10、金色のサンダル
「あんたさ、なんか霊感強いとかよく言われない?」
「はい、言われます」
「オレンジとゴールド。そういう色の綺麗で大きなオーラではある。けども、その先が見えない。ブロックされる。誰か家族に強烈な信仰心を持った人が居たりしない?」
「えっと……わかんないです。あの、あと、そういうことが見て欲しいんじゃなくて、これから何の仕事をすればいいか……」
「手、見せて」
「あ、はい」
そして梢ありっさは、ちらっと手を見ただけで、こう言った。
「わかんない」
「ええっ……?」
「ぜーんぜんイメージ湧いてこないわ。何がどうなってるのか滅茶苦茶で、何も見えないわ」
「どういう……」
「超カオス。根源の神を占ってるみたい。恋愛運も仕事運も何も、ぜーんぜん見えやしない。たまにいるんだよね、こういう何も見えないやつ」
「そんな、あの梢ありっさでも見えないんじゃ、あたしはどうすれば……」
「なんか、不思議な体験とかしたことない? 昔、黒魔術やってたとか」
「黒魔術はやってないですけど、不思議な体験なら」
「どんな?」
「あたしの知り合いに、すごい遅刻を繰り返す人が居て、その人が好きだった女の子が一人、消えちゃったり。それで、人を消しまくって笑ってる悪魔とか魔女とか死神とか、そういう感じのやつが、たびたびあたしの前に現れて……それが現れるたびに、いやなことが起こったり……」
「ピンときた。もしかして、あんた、江夏なつみって名前じゃない?」
「え……春木くんから名前、きいてなかったんですか?」
「ああ、女の子を一人、正午にねじこんでくれって話だけで、名前は全然」
「あ、そうなんですか」
「すばるからの紹介って珍しいから何だろうと思ったら、そういうことか。ったくあいつ、何やってんだろうね」
梢ありっさが怒ったような口調だったので、江夏は戸惑いを隠せない。
「え? え?」
「ああ、いや、こっちの話。ごめんね。えーと、それで、まあつまり、あんたが江夏なつみなら、私ごときの力では見透かせないことにも納得がいくし、異常で莫大な魂の総量も頷ける」
「えと、あたし、やっぱり普通じゃないんですか?」
「普通? とんでもないね、あんたは自分が思ってる以上の重要人物だよ。あんた次第で運命はどちらにでも転ぶような、ね」
「…………」
「あんたに、いいものをあげよう」
梢ありっさは、四角いケースの中から、小さなサンダルを取り出した。
サンダルは、サンダルのくせに金色に輝いていた。
「梢ありっささん、これは……?」
「そいつを使えば、霊なるものを攻撃できる。もしも、悪さする霊とか居たら、そいつでぶったたいたり蹴飛ばしたりすれば、居なくなるよ。あと、もしもあんたの同居人に呪いでも掛かってれば、そのサンダルで蹴るなり叩いたりすれば、呪いは祓える。そういう解呪のサンダルだ。大事に使うといい」
「よくわからないですけど、ありがとうございます」
「いや、こちらこそ申し訳ないよ。大した助言ができなくて」
「とりあえず、高給アルバイトを探してみます。お忙しいところ見てもらっちゃってありがとうございました」
「ああ、ちょっと待った」
「え」
「最後に一つ質問なんだけど」
「何でしょうか」
「春木すばるのこと、どう思う?」
「どうって……友達ですけど」




