24話《純粋で偏った想い》
「……行っちゃった」
「プレゼントってなんだろうね」
「開けてみる」
フェーレは壊れ物を扱うように丁寧に開けていった。
「あ……」
小さな箱の中には摘めるサイズの金属製のリングがあった。
「指輪……綺麗だね」
ライアもそれに倣って開けた。
「フェーレのネックレスのお返し……じゃないよね。買いに行ってたならもっと遅くなると思うから…………フェーレ?」
「──ッ!なんでもないよ!?」
指輪を恐る恐る左手の薬指に嵌めようとしていた。
フェーレはその意味を分かっているのだろうか。いたずらがバレた子供のような表情をしているフェーレを見れば、わかっているような気がするが……
「せっかく貰ったんだから、大切にしようね」
「……うん!」
これで話を終わらせた。ライアは真実を知ろうとはしなかった。
これ以上知ってしまえば、フェーレが遠くに行ってしまうような気がして聞き出せなかった。
ライアは自分の手の中で、光を反射して煌めく指輪を見つめる。
「……」
フェーレの……想い人、ロア。
彼は他の人とは違う。
みんなわたしを見る。
綺麗になれるように夜更かしはしてないし、食事にも気を付けている。だからその結果が注目となっているのなら、それは嬉しい。
でも、みんなわたしだけを見る。わたしだけしか見ない。
フェーレのことなんて知らんぷり。
まるでいない子のように扱う。
確かにフェーレは物静かな子で接しにくさを感じるのかもしれないけど、それがあの子を無視してもいい理由になんてならない。
だからわたしを見てくれるのは嬉しいけど、少しの憤りも感じてしまう。
もし内心憤りを感じていることを伝えれたら、楽だろうなと考えたことはある。
でもそれはできない。
それをしてしまえば、みんなに引かれてしまう。嫌われてしまう。わたしの足場が崩れてしまう。信頼が瓦解してしまう。
すなわち、フェーレを支えてあげることが出来なくなってしまう。
だから誰にも期待しない。
……そのつもりだった。
わたしはフェーレさえいればいいと思っていたのに、あの日、ロア君が現れた。
カフェの時点では少し強引な人ってだけで、それ以外は他の人たちとなにも変わらないと思っていた。
でも学園での彼は違った。
たまにいる、フェーレに話しかけるけどフェーレの中身を見ていない人たちとは違う。
フェーレを見て、フェーレに話しかけて、あの子の心に触れていた。
ロア君なら、あの子を任せてもいいと思えた。他人に期待できたのは、フェーレと出会ってから初めてだった。
だからわたしもロア君を見ることにした。
もしかしたらなにか企みがあって近寄ってきたのではないかと、カフェでの出会いと学園での出会いが偶発的なものではなく、ロア君が作り上げた必然的なものだったのかもしれないと、そんな疑いもあった。
あったのに、今は綺麗さっぱりなくなっていた。
彼はフェーレの心に触れるだけに留まらず、それどころかフェーレの心を掴んでいた。
期待以上だった。
だからこそ、不安になる。
フェーレがわたしを見なくなってしまうんじゃないかって思って、止めどなく不安になってしまう。
それは駄目だ。
あの子はわたしが側にいてあげないとなにもできない。だからずっと一緒にいてあげないと。
あの子にはわたしが必要なんだから。
わたしは、フェーレを守ってあげないといけないんだから。
この想いも、確かな愛の1つなのです。




