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妖怪と宇宙人

金曜日の夜、皆で食事をしている。

夕餉の席に玉藻さんまでいるのには理由がある。


屋敷に来客を告げるチャイムが鳴り

笑顔でドアを開けた雪音さんだったが

玉藻さんの顔を見るやいなや閉めようとしたのだ。

だが玉藻さんの方が一枚上手だった。

いち早くドアに、つま先を入れ閉められないようにしたのだ。

「ぐぎぎぎぎぎぎぎ!」「ぐぬぬぬぬぬぬ!」と扉を挟んでの激しい攻防戦があった。


勝敗を決したのは、玉藻さんの差し出したお土産のお肉だった。

キロ単位のA5ランクの最上級の和牛肉。


あたかも大日本帝国がアメリカの経済力の前に敗れ去ったように

玄関先の戦いも経済力が死命を決したのであった。


先程から「悔しい!でも美味しい。」「美味しい!でも悔しい。」と繰り返す雪音さんであった。


そんな悲喜こもごもの食卓を囲みながら

着けっぱなしテレビからは「衝撃映像スペシャル。宇宙人特集」などが流れている。


実は社畜さんは、この手の番組が好きである。

「警察潜入24時」と並んで好きなプログラムなのだ。


番組が始まって我が耳を疑うような発言が聞こえてきた。


「宇宙人とか、マジで信じてんのかよ。」

座敷わらしがジト目で番組を見ながら呟いた。

「まあ、良いではないか。少年のような夢を持つのも大切だ。」

玉藻さんは、私は全てを許してあげるわよ?とお姉さん的発言。


妖怪の言っていい台詞じゃない。


「でも人間が月に行く時代なんだから、宇宙人だっているかもしれませんよ?」

皆のお茶を注ぎながら雪音さんが言う。

「光速を超えるのは無理。って誰か言ってた様な記憶があるけど。」

天狗の娘が少し考えるように応える。


何だかんだ楽しんでるじゃないかキミ達。

この手の番組は無粋な科学論じゃなくて流れを楽しむものなんだ。

いるかもしれない。いないかもしれない。ワクワクするでしょ?


ま、それを妖怪たちが話題にしてるのは、どうかとは思うが。


「昔話の、かぐや姫とかだって宇宙人だったかもしれないよ?」

俺がそう発言すると皆が顔を見合わせる。


「どうする?お伽話来ちゃった。」

「傷つくと可哀そうだから、適当に話し合わせてあげたほうが……」

「あの歳で竹取物語を信じているとは可愛いではないか…」


聞こえてんぞ!妖怪ども。


番組は佳境へと入り

(それでは、当番組が入手した宇宙人を撮影した映像です。…)と

異星人エイリアンを撮影した映像が流れる。


映像は、とある日本の地方で森の中を歩いていると川の側に不思議な生物が現れる。

恐ろしくリアルな謎生物でトリックやCGとはとても思えない。

まあ、ウソ映像なんだろうな。とは思うがワクワク感はある。


それを見ていた妖怪達の一人がポツリと


「……ひょうすべですね。」

「あ、ホントだ。」

「何が宇宙人だよ。ただの妖怪じゃん。」


イヤ、それはそれで十分に衝撃映像ですけどね。

ただ目の前に妖怪が一杯いるんで、俺的には有難み全く無いけど。

てか、どう見ても宇宙人だろこれ?


「よく映像を見よ。手に茄子持ってるであろう?」

……マジでした。


トホホホ…やっぱり宇宙人なんていないのか。妖怪は一杯居るのに。








その晩、式神達が空を見ると円盤が西の空から東の空へとゆっくりと屋敷の上を通り過ぎていった。

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