イベント6 砦攻略
赤組側中央の砦内部
「ふいー、やっと倒せたな」
「ほんとだよ、誰だよイベントだから楽に倒せるなんて言ったやつは。
むしろ逆じゃねぇかよ」
「ははは、まぁなんにせよ倒せてよかった」
ここは要石前の広間。
どうやら赤組のパーティがこの砦のキーパーを倒したようだ。
キーパーを倒したパーティの後ろから指揮を執っていると思われる人物が現れる。
「みんなご苦労。早速で悪いが偵察部隊を編成してくれ。
相手側の砦を見に行ってもらいたい」
「さすがにそれは無茶じゃないですかね?みんなキーパー戦でかなり消耗してる。
まだエネミーも残ってるし、せめて減ってるHPを回復してからでも遅くないと思うぞ」
「ふむ、それもそうか」
指揮官は少し考え、
「よし、キーパー戦を行ったものは休憩してくれ。
それ以外の消耗が少ないものは残りを掃討するぞ」
「あんたは何するんだ?」
「残党処理の支援だな、少しMPが心もとないが、まぁ何とかなるだろう」
「あんた支援職だったのか」
「なんだと思ってたんだ?」
「いや、ヤクザかと」
「・・・そんなに、顔怖いか?」
「まぁ、それなりに」
「そうか」
30分後
「よし、残党も狩りつくしたし。そろそろ偵察部隊をだすか」
「あんたこの30分ずっといじけてただけじゃねぇかよ!
偵察ならもう行ったよ!」
「そうか」
「・・・あんた本当に何しに来たんだ?」
「ところで偵察部隊はいつ出発したんだ?」
「まじで何も覚えてないのかよ。
10分くらい前かな、敏捷高い奴で組んだからもうちょいで戻ってくると思うけど」
「た、大変だ!」
ぼろぼろの装備をしたプレイヤーがどたどたと広間に入ってくる
「お、噂をすればってどうした?ぼろぼろじゃないか!」
「せ、斥候が全部やられた!」
「おいおいそんなわけないだろ。あいつらあれでも一応第1陣でシーフやってんだぞ?」
「詳しく話せ」
指揮官は先を促す
「あ、アーサーだ。あいつ中央の砦をすでに制圧してこっちに向かってやがった!」
「は、アーサーだって?」
「そうだあいつだ!あの野郎、偵察部隊を一人残らずなで斬りにしたんだ!」
「落ち着け。それで、今アーサーはどこにいる?」
「それが・・・」
「どうした?」
「砦の前で仁王立ちしてるんだ」
「は?」
「本当に仁王立ちしてる」
指揮官が砦の開いている場所から覗いてみると、大剣を地面に刺し、腕を組んでこちらを見てるアーサーの姿があった。
「どうする?」
「様子見、かな。下手に戦力を動かして伏兵にでもやられたら元も子のない」
「まぁ確かにな。っと、何人かアーサーに突っ込んでるな」
「また無謀な」
一つのパーティと思わしきプレイヤーたちがアーサーに向かって攻撃を仕掛けた。
盾持ちが前に出て、剣士が横合いから、魔法使いが後ろから魔法を唱える。
バランスのとれたいいパーティだ。
だが、
盾持ちは盾の上から一刀両断され、返す刀で剣士を屠る。
魔法使いの魔法の発動は間に合ったが、アーサーの作った障壁に阻まれる。
魔法使いは慌てて逃げようとするが、機動力で勝てない魔法使いはそのままアーサーに倒された。
「やはり一筋縄ではいかんか」
「盾ごと一撃って、攻撃力どうなってんだ?」
「ふむ」
指揮官はあごに手を当て作戦を練る。
「逃げるか」
「は?」
「よし、アーサーに見えないところから少しずつ本陣に人を戻すぞ」
「いやいやいやいやなに言ってんだよ。砦に引き込んで囲んで叩いたほうがいいんじゃないのか?」
「マリーンがいないんだ」
「マリーン?」
「いつもアーサーの近くにいるはずのマリーンだ。その姿が見えないのが気になってな」
「別行動してるとかじゃないのか?」
「怖いのはその別行動の内容だ。アーサーを矢面に立たせて後ろからマリーンの魔法が飛んでくるかもしれない」
「それ言ったらキリがないと思うんだが」
「そうだ、だからここは逃げの一手を打つ」
「はぁ、はいはいわかりましたよ。じゃあ全員本陣に戻るってことでいいんですね?」
「ああ、ここを取られるのは痛いが相手の戦線も伸びるはずだ。そこを横からたたくのが理想なんだが」
バチッ
「いて、なんだ?」
「どうした?」
「いや、何でもない。ただの静電気だよ」
「静電気?」
周りを見る。
ここは砦の中だ。
周りに金属はなく、石造りの壁や木の柱が立っている。
静電気が流れるような要素など何もない。
バチッ
「!?」
自分の腕にも静電気のようなものが走った。
ふと横を見る。
そこには電気を纏った蝶が優雅に飛んでいた。
「これは・・・ッ!? みんな逃げろ! 砦から出るんだ! 今すぐに!」
指揮官は叫ぶ。
一人でも多く生き残れるように砦からの避難を促すが、
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ
砦全体を雷撃が襲った。
レベルの低いものは一瞬で蒸発し、
高いものは少しの時間耐えたものの、容赦なくポリゴンに変えられていく。
「こ、これが狙いかアーサー!」
指揮官は見る見るうちに減っていくHPバー横目にアーサーを睨む。
アーサーはしたり顔で笑っていた。
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『【掘削】のLvが上がりました。
これまでの行動によりスキル【魔法陣】を獲得しました』
「いいのかなぁこんなことで」
自分はアーサーの足元の地面から顔を出しながらつぶやく。
「いいのよ、楽に倒せるんだったらそれに越したことはないでしょ?」
「そうなんですけどね、なんか腑に落ちないというかなんというか」
「ふいー、つかれたよー、あーちゃーん」
「マリーンもお疲れ様。とりあえず砦の中確認して、要石壊しちゃいましょ」
さてここでネタ晴らしだ。
自分が何をしていたのかというと、砦の地面の下で穴を掘っていた。
正確に言うとマリーンに指示された形になるように穴を掘っていたのだ。
まず砦を中心に大きく円を描く。
そして円の内部に幾何学模様のような形になるよう穴を掘る。
つまり砦全体をすっぽり覆うように魔法陣を描いていたということだ。
描いた魔法陣には、マリーンさんが魔力を通す。
すると魔法陣の中にいるものはすべてマリーンさんの雷魔法の餌食になるということだ。
これで手前のエネミー砦も落としたのだ。
「えげつないなぁ」
「魔法陣のスキルはー、生産だけじゃなくてー、色々便利に使えるからー、モグラさんもー、
覚えておいてー、損はないと思うよー」
「はい、さっきのでばっちり覚えましたよ」
「それはよかったー」
【魔法陣】:刻んだ魔法陣に魔力を通すことで様々な効果を発揮する。
また、魔法陣を刻むことでアイテムに特殊な効果を付与することができる。
「魔法陣の形はー、目的によって様々だからー、少しずつ覚えていくといいよー。
ちなみにー、今回使ったのはー、魔法陣の場所を中心にー、覚えてる魔法をー、強化してー、発動させるやつー」
「つまりあの魔法、ちょっと弱めのだったらマリーンさんは魔法陣関係なく撃てるんですね」
「でもー、強めの魔法だからー、キャストタイム長いしー、今のMPだとー、全部使っちゃうからー、なかなか使えないんだけどねー」
「なるほど」
アーサー単身で姿を現し、そちらに目が向いているうちに大魔法の準備をする。
よくある戦法なんだろうが。
「しかし敵陣の真下を掘り進むっていうのは肝が冷えましたよ」
「大丈夫大丈夫。地面の下を警戒することなんてほとんどないわ。
そこはあなたがモグラであることの長所ね」
「そうですね」
しかし今回覚えた【魔法陣】のスキル。
どんな効果の魔法陣があるかはわからないが、これも自分にとってプラスに働いてくれるだろう。
特に地面の下に魔法陣を描くっていうのは強い。
相手からは見えないわけだからどんな効果が発動するかもわからないし、場所もわからない。
「ふふー、モグラさんー、悪い顔してますねー」
「え、そうですか?」
「はいー、さっきのあーちゃんみたいな顔してますよー」
「げっそれはまずいな」
「ちょっと、それどういう意味よ」
アーサーは怒りながらも砦内部を要石に向かって歩いている。
砦の構造はさっき落とした砦と同じだった。
大広間を抜け要石がある扉を開ける。
そこには真っ赤な要石が鎮座していた。
「ほんとにいいの?また私が壊すけど」
「そうですよー、モグラさんはー、今回の功労者なんですよー?」
「いいですよ。マリーンさんの魔法あってのものですし」
強い人に寄生して得るポイントはたぶんおいしくないだろう。
「そ、じゃあ遠慮なく」
アーサーが要石に大剣を振り下ろす。
パリーン
赤い要石は砕け散り、代わりに青い要石がにょきにょきと生えてきた。
「いつ見てもシュールな絵だな」
さっきも見た絵面に感想を述べつつ、
「で、次はどうするんだ?」
「次?そうねぇ」
アーサーは少し悩んで。
「戻って南に行きましょうか」
「ほほう、その心は?」
「今から相手の本陣に行っても死に戻りしたプレイヤーがうじゃうじゃいるし、
さっき使ったやつは何かしらの対策をされるでしょう。
私がここにいるっていう情報も向こうにわたっちゃったしね」
「なるほど。で、本心は?」
「どうせなら全部の砦の要石私たちで壊しちゃいましょうよ」
「おー、あーちゃんすごーい!」
「あのーその作戦に自分必要ですかね?」
「えー、モグラさん来ないのー?」
マリーンさん。その眼は反則だと思います。
「いえ、行きます」
「まったく最初からそう言えばいいのに」
アーサーはあきれ顔だ
「いやでもですね、寄生みたいでなんかこうもやもやとですね」
「そんなこと言ったら後ろから付いてきてるプレイヤーはみんな寄生よ」
「それは暴論では?」
「いいから行くわよ。確か道の真ん中に北と南に続く道があったわね」
こうして、自分のイベントは続いていくのであった。
イベント終了まであと10時間。
名前:ドリュー Lv11
種族:スモールメイジモール
職業:魔法使い
HP:42
MP:67
SP:52
筋力:15
器用:17
敏捷:53
魔力:48
幸運:17
スキル:【爪】Lv4
【火魔法】Lv7
【土魔法】Lv2
【敏捷強化】Lv8
【地中探査】Lv8
【掘削】Lv8 UP!
【気配察知】Lv5
【気配遮断】Lv5
【ジャイアントキリング】Lv1
【魔力操作】Lv1
【魔法陣】Lv1 New!