表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

甘い匂い

「杉達さんは、何部だっけ?」


杉達さんが家に来てからずっと会話をしている。


「私は、入ってないよ」


笑顔で杉達さんは答えた。


「山田さんて、好きな人いるの?」


突然、そんな事を聞いて来たのでびっくりした。


「な、何で?」


私は慌てて杉達さんに聞いてみた。


「何で?か、うーんとね。山田さん結構モテるから好きな人いないのかなぁ、って」


あれ?杉達さんて本当にこういう風な人だったっけ?


何かもっとこう、学校では、あんまり笑ってなくて、本を静かに読んでいるイメージしかないのだけれど。


「杉達さんは?いるの?」


「うん、でも多分その人には好きな人いるんだ」


悲しそうな顔をして杉達さんは言った。


「告白した?」


「まだ」


杉達さんは、首を横に振った。


「杉達さん、一回告白してみなよ」


私がそう言うと、杉達さんは笑顔になった。


「じゃあ、してみる」


そう言うと、急に深呼吸をし始めた。


「山田さん」


「何?」


「好きです」


「へ?」


今の一瞬で何が起こったんだろう。


「好きです」


もう一度言う杉達さんの顔には緊張が走っていた。


「私?」


先程から間抜けな受け答えをしてしまっている。


ガチャ


ドアが開く音が聞こえた。


多分あんりが帰ってきたのだろう。


階段を登る音が聞こえた。


その瞬間。


押し倒された。


両腕を抑えられ、足と足の間に足を入れられた。


「山田さん、返事聞かせて?」


黒い笑みで言った。


「私は、好きな人いるから、ごめんなさい」


そう言うと、杉達さんは目に涙を溜めた。


あとちょっとで零れそうだった。


「杉達さん?」


声をかけると、急に顔を近づけてきたので一瞬頭が混乱したが、この先何をされるかはもう気付いていた。


「ごめんなさい、一度だけ」


杉達さんはそう言って、唇を重ねた。


ただ重ねるだけのキスだった。


「ごめんなさい、帰ります」


そう言って、鞄を持って立った。


ドアを開けると姿を消した。


部屋には、彼女の匂いがまだ残っていた。


甘い匂いが。


喉が渇いたのでドアを開けると、壁にもたれて立っているあんりの姿があった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ