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第31話

お久しぶりです。

めっちゃ久しぶりになってしまいました。

しかもまた一発書き(笑)

誤字、脱字報告お待ちしています…

 日も沈みかけ、空には月と星が煌めきだした時刻。焚火に赤々と照らされた城門がゆっくりと開く。中から出てきたおよそ120名の近衛隊は全員が簡易とはいえ礼装に身を包んでいた。先頭を進むのは近衛隊総隊長のバルドー。そして、ユーリック、オーランジュらも王都の道を揃って馬をすすめていく。町の明かりに照らされた彼らは、あたかもパレードのように華やかだったと、後に民達の口に上った。たとえ、本人達がはやる気持ちを必死に押さえていたのだとしても、彼らにそれを知る術はないのだ。




 フレアはそっと扉に近付き耳を当てた。分厚い扉は外の音をあまり通さずよくは聞こえないが、人の気配はないようだ。厳重な鍵は開きそうにないので逃げられる恐れはないと思っているのだろう。それでも、フレアは極力音をたてないようにそっと扉から離れると、テーブルに乗っていたグラスを一つ手に取りサーシャマリーのもとへ戻る。ベットからサーシャマリーを立たせ、シーツを剥ぎグラスに巻きつけ床に置き、さらにおまけのように置かれていた枕をその上に乗せると、ぐっと体重を掛けた。安物であろうグラスは思いのほか簡単にフレアの手の下で砕ける。微かにたった音に、フレアは心臓が跳ねる思いだったが扉の外の気配に変化はない。それにほっとしながら、ゆっくりとシーツを広げていった。チャリ、と音を立てる破片の中から比較的大きくて角の鋭い物を選びだし、残りはシーツとともに畳んでベットの下へ押し込む。

 不安そうなサーシャマリーに、大丈夫、と微笑むとフレアは胸元に垂れる髪を掴むとグラスの破片をぐっと当てて一息に切り落とした。ザクッという音が頭に響く。思わずつぶってしまった目を恐る恐る開くと、しかし手には一見なんの変哲もない一握りの髪。色が珍しいということだけで、何の変化もない。だが、フレアは手早く切った髪を二つに分けると、一つを自分のポケットに押し込みもう一つをハンカチで包むとサーシャマリーへと差し出す。


「お持ちに、なっていてください」

「でもっ…」

「お願いします。サーシャマリー様は、絶対に城に戻られなければなりません。手段は…問えないのです。今は」


 ためらうサーシャマリーの手へ、フレアはぐっとハンカチを押し付ける。一度は手を引きそうになったサーシャマリーだが、フレアの言葉に頷くとドレスの胸元にそれを押し込んだ。

その時、外がにわかに騒がしくなる。ハッとして窓の方を見やるが、高い位置にある窓からは今や暗くなった空しか見えない。しかし、何か動きがあったのだけはわかるので、二人は緊張に身を固めながらも先ほどと同じようにベッドへ腰かけなおした。


 ぶ厚い扉からは外の声ははっきりとは聞き取れない。だが、誰かが部屋へとやって来る気配に身を固くする。フレアはサーシャマリーの両手をぎゅっと握り、かばうように身を少しだけ前に乗り出して扉を見つめた。

 すぐに重い鍵の開かれる音がして扉がゆっくりと開く。そこにいた人物に、二人はまたしても驚かされることになった。


「これはこれは。ようこそ、お二方。ご気分はいかがですか?」


 白々しくもそう言いながら入ってきたのは、先日王女の私室で初対面したばかりのデュークだった。さらにその後ろにはネルが手に燭台を持ちながらうつむきがちに付き従っている。

 共に午後の仕事にあたっていたフレアは、この部屋に彼女がいないことに対しもしや、という思いとそんなはずはない、という思いの両方があったが、今まさにそれが証明されてしまい悔しさに胸が締め付けられる。


「ネル、あなた、どうしてこんなことを…」


にやにや笑って自分達を見下ろすデュークを無視し、フレアはこちらに視線を向けようとしないネルをきつい目で見据える。名前を呼ばれた瞬間、ビクリとわずかに肩を揺らしたネルはゆっくりと顔をあげた。


「フレア…サーシャマリー様…」


わずかに震える声に、彼女が決して快くこの策略に加担したわけではないような気配を察する。しかし、彼女が王城から二人を連れ出すのに多大な手引きをしたことは想像に難くない。緩みそうになる視線をぎゅっと唇をかむことで耐え、フレアはネルを睨み続ける。


「何をしたか、わかっているの?」


低い声で問われたネルは、その言葉に再び俯き黙ってしまう。さらに口を開こうとしたフレアだが、様子を目の前で見ていたデュークに遮られた。


「…僕を無視して話さないでくれるかなあ」


言葉ぶりはのんきそうだが、イライラとした気配がありありと伝わってきたので、仕方なくフレアはデュークに目をやる。


「…お久しぶりですわ、デューク殿。今日はどんなご用件かしら?」

「ふふ…随分と気が強くてらっしゃるな、フレア嬢は。まさか僕がただのご機嫌伺いで来たなんて思ってないでしょう?」

「当然ね。私達がこんな所にいるなんて誰も知らないはずですもの。ああ、それともデューク殿は私達を城へ帰すために迎えに来てくださったのかしら?」


わざと嫌味たらしく言えば、デュークはますます口元を歪めて笑う。


「それは残念。僕はあなた方を城から出すことはしても、戻すことなんて絶対にしないね」


でしょうね、と呟いて肩をすくめる。大げさに溜息をついたフレアは、視線をデュークに戻すときつい口調で問い詰める。


「私達を…いえ、サーシャマリー様をどうするつもり?こんなことをして、陛下やユーリック殿下が黙っていると思っているの!?いくら公爵家の血筋だからと言って、ただではすまないわよ!」

「陛下…殿下…。そうだねぇ、黙ってはいないだろうねぇ。僕も公爵家の跡取りだからって、無罪放免とはいかないだろうねぇ」


くっくっくと肩を揺らしながらそう告げるデュークに、フレアは背筋がぞわりとする。


「なにを…企んでいるの?」

「べつに。ただ、陛下には玉座を降りて頂きたいだけだよ」




いや~なヤツがいますね~~

でもいや~な奴って書きやすいですね~(笑)

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