ドクターM
「装備品に関してはどうにかなりそうだな」
あの後、自分の体を採寸し、何枚かスクショを取ってもらい素材を渡して二人とは別れた。
おそらく装備品の作成に使うのだろう。
・・・レイジだけはなぜか顔がにやついていたが考えないようにする。
「あと必要なのは・・・レベルアップと、アイテムの補充かな?」
インベントリの中を見てみる。
今あるのはウサギの肉とウルフの毛皮に大フォレストベアの肉。
それから大フォレストベアの胆石だ。
肉と毛皮は店に売るとして、
「胆石ってなんだ?」
そう思い調べてみるが胆石を薬で散らす方法や胆石症というワードなど出てくるのだが、
胆石そのものをそうこうするような情報は出てこない。
「あの熊病気だったのか?」
「はっはっは!胆石っていうのは胆汁の塊のことでね、
このゲームの熊はよくドロップするんだ。
別に病気っていうわけではないんだよ」
後ろから急に声がしたので振り返る。
そこには一人の女性が立っていた。
黒く長い髪をストレートにおろしており、
黒縁のメガネをかけ、服装は白衣を着ている。
パッと見どこかの研究員みたいな姿の女性だった。
「えーっと、どちら様ですか?」
「おっと失礼。私はドクターまゆ・・・じゃなくて、
私のことはドクターMと呼んでください!」
うさんくさい。
「そうですか。じゃ、自分はこれで」
モグラは逃げ出した。
「ちょ、ちょっとまって!
ステイ!ステイだよモグラ君」
しかし回り込まれてしまった!
「なんですか、GMコールしますよ」
ウインドウを開きGMコールを
「だから待ってくださいって!
お願いします待ってください。
話を聞いて!ねぇお願いだから!」
「しょうがないなぁ。で、何の用?」
「いや、あのですね?
あなた様が持ってる大フォレストベアの胆石をお譲りいただけないかなと思いまして。
だからですね、GMコールはやめてくださいおねがいします」
急にへりくだった態度を取ってくるドクターMと名乗る白衣の女性。
GMコールに何かトラウマでもあるのだろうか?
「胆石を譲るって言ったってなぁさすがにタダっていうわけには」
「それはそうです。もちろん見返りは用意しますよ。
というかですね、その胆石で作ったものを差し上げますよ」
「胆石で作ったもの?」
「はいそうです。胆石っていうのは漢方薬に使われたりします。
つまり薬の材料になるんですよ」
なるほど。
「つまり薬を作ってくれるっていうわけか」
「そういうことです!」
ドクターMは無い胸を張って答える。
「で、そっちには何のメリットがあるんだ?
ただ素材を薬にしてくれるだけってわけじゃないんだろ?」
「そうですね、まずはスキルレベルの上昇ですね。
私【調薬】のスキルを持っているんですけども、
これは薬を作ることで経験値が入ってくるんです」
「ふむ」
生産職は戦闘ではなく、何かを作成することで経験値を取得しレベルを上げていくのがこのゲームの仕様だ。
スキルの方も同じようにスキルの効果に則ったものを作ることでレベルが上がるのだろう。
「大フォレストベアの胆石を使う薬を作ればかなりの経験値が入ってきますので、
ぜひ作らせていただきたいのです」
「なるほど。ほかには?」
「実は前にちょっとしたポカをやらかしまして、
薬の素材を売ってる店を出禁になっちゃったんですよ」
「何したらそんなことになるんだよ」
出禁って相当だぞ?
「いや、ちょっとした実験の失敗だったんですよ?
なのに大騒ぎになっちゃって。
あの時は大変でしたねぇ、
憲兵に追いかけられるわ、GMのお仕置き部屋に連れていかれるわで」
ドクターMは遠い目をして語っている。
GMのお仕置き部屋ってなんだ?
「というわけで、今は素材が買えなくて困ってたんですよ。
そんなところに現れてくれたもぐら君!
これはもう神の思し召しというほかないでしょう!」
ビシ!っとポーズを決めてこちらを指さすドクターM。
「神の思し召しはともかく、
要は素材がなくてレベリングができないから譲ってくれと?」
「そういうことです」
「で?」
「で、とは?」
「いやだからさ、どんな薬作ってくれるんだ?」
「譲ってくれるのかい!?」
「それは薬の効果次第だ。
有用でもないのに渡すくらいなら売ったほうがいい」
「確かにそうですね。
熊の胆石を使って作れる薬は主に強壮薬です」
「強壮薬?」
「ステータスにバフを付与する薬のことです。
時間制限はありますけどね」
「ふーん、どれくらい上がるの?」
「それは素材によって違うから何とも言えないです。
前に熊の胆石、あぁエリアボスじゃない熊ですよ?
で作られたの見たときは10%のアップだったかな」
「大フォレストベアだと15%くらいか?」
「そうかもしれません。
だが!しかーし!このドクターMの手にかかれば!
15%を200%に引き上げることもできるのです!」
「それは盛りすぎだろ」
「嘘じゃないですーほんとですー」
子供のように駄々をこねてるドクターMだった。
「はー、わかった、失敗したら売値の倍額支払ってもらう。
これでどうだ?」
ドクターMはバッとこちらに顔を向け、
「いいんですか!ありがとうございます!」
ものすごい笑顔を向けてきた。
「いいか、このことは動画にでも残しとくから。
約束破るなよ?」
「もちろんです」
自分はトレードウィンドウを開き「大フォレストベアの胆石」をドクターMに渡す。
「ありがとうございます!
うひ、うひひひひっひひひ」
ドクターMは突然気持ち悪く笑い出した。
「こ、こ、これでうひ!新しい毒薬が作れる・・・」
今不穏な言葉が聞こえたぞ?
「おいまて、毒薬ってなんだ?」
「ふふふふふふふもう返しませんよ!
この子は私の手によって新しい命を吹き込まれるのです!
ふひ!ふひひ!」
こいつ話聞いてない。
「では!あ、出来たら連絡入れますんで!
楽しみに待っててくださいね!
ドリューさん!」
「ん?おい!ちょっと待て!」
呼び止めようとしたが、ドクターMは気持ち悪い笑顔を浮かべながら走り去っていった。
「あいつなんで自分の名前知ってたんだ?」
なぜか背筋が寒くなる気がしたので考えるのはやめた。




