序章 1話《混濁》
現時点ではなんの意味もない、ただの文字の羅列に過ぎないもの。やがて成す。
吐き気がした。
ぐるぐると全身が回転したかのように、あらゆる方向に強い遠心力で引っ張られているような感覚に襲われた。
視界は歪み、酷い頭痛にまともな思考ができなくなっていく。
鮮やかだったはずの景色はモノクロに変わり、水に絵の具を垂らしたかのようにグニャグニャと揺れ、混ざり、濁っていく。
体の内側からなにかが爆ぜた。それから、なにかが外に流れ出ていった。
それは今まで感じたことのない感覚だったが、そのなにかがとても大切な、失ってはいけないなにかだったって事だけは理解できた。
自分がなにだったのか。自分とはなんなのか。確立されていた自分という存在が薄れていく。
体が無い。動かそうとしても動かせたのかわからない。動かしたつもりでもその感覚は感じられなかった。
景色は黒の比率が多くなっていく。薄れた自分が塗り替えられていっているのではないかという恐怖を覚えた。
だが次第にその恐怖も薄れていった。
上も下も入れ替わって……周りは黒くて…………おれは……ぼくは……わたしは……?
ダレダ?
真っ黒な世界とは別に、眠気に誘われて自分という世界がシャットダウンしていき……
──エ……
泥沼に沈められていって……それから……
──ぁ。
そして世界は移り変わっていく。
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