5話……《語るほどのものではない》
ポカポカとした陽気に包まれた世界。穏やかな風が肌を優しく撫でていく。
『おじいさま』
あどけない表情を浮かべる少女は、風に揺らされる髪をくすぐったそうにしながら押さえた。
そんな少女の隣に佇むのは腰を曲げた老人だ。
優しい、慈しみのある表情で少女の頭を撫でる。
『どうしたんじゃ、シェリーよ』
『いっつもね、おもってたの』
『思っていた?』
『そう。おもってたの』
『なにをなんじゃ?』
『このいしのこと。おじいさまが、まいあさおそうじしてるでしょ?』
『そうじゃなぁ』
二人の前方には、老人の腰くらいの高さ。少女の頭の高さほどの大きな石があった。その縦長の長方形に近い石は下部が地面に埋まっていて、土汚れていることもなく、苔生していることもない。だが角は少々歪に丸みを帯びており、どことなく時の経過が感じられた。
『なんでおそうじするの?』
『綺麗だと気持ちがいいじゃろ?』
『でも、おじいさまはおうちのおそうじはしないよ?』
『……シェリーはよく見とるのぉ』
『おじいさまはおさぼりおじいさまだからね!』
『耳が痛いのぉ……』
老人は頬をポリポリと掻いた。
『さて、なんで掃除をするのか、じゃな』
『うん。おじいさま、とってもだいじそうにおそうじするの、へんだなっておもうの。だからきになったの』
『大事そうに……か。そうじゃな。シェリー、これはじいちゃんにとっても、シェリーにとっても、とても……とっても大事なものなんじゃ』
『とっても?』
『そう、とってもじゃ』
『なんでなんで?』
『それはじゃな──』
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タイトルの「……」について、なにも言わないのが私にとっては一番良いのですが、念のために活動報告にでも書いておきます。やむなし。