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7 口うるさい相棒の登場

 あまりのまぶしさに、私は目を瞑った。しばらくして、うっすらと目を開ける。

 私は、光の中に浮かんでいた。辺りを見回すと、傍にラヴィがいた。長かった体の三分の一ほどがなくなっていた。

「ラヴィ、大丈夫……?」

 くるる、とラヴィが鳴く。苦しそうな感じはなかった。でも、見ているこちらが心苦しかった。ラヴィは私を守ろうとして、こんなことになったのだ。

「ごめんね、ごめんね……」

 私は泣きながら、ラヴィの嘴を撫でた。ラヴィが私の泣き声に合わせるようにして小さく鳴いていた。


 そんなに申し訳なく思うのなら、お前が直してやればよい。


 突然、声がきこえた。私は泣くのをやめ、辺りを見回した。どこまでも淡い黄緑色の光が広がっており、自分とラヴィ以外の存在など見あたらない。


 その切り替えの速さは良いな。話も早そうだ。


「誰?」

 私たちの目の前に、ぼんやりと灰色の影が現れ、その形が揺れたかと思うと、そこに一体の人形が現れた。雛人形、と私は反射的に思った。私の前世の知識からきた単語だ。一目見て上質とわかる白絹の下に紅の袖が見える。そして、深紅の袴。額には、半円をくり抜いた冠をつけていた。星の船を模したものだときいたことがある。そして、その手には梅の一枝。

 姿そのものは女性に見える。絵姿で見たとあるカミサマの姿に似ている。

 それは、人と神々の間に立つ一柱の神だった。トキノオ様、と、故郷では呼んでいた。本当は名前を呼んではいけないのだけど、私が生まれた集落の者は特別にそれが許されているのだと。


 そんな決まりなぞは最初からないがな。


 声がまた響く。低い女性の声のようにきこえた。少なくとも、男性の声にはきこえない。


 呼びたいように呼べばよい。お前が今住んでいる辺りでは、事告げの女主人と呼ばれておる。


 カミサマは手招きをした。それにラヴィが応じた。カミサマはラヴィのたてがみをその小さい手で撫でた。


 まさかお前があれに立ち向かうとは思わなんだな。そちらのお前も。


 カミサマの顔がこちらに向く。私は縮こまった。何だか、いたずらが見つかったときのような気分だった。

「えっと……はあ、まあ」


 そんなに小さくなることはない。お前がしたのは正しいことだった。お前が動かなければ、あの場にいた者は全員死んでいた。


 私は胃が縮まる思いがした。敵だとわかっている相手が現れたので、立ち向かっただけなのに。


 だとしても、正しい行動であったことには違いがない。なかなかの胆力よ。それを見込んで、頼みがある。ここから出た後、またあれと対峙し、退けてほしい。


「は?」

 私は間抜けな声を出し、それからあることに思い至った。ここがどこなのかわからないが、まだあの男の襲撃は終わっていないのだ。カミサマは頷く。


 そう。まだ終わってはおらん。あの場にいた魔法使いたちが全力を使って対抗しようとしているところだが、守勢に回るしかできない者とためらいなく攻撃してくる者とでは、どちらが優位かはわかるであろう。だがお前ならそうはならない。


「えーっと……それって、私にあの黒づくめと戦え、と?」


 そうだ。魔素の操りようはなかなかのものであったぞ。あの場に手練れの魔素術使いが他におれば良かったが、あそこに来ておったのはほとんどがひよっこばかりであったから。


 褒められて喜ぶべきかどうか、私にはわからなかった。褒められたのはよいとしても、そのせいで危ないことに巻き込まれることになったとしか思えない。

「えっと、あの人って、神々の煉獄から出てきたんですけど。神様の方で何とかできないんですか」


 あれはただの駒ゆえな、我らが出たのでは力が過剰になってしまう。まあそう警戒するな。わしとしても、そのままであの場に戻そうとは思っておらん。お主に、使える道具と助言者を与えてやる。それを使えば、あれを退けることができるだろう。


 カミサマの言葉とともに、私の目の前に小さな黒い穴が現れた。私の手が通るかどうかというくらいの大きさの穴。


 それに手を突っ込んでみろ。そして、手に触れたものを掴んで引っ張り出せ。それがお前の助けになる。


 私はおそるおそる穴に手を突っ込んだ。最初、指に触れるものは何もなく、私は眉間に皺を寄せながら、どんどん腕を突っ込んでいった。肩のあたりまで穴に填まった辺りで、指先に何か柔らかいものが触れた。私はそれを掴むと、引っ張り上げた。

 穴から出てきたのは、薄桃色の長細い布だった。どれほどの長さがあるのかわからないそれの一番端に、かまぼこ型をした小さい木の箱、前世のゲームで見たような宝箱がついていた。

 ついていた、というか、宝箱の蓋に布の端が挟まっていた。

 私は布を宝箱から外すべく、両手で掴んだ。そして、蓋を開けようと思い切り力を込めた。すると。

「痛いー!怪力ー!!」

 甲高い声が辺りに響き、私は思わず箱を手放した。宝箱は蓋を口のようにぱくぱくと動かしながら、私の周りをせわしなく飛んだ。その様は、前世で見たアニメやゲームに出てきたミミックそのものだった。

「もっと丁寧に扱いなさいよー!これだから物の価値がわからない者は!」

「えっと……?」

「ほら、神具を放っておかないの!」

 ミミックが何のことを言っているのか、少しの間わからなかった。そんな私の視界を、さっき箱の蓋からはみ出ていた薄桃色の薄衣が横切っていく。

「もしかして、これが……?」

「もしかしてじゃないわよ。偏倚の羽衣。奇跡の品よ。このあたしの頭脳と併せれば、鬼に金棒なんだから!」

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