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4 物騒な追いかけっこの終わり

 あらゆる物は魔素を伴う。生物でもそうでなくても。

 そして、それを利用していろんなことができる。ちょっとした光を灯したりとか、電気を起こしたりとか。尤も、この世界の人たちは電気というものを知らないので、それを意図して起こせるのは私だけみたいなのだけど。

 更に魔素は移動にも活用できる。今やっているように。自分の魔素と周囲の物質から発生している魔素を反発させ、その反動で自分の体を浮かすのだ。

 私は今、木々から出ている魔素と自分から出ている魔素を反発させながら、木々の上を跳んでいる。「飛ぶ」のではない。飛ぶ、というのは何もない空中を移動することだ。

 魔獣はまだまだ追いかけてきた。逃げながら振り向くと、向こうは追いかけてきながら大きな口をぐわっとあけてくるのが見えた。私は慌ててスピードを上げた。

 針葉樹の上を移動するのは、はっきりいってやりにくい。発生される魔素が広葉樹よりも少ないのだ。樹形のこともある。とんがっていて、そこにただ立つだけでも不安定なのに、その上を高速移動しなければいけないのだから。

 私は逃げながら、どうするか考えていた。いつまでも逃げ続けるわけにはいかない。どこかで姿をくらますか、相手を倒すか。

 森の上を跳び続けていると、ぽっかりと木がない場所に出た。ちょっとした広場のようになっていた。

 突然のことだったので、私は慌てた。木がないので跳び続けることができず、下に降りるしかないのだが、そこに魔法科の生徒たちが集まっていたのだ。

 それで私は理解した。私たちは魔法科のオリエンテーリングの場所に飛ばされたのだと。

「逃げて!」

 私は大声で言いながら、とりあえず地面に飛び降りたショックを和らげるよう、足下に魔素を集めた。自分が纏う魔素と、下方に集めた魔素とを反発するように作用させる。そうしながらも、飛び降りる先の地点を確認する。生徒たちはぱっと散って、森の中に走り込んでいた。

 私は安心して着地した。着地の瞬間、魔素術を展開して、足にそんなに大きな衝撃を受けないようにできた。私は着地すると同時に降り仰ぐ。さっきの魔獣はついてきていなかった。広場の上空をうろうろと飛んでいる。

 私はこれ幸いと森の中に駆け込もうとした。が、逆に森の中に避難していた魔法科の生徒たちが広場に出てきた。そして、遠巻きにして私を見ている。先生と覚しき男性も悠々と森の中から出てきた。上空の魔獣に気づいていないのか?私は混乱し、立ち止まった。

「君は魔素術科だな。何でここにいる」

 そう言う相手の雰囲気が怖い。私はどう反応していいかわからなかったが、とりあえず上空を飛んでいる魔獣を指さした。

「あの、えっと、あれ」

「ああ、気にしなくていい。あれはうちの学院とは古いつきあいだ。ラヴィという」

「は?」

 私があっけにとられている間に、件の生き物は空からぬうっと降りてきた。男性の後ろから顔をのぞかせるような位置で止まる。というか、頭がでかすぎるのと大きな目の迫力で、後ろから男性を食おうとしているような感じになっているのだけど。

「正式な名前はラ・ヴィエント・エリエニール・アレイシャスだが、普段我々はラヴィと呼んでいる」

「学院と古いつきあいって……」

「そうとしか言いようがない。代々の生徒が世話をしてきたものだ。かく言う私も、学院生の頃は世話をしたものだった」

「初耳なんですけど……」

 こんなのを飼っているのなら、王都中に話が広まっていておかしくはない筈だ。

「魔素術科は知らんだろう。というか、魔法科歴代の秘密だ。ラヴィとふれあえるのは魔法科の生徒だけだからな」

 それをきいて、力が抜けた。

 それならあんなに必死になって逃げる必要はなかったんじゃないか。

本日もう一話投稿します。

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