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第152話 やぶれかぶれ

「ふん、いくらまとまろうとも雑魚は雑魚。我の相手になると思うな!」


 派手に大暴れするドラゴニル。魔物使いであるローブの男がドン引きするレベルのやばさだった。


「なっ、あれから必死に集めてきたというのに、これでもドラゴニルを止める事は叶わないというのか?」


 あまりのドラゴニルの強さに、恐れおののくローブの男。

 その目の前で、せっかく苦労して集めてきた魔物たちが、軽々しく宙を舞っているのだ。そうなってしまうのも無理はないというもの。

 しかも、集中攻撃に切り替えたというのにこれだ。結果としてドラゴニルのやばさをまざまざと見せつける結果となってしまっていた。


「ぐぬぬぬぬ……。やむを得ん、奥の手を使わせてもらうぞ!」


 ローブの男が懐から何かを取り出している。

 その時だった。

 男が取り出した何かを、飛んできた剣が弾き飛ばしていた。


「おっとお、手が滑っちまったぜ」


 犯人はジークだった。


「おい、貴様。なんて事をしてくれたのだ。俺の研究の成果をぉぉっ!」


「だから言ったろ。手が滑っちまったって」


 悪びれる気がないジークだが、俺はその行為を目の前ではっきりと見ていた。

 ジークは間違いなく狙って剣を投げた。ちゃんと俺の剣を弾き飛ばして攻撃に隙を作った上でだ。

 さすがは騎士といえる鮮やかな動きだった。この動きは俺にはまだまだできたものじゃないな。こういうところが、俺の敵わない部分だ。


「くそう、裏切りおってからに。魔物ども、俺以外を皆殺しにしてやれ!」


 ローブの男の声で、急に地面が揺れ始める。


「っと、なんだ、この揺れは」


「この感じ……、地中にも魔物が居ます」


「なんだと?!」


 俺が感じた事を口に出すと、ジークはとても驚いていた。


「はーっはっはっはっはっ。奥の手というのはな、隠しておくというものだ。元よりお前の事など信用しておらぬという事だ。全員死ぬがよいわ!」


 地面の揺れが激しさを増す。立っていられるのはローブの男の他は、ドラゴニル、俺、ジーク、ブレア、それとフリードの五人だけだった。


「ふん、この揺れはワームの類か。また面白い奴を手懐けたものだな」


「ドラゴニル様、感心しておられる場合ですか!」


「そうだな。動けぬ連中の安全を確保しておくか。ふんぬ!」


 ブレアのツッコミに、ドラゴニルが動く。


「我が居る限り、被害を出させると思うてか?」


 動けなくなっている学生や騎士見習いに襲い掛かろうとしていた魔物たちが、まとめて宙を舞う。ドラゴニルがまとめて拳と蹴りを浴びせたのだ。


「さあ、ブレアよ。お前の成長を見せてやれ」


「承知致しましたわ、ドラゴニル様」


 ドラゴニルの一撃で宙を舞う魔物たちに、ブレアがその剣を振るう。

 ドラゴニルとブレアの連携攻撃で、多くの魔物がそのまま息絶えていく。


「グキャアッ!」


 それでも、一部の魔物は必死の抵抗を見せようとしていた。


「私を忘れてもらっては困りますね」


 ブレアの対処できない魔物を倒したのはフリードだった。彼もまたドラゴニルと同期の騎士であるので、相当の実力の持ち主である。動きの制限さえなければ、魔物くらいこの通りなのである。

 しかし、今回相手にしている魔物は、以前ドラゴニルが相手にしていたグリフォンやヒポグリフなどのかなり強い魔物たちだ。それだというのにまるで問題にしないように蹴散らしていく。ドラゴニルは当然なのだが、ブレアやフリードたちも軽々相手にしていた。いやはや、すごい光景である。

 ところが、まだ地面は揺れ続いている。


「くそっ、一体いつまで出てこないつもりだ。さっさと出てこんか!」


 一向に姿を現さないワームと思われる魔物に業を煮やすローブの男。

 その時だった。


「アリス、跳べ!」


 ドラゴニルから声が飛んでくる。

 俺はその声に反応して高く跳ぶ。ほぼ同じ場所に居たジークは後ろへと跳ぶ。

 次の瞬間、地面から何かが飛び出してきた。


「ワームか!」


 思わず叫んでしまう。

 上方に跳んだ俺は、ワームに追尾されてしまっている。このままでは口の中に落ち込んでしまう。


「食われて、たまるものか!」


 俺は持っていた剣を振り上げる。


「うおおおおっ!!」


 力を込めると、俺の持っている剣が光り始める。それを見たドラゴニルが嬉しそうににやけている。


「くたばりやがれ、この魔物が!」


 ワームに向けて俺の剣が振り下ろされる。


「ピゲエエッ!」


 その身に俺の剣を受けたワームの体に、鋭い一閃が走り抜ける。

 断末魔を上げたかと思うと、ワームの体は真っ二つになってその場に崩れ落ちてしまった。


「ひ、ひぃ……」


 切り札にしておいたワームすらも真っ二つにされて、魔物使いであるローブを着た男は引け腰になって逃げようとする。

 ところが、それは敵わずあっさりと捕まってしまう。


「おいおい、一体どこに行くつもりなんだよ。ったく、面倒かけさせやがって」


「放せ、この裏切者が!」


「ああん? 誰が裏切者だよ。最初っからお前を捕まえるつもりで協力したふりをしてただけなのによ」


「な、なんだと……?!」


 驚く男の首筋に一撃を与えて気絶させるジーク。

 そこへ、魔物を片付けたドラゴニルやフリードが駆けつけたのだった。

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