワインの注がれたグラスを傾けていた、天狗の姫が


「騒げれば理由なんて、どうでも良いんだよ?」

「灌仏会だって飲み会しちゃうから。」


おい!天狗の姫がそんなこと言って良いのか!?

天狗って、かつては仏教と対立してたんと違うか!?


そんな俺に

「まあまあ、お祭りなんだから、少しくらい良いじゃありませんか。」


と日本酒の升酒を差し出してくる

黒髪の和装美女、雪女の雪音さんであった。


「とりあえず、君たち全世界のキリスト教徒に謝りなさい。」



*****


「クリスマスだから、他の連中も呼ぼうか? 」


半ばヤケクソ気味に激流に身を任せ

地鶏の竜田揚げを肴に飲んでいたのだが


河童と飲み比べをしていた

座敷わらしの童女わらめが、突然そんな事を言い出した。


呼ぶのは構わないが一体誰を?


天照あまてらすでも喚ばうか? 」


モグモグと、さつま揚げを食べながら

木之花咲耶姫が、そんな提案してきた。


やめて下さい!

クリスマスパーティーに日本の最高神を呼び出すのは!


そもそも忙しいでしょ! 先方様に迷惑よ!


「なんのお、コミケが近いから有給ば取っとるはずぞ?」


え!?

日本の神様って有給取得出来ンの?

さすが親方日の丸、ホワイトだなー。


「目当ては2日目じゃっどん、今日は池袋の辺りばを彷徨いておるはずじゃっど。」


腐ってんのかよ! 太陽神!?


「ママンも腐ってたしなあ……」


その腐るとは意味が違う!


雪音さんのコップに

何かの錠剤を入れようとしていた玉藻さんが


「それでは我は荼枳尼天だきにてんも呼ぼうか? 」


「君たち明らかにキリスト教徒に、喧嘩売ってますね?」


*****



「……そもそも、クリスマスって何? 」


そこからかッ!?

てか、知らずに宴会しとったんかいな!?


「何でも世間では、子作りをする日らしいぞ?」


背中に引っ付いて、柔らかい物をグイグイと押し付けながら

玉藻さんが、俺の耳元で囁く。


「日本の常識は世界の非常識だからね?」


そんな俺のツッコミを聞いているのかいないのか

玉藻さんは雪音さんに無理やり引き剥がされる。


誕生を祝う日であって、仕込む日じゃないよ。


「キリストの生誕の祝祭なんだけど、欧州土着の冬至のお祭りとゴッチャになった。」


スマホのウィキペディアを見ながら、天狗の姫が皆に解説する。


「なんぞ耶蘇やその祭りか。」


漢らしく胡座を組んで、腕を組み

木之花咲耶姫が「ムゥ」と唸る。


「右の頬を打たれれば、左の頬も差し出すという、ドMの教えだそうだ。」


玉藻さん、大体合ってるが、それは違う!


「ご褒美だろ?」


チキンのモモ肉を、食い千切りながら

肉食の座敷わらしがそんな事を……


左の頬を張られて「ありがとうございます!」と叫ぶ信者を連想してゲンナリした。


「女神様だと、どうなるんです?」


咲耶姫へ作ったお湯割りを渡しながら

雪音さんが、そんな事を日ノ本の女神に尋ねている。


「ウチの場合は「好意は二倍、悪意は十倍返し」ぞ? 」


「等価報復戦略とか成り立たない価値観ですね。」


俺が嫌味混じりに。そんな混ぜっ返しをすると


「そげな褒められると、げんなかぞ(恥ずかしいわ)?。」


褒めてねーから!!


「サンタクロースの日かと思った。」


それで天狗のアンタはミニスカ・サンタ姿なのか……


「イヤー……女性化して始めての冬なんだけど。」

「寒いッ! なんか冷えて冷えて仕方ないよ!」


知らんわッ!


寒いなら、そんな格好してちゃダメでしょ!

鳥肌立ててまで、する必要あんのかッ?!


「サンタクロースと言えば……」


ウォトカの封を切ろうとしてた、おっぱいが……

もとい、茶釜の狸のマミさんが口を開く。


「赤い服着た子供好きで、夜中に家に不法侵入してくるそうですね! 」


「いやッ! 変質者!」


式神の鈍色と天色を膝に載せた

一反木綿の折華さんが、「ひッ!」と短く悲鳴を上げる。


「ナマハゲみたいな感じなのかしら?」


コクリと古酒を飲み込み「ふぅ」と甘い吐息を漏らし

骨董屋を営むかわうその妖怪の阿戸さんが聞いてきた。


「客観的に見ると、その通りだけど、子供の夢と希望を打ち砕くの止めなさいって。」


てか、君たち何時から、宴会に参加してた?


*****



阿鼻叫喚のクリスマスパーティー。

何時果てるともなく続く宴。


妖怪達のエネルギー源ってアルコールなんじゃないか?と

真剣に悩み始めた、丁度その頃。


突然として屋敷の庭に

何やら凄まじいばかりに発光する物体が降りてきた。


これはUFOだッ!


「……虚ろ舟?」

鳥之石楠船神とりのいわくすふねのかみかもしれん。」

「肉人こと、ぬっぺっぽうの船かもしれませんよ。」


だが、俺の背後でUFOを眺めている妖怪女性たちは

断固として、妖怪にしようと、次々にそんな事を述べ始めた。


いえ、どう見ても空飛ぶ円盤です。

何が何でも妖怪にしようたって、そうは行きませんよ?

次回からタイトルは「妖怪さんと宇宙人さんと一緒」へ変更です。


どう思う?ス○リー?


「昔懐かしいアダムスキー型のUFOだよ!?」


UFOもモデルチェンジが激しいからなあ……

メーカーさんも大変だ。


「サンタクロースじゃろか?」


咲耶姫が呑気に、そんな事を云ってきた。


「あんなサンタクロースがいてたまるか!」


そんな俺達の眼の前で円盤のハッチがキリキリと動く。

おおッ、遂に第三種接近遭遇!


遂に、この「妖怪さん」にも宇宙人登場かッ!?


パカッ!っとハッチが開き、円盤の中から現れたのは……


「Merry Christmas!」


畜生ッ!マジでサンタだったよッ!!!!!


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