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第13話 気になる相手

 領主に連れられて、俺とお袋は無事に村に戻ってくる事ができた。ちなみに自警団のおっさんは、領主の連れていた兵士と一緒に解体を行っている。ちゃんと処理をしておかないと別の魔物を呼び寄せる事になるからな。

 それにしても、領主がこんなに若い奴だとは思わなかったな。大体はおっさんと思っていたが、正直意外過ぎた。

 村へと戻る最中、領主は俺の顔を見て笑った気がしたのだが、気のせいだろうかな。もし事実だとしたら、こいつはちょっと……いや、かなり危ない奴な気がするぜ。


「おい、止まれ。どこの誰だ!」


 村に戻って来れたのはいいが、領主の乗った馬が入口で門番に止められる。領主はそれに素直に応じて馬と止まらせる。


「我はこの辺り一帯の領主、ドラゴニル・フェイダン公爵だ。近くで魔物に襲われていた村人を保護してきた。まだ近くには多くの魔物が居ると思われる。この者たちだけでも保護してくれ」


「なっ、魔物ですか?! ささっ、早くお前たちは中に……って、お前はアリスか!」


 領主の馬から降ろされた俺たちが門番に近付くと、大げさに驚かれた。魔物でも見たような反応するんじゃねえよ。

 それはそれとして、この領主、公爵だったのか。うろ覚えだが、貴族様では一番上の位だったっけか? ああ、くそっ、あまり覚えてねえや。名前は確かドラゴニル・フェイダンだと名乗っていたな。……うん? フェイダン?


「では、我は魔物の討伐に向かう。お前たちは決して村の外へと出るのではないぞ!」


 領主はこう言い残して馬に乗って村から立ち去った。その去り際に領主が俺の事を見ていったのだが、俺は引っ掛かった内容が気になっていて、その事にまったく気が付いていなかった。


 それから数日間の事、村には外へ出てはならないというお触れが出ていた。実際俺たちがハイウルフの群れに襲われたのは、村からそれほど離れていない場所だったのだからな。ちなみにその時の様子は村には知られていない。おそらく唯一の目撃者であるおっさんは領主から口止めでも食らったのだろう。

 その件から数日が経ったある日の事、領主の使いという兵士が現れて、ようやく村の周囲が平和になった事が伝えられた。

 討伐された魔物の種類と数を聞いて、村人たちが震え上がったのは言うまでもない話で、俺たちが遭遇したハイウルフどころか、ホブゴブリンどころか、オーガまで居たっていうんだからシャレにならない話だ。さすがに今の俺じゃ、ホブゴブリンですら怪しいぜ。そんな魔物のども倒しちまう領主。さぞや強いんだろうな。

 だが、そう考えた時、不思議と領主に興味を持ち始めてしまう俺だった。不思議な感覚だが、おそらく強い奴だからこそ、俺は興味を抱いたのだろう。今の俺の目標は強くなって騎士となる事だからな。強い奴が居るとなれば、それは惹かれてしまうのも無理もない話だと思うぜ。

 それにしても、フェイダンか……。聞き覚えのある響きだな。

 そう、俺は一度目の人生の事を一部完全に忘れていたのだ。騎士となった自分が名乗っていた名前だというのに、この時点で思い出せていなかったのである。俺は後々この事を後悔するのだが、それはまたその時に語る事としよう。


 魔物を討伐し終わって領主邸へと戻ったドラゴニル。


「旦那様、いかがでしたでしょうか」


 家に入るなり、家令から状況を確認される。


「うむ、思った以上に魔物が多い上に、そのランクも高い。これではいつ魔物の大発生が起きてもおかしくはない」


「左様でございましたか。では、我々はいかがした方がよろしいでしょうか」


「今まで通り、監視を続けてくれ。できる限り早く対処しよう」


「はっ、畏まりました」


 家令と話を終えたドラゴニルは、自室の椅子に深くもたれ掛かる。さすがに魔物をたくさん倒してきたとあっては、相当に疲れてしまっても仕方のない話である。

 しかし、そんな事よりも、ドラゴニルの脳裏にはとある人物の姿がこびりついて離れなかった。


「あれが、あの時の男か……。ふっ、ずいぶんと可愛くなってしまったものだな」


 そう、アリスである。しかも、一度目の人生のアルスの事も知っているようである。ドラゴニル・フェイダンとは一体何者なのだろうか。


「だが、今の魔物の出現状況を考えると、10歳になるのを待っていては遅い可能性がある。早いうちに我が家に迎え入れねばならんな」


 ドラゴニルは、何か思惑があるようである。しかし、20歳近い年下の少女を一体どのような立場で迎え入れるというのだろうか。


「それにしても、あの力は驚異的よな。まだ幼いがゆえに扱い切れていないようだが、あれが使いこなせた時には、きっと世界中にその名を馳せるような人物になるだろう」


 ドラゴニルはふと椅子から立ち上がって窓際へと歩いていく。そして、窓に手をつくとこう呟いた。


「やはり、お前は我が運命の相手だったようだな、アリスよ……」


 アリスが運命の相手とは一体どういう事なのだろうか。そして、発生が危惧されている魔物の大発生とは一体何なのだろうか。謎は深まるばかりである。

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