VSウサギリベンジ
知らない天井だ。
「ここはどこだ?」
周りを見るとやけにきらびやかな場所だった。
白い大きな柱が立っており、壁には女性が描かれたステンドグラスがはめ込まれている。
そしてすぐ近くに神父さんらしき人が立っていた。
マーカーを見るにNPCだ。
「あの、すいませんここはどこですか?」
「ここは教会です。
そこにいらしたということは異界人の方ですね。
おそらく『死に戻り』をしたと思われますが大丈夫ですか?」
そうだ、たしかウサギにやられて。
「よほど強い敵と戦われたのでしょう。
今はゆっくり休んでいってくださいね」
「え、あぁ。はい」
ウサギにやられたんだけどなぁとは言えない自分だった。
「よし! リベンジするぞ!」
再びやってきた西の草原。
今度こそはと気合を入れてやってきた。
とはいえまた真正面から行っても返り討ちにされるだけだ。
「前は爪で攻撃したからだめだったんだ。
よく考えたら自分魔法使いじゃん!魔法使えよ!」
と自分に突っ込みを入れつつウサギを探す。
薬草?知らん。
ウサギは割とすぐ見つかった。
「よーし、一応後ろから・・・<ファイアーボール>!」
ちいさな手を前に突き出しアーツを発動する。
すると突き出した手の先から火の玉がぽん!と発射された。
結構な勢いを持った火の玉はウサギに向かって飛んでいき・・・
「きゅいいいいいいい!」
ちいさな爆発とともにウサギの悲鳴が聞こえる。
見てみるとウサギは赤いポリゴンになって消えて行った。
「よし、魔法使えば一撃なんだな!」
一応周りを警戒しつつウサギを倒したところまで歩く。
そこにはウサギが噛んでいただろう葉っぱと足跡、
それからファイアボールのあとが残っていた。
「ドロップ品とかってどうなってんだ?」
インベントリを見てみる。
すると中には『ウサギ肉』が一つ。
「これを10個集めればいいんだな」
とはいえ〈ファイアボール〉1発で消費MPは2だ。
最大MPが15しかない現状では7発しか撃てない。
さっき1発撃ったのであと6発だ。
一応MPは自動回復するらしいが町とフィールドでは回復速度が違うみたいだ。
「いちいち街に戻るのもなぁ。ま、何とかなるか」
と、楽観的に考えた自分。
すぐに後悔する事になる
「やっべ、ウサギやっべ」
あの後MPが尽きるまでウサギを狩ったことでレベルが上がった。
そのステータスがこちら
名前:ドリュー Lv2 UP!
種族:スモールモール
職業:魔法使い
HP:2/13(+3)
MP:0/20(+5)
SP:23(+3)
筋力:4(+1)
器用:6(+1)
敏捷:13(+2)
魔力:11(+3)
幸運:6(+1)
スキル:【爪】Lv1
【火魔法】Lv2 UP!
【敏捷強化】Lv2
【地中探査】Lv1
【掘削】Lv1
なんで瀕死かって?
ウサギにやられたからだよ!
そんでもって今逃げてるんだよ!
調子に乗ってMPが切れるまでウサギを狩っていたら、
背後から近づくウサギに気が付かずに頭突きを食らったんだよ!
かっこ悪い?うっせ!
「なんて考えてる場合じゃない!」
敏捷が上がってるはずなのになんでか知らないが振り切れない。
何か手はないのか?
【爪】、はまだLv1だから役に立たない。
【火魔法】はMPがない。
【敏捷強化】は早くなるだけだけど今役に立ってる・・・はず!
残るは【地中探査】と【掘削】だが。
「て、自分モグラじゃん! 地面に潜ればいいんだ!」
思いついた瞬間、真下に向かって地面を掘り始めた。
「お、お、お、すごい。簡単に掘れる」
【掘削】の効果か知らないが掘り始めた穴は、
あっという間に自分一人くらいなら通れるような穴になった。
「よし、掘り進めて逃げよう!」
そのまま地面に潜り、まるで泳ぐように穴を掘っていく。
ふいに後ろを向いてみるが自分が掘ってきた穴しか見えない。
「どうやら撒いたようだな」
『【掘削】のLvが上がりました』
ふぅ、と一息つきつつインベントリからポーションを取り出す。
「前は飲もうとしてたけどこれ自分にかけるだけでも効果あるんだな」
慣れない手つきでポーションを自分にかけてHPを回復させる。
「これで良し、と。そういえばここはどこだ?」
でたらめに穴を掘ってきたので場所がわからない。
と、思っていたら今自分がどれくらい深い位置にいるのか。
今地中でどちらを向いているのか。
というのがぼんやりとだがわかる。
「なんだこれ、もしかして【地中探査】のおかげか?」
それくらいしか考えられないが今はありがたいことだ。
『【地中探査】のLvが上がりました』
「とりあえず地上に出よう」
地上に向けて掘り出す。
「ほーりほーりつちをほりー」
歌いながら掘り進めていき、もう少しで地上というところで、
「あれ?なんか目の前にいる?」
地上まで穴を掘っていたがあと薄皮1枚?くらいのところで何かの気配がする。
「えーっと、ちょっと横にずれて顔だけだしてっと」
ゆっくりと穴を掘っていき地上に顔だけ出す。
すると目の前にはウサギのモフモフとしたお尻が見えた。
どうやらウサギはこちらに気が付くこともなく優雅に草を食んでいるようだ。
「もしやチャンスなのでは?」
もう一度土の中に潜り先ほどの足元に移動する。
「よーしここから。<ファイアボール>!」
地面の下からウサギに向けて<ファイアボール>を撃ち込んだ。
MPは逃げてる間に<ファイアボール>1回分くらいは回復している。
「きゅいー!」
ウサギの断末魔が聞こえインベントリにウサギ肉が入っている。
『レベルが上がりました』
レベルアップのアナウンスが流れステータスが上がってることを確認。
「これは、必勝法を見つけたかもしれない!」
完全死角の地面の下から<ファイアボール>を上に向かって放つ。
もし倒せていなくても地面にいるからそのまま潜って逃げればいいし問題はない。
「これでウサギを狩りまくるぞー!」
と思ったが今はガス欠。
「いったん街に帰るか」
その後、西の平原で地面の中から火の玉が飛びだしてくるという怪現象が掲示板で少し話題になった。
『レベルが上がりました
【火魔法】のLvが上がりました
【敏捷強化】のLvが上がりました
【地中探査】のLvが上がりました
【掘削】のLvが上がりました』
名前:ドリュー Lv4 UP!
種族:スモールモール
職業:魔法使い
HP:19
MP:30
SP:29
筋力:6
器用:8
敏捷:20
魔力:17
幸運:8
スキル:【爪】Lv1
【火魔法】Lv3 UP!
【敏捷強化】Lv3 UP!
【地中探査】Lv3 UP!
【掘削】Lv3 UP!