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6、コンゼツ根絶計画  作者: 黒十二色
第三章 根絶計画を根絶計画
45/54

45、楓まちるだと柊あんじぇら

 そもそも桃井もこが総合監視室において上司あいにゃんから命じられたことは何であったか。

 それは、侵入者を撃退し、脱走者を捕らえるということである。

 そのはずが、何を勝手に刑務所に連れ込んだりしているのか。これが作戦であれば良いのだが、ただ単純に別たれてしまった姉妹を再会させたいという一心から出た突発的な思いつき行動であるのが、桃井もこのすごいところである。

 全ての動向を監視しているはずのあいにゃんから何の音沙汰も無い限り、もこぴーが命令を逸脱していると自覚することは無いだろう。なぜなら、すでに何を命令されたかなど忘れているからだ。

 今の桃井もこの目的は、侵入者の撃退などではなく、姉妹を再会させて、自分が感動したいというだけ。

「あんじぇら!」

 霊界刑務所の石臼広場。

 楓まちるだは、妹の姿を認めるや否や、駆け寄って、その手をとった。

 感動の再会である。

 しかし、あんじぇらの方は嘘でも喜ぶのが嫌なようで、

「お姉ちゃん、刑務所ってどういうこと?」

 険しい顔で、そう言った。

 まちるだは、視線を逸らしつつ、

「あー、何もしてないのに拉致されて、強制的に働かされてるの」

 あんじぇらは、少し唸った後、

「攫ってきて、奴隷として働かされてるってこと? なにそれ、ひどすぎ――」

「そうそう。本当にひどいやつらなのよ。桃井もこぴーと時田まことちゃんが、厳しく監視してるし」

 嘘である。まちるだは懲りない虚言女であるから、ついつい口から嘘が出てしまうのだ。だからこそ、こうして霊界刑務所で働いているわけなのだが。

 当然、そんな事情に江夏が精通しているわけもなく、ましてあんじぇらの姉だからという理由で信じ込んでしまった。かくして江夏の正義心に炎が灯り、

「もこぴー、あんじぇら、そして時田まこと。あたし、目的が変わったわ。かつて、幽霊部員を卓球部に引っ張りだすのが高校時代の悲願だったけど、今は囚われの皆を現世に引っ張り出すのが、あたしの使命だと思う」

 こんなことを言う始末。

 あんじぇらとしては、「ひどすぎ――」の後に、「――なんて、言うと思う?」と付け加えて、「嘘ばっかじゃん」とか厳しいことを言って、「ちゃんとしてない人が嫌いなだけだよ」と言いたかったようだが、ただでさえアツい女なのに、さらに火のついた江夏を止められる者などこの場には居ない。

 思えば、秋川のときもそうだった。秋川がひどいことを言われたという、ただそれだけの理由で、時田まことについて聞いて回った。先生や上級生が相手でも真剣に説明を求めようとした。それと同じようなことを、ここ霊界でもやろうというのである。

 まことに蛮勇であるといわざるを得ない。その勇気を、少しでも秋川に分けてやることができれば、今頃霊界に来る必要も無かったのだろうが、どうやら秋川に勇気を持たせてやれるのは江夏ではないのだろう。

「責任者は誰? あたしが話をつけてくる。おかしいじゃん。何も悪いことしてないのに自由を奪われるなんて。ここに居るってことは、普通の世界では消されちゃってるってことでしょ? 責任者は誰?」

「責任者は……えっと、えっと、あいにゃん?」

「そうですね、私ともこぴーさんの管理責任があるのは、あいにゃんさんですけど……」

「よっし、それじゃ、そこに行って、全員の釈放を要求するよ!」

 江夏は言って、世界を凝視する。

 かつて、秋川を迎えに行ったときのように、光を放つ一本線が見えた。



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