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4話 イケメンと美少女

今日「も」残業。すっかり遅くなった。

社畜はつらいよ。


大都会の雑踏の流れに乗り家路を急ぐ。


忠義に厚いことで有名なワンコ像の前で

不思議な男性に声をかけられた。


「こんばんわ」


銀色プラチナの長い髪を、ゆったりとおさげにし

仕立ての良い薄い蒼のサマージャケットを嫌味なく着こなす。

色白い顔と、優しげなエメラルドの瞳。


さり気なく耳には銀のピアス。

だがチャラい感じは全く無く

むしろ「爽やか」とすら言っていい。


青年とも少年とも言い難い

不思議な雰囲気を漂わせている。

中性的な印象でスラリと線の細いモデル体型。


いわゆる「超絶イケメン」である。


道行く女性たちが、みな振り返って通り過ぎて行く。


「僕はノーマルなんで他の人探して下さい。」


初対面の人に、こんな事を言うのは失礼な気もしたが

どこかに連れ込まれて「アーッ!!」になってからでは手遅れである。


「ああ、心配しないで。ボクはノーマル寄りだから。」


爽やかなイケメンスマイルで、俺の邪推を受け流す。

(ん?ノーマル寄り?)

何か危険な兆候を見逃したような気がする。


「君は素敵な「波」だね。」


ああ、なるほど!


「そっちの方の業界の方でしたか。」


破顔した青年は


「ふふ、やっぱりボクと同じような存在と出会っていたのかい? 」


そんなに悪い妖怪ひとじゃなさそうだな。


「ええ、けっこう賑やかな連中と」


優しげな彼を見ていて、ふと気になった事を訊ねてみる。


「失礼ですけど、あなたは男の妖怪ひとですよね? 」


イケメン妖怪は怪訝そうに小首を傾げて


「そうだよ。何なら胸でも触って確かめて見るかい?でも、なんで? 」


「何しろ男性の妖怪ひとに出会ったのは始めてなもので……」


妖怪って女性しかいないのかと思ってた。


彼はクスクスと笑いながら


「ああ、なるほど。それじゃあ…」


俺の手を取り自分の胸へと導く

まっ平らな胸は間違いなく男性のそれだった。


「何なら股間も触って確かめてみるかい? 」


それは、さすがに御遠慮したい。


「ところでこんな所で何か?」


彼は、はにかむような笑顔で


「ヒトを・・・ヒトの流れを見ていたんだ。」


周辺の雑踏を、まるで愛おしむように、ゆっくりと眺め回す。

「スッ」と俺に視線を向けると


「そしたらキミがいた。」


うおっ眩し!イケメン笑顔スマイル


そんな会話をしていると一人の女性が俺たちに近づいてきた。

黒いスーツ姿で有能そうな女性秘書って感じの人だ。


「若様。お迎えに上がりました。」


その声を聞くと青年は酷く残念そうに


「もう、そんな時間か。折角、面白いヒトと出会えて会話を楽しんでいたのに…」


女性は心底申し訳なさそうに


「若様、ヒトの方、大変に申し訳ございません。」

「会話の続きは、また後日の再会の折と言うことで、 お許し願えませんでしょうか? 」


俺にまで頭を深々と下げる。


「いや、そんないいですよ。」


「誠に申し訳ございません。」と女性は再び謝る。


青年は深くため息をつくと


「仕方ないな。またの再会を期待するとしよう……」

「楽しかったよ。「波」の人。また会おう。じゃあ、さようならだ。」


と言って青年は笑いながら手を差し出してくる。

俺は、その細い手を握り握手をしながら


「はい、さよなら」と挨拶をする。


(いい人だった。)

(なーんだ。妖怪にだって、まともな人は居るんじゃん。)


などと屋敷で俺を待つ連中をdisりながら家路を急いだ。





青年はリムジンの後席に乗り

「彼と、もう少し話をしていたかったよ八咫やた


八咫やたと呼ばれた女性はバックミラーを使い青年を確認すると


「申し訳ありません若様」


女性の呼びかけに青年は悪戯っぽく笑うと


「もう若様って呼ばないでおくれよ?」


女性はしばらく青年の言葉の意味を吟味してから口を開く。


「………彼ですか? 」


青年は車窓から外の町並みを眺めながら


「だろうね。それ以外考えられないもの。………もうすぐ羽化が始まるよ。」


「では、屋敷にてお召し替えの支度を致します。」












今日「も」残業。すっかり遅くなった。

社畜はつらいよ。


大都会の雑踏の流れに乗り家路を急ぐ。


忠義に厚いことで有名なワンコ像の前で

俺は不思議な女性に声を掛けられた。


「こんばんわ。」


銀色プラチナ・ブロンドの長い髪をゆったりとおさげにし

仕立ての良い淡い水色のサマーワンピースを嫌味なく着こなす。

色白の顔と優しげなエメラルドの瞳。


さり気なく耳には銀のピアス。

だがケバい感じは全く無く

むしろ「清楚可憐」とすら言っていい。


女とも少女とも言い難い、不思議な雰囲気を漂わせている。

大きな瞳が印象的で

豊かな胸に、くびれたウエスト、大きなお尻、スラリと伸びた脚。


いわゆる「超絶美少女」である。


道行く男性が、みな振り返って通り過ぎて行く。


「僕は真言宗と神道やってますんで、他の人探して下さい。」


初対面の人に、こんな事を言うのは失礼な気もしたが

どこかに連れ込まれて「あーッ!!」になってからでは手遅れだ。


超絶美少女は、俺にクスクスと笑いながら


「あなたは素敵な「波」ね。」


ああ、なるほど!


「そっちの方の業界の方でしたか。」


眩しい笑顔で超絶美少女は


「ふふ、やっぱりボクと同じような存在と出会っていたの ?」


そんなに悪い妖怪ひとじゃなさそうだな。


「ええ、けっこう賑やかな連中と。」


あれ?既視感デジャブ


つい最近に、こんな会話どっかで誰かとした覚えあるぞ!


……ああ、この娘は先日出会った超絶イケメンにそっくりなんだ

妖怪にも兄妹姉弟ってあるのかな?


「失礼ですけど、先日の男の妖怪ひとのご家族ですよね? 」


大きなグリーンの瞳が「ジッ」と俺のことを見つめる。


「……何でしたら、胸を触ってもいいですよ? 」


と、俺の手を取って自分の豊かな膨らみへと導く。


「へ?」俺は素っ頓狂な声あげる。

たっぷりとした豊かな胸は間違いなく女性のそれだった。


イタズラが成功した子供のように少女はクスクスと笑う。


「まだ、わからない? ボクだよ。この前、ここで会ったじゃないか! 」


「え? だって、あれは男の人で、君は女の子で・・・え?」


潤んだ緑の瞳で彼女は


「………何なら股間も触って確かめてみる?」


……公衆の面前で、それはさすがに御遠慮したい。


雌雄同体の妖怪とは魂消たなあ……

骨格まで変わるのか。

身長も俺より頭一つ分くらい小さくなってる。


「驚いたな。性別が入れ替わる身体なのかい? 」


少女はニコリと微笑み


「そう。あなたに出会ったからね。」


意味がわからない?


「ボクたちは波長の合う相手に出会うと身体が変化するんだ……。」


「相手が女なら男。相手が男なら女」


なるほど。で?


「ボクの身体に起こった「変化」も、それさ。」


彼、いや彼女は俺の身体に手を当てる。


「君の「波」でね。」


自重しろ俺の波!

どれだけヘンなの引き寄せる気だ?


……てか、すげー面倒事に巻き込まれた予感がする。


「それで君に、お願いがあるんだけど。聞いてくれるかな? 」


エメラルドの瞳が懇願するように俺の目を見る


「お、俺に出来るようなことでしたら。」



「それだったら問題ない。とても…とても簡単なことだからね。」



「あなたの「赤ちゃん」産ませて下さい。」


ほら、やっぱり面倒事に巻き込まれた!

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