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楽して生きれるほど甘くはない世界で。  作者: 成田楽


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43話《不吉な予感》

「うーん……」


 ライアは今日も学園裏で【無窮の縁】の練習をしていた。


 しかし思うような成果は得られず状況は停滞していた。


 だがそれは、今のライアにとって落ち込む理由にならない。


「あの子……」


 帰り道、あの時掴んだ存在のことを考えていた。


 今までの子たちとは明らかに違う子。


 確かに大きい魔力を持ち、ライアの契約に対して抵抗してきた。


「気のせいじゃ……ない」


 もうその存在との繋がりは感じられない。


 でも、あの大きな温もりは胸に残ったまま。


「絶対どこかにいるはず!」


 あの子を見つけられれば、みんなに並び立てるようになれる。


 フェーレを守る力を手に入れられる。


 胸張って、ロア君にありがとうと言える。


「まだまだ頑張らないと」


 きっかけは掴めたのだから、これまで思い悩んでいた【無窮の縁】だってこれから更に頑張れば上手く使えるようになれるはず。


「フェーレ待ってるかな」


 例えフェーレにさえ、努力するところを見られるのは恥ずかしい。


 無理言って部屋で待っててくれるようにお願いしたのだから、お詫びにお土産を買って帰ることが日課となっていた。


 今日はなににしようかな。


 喜んでくれるかな。


 フェーレの色んな反応を想像しながら歩いていると……


「……」


 前方から近づいてくる人影が見えた。


 その人影はライアに向かって手を振っている。


 やがて互いの顔を認識できる距離になり──


「あなたは……」


「──クハッ」


────────────────────────────────


 その日は晴れだった。


 いつも通り、オーちゃんが朝早くに学園に行って、自分はごろごろして時間を潰す。


 気が向いたら外に出て町を歩く。


 変わらない毎日の中の一つだった。


 たった一度、過ちを犯してしまったが、それも今では無かったも同然。


 気付かれてないのなら、干渉しない限り干渉されない。


 ……変化というものは恐ろしい。


 未知ほど不安になることはない。


 なにもない。変わらない。ただいつも通りの日常を送れればそれでいい。


 レイジはなにやらクラスメイトを集めて特訓しているらしいし、ライアは飽きずに【無窮の縁】の練習をしているらしい。


 正直、レイジが出場しようと思い立った日が遅かったせいでそこまで時間は残ってない。


 今更努力したところで明確な成果は見られないだろう。


 それでも頑張るのは、人の性なのだろうか?


 ……日差しが鬱陶しい。


 こんなことなら部屋に籠っていればよかった。


 これほど日差しが強いと無性に不安になる。


 だが、こんな日こそ悪いことが起きる。


 なにもなければそれでいい。


 ただの思い込みならそれでいい。


 杞憂で済めばそれでいい。


 それだけでいいんだ……

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