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叶えるまでに時間がかかる願い事をした男の話

裏路地で商売人から神棚を買った。

その神棚には神様が祀られていて、願うとなんでも願い事を叶えてくれるらしい。

帰ってから早速願い事を言おうとしたが、あれこれ浮かんでしまって決められなかった。

次の日の朝、ふと目覚めた時に呟いてしまった。


「ボンキュッボンの若い嫁さんが欲しい」


そう願って目を開けると、目の前に若くて肉感的な美人がいた。


「ケントさん?どうしたの?」


興奮して男は抱きつく。


「もう、ケントさんったらどうしたの?大丈夫、私はどこにも行かない。昨日もそう言ったでしょ?それより、仕事に行かなくて良いの?」


男は慌ててスーツに袖を通し、身なりを整え玄関を出る。

家を出ると見たことのない場所にいることに気付いた。


「ここは?」


しばらく周囲をウロウロしたが、どうにも記憶があやふやだ。

上司に叱られるかもしれないが、今日は休もうと会社に電話を掛けると、意外にも何も言われなかった。

それどころか、電話口にいた人にやけに恐縮された。

安心して家に戻ると、家自体も何やら立派な佇まいになっている。

戸惑いつつも神様のおかげかと感謝しながら鍵を開けて玄関に入ると、妻が間男を引き入れていた。


「誰だそいつ」

「ケ……ケントさん!?違うの、これは……」

「何が違うんだ!言い逃れできない状況だろう!」

「……こんなジジイと付き合ってやってるんだから、それくらい我慢しなさいよ!」


頭に血が上ってフラつきながら次の言葉を考えていると、鏡に60代くらいの男性が映っていた。

慌てて振り返るも誰もいない。

もう一度見ると、やはり60代男性が映っている。

震える手で自分の顔を触る。

乾燥しているのに脂が浮いた肌。

パサついた髪が手に触れる。

これが自分だと気付いたとき、身に起こったことが理解できた。

神様は願いを叶えてくれたが、同時にそれが実現するまでにかかる時間が過ぎていた。


「そんなに都合良くはいかないか……」


1人呟くと、贅沢を凝らした家とボンキュッボンの妻と間男が消えた。

ベッドから出て、顔を洗い歯を磨き、スーツに袖を通すと起床アラームが鳴る。

男はまた1人になったが嬉しかった。

夢を叶えるのは楽ではないが、自分にとっての本当の幸せとは何かが見えたから。

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