イベントスタート
「消耗品はマックスまで持った。
装備品はちゃんと装備してる。
HPMPは満タン。
参加表明は出場にタップしてる。
よし!」
イベント当日。
インベントリの中やステータスを確認してイベント開始時刻を待つ。
周りには自分と同じようにイベントを待っている人たちで賑わってる。
「イベント前に腹ごしらえはいかかですかー!」
「ポーションの在庫は大丈夫かい?安めに売ってるよー!」
「武器防具はいらんかねー予備の装備くらい持っててもいいんじゃないですかねー?」
そこでは生産職の人たちがイベント参加者目当てに商売をしていた。
「腹ごしらえか、いいかもな」
出ている露店で串焼きを買いつつ。
「あ、ドリューさーん!」
やけにかわいい子がこっちに向かって手を振ってくる。
いや男なのはわかってるんだよ?でもしょうがないじゃない?
「すみません、待たせましたか?」
「いや、こっちもいろいろ確認してたから大丈夫だ」
イベント開始まであと20分といったところ。
「ごめんなさい、持っていくもの選んでたら時間かかっちゃって」
「生産職は持っていくものが多くて大変だな」
今回のイベントは砦争奪戦。
生産職の役割は後方支援だ。
ポーションの作成に武器防具の修繕、
砦の強化などやることは結構あったりする。
「レイジはどう動くんだ?」
「ぼくは装備の作成と修繕ですかね、
することがないときは、何しましょうか?」
「何しましょうかって言われてもな。
細工士だろ?砦に彫刻したりして効果付けたりとかできないのか?」
「おー、そういうこともできるんですかね?」
「いや、わからんけど」
とりとめもない会話をしつつレイジとパーティを組む。
イベントでは開始前にパーティを組んでいると同じ陣営で始めることができるようだ。
「ところでピヨさんはどうするんだ?」
「ピヨさんはピヨさんで知り合いとパーティを組むらしいです。
敵対勢力にならないといいですね」
「まったくだ、生産職大手のクランパーティが相手とかやっかいにもほどがある」
このイベント、メインはおそらく戦闘職のドンパチだろう。
しかし生産職の裏方作業を舐めてはいけない。
生産職の働きは経戦能力に直結する。
イベントの時間は12時間ある。
それだけの時間無補給での戦闘はほぼ無理。
この手のゲームで生産職を侮るやつは先に進めないやつだと思ってる。
「そろそろ時間だな」
イベント開始まであと1分を切った。
「ぼく(イベント)初めてなんですよ、ドキドキしてきますね」
耳元でレイジがそっとささやく。
むしろそっちの方がドキドキするのでやめてほしい。
『イベント開始時刻になりました。
参加するプレイヤーをイベントエリアに転送します。』
アナウンスと共に体が白い光に包まれ浮遊感を感じる。
視界が白く染まり、数秒。
不意に地面に着地したような感触があり、
視界を覆っていた白い光が薄れていく。
光が完全に晴れたとき、目の前に映っていたのは。
ぼろぼろになっていて崩壊寸前の砦らしきものだった。
イベントスタート!