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引っ越し奇譚 -あるいはプロローグ-

初めての小説はじめての投稿だった

前作の「雪音さんと一緒の」続編になります


始めてゆえにまとまりの付けられなかった

前作の後日談を新規作品として書いて行こうと思います


まだまだ未熟ゆえにお見苦しい箇所も多いとは思いますが

何卒寛大なお気持ちでご覧くださいますようお願い致します



「我の眷属を貸そうか?」



青みが深い水色の空に天高く白とグレーの入道雲。

チリリン、チリンと風鈴が微風に音色を奏でる。


ある熱い夏の日曜日。安いのが取り柄のアパートの俺の部屋。

お昼に、キンキンに冷えた素麺を食べたばかり

そんな気怠さ漂う、午後の昼下がり。



光輝くような黄金の髪をもつ碧眼の洋装の美女がそうのたまった。


「生憎と手は足りておりまして…」


心底迷惑そうに、その申し出で断るのは

先程の美女とは対照的に

黒々とした長く美しい濡れ羽色の髪、艶とした瞳を持つ着物姿の美女であった。


黄金の髪をもつ女は「チラリ」と黒髪の美女を一瞥し


「そなたには聞いておらぬが?」


トボけるような素振りで、うそぶいた。



自分は休日の自室に複数の美人や美女が、やって来るような男とは

普通は、羨むもの妬むものだと考えていた。


だが、この二人

人間ひとではない。


漆黒の髪の美女の名は「雪音」

俺の父母の出身地で数々の係累の住む村で「雪の神」と奉られている雪女である。


金色こんじきの髪の美女は「玉藻」

伝説の金毛白面の九尾の「狐神」である。


二人とは遠い昔に、俺が発すると彼女たちが主張する「波」と呼ばれる

不思議な波動に引き寄せられて出会った。


青年となった俺と再び邂逅し「紆余曲折」「波乱万丈」の騒動の末、現在へと到る。


雪音と共に生きることを決めた俺だが

玉藻も、また共に生きるべく猛烈な求愛行動をしてくる。


傍から見るならば「リア充爆発しろ!」と言いたくもなるのであろうが

いざ自分が、その立場となれば「隣の芝生は青く見える」という諺が身に染みる。


・・・が、一方では、この状況を楽しんでいる自分もいるのだ。





事の起こりは伯母からの一本の電話からだった。


「あー、もしもしナッちゃん?」

「オバちゃんかあ・・・急にどうしたの?」

「どうもこうもアンタ。。。雪ちゃんと一緒に暮らしてるんだって?

 母さんに聞いてオバちゃん吃驚しちゃったわよ

 なんで私に知らせないのよ?」


伯母は母のすぐ上の姉で、姫神村の出身だ

当然、雪音さんのことは知っている

「・・・んー色々あってさ。それに来たのついこの前だよ?」


「んじゃあ2人でオバちゃん宅来なさいよ

 お父さんいなくなって私も寂しいわ

 部屋は幾らでも開いてるのよ?」


伯母さん夫婦は子供がいない

だから俺を二人は子供の頃から「ナッちゃん」「ナッちゃん」と可愛がってもらった

先年にはその伯父さんも亡くなり

伯母さんは広い邸宅に一人暮らしなのだ

「それでも良いんだけどさー・・・」


歯切れが悪くなる

伯母の家からだと今より会社が遠くなるのだ

社畜として、それは結構な負担になる


だが、それを伯母は別の意味で受け取った


「あーあー、そっかそっか雪ちゃんと一緒なんだもんね

 こりゃオバちゃん気が付かなかったわ

 やーねー・・・ホホホ


 そっかあ、そうよねえ若い二人にゃ歯止めが効かないもんねー」


若い2人の部分に強烈な違和感を感じたが

目の前に雪音さんがいるので黙っていることにする

それに歯止めが効かなくなるようなことはまだしてない!


「じゃあさ、近くに家の所有の物件あんだけどそこ住まない?」

「ちょっと云わく付きなんだけどさ

 雪ちゃんもいるんだから平気でしょ?


 あ、雪ちゃんと代わってよ。久しぶりに話したいからさ」


姫神の女達は何も怖れない。ただ怖れさせるのみ。と言っていたのは誰だったか・・・?


「あー雪音さん。オバちゃん。いや神楽さんが雪音さんに代わってって」

「はい、変わりました雪音でございます。ご無沙汰しております」

受話器を持ったままペコペコと頭を下げる


「はい、・・・いえ、そんな・・・まだ・・・はい」


頬を染めてモジモジイヤイヤしながら会話してる

何を話してんだろ?


と、雪音さんと伯母が「あーだーこーだ」と話している内に

何時の間にか、その物件とやらに入居することが決まってしまっていたのだ



で、冒頭の話へと戻るのだが

彼女、玉藻が「眷属を貸そうか?」と提案したのは

引っ越しの手伝いの事だったのである


「ふふふ。我は、そなたの役に立ちたいのじゃ・・・」

玉藻は俺にしなだれかかって俺の胸に「の」の字を指で描く

金色の髪から昇る甘い香りに脳髄がしびれる


「ちょ、ちょっと胸!胸が当たってますってば!」

彼女の豊かな胸の感触にドギマギしながら彼女を引き離そうとする

初心うぶじゃのぉ・・・当てておるのじゃ」


「ちょっと!離れなさいませ!」

雪音も怒りを露わに引き剥がそうとする


「ああん」と艶っぽく鳴くとようやく離れてくれた


さらに雪音を挑発するように

「そこな生娘よりも大きくて柔らかったであろう?」

返答に困るんだよな!





で、引っ越すとしたところで

その物件とやらの様子とやらがわからないので

夏の日曜の午後

三人でを見に来たのであった


・・・正直感じたのは、今日びの東京にこんな家があろうとはだった

というか屋敷だ。これ


鬱蒼と茂る樹木。雑草が一面に生えてはいるが広大な庭

建物自体は石造りの古い洋館で壁にはびっしりと蔦が絡まり覆われている

ヒグラシの物悲しい鳴き声が何か幻想的な雰囲気すら醸し出している


広い庭を通り重厚な扉を開いて玄関を入ると

大きな応接間には暖炉や二階へ上がる広い階段すらある

築材は適度な古さと磨きこまれた趣があった

その重厚さには終始呆れ気味となった


内部は定期的に手入れが行われているとの事で

掃除は行き届いておりテーブルやソファーにはビニールカバーが掛けられていた


「なんだ?これは」


伯母さん家が資産家なのは知っていたが

東京で、これだけの敷地と建坪の屋敷とか

いま住んでいる俺の部屋が物置に見えてくる


「無理無理無理!の絶対ムリ!こんなの俺と雪音さんだけで管理できるわけがない!」


「大丈夫です!旦那様!私頑張りますから」

そう言ってくれるのは大変ありがたいのですが・・・


「雪音さん。貴女、隣でニヤニヤ薄ら笑いを浮かべている

 玉藻さんを意識して、そんな事言ってるでしょ?


 ・・・2人じゃ、どう考えても無理だよ」

溜息を付きながら雪音さんに言う


そして薄ら笑いを浮かべていた玉藻さんは


「我の眷属を貸してやろうか?」


と再び例の言葉を、のたまうたのである







 銀色ぎんいろ   鈍色にびいろ   藍色あいいろ   天色あまいろ   朱色しゅいろ


玉藻が連れてきたのは

口から上を隠す狐面を付け巫女装束を着た5人の式神たちであった


面を付けているので詳しくはわからないが

銀色の見た目は年の頃は人間なら15、6歳

後ろに控える4人は11歳から13歳程度に見える


最初は反対していた雪音さんは、そんな式神たちに

頬を朱に染め、両手を合わせて首をふるふるさせて何かをたぎらせていた


そんな式神幼女たちは

正座し平伏して俺達に挨拶をする


「はじめまして主さま奥方さま

 身どもは玉藻さまを主上とする式神どもにてございまする


 本来ならば使役歴二百年から三百年の

 お姉さまたちは参るはずでございましたが

 

 主上さまより、主さまは年増好み故に

 百花繚乱のお姉さまがたでは主さまの御心をお乱しあそばされると

 御懸念がございまして

 その任、相応しからずとの仰せでございました

 

 また、何故ゆえに自ら宿敵らいばるを増やせさねばならぬ?

 とも仰っていたでござりまする」


「ホホホ。余計なことは言わなくても良いのじゃぞ?銀色」

と額に汗を浮かべた玉藻が窘める


「あい。主上さま」

と素直に返答し銀色は口上を続ける


「ゆえに身どもが罷り越しました次第にございます

 なにぶん到らぬ子狐どもではございますが

 何なりとお申し付けくださいしますようにお願い致しまする」


述べ終えると、ちょんと平伏し挨拶をする

・・・ロリコンじゃないが可愛いな。と思ってしまった


「でも、ちょっと固いなあ。もっとフランクに接してくれていいんだよ?」

俺が式神たちにそう言うと


首をちょっ傾げて考えていた銀色が

「ねえねえ、主さま。なんでも命令してネ(キラリン☆」


「今度は砕けすぎ」


「・・・加減が難しゅうございます」

肩をすくめて呟いた

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