第2話 美味しい話
朝と夜の二回、これがクンクンのご飯の時間。昼間は父母が仕事で僕たち子供は学校でいなくなるため、お昼ご飯をあげられる人がおらず、二回が定着してしまった。クンクンも特にそれに不満はなかったようだ。直接聞いたわけではないけれど。
クンクンはあっという間に大きくなり、いわゆる中型犬くらいになった。ついこの間までかわいい子犬だと思っていたのが、もうりっばな体格で食欲も旺盛。犬だから肉は大好きで骨付き肉なんかあげようものなら一日中骨をかじってる。ある時、
「ここにおもしろいものがあるんだ。」
と父が言う。父が指し示す庭の奥は土をいじったような跡があった。掘ってみるとそこには骨が。一瞬びっくりしたが、庭の土の中から骨がでてきたからと言って別に事件が起きたわけではなかった。
「前にえさであげた骨だよ。野生の習性のなごりなのか蓄えてるつもりなんだろうな。」
父の話では以前もこんなことがあったそうで、しばらく骨をかじっていた後、突然骨をくわえて庭の奥に行ってしまい、しばらくして戻ってきた時はもう骨はくわえていなかったという。そこに行ってみると、骨が埋めてあった。もっともクンクンが掘り返したのは見たことがない。毎日えさはもらえるから掘り返す必要もないのだろう。
えさはなにも肉だけではなくて、ドッグフードもあげる。作りすぎて残ってしまった僕たちのご飯なんかもあげると食べてくれるが、これは助かっている。
ご飯は二回と言ったが、おやつもある。
僕らがお菓子を食べているとねだってくるのであげたりする。クッキー、お煎餅、飼い主の食べるものは同じ様に好きだ。では一番大好きなおやつはと聞かれれば、それは煮干しだと思う。犬が煮干しなんて、と思うかもしれないけど、たまたまあげたら好きなことがわかり、お菓子よりよっぽど身体にいいと思ってあげている。本当によく食べる。食べだすと止まらないのだ。お前は猫か!とつっこんでやりたくなるくらい。
「食事に昼寝付き、犬は実にいい身分よね。」
と姉は言う。
でもその食事をあげ忘れたことがある。
我が家は駅に向かう時は庭の前の道路を通ることになるのだが、ある時、時間は朝10時ごろだったように思うが、出かけようと庭の前を通るとクンクンがじーっとこっちを見てくる。
「出かけちゃうの?何か忘れてない?」
その目は訴えていた。そのままでは気になって出かけづらい。さてなんだろうと考えて、あっと気が付いたのである、えさをあげてないことに。慌てて家に戻りえさをあげたが、あの時の何ともいえないクンクンの表情は忘れられない。




