イベント5 アーサーVSウサギ
「ウサギのプレイヤー?」
赤いマーカーに示されたウサギがやくざキックで広間に入ってきた。
「赤いマーカーって、敵陣営じゃん!なんでこんなところまで侵入されてるんだ!?」
「おおかた、見た目に騙されて油断したんでしょ」
アーサーは留め具を外し、大剣を構えて前に出る。
「おや、アーサー直々に相手をしてくれるのかい?」
「そうしないとあんた周りのプレイヤーに攻撃し始めるでしょ?」
「ふふふ、それはどうだろうな」
ウサギは一歩前に出て。
「アーサー、こちらが勝ったら認めてもらうぞ」
「あんたが勝っても認めないわよそんなもの」
「何を断る理由があるのだ、そちらにも得があるというのに」
「それを得というのはあんただけよ」
二人にしかわからない会話を続けている。
「なんだ?クランにでもさそってるのか?」
そう思い、会話に耳を傾ける。
「君のせいで私の計画が水の泡になったんだ、
それぐらいしてもいいと思うのだがね」
「そんな計画立ててるほうがおかしいと思わないのかしら?」
「私にだって夢くらい見る権利はあるさ」
「夢で終わってたほうがましってものよ」
両者は踏みしめる足に力を入れ。
「今度こそ認めてもらうぞ。
お前のマスコットになることをな」
「いやだって言ってるでしょこのエロ兎!」
「・・・はい?」
マスコット?
「あのウサギさんはー、βのときにー、あーちゃんにー、ハラスメント警告出されてー、 厳重注意うけたのー」
「はぁ」
「それ以来ー、ずっとあーちゃんのマスコットになりたいーってー、ついてきてるのー」
「変態かな?」
「アーサー、私の願いはただ一つ。かわいい女の子にちやほやされたいだけなのだ。
今の君の人気はすごいものだ?そこで私がマスコットになれば、
もっと人気が出るはずだ。そして私も女の子にちやほやされることができる。
Win-Winというやつだ」
渋い声でなんか言ってる。
「何がWin-Winよ。エロ兎!ただのスケベじゃないの!」
「そろそろそのエロ兎というのをやめてくれないか?
私にはLOVEッ兎という名前があるのだ。」
「ふん、あんたなんかエロ兎で十分よ」
「まったく、人の話を聞かない子だ」
そのセリフがきっかけになったのかはわからないが、
いや本当にわけがわからないが、今から戦いが始まるらしい。
「ふー、<獣力>」
ウサギは何かをつぶやくと体から赤いオーラが湧き出した。
「あれは、エリアボスの・・・」
「動物型のー、近接職が使うー、<獣力>だねー、10分間ー、ステータスが20%アップするのー」
「何それ強い」
「でもー、10分経つとー、ステータスが半分になるのー」
「リスキーですね」
つまりアーサーは10分間耐え抜けばほぼ勝ちということか。
「悪いけど10分もあなたに付き合うつもりはないわ」
「それは悲しいことを言う。時間いっぱい楽しもうではない、かっ!」
ウサギは言い終わるやいなやアーサーに飛び蹴りを放つ。
「ふっ!」
迎え撃つべくアーサーは大剣を振るう。
アーサーの大剣のもと、ウサギは真っ二つにされるかに見えたが、
パリィイン!
何かが割れるような音がしたと思ったら、ウサギはアーサーの頭上に飛んでいた。
「ふん!<落下蹴>!」
頭上にいたウサギがアーサー目掛けて急降下する。
アーサーは大きく後ろに距離を取りそれを躱す。
ズドォオオン!
床に大きな窪みができるほどの威力をウサギが出していた。
「<アクアウェイブ>!」
アーサーが叫ぶと、突然津波のような勢いで水の波が広がった。
アーツ後の硬直を狙ったのだろう。
「<月割り>」
静かにつぶやくウサギ。
水がウサギに届くかといったところで、波は二つに割れ左右に散っていく。
アーサーは自分の魔法が効かないことをわかっていたのか、波が割られる前には大剣を上段に構え突っ込んでいた。
それに気が付いたのかウサギは左に飛ぶ。
アーサーは読んでいたらしく左前に大剣を振り下ろす。
パリィイン!
またもガラスが割れる音。
すると左に飛んでいたはずのウサギは、反対方向の右へ向かって飛んでいた。
「<蹴刃>」
ウサギは空中で蹴りを放ち、かまいたちのような刃を飛ばす。
アーサーは下を向いた大剣を力ずくで右上に振り上げる。
バシュウ!
ウサギのはなった刃はアーサーの大剣によって打ち消された。
パリィイン!
ガラスの割れる音と共に空中にいたウサギがアーサーに飛び込む。
無理やり大剣を振り上げたアーサーは、大剣での迎撃が無理と判断したのか、
「<アクアプロテクション>!」
ウサギとの間に水の壁を張る。
「薄いぞ!」
勢いそのままにアーサーの張った壁に蹴りを放つ。
パリィイン!
水の壁を蹴破ったウサギは、
バキィ!
いつの間にか大剣を手放していたアーサーに殴られた。
「げふぅ!」
ドゴォ!
アーサーの筋力が高いのか、ウサギが軽いのかわからないが、壁までウサギは吹き飛ばされた。
「ふぅ」
アーサーは大剣を拾い。
「あれくらいじゃ死なないでしょ?さっさと立ちなさい」
「ふふ、ふふふふふ。やはり私がマスコットになるのにふさわしい女性だよ君は」
ふらつきながらもウサギは立ち上がる。
その眼にはまだ闘志が宿っていた。
「・・・いったい何が起こっているんだ」
「どうしたのー?」
マリーンさんは不思議そうにこっちを見る。
「あのですね、アーサーさんとあのウサギの戦いがよくわからなくて」
「んー?わからないとこあったー?」
「あのウサギはどうやって空中で方向転換してるんですかね?
何かガラスのようなものが割れる音がしてるのでそれが関係あるんじゃないかとは思うんですが」
「あー、あれねー。あれはー、プロテクション系のアーツをー、自分で蹴って跳んでるんだよー」
「プロテクション系?」
自分がまだ覚えてない魔法のアーツだろうか。
「もぐらさんはー、まだ魔法スキルのレベルがー、15超えてないみたいだねー。
15超えるとープロテクション系のアーツを覚えるんだよー」
「どんなアーツなんですか?まぁ名前からして防御系でしょうけども」
「そうだよー、自分の周りにー、使ってる魔法の属性を持つー、障壁を張るのー。
障壁の硬さはー、スキルレベル依存ねー」
つまりあのウサギは自分で作った障壁を土台に、二段ジャンプもどきをやっていたのか。
「なにか私の戦法が簡単にばらされてるような気がするな」
「別にばらされて困るような戦法でもないでしょうに」
「ふむ、確かに」
ウサギはぴょんぴょんと軽く飛び、
「では、第2ラウンドと参ろうか」
「いいえ、もう終わりよ」
「何を言って」
「<アイスプリズン>」
「な!?」
ウサギの足元に広がってた水がウサギに絡みつき凍っていく。
振りほどこうとするウサギだったが、よほど強固なのかびくともしない。
「見たかしらドリュー。魔法の二つ目の使い方はこういうこともできるの」
「あの水は、さっき撃ったアクアボールの」
お手本として見せてくれた時に滴っていた水だ。
「そ、この方法の魔法は一度魔力が通ったものなら自分からある程度離れていてももう一度素材にできるの」
「なるほど」
「私を魔法の教材にしないでもらいたいな」
呆れたような声が広間に響く。
ウサギは脱出をあきらめたのかすでに抵抗をやめているようだ。
「あ、あーちゃんおわったー?」
「まだよ、とどめささないとね」
アーサーは大剣を持ってウサギに近づいていく。
「私はあきらめないからな。君のマスコットになるそのひ・・ま・・・で・・・」
ウサギは唐突に目を見開く。
なぜかウサギは自分のことを凝視している。
「ふ、ふふふふふ。そうか、そういうことか」
「ん?なんだ」
「マスコットはすでにいたということか。私の席はもうなかったということだな」
「・・・ちょっと待て、何か勘違いを」
「つまり私の相手はアーサーではなく君だったというこ」
「うっさい、さっさと消えろ」
ザクッ!
アーサーがウサギにとどめの一撃を入れる。
ウサギは自分を睨みながら体をポリゴンへと変えていった。
「ふー、これで終わり」
アーサーは額を拭うしぐさをして、大剣を背負い留め具を止める。
「あーちゃんおつかれー、はいお茶ー」
「お疲れ様です」
マリーンさんはアーサーにお茶を手渡す。
受け取ったアーサーは一息にそれを飲むと、
「よし、行くわよ」
「行くって、どこに?」
「マリーン、準備はできてる?」
「うん、ばっちりー。MPも全快ー」
「え、どこに?」
「決まってるでしょ、次の砦よ」
「はい?」
「そろそろ赤組が中央の砦取ったところでしょ。
相手の準備が整う前にたたくわよ」
「まさか、それを待ってたんですか?」
「もちろん」
アーサーはいい笑顔を向けてくる。
「じゃ、モグラさんもー、行こうねー」
「あの、拒否権とかは」
「ないわね」
「ですよねー」
こうして次の砦にも連れていかれることになった。




