10話《邂逅》
「お疲れ」
「お疲れ様」
互いに労いの言葉をかける。
「それにしても君、異常なタフさしてたね。それって魔術に対してだけかい?」
「いや、物理的なダメージにもある程度強いかな」
「へぇー、だからあんなに突っ張れるのか」
そうして他の生徒たちの試合が終わるまで待つ。
ちなみに倒れた男子生徒はガンドレ―が担いでいった。彼は肉体回復系の魔法を持っているとのこと。だから魔術を許可して自由に戦わせたのだろう。
それに、話に聞いただけで体験してないし目にもしてないが、この訓練場は命の危機が迫ると自動的にその人物へ防御の結界と即効の回復魔術が作用するらしい。また、魔術陣の展開を阻害する結界がそのフィールドに展開されるとのこと。
もっと早く教えてくれれば相手の攻撃に怯えたりせず、安心して本気を出せたのにと思ったベックだったが、その事について聞いてみたところ──
『緊迫感がなくて実戦に活かすことができないだろ?』
と言われてしまい、その通り過ぎて頷くことしかできなかった。
そんなガンドレ―は、気にせず勝利を噛み締めてろと豪快に笑いながら他の倒れた生徒たちも拾いに行った。
これでも早めに終わったらしく、周りではまだ試合が続いていた。
全ての戦闘が終わるまでは手持ち無沙汰なので、どうしようかなとベックが考えていると相方の彼が『お?』と声をあげた。
「どうしたの?」
「ちょっとあの子と話してくるよ」
「ああうん、わかった」
彼が向かった先にはどうやら同じく決着が着いているようで談笑している生徒の姿があった。
その中に彼が仲良くしている人がいるのだろう。
ベックも自分の友人の様子を見に行こうとしたところで、離れたところからこちらに
向かってきているレイジを見つけた。
「おうベック!どうだ?勝ったか?」
「僕は勝てたよ。レイジは……その様子だと勝てたみたいだね」
合流したレイジはズボンの裾が多少汚れている程度で怪我は見受けられない。
ガンドレ―に治してもらった可能性もある。だが、流れた血は綺麗にできないし、レイジの性格的にわざわざ今綺麗にしなくても後で風呂入った時に落ちるだろうって考えるだろうから、少なくとも出血するような攻撃は受けて無さそうだ。
負けていたらわかりやすく落ち込むだろうが、今のレイジは有頂天に達しているようで思い通りの試合展開だったことが窺えた。
「当たり前だ!俺の仲間の奴も中々に男気のあるやつでかなり面白かったぜ。それに今回は切り札を使ってねぇからな!」
切り札というのは、この間ベックを負かした時に使ったあれの事だろう。
「そもそもレイジのあれは、制御が効くまで試合に使っちゃダメだって言われてるよね」
「あー……ところでお前の仲間になった奴は誰だ?」
誤魔化すレイジを見て、ベックは確信した。
絶対忘れてた、と。
もし苦戦するかピンチになっていたら惜しむことなく使っていただろう。そして
叱られるか、相手に重大な怪我をさせてしまっていたら最悪停学か……
だが結果的には使わずに済んでいるので、わざわざ追及する必要はないだろう。
「えっと……」
言葉に詰まり、そこで彼の名前を聞いていなかったことに気付いた。仕方ないので彼の姿を探して、指を向けて示す。
「僕の仲間はあそこにいる彼だよ」
ベックの指差す方向には──
「──ッ!テメェは!?」
レイジが大げさなくらいのリアクションをする。
「そうなんだよ。だから……ん?……あ」
少し離れたところで三組の女子生徒と話をしているベックの相方だった人も、レイジのその声を聞いてこちらに顔を向ける。
二人の視線が交錯する。
「あの時のナンパ野郎!!」
レイジの言葉にベックも周りの生徒たちも自身の耳を疑った。
「酷い言い草じゃないか。えっと……フェーレの知り合いの人」
「傷を抉るな!」
「そんなつもりはないって」
「えっと……二人とも知り合いだったんだ。……あんまり仲はよくなさそうだね」
「僕は彼の事を嫌っているわけじゃない。なんなら好ましく思っているよ。でも、どうやら彼は僕のことが嫌いみたいだからさ」
「俺だってこいつの事は嫌いじゃねぇ。だがよッ!どうしても気に入らねぇんだ!」
「レイジ……それって嫌いってことなんじゃないのかな……?」
呆れ顔のベックであった。
「あっ」
「おや?君はフェーレの友達じゃないか」
なんとも言えない顔でそこにいたのは金髪の少女、ライアだった。
「その呼ばれ方はなんかちょっと嫌です……」
「そう言われても、他の情報がなにもないからさ。それで……その隠れてる子は?」
ライアの後ろに身を隠している子を見つけると、側に近寄り覗き込むようにして顔を確認する。
「フェーレ本人か」
「あっ」
「この前は顔をよく見る前に下向かれたから、すぐに思い当たらなかったよ」
固まってしまったフェーレの手を取り、握手するようにグッと握った。
「あ……いや……ぁ」
「あー……なるほどね。通りで君に好感を持ったわけか」
「そのっ……あの……」
「それにしても、友達の陰に隠れてるのはもったいない顔付きじゃないか?せっかくなんだから、持ってるものはどんどん活かしていかないと」
「その辺にしてあげてくれませんか?」
沸騰したかのように真っ赤になっていくフェーレを案ずるライア。
「あぁ、失礼……おや?君からはフェーレとは違う、なにか特別惹かれるものがあるな……名前を聞いても?」
「おい、離れやがれ!」
「おっと、そう怖い顔しないでくれ。悪意は無いんだ」
掴みかかってくるレイジからひらりと身を躱し、両手を上げてゆらゆらさせる。
「そもそもテメェから名乗るのが筋ってもんだろ」
「筋……ね。一理あるか」
レイジの言葉に納得すると、全員の視界に映るところまで移動してから大げさに腰を曲げて丁寧に振舞った。
「申し遅れた」
それから折った腰を戻して変わらずの笑顔を振りまく。
「僕のロア。遅れて入学した三組の生徒さ。よろしく」
ベックはよろしくと返し、
レイジはフンと軽視するように睨み、
ライアはベックと同じくよろしくねと返しつつもどこか距離が感じられ、
フェーレはただ無言で委縮していた。
「この学園、なんだかとても楽しくなる予感がするよ」
それは純粋な子供のような、わくわくした笑顔のように見えた。
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学園モノのキーワードは入れてないですので、つまりはそういうことです。




