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続・片耳から「ピニャー」って聞こえるけど、俺にしか聞こえない精霊言語だったwww〜辺境伯編〜  作者: 康成


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春編1話「兄上、辺境伯になりました」

 レオ兄さんへ


 久しぶり、リシアンです。王都はもう春かな?辺境はまだ少し雪が残ってる感じ。

 でも春は近く、そろそろ本格的に慌ただしくなりそうな気配です。

 辺境伯として……冒険者やら領民の管理もあり大変ですが、皆に協力してもらいながら頑張っています!


  

 *──*──*──*──*


 その日、冒険者ギルドはやけにざわついていた。

 とりあえずいつものように採取した素材の買い取りと解体を依頼して……薬店の開店まで半端に時間が余るな。今日はこのままギルド内で待つことにした。


「いやー、どんなやつが来るのか楽しみだな!」

「俺は一回見たことがあるけどオーラっていうの?やっぱ違ったんだよなぁ」

 何やら有名な冒険者でもこっちに移動してくんのかな?

「ねぇ、誰の話?」


 空いていたし、勝手に隣に腰掛ける。

「あぁ、リシアンか。まだ聞いてないのか?孤高のソロと呼ばれる冒険者が隣国から来るんだとよ」

 何かすげぇ二つ名の付いたやつが来るのな。……己の二つ名である「二代目辺境大森林の魔王」はこの際、無視する。


「俺もソロだけど?」

 基本的には、俺もパーティーという決まった面子と行動しているわけじゃないからソロ。

 運搬系は定期的に依頼を出したりはするけど。

「……そうだな、お前もソロだな」

「それでさ、Bランクなんだけどやっぱどこか違う存在なんだよなぁ!いやー、強者ムーブっていうの?やってみたいもんだよなぁ」


「ねぇ、俺もソロのBランクなんだけど」

 日常的に顔を合わせてんだろ。

「……そうだな、知っているよ」

「あー、もう!ちょっとリシアンさんは黙っててもらってもいいですか?」

 例の冒険者を知っているというやつから、邪魔だとばかりに追い出された。

 

「……リシアンさん、何やってんですか?」

 呆れたように声を掛けてくるのは「スピナシア」というパーティーのリーダー、ホウ。

「皆ね、あんたのことは規格外だと思ってるんで。あんたとバルドレム翁は別枠なんで」

「魔王が一般の冒険者と並ぼうとすんの、マジでやめたほうがいいっすよ……」

 メンバーのレンとソウも続く。


「うるせぇ、辺境伯権限で処してやろうか?」

 

 最近、俺は辺境伯に任命された。お蚕さんたちの繭を……余っていたからよかれと思って王家に送り付けたらこうなった。

 完全に想定外だったし、兄上から有無を言わせない様子で命じられたら「はい」としか言えないよね。


 とはいえ、今までと生活に変わりはない。相変わらず辺境大森林麓の薬店にいるし、素材採取の合間に冒険者活動もやってる。

 年一で王都に出向くくらいかな、今のところ。細かい数字の管理あれこれとかは、王城から派遣された補佐官がいるし……とりあえず何とかなってる。


「はいはい、リシアンさん。あ、鹿の加工終わったみたいっすよ。呼んでます」

 だいぶテキトーにあしらってくるようになったな、スピナシアめ。

「あ、ちょっと店まで運ぶの手伝って。肉は分けるから」

 そんなこいつらには新しい研究にそのまま付き合ってもらおう。辺境伯を雑に扱うからこうなる。


「マジっすか!肉!!」

「薬店までお持ちしますね、リシアンさん」

……相変わらず、こいつらの危機管理能力は欠片も機能してねぇなと思った。

 噂の冒険者の情報も気になるけど、行くか。

 


 薬店まで運んでもらって、スピナシアには……量があればいいだろ。部位を選ぼうとするな。

「あと……これも頼むな?」

「「え?」」

 ちょうど試したいことがあったんだよな!

「新しい体力増強剤。ひと足早く試してみてな?今日の夜に飲んで……とりあえず今度、また報告に来いよ」


 銀貨を一枚ずつ積みながら話す。六枚、積んだところで手を止める。

「まぁ、お前らがやらないっていうなら別のやつに」

「「お願いします!!」」

 また金に困ってんのかよ、こいつら。

 相変わらずというか何というか……ま、明日以降を楽しみにしとこう。

 さて、鹿の燻製の仕込みと開店準備でもするかな。


 ◇──◇──◇──◇──◇


「領主様、少しは書類仕事もしてください。ある程度は纏めております」

 この眼鏡の似合う神経質そうなのが、王城から派遣されて来た補佐官。ギンさんが選んでくれたこの人は、財務管理や王法関係にめっぽう強い。

 めっちゃ助かる。聞いたら何でも答えてくれるし。

「ありがと、クレメンス」

 

「私の名前はクレメン()だと再三に渡って申し上げております」

 ギンさんが!「教えてクレメンス」って言ったら何でも答えてくれるなんて言うから……一度馴染むと修正は難しい。

 ちなみに家名も「メネガット」だけどちょいちょい「メガネット」と言ってはまた怒られている。


 ギンさんの字で「突っ込みに定評があるから二代目にはぴったりだと思う!」とかクレメンテの人物評定書に書いてあって、どうすればいいか分かんなかったけど。

 まぁ、このクレメンテがいるから何とか辺境領の運営は成り立っている。

 

 辺境薬師連合の設立、冒険者ギルドと連携して住人としての冒険者の管理はだいぶ形になった。商業や農業も今後なるべく早く纏めたい。

 

 というか、代表者だけ俺に報告とかしてほしい。ある程度、纏まった情報でくれないと忙しいんだよ、こっちも!

 クレメンテは「領主ならば把握しておくべき」とあまり甘やかしてはくれないので、全力である程度の仕事は周りに投げる手配を進める俺。

 

「領主様、何か?あぁ、もう。調薬の片付けは私がやるんで、これとこれだけは今日中ですよ?」

 最初にこの軟膏に入っている地龍がミミズだと知ったとき、あれ程ビビっていたクレメンテは見違えるように成長した。

 そのうち調薬のサポートもしてほしい。

「これは書類を片付けるためにやっていることですからね?ほら、領主様も手を動かす」

……しかし、やたらと勘がいいんだよなぁ。


 渋々、書類に目を通す。冬の間にはほぼ動きがなかった冒険者たちの移動リスト……。

「あ、噂じゃなくてマジでBランクの冒険者がこっちへの移動届をもう出してんのな」

 辺境大森林を隔てた隣国からか。こっちに来ても魔獣の種類もあんま変わんないはずなんだけどな。


 一般的に高位ランク冒険者と呼ばれるBランクからは、移動の際に各冒険者ギルドへの申し出が必須だ。

 ギルド側も手放すまいとあれこれするっていうのは聞いたことがある。

 辺境のギルドでは来るもの拒まず、去るものは追わずだけどな。それでも冒険者の定着率はけっこういい。


「教えてクレメンス」

「クレメン()、です」

 そう言いながらもきちんと教えてくれる。なるほど、他国ギルドの記入方式は国内と違うってわけね。

「王弟殿下といいなぜ私のことをクレメンスと言うのです?」

……「教えてクレメンスは様式美」ってギンさんが言ってました。と、思うだけで口にはせず黙々と書類の作成を進めた。


 書類の仕上がりを確認して

「お疲れ様です。では、本日はこれで失礼します」

 クレメンテはこちらより静かだからと、街の方へ帰っていった。麓のが近くて便利だけど、冒険者って基本うるさいもんな。

 

 でも俺は知っている。クレメンテが奥様方に混ざり商店で、どちらがお得な食材を手に入れるかで言い争っていることを。

 ついでに今では互いを認め合い、井戸端会議にも重鎮枠として参加している。

……ちなみにクレメンテは俺より2つ年下の24歳。王城文官の中でも有望株である。

 それなのに商店に行くと、どこのマダムよりも歴戦の猛者感が出ていて笑う。


 辺境の街は土地柄、逞しいタイプが多い。王都から来た補佐官様におもねる者は少ない。

 当初は面食らっていたクレメンテも意外と早く馴染んだし……。

 人物評定書にある「頭が固くて融通が利かない」一文は、斜線で消して引き出しの中に放り込んだ。


――……クレメンテのことはしばらく、王都に返すつもりはないよ?

 付き合いはまだ短いけれど、俺はこの王都から来た若い補佐官のことは評価してるし気に入ってるから。

 王城へ送るクレメンテに対する定期報告には


「辺境の街に馴染もうと努力する姿に好感が持てる。知識の幅も広く優秀。他の者と交代する必要なし」


 そう書いて、ゆっくりと封蝋が固まるのを待った。

お久しぶりです。

辺境伯編のリシアンは26歳です(前作では23歳、後日談の新年祭で24歳を迎えています)

少し大人になった(?)彼の日常を見守っていただければ幸いです。

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