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楽して生きれるほど甘くはない世界で。  作者: 成田楽


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一章 2話《錯綜》

1、2話は片隅に置いといて構いません。ぶっちゃけ3話からが始まりです。そして41話からが本番みたいなもの。

 部屋の中心に浮かぶ小さな光。その部屋の装飾、自身の足元すらも把握できないほどの最小限の灯。


 そして、それを挟むようにして話し合う二人の男。


「あれは我らが制御できるものではない。お前にもわかるだろう?もうこの道しか残されていないことが」


 至って冷静な初老の男に対し、軍服を着こなした壮年の男は声を荒げる。


「ですがッ、それでは他国に足を掬われてしまう可能性が!」


 迫真の表情で机に手を付き立ち上がる。


 ガタンと大きな音が響き、椅子が倒れた


 そんな男に対して初老の男は淡々と告げる。


「仕方のないことだ。確かにあれを囲ったのは存在を隠し、奪い合いのよって起こる戦争を避けるため。また、他の国に利用されて国力の差が離れることを防ぐためだった」


「でしたらもう一度考え直して頂けないでしょうか!」


「ううむ……」


 初老の男は唸るように声を漏らす。


「あれは手放すには惜しい存在です。操ることは出来ずとも、もしもの時は存在を周知させ、手元に置いておくだけでも十分な効果が見込めるはずです」


 息を整えた軍服の男。言葉を紡ぎ、どうにか自身の考えを伝えようとする。


「最近は魔物の数も増え、南の地域では既に少なくない被害が出ています。そしてまだ活発化している原因の特定ができていません。その状態であれを逃がしたとなれば、限られたものしか存在を知らずとも動揺は避けられず、情報の流出の危険性も考えられます。せめて、まだ決断は遅らせて頂けないでしょうか?」


 初老の男は腕を組み、少しの沈黙の後、椅子の背もたれに体を預けた。


「……そもそも、あれは初期の段階から手に負えるものではなかった」


「……」


「あれを理解することはできない。暴走し、国が内側から崩壊することもあり得た」


「……」


「リターンは大きかったが、その分莫大なリスクを背負ってしまった。しかし我らは賭けに勝った。ボロボロの吊り橋を渡り切ったのだ」


 軍服の男は視線を口元へ向け、一言も逃さぬように聞き入る。


「だがその先の光景はどうだった?どこにあるかわからない逆鱗に怯え、いつ来るかわからないもしもの為だけに隠し続ける。歩んできた意味は見つかったか?今後見出すことができるのか?国一つを滅ぼせる爆弾を、炙り続けながら保管することは果たして国の為になるのか?」


「それは……」


「お前は意図して口にしていないようだが、数日前に帝国の間諜を炙り出したそうだな」


 目を見開き、息を忘れたかのように動きを止める。


 言われたことをゆっくりを自身の中で噛み砕き、まとめていく。


「……はい、おっしゃる通りです。確かな証拠を集め、抵抗を防ぐために魔術妨害の結界が展開された場所で捕らえました」


「結果は?」


「おそらく口腔内に仕込んでいたのでしょう。自ら毒を服用し、苦しむ間も無く死亡しました」


「回復系の魔術は?」


「即座に結界から引きずり出して使用しましたが、効果がありませんでした。どうやら今までの間諜と同じように毒自体に強い魔術抵抗を付与する効果があるようです」


「帝国は我らを謀る為だけの嫌な研究ばかりするな……で、つまりは今回もしてやられたというわけだろう?」


「力及ばす、申し訳ございません」


「ここまで入り込まれているとなると、いつあれの情報を抜き取られるか。既に掴まれている可能性も拭えん」


「……」


 軍服の男の様子を見た初老の男は体を前のめりにし、もう一度問うた。


「我らはこのままでいいのか?家中の鍵を閉めても、閉める前から家の中に入られていれば意味のないことだ。内側から鍵を開けられて簡単に盗まれてしまう。わかってくれ……もうあれの存在は隠しきれない。他国からの干渉は避けられないだろう」


「……賭けに出るしかないのですね」


「ああ。今回の賭けはリターンは少ないがリスクも減らせる。これ以上国を揺るがすようなことは避けたい。避けなければならない」


「はい、わかっています……」


「あれを我らの手の届く範疇から出す。だが、必ず我らの国から離れるわけではない。要望を聞け。そして可能な限り叶えろ。少しでもあれを長く留まらせろ」


「…………」


 十秒以上にも及ぶ時間、目を瞑り思考を重ねる。


 その末に、これまでの考えを全て吐き出すように息を吐き切り、天を仰ぐ。


 椅子から降りると洗練させた動きで左膝を床に付け右膝を立てる。両手を握り締め、左手を胸に、右手を床へ振り下ろし──


「仰せのままに」


 一切の迷いのない真っ直ぐな声色だった。

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