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続・片耳から「ピニャー」って聞こえるけど、俺にしか聞こえない精霊言語だったwww〜辺境伯編〜  作者: 康成


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後日談・春「ますこっと」

「ほら、出て来んなって言ってるよね?」

 軽くつつかれて戻れと促される。前よりも広くなったポケットに渋々と引っ込む。明日はフードがいいな。今日は玉の順番だから仕方ないけど。見晴らしもいいし、ご主人の様子もよく見える。

 せっかくお手伝いしようと思って出て来たのにぃー。ポケットの中でふて寝することにした。辺境はもうすっかり春。今日もまた絶好のお昼寝日和。

 


 ❖──❖──❖──❖──❖


 くっそ、終わった後のが書類仕事が段違いに多い。そして強まるジジイの監視。さすがの俺も監視されたとこで何もしねぇよ。従魔大暴走の責任を取れと言われても……。あれは不可抗力だったんだよ!

 そして白玉もちが新しい守護獣だということは、秘匿されるらしい。どんな能力があるかもまだ判明していないしな。裁定とか出来んのかな、こいつらに。今も机の上に転がってきては邪魔してくるし、まるで想像がつかない。


 白玉もちは新種としての登録もまだ保留されてる。ただ王命が出たらすぐに、登録が出来るよう種族名は決めておけと言われてマジで困ってる。何で発見者が決めないといけねぇんだよ。有識者が決めた方がいいんじゃねぇの?

 たまにすげぇ変な名前の魔獣とかいるからな。大体は見た目からとか分かりやすいのだけどさぁ。

 

 ちなみに白玉もちが当初くれた糸は気が付いたら消えていた。ジジイが後回しにするから……。

 無くなっていると気が付いてからが大騒ぎだった。そういや翌朝には融けて消えるもんなと思い出しはしたけれど、特に何も言ってない。管理も厳重に封をされていたから、師匠以外に開けられないもんだったし。

「もう一度、糸をくれ!いや、ください」

 と白玉もちに懇願した師匠。しかし白玉もちは師匠が俺にゲンコツをかました事を根に持っているらしく、あれ以来ずっと威嚇している。

 草食のこいつらに噛まれたところで、大して痛くもない。やる気に満ち溢れてはいるが、戦闘能力はなさそうなのに何で俺が保護対象にされてんのかが解せない。


 レオ兄さんから送られてきた手紙という名の報告依頼書……にしちゃあ謎形態の書簡にまた目を戻す。

 なるべく詳細に、ねぇ。一文の前で完全に止まる。

 

 ――新しい守護獣について知っていること


 俺もギンさんも新しい守護獣が生まれた、としか報告はしていない。ツリーハウス……じゃない、あのお蚕さんの縄張りにて話した時にも「その蜘蛛の守護獣の事は自分で何とかしなね」と言ってた。

 珍しくその時だけは声音も違ったし、返事はしたのに「飼い主の責任を果たせ」と追加で言い含められてるしさぁ。

 □──□──□──□──□

 名前:白、玉、もち

 性別:不明

 種族:不明

 親:座布団(玄蜘蛛(アトルムアラクネー)

 備考:破損した卵嚢を幻蚕が補修

 □──□──□──□──□


 この書き方でいいかは分からない。とりあえず魔獣図鑑を参照しようとしたけど、分からない事が多すぎて諦めたらこうなった。

 能力、ねぇ?呑気に寝ている白玉もちを眺めながら考える。幼体の時に、冒険者の足の治療をしている。診療記録を見直しても、やっぱりあの時の糸くらいしか劇的な回復は見込めなかったと思う。師匠は因果関係を探そうといまだにあの時の投薬履歴を見ながら、色々と組み合わせを試している。マジごめん。


 森での異形となった改造を施されたお蚕さん。あの時もまた白玉もちだった。翅に魔石が埋め込まれた跡こそ残ったものの、それ以外の暴れたときに出来た傷は完全に癒えていたと思う。

 たぶん、過去の傷は無理でもその時に傷付いている部分には……恐ろしいほど高い治癒能力があるんじゃないかな?と予想している。

 これが治癒魔法だとしたら規格外だと思う。冒険者の一件でも完全ではないけど、神経の修復らしき事があったし。これ、成体となった今だとさらに能力は向上してんじゃないかな。


 レオ兄さんは王城医官部にいる。もし、白玉もちに高い治癒能力があるのなら……国益を考えると報告は必須に思える。

 ただ……人が手にするにはあまりにも過ぎた力だ。それにこいつら三匹しかいないし、他にも分からない事が多い。

 

 俺のポケットとフードを定位置としている白玉もち。二度ほど森へ返そうと試みたが、精霊たちに連れられて泣きながらその日のうちに帰って来た。そして精霊たちからめちゃくちゃ怒られた。

 お蚕さんたちからも珍しく抗議されたし。何なら二度目はお蚕さんたちが送り届けて来た……もうしないとそこで誓った。お蚕さんたちも麓まで降りてきてんのとか見られたら色々とマズい。

 森では生きていけそうにない。戦闘能力もなければ危機感もまるでないし……いや、マジで心配になるくらい弱いな?

 

 □──□──□──□──□

 能力:不明(裁定の発動も未確認)

 戦闘能力:なし

 □──□──□──□──□

 いくらレオ兄さんに相手でも、白玉もちの事は言わない。きっと知らない方がいい。

 治癒魔法だけに頼らない新たな医療が今の王城医官部の方針だ。レオ兄さんはその中でもかなり精力的に活動している。それを根本から揺るがすことになってしまう。

 それに……もう王城やら政治やらのいざこざに巻き込まれるのは勘弁だしな。

 


 ❖──❖──❖──❖──❖


「リシアン!報告書だぞ?終わりましたじゃない、待てコラ!」

「いってぇ!」


 鈍い音と階下からドタバタという音がしている。目を覚ましてきょろきょろ見渡すと、リシアンのお部屋だった。あ、リシアンじゃないご主人。こないだもお蚕さんから怒られたの。「ちゃんとご主人って呼びなさい」って。

 しばらくしたらご主人がお部屋に帰って来た。また頭を押さえているから、あの大きい人間にやられたんだね……。ご主人、かわいそうに。大きい人間はやっぱ強くて危ないからぼくたちでご主人を守らないと。


 よじ登ってタンコブが出来始めているところにそっと糸を出そうとしたら、ひょいとご主人に捕まった。

「それはダーメ」

 ゆっくりと言い含めるようにご主人が止める。何でだろう?ご主人は痛そう。ぼくたち治してあげれるよ?

 玉ともちの横にそっと降ろされる。

 

「いいか、三匹ともよく聞け。もう絶対に治癒の力は使うなよ?」

 えっ?何で?抗議するようにぴょんぴょん跳ねてみる。

「それがこの家に住む条件な。嫌なら森で暮らせ」

 続くご主人の言葉にぼくたちの動きがぴたっと止まる。

 森に……?あの暗くて怖い魔獣もいっぱいいる森に……?想像しただけで震える。

 分かったと頷くしかなかった。でもそうしたらぼくたちのお仕事は?何をすればいいの?風乃さんにお願いして伝えてもらう。


「リシアン、白玉もちがそれならお仕事は何したらいいのって困ってるよ!」

 しっかり者の風乃さんは頼りになる。わくわくしながらご主人から新しいお仕事として何を任されるのかと待つ。

「あー……マスコット」

 ますこっと?何だろう……。火乃さんがお城のオジサンに聞きにいってくれて、ますこっとのお仕事はかわいいことだと知った。

 なので、かわいいぼくたちを顔を見せることでますこっとのお仕事をしようとしているのに。……なぜかご主人に止められるのが不満。

 今日もまた、ぼくたちとご主人の攻防は続いてる。

*──*──*──*──*

 拝啓 読者の皆様


 この度、第14回ネット小説大賞におきまして本編の「片耳から「ピニャー」って聞こえるけど、俺にしか聞こえない精霊言語だったwww」が入賞を頂きました!

 一番に報告するのは「小説家になろうで読んでくださっている皆様に!」と思い、取り急ぎあとがきにて。

 ここまでお付き合い頂いた皆様あっての事だと思います。ありがとうございます!

 今後については、活動報告にて改めてご報告させてください。これからも末永くよろしくお願い致します。

 ただいま手が震えているので、誤字があれば後日修正します。取り急ぎ……。

 康成

*──*──*──*──*

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