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第148話 打って出る

 ドラゴニルの視察と昨日の警邏の結果を踏まえて、今日は村から行動範囲を広げる事になった。

 主に2年生が遠出をして魔物を叩き、1年生が万一に備えて村に残っての警備という運びになった。全員で出てしまうと村が手薄になってそこを攻め込まれる可能性があると考えたからだ。


「最初から今回は魔物の掃討作戦だったようですわね」


「みたいですね」


 ブレアが呆れたように言うから、俺は呆れたように同意しておいた。


「くそっ、またお前たちとは別行動か。年が1つ違うだけで、どうしてこうも扱いが異なるんだ」


 ニールは不満だらけのようである。しかし、学園と駐屯する騎士たちの決定である以上、子どもである俺たちは従わざるを得なかった。


「仕方ありませんわよ。学年ごとというのが一番手っ取り早い分け方ですもの」


「分かるが納得いかないぞ」


 ブレアが諦めろと言わんばかりに言うと、ニールは地団太を踏んでいた。


「ニールさん、そう言わないで下さいよ。村に魔物が攻め込むような事があれば、大活躍できますから」


「……まあそうだな」


 俺が宥めるように言うと、不満そうな顔をしながらも、納得したように落ち着くニールだった。出会った頃のニールだったらこうもいかなかっただろう。成長したものだな。


「おーい、討伐班はそろそろ出発するぞ。門に集合しろ」


 そう指示を出すのはジークだった。フリードも居るはずなのに、なんでジークなのだろうか。


「フリードなら先に門に行ってるぞ。だから俺がここに居るんだ」


「いや、なんでお……私を見ながら言うんですか! 人の心を読まないで下さい!」


 ジークが俺を見ながら解説してくるものだから、思わずツッコミを入れてしまう。ドラゴニルもそうだが、なんで人の心を読むんだよ!


「お前はなんだか分かりやすいだよ。それよりもさっさと門へ行け。フリードが退屈そうに待ってるからよ」


「分かりましたよ! 行きましょう、ブレアさん」


 俺はジークに思い切り舌を出して抗議してから、ブレアと一緒に門へと向かった。その後ろをセリスたちもついて来る。


「やれやれ、アリスってばずいぶんと可愛い反応してくれるな」


「ええ、親しみやすい方でいいですね」


 セリスとソニアはそんな事を言い合っていたのだが、機嫌が悪くなっている俺には届かなかったようである。おそらく聞こえていたら俺は八つ当たりしていただろうから、二人は運がよかったようだった。

 俺たちが門へ移動すると、確かにそこにはフリードが居た。


「遅い。ドラゴニル様もあの通り退屈そうにしておられますよ」


「はい?」


 フリードがそう言って視線を向けた先には、ドラゴニルが門にもたれ掛かるようにして立っていた。そういえば、ドラゴニルもこの作戦に参加する予定だったな。

 俺が首を傾げるようにして見ていると、ドラゴニルがこっちへとずかずかと歩いてきた。


「やっと来たか、アリスよ」


「何でしょうか、お父様」


 話し掛けてくるものだから、つい俺は反応してしまう。


「今回の作戦、おそらくお前が鍵になる。我から離れるではないぞ」


「私としては、あまりくっついていたくはないのですけれどね。第一、これは学園の野外実習の一環なんですから、そうは言われても厳しいかと思いますよ」


「むぅ……」


 俺に難しいと言われると、ドラゴニルは顔をしかめて唸っていた。そんなに俺と一緒に居たいのかよ。


「ドラゴニル様、それでしたらわたくしたちもご一緒致しますわ。そうすれば、アリスさんは一緒に居る事になりますから」


 ブレアが余計な事を吹き込んでくる。俺はこっそりとブレアの脇腹を小突いた。


「アリスさん、何をしますのよ」


「余計な事はしないで下さい。なんでこんなところでまでお父様と一緒に居なければならないんですか」


 文句を言うブレアに、俺は言い返す。


「ドラゴニル様の表情を見て下さいませ。何か思うところあっての事ですわよ」


 ブレアがそんな風に言うものだから、俺はちらりとドラゴニルを見る。すると、そこには真剣な表情でじっと俺の方を見ているドラゴニルの姿があった。さっきはまったく気が付かなかったが、よく見ると伴侶や娘を見るような表情ではまったくない。はっきりと分かるくらいに、別の意図を持った表情だった。

 思わず引き込まれてしまいそうな決意のある表情に、俺はつい言葉を失ってしまった。


「ドラゴニル様は一度周辺を見てきていらっしゃいます。それを踏まえた上での判断でしょうから、私たち学園側から口を突っ込めるような話じゃないですよ」


 フリードもこういう態度である。どうやら、周りには俺の味方はいないようだ。


「はあ、分かりました。ですが、今回だけですからね。下手に一緒に居ると、いろいろと言われかねませんから」


 俺は仕方なく折れるしかなかった。

 こうやって話をしている間に、いよいよ全員が揃う。


「よし、揃ったな。これより作戦を開始する」


 どういうわけかジークが仕切っている。一番上になるのはフリードじゃないのか。

 いろいろと不思議に思うところはあるのだが、野外実習の一番の山場である、魔物の討伐作戦が実行に移される事となったのだった。

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