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6、コンゼツ根絶計画  作者: 黒十二色
第一章 いじめ根絶計画
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08、間奏、江夏なつみ

 見慣れた天井が見えた。

 夢にしては、妙にハッキリしていた。

 窓から見える駐車場のあたりを歩く髪の短いバージョンの柊あんじぇらを、秋川が追いかけて、あたしはそれをアパートの窓から見ているしかなくて、ひどく絶望した気分になって。

 これはもう、笑うしかないって思った。

 笑って誤魔化すしかないなって思ったんだ。

 お酒に逃げて見た夢が、秋川があんじぇらを追いかける場面だなんて、ああ、本当に……。

 本当に、きついな。うん、きついな。

 起き上がらずに、周囲を見回してみる。

 どうやら、居間として使ってる一番広い和室で寝ちゃってたみたいだ。タオルケット一枚を掛けてくれたのは秋川だろうか。

 何だか記憶が定かじゃない。

 何で押入れのふすまが破れたり、洋服のケースにヒビ入ったりしてるんだろう。

 もしかして、酔って暴れたとか?

 ありうる。

 ちょうど、蹴りでもかませば膝の位置のものが壊れるし、その疑いが強い。

「うー、頭いたい……」

 ぼんやりと、未だ揺れ惑う視界。

 秋川の部屋の扉をそうっと開けると、秋川は万年床で寝ていた。

「よかった。あんじぇらと一緒に、どっか行っちゃったかと思った」

 本当に、酔っ払ってる間に何があったのだろうか。

 手がかりが少ないと、不安になる。

 誰かに迷惑をかけなかっただろうか。いや、秋川に迷惑を掛けちゃったのは明白なんだけど。

 こういう時に、秋川に叱られたいなって、あたしは思う。

 あたしが、彼に不満を抱いていることがあるとするならば、まぁ細かいことは、いっぱいあるんだけど、どうしてもって、思うこと。

 怒らないことを、何とかして欲しいな、なんて。

 まぁ、怒るっていうよりは、あたしに色々なものをぶつけて欲しいって感じかな。自分の中で溜めて、自己完結ばっかりしちゃう愚かなところがあるから、もう少し、あたしに色々さらけ出してくれても良いなって。それで彼に楽になって欲しい、幸せになって欲しいなって。

 そう、だから、つまり、あたしは、むしろ怒ってほしいと思ってる。

 思い返せば、怒られたのは、二回だけ。一回は、あんじぇらの制服に醤油はねとばした時。もう一回は、アンジェラと名乗って働いてることがバレた時のこと。働いていることは責めずに、アンジェラと名乗ったことが気に入らないみたいで、殴られそうになった。じっと信じて見つめ続けていたら、すんでのところで腕を引っ込めてくれたけど。つまりは、全部あんじぇら関連。

 って、何を考え事に耽ってるんだろうか。そろそろ秋川が起きそうだし、ごはん作らないと。

「まずは着替えなきゃ」

 お風呂に入って、着替えよう。

 と、そんな時、居間のテーブル端に名刺があることに気付いた。

 春木すばると書かれた名刺だ。

「あれ、こんなところに置いたっけ?」

 手にとってみると、余白に何か書かれている。

『梢ありっさ。占い館』

 という文字列と、携帯電話番号。

 梢ありっさといえば、当たると評判の占い師だ。財界の要人や有名人なんかがお忍びで通ったりするほどだと聞いたことがある。

 面白そうだ。なかなか予約がとれないと聞くけれど、もし春木くんの紹介で会えるなら、今、ちょうど、この占い師に会ってみたい。

 何せ、いきなり働いていた店をクビにされてしまったものだから誰かに道を示してもらいたいんだ。本来なら秋川が男らしくなってくれればいいんだけど、残念ながら、それは期待できそうにないから。

 押入れ近くのフックには、今日も柊あんじぇらの制服がある。

 かつて、大昔のことだけど、時田まことは「一生幸せになれない呪いをかける」というようなことを言っていた。

 呪い。呪いか。

 ずっと、そんなわけないって思ってたけれど、最近、本当に呪いが掛けられちゃってるのかもと思うことがある。

 秋川は、ずっと立ち直ってないし、また時田まことが現れたし、現れたその日にあたしは仕事をクビ。和を乱すからとかいう、わけのわかんない理由でクビ。きっと時田まことの暗躍があったんだ。

 なんか、先を考えるだけで嫌になる。気が重い。

 二日酔いのせいか、体も重い。

 だから、占いに行こうと思った。



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