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16 最後まで立っていた者

 私は深呼吸をした。自分の中に核があるとイメージし、そこに魔素を集める。そして、右手を天に向けて伸ばし、核を中心に魔素を均等に押し出すイメージを固めると、

「天球!」

 と宣言した。魔素の薄い膜が私を中心に球の形になって空間を囲んでいるところを想像する。いつも使っている学院の練習場がちょうど入るくらいの大きさの球だ。アンリウォルズ先輩がいる場所は含まれるが、マリちゃんやクラスの皆は含まれない。

 アンリウォルズ先輩が巻き起こしていた吹雪が一瞬止まった。が、またすぐに吹き荒れる。ただし、私が作った魔素の膜の中だけでだ。私が作った膜の外は元通りになっているのが、魔素の膜を通じて感じ取れる。

 アンリウォルズ先輩が何か言っているようだったが、吹雪のせいで聞き取れない。私は魔素の膜を維持することに集中した。羽衣のおかげで私の周りは寒くない。風も雪も来ない。

 これは、亀の甲羅とはまた違う術で、魔素や魔力の流れを遮断するものだ。難しすぎて一般的ではなく、名ありの術には含まれない。そもそも魔素術とは別のカテゴリに分類される。

 これのすごいところは、亀の甲羅と違って、魔素や魔力そのものの流れを防ぐことができることだ。熱の移動も遮断することができる。

 今、この場では、天球を設置することによって、吹雪を起こす魔力の流れをこの壁の中にとどめたため、膜の外の天候は元に戻ったのだった。

 とりあえず、みんなを助けられるようにはなったが、ここからアンリウォルズ先輩とどう対峙していくかが問題だった。

 私が狙っているのは、向こうの魔力切れで、彼がどんなに魔力を持っていても、こんな大魔法を繰り出し続けていたら、いつか魔力が切れるはずなのだけど、問題は彼の魔力切れまで、私がこの術を維持し続けることができるかということだった。

 この術は、亀の甲羅よりも格段に難しい。今作っている魔素の球の半径は大体20メートルくらい。水平方向にしろ垂直方向にしろ、無色透明の膜なんて、視認できない。自分の目に見えない膜を維持し続けるというのは本当に難しいのだ。今まで何度も練習してきたけど、成功したことはなかった。今回が初めて。羽衣のおかげなのか、それとも土壇場で今までにない力が発揮されているのか。

 吹雪はいつの間にか止んでいた。が、それに気づいた次の瞬間、膜の中の床はマグマが吹き上がり、炎が弾けた。アンリウォルズ先輩が次の魔法を使ったらしい。

 彼自身は宙に浮いたまま、自身に熱の影響がでないよう、薄く障壁を張っている。複数の魔法を苦もなく使うのはさすが、天才と言われるだけのことはある。

 彼は、炎の球を私が設けた天球の膜に向かって放った。炎は、膜にぶつかると消滅した。それを何度も繰り返す。

 よくも飽きずに、と私はそれを眺めていた。この膜は、そういうものの効果を打ち消すのだ。

 十回ほど炎を膜にぶつけた後、アンリウォルズ先輩はもう魔法を使うのをやめた。マグマが止み、ジェラルドは地表に降りてくる。

「シホ・アリス・ゼン。見事だ。神々の宴への参加を認める!」

 アンリウォルズ先輩が朗々と言った。私は内心、うへえ、と思った。

本日もう一話投稿します。

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