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無敵の専業主婦

ドアを開けて飛び込んできたのは。



…かーちゃんだった。



続いて雪音さんと玉藻さん、太郎坊(姫)。そしてオマケが一人。

「殴るぞコラ!」

座敷わらしが怒ってる。


んなこたーどうでも良い。

なんてモン連れてきやがった!


「夏樹!無事?」


30代前半風の女性がそう呼びかける。

どことなく雪音を思わせる風貌を持つが

これは姫神村出身の女性達に共通する特徴でもある。


ちなみに社畜さんの中学生時代のアダ名は「マザコン」だった。

別に本当にマザコンだったわけではない。

不良に絡まれ、たまたま通りかかった母が撃退したのを同級生に見られたのだ。

それで付いたアダ名が「マザコン」だった。


思春期の男の子にとって「マザコン」と呼ばれるのが

どれほどの屈辱を感じるものなのか理解できるだろうか?

これが社畜さんに強烈なトラウマを植えつけた。

大学が決まると、母から逃げ出すように一人暮らしを始めた。


そしてまた、その母が来やがったのだ。


母への反発からか温羅たちに告げる。

「早く逃げろ!ヤバイのが来た。」

拐われたと言っても、別に酷いことされたわけじゃない。

これから起こる惨劇など見たくはない。

女達に攻撃されないように温羅たちの側へ近づく。


「雪姫に妖狐に天狗か。確かにヤバイな。」

違う!そっちじゃない!


「あのヒトのオバサンなら突破出来そうだ。」

なんで、わざわざBAD ENDルート選ぶんだよ!


「くっ洗脳か…」「なんて酷い!」

みなさん盛大な勘違いをしておられる。


逃げようとしていた温羅たちの前にかーちゃんが立つ。

「御婦人、退いてもらえないかな?怪我などさせたくない。」


常識的に考えれば、温羅は然程おかしな事は言ってない。

身体能力でヒトが妖怪、それも「鬼」種などに勝てるはずがないのである。

ましてやヒトの女性である。

温羅の警告は十分に紳士的と呼ばれて然るべきものだ。


「名前は姫神ひめかみ千早ちはや。年齢は秘密。職業は専業主婦。」

母は要らん名乗りを上げ始めた。思わず息子としてはツッコむ。

「もうすぐ、よんじゅ「ナッちゃん。」」

「……もうすぐ18歳だよ。」


どこの世界に20代半ばの息子を持つ17歳の母親が居るというのか?

算数からやり直せ!と言いたい。

てか、誰だよ?こんな宗教を創始しやがったのは。



小男の「油すまし」が母を突破しようと挑みかかる。


母は、その油すましの足を払い頭をグイッと左側へ回す。

身体が浮いた。その一瞬に全体重を乗せた肘打ちを叩き込む。

油すましは吹き飛ばされ何度か床にバウンドして倒れこむ。

ピクリとも動かない。


その場にいる者たちは一瞬何が起こったのか理解できなかった。

ヒトに対して圧倒的な身体能力と体力を持つ妖怪が

ただの一撃で倒されたのだ。


狒々神が捕まえようと手を伸ばすと

その姿は既になく腕は虚しく空を切る


気付いた時には女は狒々神の足元に潜んでいたのだ。

狒々神の股間。そこへ渾身の膝蹴りが炸裂した。

口から泡を吹いて狒々神はドウッ!っと大地へと倒れこむ。


姫神流の玉崩ぎょくほうである。


それを見た男たちは思わず股間を押さえ縮みあがった。

この技を見たものは死ぬ。(主に男が)


その場にいた女達は思った

(あれが義母おかあさんになるのかー……)と


一方で社畜はトラウマに苛まれていた。

(まただ!またアレが繰り返されるのだ…絶対に嫌だ!)



「やめろ!」思わず叫ぶ。



皆の動きが止まる。

その一瞬の隙を突いて温羅は油すましと狒々神を担いで逃走する。

「すまん!また会おう!」


彼らの逃走を見送ると女達は彼等を追おうとする。

そんな彼女達の前に社畜さんこと姫神夏樹はユラリ立ち塞がる。

女達をキッと睨みつけ叫ぶ。



「俺が相手だ!」



「ナッちゃん、やっぱり洗脳されて…」

母が憐れむような表情で俺に言う。


違う。俺は洗脳などされていない。

息子とは何時か母親を倒し乗り越えて成長すべきものなのだ。

それって父親じゃね?と誰かが呟いた。




「さあ、来い!」





瞬殺された。


かくして誘拐事件は解決する。

だが一角獣協会のメンバーは無事に逃げ果せることになった。

再び彼等の魔の手が伸びてくるであろうことは確実である。


この件で社畜さんは、この後に女達全員から死ぬほど説教されることになった。

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