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女たちの嘘

居間でテレビを見てる妖怪女たちの会話が聞こえてくる。


「そういえば、この前の戦争で…」

「大東亜戦争?」

「違う違う。蛤御門の時の。」

「応仁の乱かと思った。」


なんという歴史の生き証人たち

歴史学者が聞いてたらすっ飛んでくるぞ。


……ずっと前から聞こうと思っていたことがある。

この際だから思い切って聞いてみることにする。


「ところで皆幾つなの?」


その質問した途端に場の空気が凍りつく

若干2名ほどが目を逸らしたり下を見てたりする。


仕方ないのでまずは銀色たち式神に訊ねてみる。

「銀色たちは幾つなの?」


全員が指を折って数え始めた。

いち、にい、さん…じゅうさんで止まった娘、じゅうよんで止まった娘


銀色は右手の指を三回ほど折り終えたところで質問に答える。

「あるじ様。身どもは、全員が「じゅうなな」にございまする。」


思わず飲んでいたアイスコーヒーを吹き出す。

おかしいでしょ!

空色とか鈍色は13で止まったし。銀色は15で止まってたでしょ!


「「じゅうなな」にございまする。」

大事なことなので。と言わんばかりに繰り返してきた。


………ま、まあ背伸びしたいお年頃だしね。


も、もういいや。式神たちは。


天狗の太郎坊に訊ねてみる。


彼女はプラチナの髪を編みこみながら

「ボクの歳?確か317歳だったかな?」


流石に元男だけあって、歳のことなどは、あまり気にはしてないようだ。

「愛さえあれば歳の差なんてね。」

輝くような笑顔でのたまう。


いえ、貴女との間には歳の差以上の元同性という深くて暗い溝があるんです。



……さて、問題の2人組行ってみようか。



雪音さんを問い詰めてみる。

「雪音さん。幾つなの?」


観念したかのような表情で、俺の瞳を見据える雪音さん。

キュっと手で着物の袂を握りしめ、目を逸らしてこう云った。


「……じゅ、17歳。」

あからさまなウソ吐いた!


あの宗教はどこまで広まっているのだろう?

大体、俺との出会いが20年前なんだから幾らなんでも設定に無理がありすぎる!


俺は彼女の言葉を復唱して再度尋ねる

「17歳?」

ジッと雪音さんの瞳を見る。

あ!目を逸らした!


「……じゅ、17歳。」


優しく問いかける。

「本当に?……」


次の瞬間、雪音さんはガバッと立ち上がり。


「ああ、そうそう水ようかんが美味しく冷えたかしら?ちょっと見てきますね!」


と台所へとパタパタと去って行く。

逃げた……な。




逃げてしまったのなら是非もなし。

玉藻さんにも聞いてみる。


金髪碧眼の狐神は、己の年齢を言い放つ。


「17歳だぞ?」


自信満々にウソつきやがったよ!この妖怪。


「でも、前に千年とか…。」


爽やかな笑みで「夢でも見たのではないか?」

「17歳じゃ。」

念を押す様に、俺の瞳を覗き込んでくる。


「我の目を見るがよい。17歳だ。」と再び繰り返す。

どこまでも、どこまでも澄み切った濁りのない真っ直ぐな蒼い瞳。

偽りなど欠片すら感じさせない純粋な瞳がそこにあった。


「17歳ぞ?」

この玉藻ひとは堂々と嘘吐けるタイプだ!


「ふふふ17歳ぞ」玉藻さんが繰り返す。


この手の人は問い詰めてもムダだ。


諦めて藪睨みした先には座敷わらしの童女わらめがいた。

我関せずとばかりに女性誌を読んでいた童女にも聞いてみる。


「なあ童女わらめ。お前は何歳なの?」


ウザったそうにこちらをチラリと見てから視線を雑誌へと戻す。

「あ?17歳だよ。」


ふう、と俺は深い溜息をつき

「お前もか…」


この俺の態度に童女わらめが噛み付いてくる。

「ば、バカ。マジで17だってば!」


「わかった。わかった。はぁ…」

はいはい。みんな17歳17歳。これでいいんでしょ。


「信じてねえだろ?ホントにホントにマジであたいは17だってば。」

何故か必死になって17歳アッピール。


「もういいよ」


「良くねえよ!」

屋敷に座敷わらしの絶叫が響き渡った。

正直者は一人だけ。

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