露店
「では、こちら報酬の5100Gです!」
「はぁ、どうもありがとうございます」
ギルド受付のお姉さんはニコニコのリザードマンスマイルでこちらに報酬を渡してきた。
「あの、本当にいいんですか? 一人で倒したわけじゃないんですけど」
「いいのいいの、もらえるものはもらっておきなさい。
なくて困るものじゃないでしょう?」
「まぁそうですけど」
「いいのよ、話を聞いた限りその人たちは元々大フォレストベアから逃げてきてたんでしょう?
逃げてたってことは戦闘続行の意思はないってことなの。
そうなっちゃったら後で何しようがどうにもならないわ」
それでいいのかギルドよ。
事後報告だったが大フォレストベアの依頼を達成したことを伝えると報酬をもらうことができた。
さらに1個だけ集めてたハチミツも納品したのでその分も報酬に入っていた。
とりあえずこれで懐がだいぶ温かくなったことは事実だ。
「よし、これで装備を揃えようそうしよう」
さすがにスカーフ(防御力+1)だけだと心もとないというか無理だ。
発表されたイベントで活躍するには装備の新調が必須だと思われる。
それに今は「大フォレストベアの爪」もある。
これを武器屋に加工してもらえば武器になるだろう。
しかし前回武器屋に行っても門前払いされた経験がある。
が、
「お姉さん。自分でも装備できる武器とか防具とかが売ってる店ってどこかにありますか?」
わからないことは聞く。これに限る。
「うーん」
リザードマンのお姉さんは困ったような顔をして、
「そうね、異界人さんのお店にならあるんじゃないかしら?」
「それは、ここの街の店じゃないってことですか?」
「前は交流があった先の街だったら小型の動物用の装備もあると思うのだけど、
この町にはちょっとないわね」
バッサリと言い切ったお姉さんだった。
「とりあえず露店に行ってみよう。もしかしたら何かあるかもしれない」
一縷の望みをかけてプレイヤーたちがやってる露店に行ってみようと考えた。
このゲームは他のゲームにもれず生産職に関しても盛んである。
武器防具のみならず消費アイテムやなりきりグッズまで様々なものをプレイヤーは作成している。
当然質のいいものもあれば悪いものもある。
ちなみにプレイヤーたちが開いてる露店通りは街の南のほうだ。
「来たはいいけど人も多いし店も多いなこりゃ」
露店通りは人、人、人でごった返していた。
ちらりと一番近い店を見る。
どうやら武器を売っているようで、店主だろう人が必死に呼び込みをしている。
「どうですかー!いい武器そろってますよ!」
店に近づいて並んでる武器を見る。
短剣やショートソード。ナイフといった小さめのものが多く取り揃えられていた。
「いらっしゃーい! ってモグラ?」
「あ、どうもこんにちわ。見させてもらってもいいですか?」
店主に挨拶をして武器を見ようとすると。
「いいけど、多分君が装備できる武器はないと思うよ」
「え?」
いきなりお前に売るものはない宣言。
「いやね、誤解しないでほしいんだけどさ。
確かにうちが扱ってる武器は小さいのが多いんだけどね、
さすがに小さい動物型の武器は置いてないんだよ」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ。ほら、あっちの店が一応動物用の装備を置いてるから見てごらんよ」
と言って一つの店を指さす。
そこには犬や猫といった小さめの動物が集まっていた。
「へーあそこならなんかありそうだ。ありがとう。行ってみるよ」
「おう、がんばれよ!いらっしゃーい、いい武器そろってるよー」
店主はこちらに手を振りつつ呼び込みを再開した。
武器屋の店主に示された露店の前に行くと、犬、猫、なんとトカゲまで店の前にいた。
「うーん」
「これはなぁ・・・」
「でもなぁ、これがないとなぁ」
どうやらうなっているようだ。
「すいませーん」
動物用装備品を売っている店主であろう人物に話しかける。
「はいはい、なんでしょうかね?ってモグラ?」
店主はこちらを見て目を細めた。
「あのーここに動物用の装備品が売ってるって聞いてきたんですけど」
「あーはいはい、装備品ね。見てってよ、自慢のがそろってるよ」
店主は自信満々に露店で並べている商品を見せてきた。
「こ、これは!」
売られている商品を見て驚いた。
武器:小さなてつのつめ
攻撃力+5
3000G
腕装備:ちいさな小手
防御力+4
4500G
「たっか!」
どれも目が飛び出るほど高かった。
ちなみに先ほどの露店のショートソードは
武器:ショートソード
攻撃力+10
500G
だった。
「あの、この商品本当に正規の値段なんですか?」
店主はこちらをじっと見つめ、ため息をついた。
「あのねぇ、よく考えてみてごらん。
普通の大きさの武器ならまだしも動物用ってとても小さいんだよ?
それを鍛冶屋とかで作ってもらってごらんよ。
そんな細かい作業できるか!って言われて門前払いだよ。
それでも何とか頼み込んで知り合いの鍛冶士に作ってもらってるんだ。
これだけ高くなるのも無理ないと思うけどねぇ」
店主はまくしたてるようにしゃべる。
どうやらほかの客も商品が高いと思ってるらしくそれでうなっていたようだ。
「でも鍛冶士って釘とか蝶番とか細かいものも作るんじゃないんですか?」
「リアルじゃそうなんだろうけどなぁ。
なぜかこっちの鍛冶士はそういうの作ってないんだと
そういうのは道具屋の仕事だってさ」
おそらく何度も同じ説明をしてきたのだろう、店主は疲れた顔をしていた。
「こっちも安く出してあげたいんだけどこれ以上安くするのは難しいね」
「ぐぬぬぬぬぬ、はぁ。すいませんありがとうございました」
とぼとぼと店を離れる。
「くぅ、動物用装備がこんなに高いとは思わなかった」
うなだれつつも、ふとひらめくものがあった。
「そうだ!現実で犬猫用の服とか売ってるんだ。そういう店があってもおかしくない」
自分のひらめきを信じて露店通りを歩いて目的の店を探していく。
しかし。
アクセサリー:おしゃれ首輪
防御力+1
1000G
体装備:ドッグドレス
防御力+1
3000G
体装備:キャットドレス
防御力+1
3000G
アクセサリー:しっぽリボン
防御力+1
1500G
「だめだ、かわいいのしかない」
たしかにそういう服を売っていたり作ってる店はある。
だがしかしそれは戦闘用の装備ではなく、ファッション用の装備品ばかりで
とてもじゃないが実用的でない。
しかも微妙に高い。
「くそーやっぱりあの店で買うしかないのかなぁ」
せっかく温まった懐だったのだがすぐに素寒貧になりそうだ。
そんな時。
目の前を二人の女性が歩いていた。
「えぇ~何それかわいい!どこで手に入れたの?」
「それはもちろんあの店だよ。あそこなら安めにかわいいのが手に入るしね」
「いいないいなぁ私も早くクエストクリアして報酬もらって買いにいこ~」
妙にギャルっぽい二人組だなと思ったが、とあるモノが目を引いた。
「すいません!」
たまらず声をかける。
「はい?え、私?ていうかモグラ?」
「はい!あなたです!えっと、そ、それ!どこで買ったか教えてくれませんか!」




