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令和コロナ騒動実録  作者: 澤村桐蜂
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令和2年6月第3週

6月15日(月曜)

 週末に何と無くMTVを視聴していると、懐かしのMC Hammerが登場。“U Can't Touch This”を歌い踊る彼を眺めながら往時を想い、「テレビで香取慎吾がハマーのコスプレして踊ってる所に御本人さん登場の展開を観た」、「日曜夜の『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で、高校生がダンスを競うコーナーが有って」、「実力と人気のLL BROTHERSに対して」「ウケ狙いに徹したのが、今は政治家の山本(やまもと)太郎(たろう)で」等と妻に話した所だったが。

 件の山本太郎氏が()(たび)、東京都知事選挙への立候補を表明した由。昨今の情勢では奇策を講じる事も難しく、現職有利は如何(いかん)ともし(がた)いだろうが善戦を祈る。


6月16日(火曜)

 今月は朔日(ついたち)の項に記した抗体検査の結果が遂に発表された由。簡易検査では無く、大型機器による精密検査を採用。三都府県の合計で約1万人と報じられた被験者数は最終的に20歳以上の住民7950人となり、6月初旬から二つのメーカーの測定法で検査した結果、東京は1971人のうち2人が陽性で陽性率は0.10%。大阪2970人のうち5人、陽性率0.17%。宮城3009人のうち1人、陽性率0.03%。

 抗体が新型コロナウイルスへの再感染を防ぐ力を持つか否かは未だ不明で、引き続き国立感染症研究所で研究される予定。短時間で感染を判定できる抗原検査は発症2日目から9日以内の精度が高い事も判明。今月十日の項にはSoftBankの調査結果を陽性率0.43%と記したが、やはり無症状の感染者は比較的多く、集団免疫獲得への道は険しいようだ。


6月17日(水曜)

 大阪市が先月、小中学校の児童生徒と教員全員、およそ17万5000人にフェイスシールドを配り、授業中に着用させる事を決定。これに対して今月13日、大阪小児科医会が児童生徒のフェイスシールド着用は不要との見解を発表した由。

 フェイスシールドは患者の血液や飛沫から医療従事者を守る為に使われ、「うつされるリスクが高い」状況下に於いて装着するのが本来の用途。子供に与える場合の弊害としては、まず熱中症リスクの増大、物が見えづらいために授業に集中できず、転倒で顔や目を負傷する事も危惧される。文部科学省が示す換気の徹底や距離の確保、手洗いやマスク着用等の対応で(おおむ)ね事足りる(はず)であり「過剰な予防策は子どもの心身へ影響を及ぼす」との指摘に応じ、各学校の判断で授業中や給食の際に着用させ、教室外では外す等の運用となった旨の続報有り。

 日本小児科医会もフェイスシールドに関しては同様の見解を示しているが、更にホームページ上で「2歳未満の子どもにマスクは不要、むしろ危険!」との声明を発表。寄せられた質問に対して「米国でもCDC(疾病管理予防センター)やアメリカ小児科学会が警告済の事項」、「乳幼児突然死症候群(SIDS)の増加が懸念される」割に「小児は新型コロナウイルスに感染しにくく重症化もしにくい」、「小児から成人への感染や小児同士での感染が少ない」事も考慮すると、幼子にマスクを着けさせる事よりも保護者が感染しない事により家庭内感染を防ぐ事が現実的であり、後は感染の恐れが有る相手から2メートル以上の距離を保つ事や手洗いや消毒等の基本に尽きると回答。

 更に問答集は続き、3歳超の園児や小学生ならばマスクを着用させても問題ないかとの問いに、暑季には熱中症の恐れ有り。不衛生から皮膚のかぶれ等も増え、表情が窺えず健康状態を把握しにくくなる事も考慮すると「体調不良を言葉で訴えにくい幼児に強要することは望ましくない」。小学生と言えども「暑くて嫌だ」「気分が悪い」等の訴えは尊重すべき。医学的知見とは関わり無く、マスクを着けずに外出する者へ厳しい目を向ける「マスク警察」が跋扈(ばっこ)する世情に対しては、対人距離が狭まりそうな状況ならば「ベビーカーのシェード(日よけ)などを出す」、「抱っこをしている場合は親向きに抱いて他人に顔を向けさせない」等の手段も有るが、最善は「外では人との距離を保つ」事と云うような内容。一般の方にも解りやすい平易な言葉で説明されており、感服した。CDC も「マスクはソーシャル・ディスタンスの代わりにはならない」と述べている由。


6月18日(木曜)

 16日に富山県立大学が発表した所によると、同大工学部環境・社会基盤工学科の(はた)昭彦(あきひこ)講師が金沢大学の研究グループと共同で富山・石川県内の調査を行い、下水処理場へ流れ込む下水から新型コロナウイルスの遺伝子検出に成功。下水処理場が対象の国内調査としては、日本初の事例となる由。

 多くの国で下水中に新型コロナウイルスを確認した先行研究が存在する事を踏まえ、本年3月5日から4月24日まで石川・富山両県の4下水処理場に於いて、概ね週1回の頻度で流入下水試料を収集。調査開始時の新型コロナウイルス感染者は富山県で0例、石川県で4例に過ぎなかったが、4月末には10万人当たり20例程度にまで増加。ポリエチレングリコールを用いた手法で100倍程度に濃縮された試料から、遺伝子抽出操作を経て新型コロナウイルスを検出した所、27試料のうち7試料で陽性。いずれの試料に於いても、複数のPCR法で陽性結果が得られた由。

 感染者数が10万人当たり1例以下の場合にも新型コロナウイルスが下水から散発的に検出される事、医療機関からの感染者報告数が増加する7-10日前の時点で既に検出されている事や感染者数の増加に伴って検出頻度が増加する傾向が見られる事も判明。「下水疫学調査による第2波以降の予兆検知」の可能性が示された訳だが、引き続き諸方面からの叡智が結集され、世界に光明が示される事を望みたい。

 (ちな)みに、4月23日付でWHOが発表した「水、衛生、廃棄物の管理 暫定ガイダンス」には「現在のところ、COVID-19ウイルスが下水処理の有無にかかわらず下水道を介して感染したという知見はない」との記述有り。


6月19日(金曜)

 昨日に安部総理が官邸で記者会見を行い、本日から都道府県を(また)ぐ移動が全国的に緩和される由。

 時を同じくして厚生労働省が開発した新型コロナウイルス接触確認アプリ、COVID-19 Contact-Confirming Application、略称“COCOA”の配信も開始。氏名や電話番号等や位置情報等の個人が特定されるような情報は使用せず、Bluetoothと匿名性を保った識別子を用いて「1メートル以内、15分以上の接触した可能性」のみをスマートフォン内に記録。濃厚接触者がPCR陽性と判定・登録された場合は通知してくれるとの事。

 厚労省や情報産業の言い分を額面通りに受け取る程に若くは無いし、殆ど自宅と職場とジムしか行かない生活を送っているため、取り敢えず自ら入れる気はない。単純に「己のスマホ自体やOSが古くて、きちんと作動しないのでは無かろうか」との危惧も有る。


6月20日(土曜)

 金曜に仕事が終わると、一泊かつ県内とは言え、久しぶりに妻と泊まり掛けでお出掛け。地元の嘉肴(かこう)と異国の葡萄酒を喫し、湖畔の宿で安らかに眠った。翌朝に宿を発ち、淡水魚の水族館を観た後、近くの港町に寄る。魚介類を喰わせる店で午餐(ごさん)を摂ったが、其処の女給(ウェイトレス)が、見た事も無い不思議な物を身に着けていた。

 透明な合成樹脂で顔を覆う辺りは今週水曜の項で取り上げたフェイスシールドに酷似しているが、防御範囲は狭く、口を中心に鼻の下部に掛かる程度。物品の骨格部は着用者の下顎のみに接し、ゴム紐が両側の耳介へと伸びる。実質は(むし)ろマスクに近いと言うか、漫画『ドロヘドロ』の愛読者にしか通じぬ例えで申し訳ないが、第一印象としては魔法使いの首領、(エン)が着けていたマスクを連想した。

 帰宅後に調べた所、彼の品はマウスシールドと呼ばれているらしい。コロナ()以前から存在していたのかどうかは判然とせぬが、某通販サイトでは「笑顔が見える」「曇り止め」「通気性良い」「繰り返し利用可」「化粧剥げることはない」、「超定番」の利用先は「ホテル」「食堂」「マーケット」「美容院」「飲食店」等を謳って大々的に販売中。福岡は博多区、中洲の一角に在る会員制倶楽部ではマウスシールドを装着した夜の蝶々が透明隔壁の向こうから酔客に微笑み、大手総合建設会社の清水建設が3万1000個のマウスシールドを揃え、全国の建設現場に配付を始める等、既に社会の各所で活用されている模様。

 フェイスシールドと違って顔の上半分は防げないが、それはマスクも同様。医療現場は別として、一般の社会生活で飛沫が直接眼に入る事から結膜から新型コロナウイルスに感染する危険性は比較的低く、眼鏡着用で防ぐ手も有る。複数の型が出回っているらしく品質は玉石混淆(ぎょくせきこんこう)かも知れぬが、間近で実見した製品に限って言えば隔壁と口唇とが数センチ離れており、通気の良さを誇る惹句(じゃっく)も伊達では無かろうと思う。使用後の消毒を含めた取扱さえ適切ならば、感染予防と熱中症リスク低減の両方に役立つ事だろう。


6月21日(日曜)

 本日は父の日。通販で取り寄せた海鮮に加え、昨日に入手したばかりの青海苔も(たずさ)えて、妻の実家を訪問。後で届いたメイルによると、義父は喜んでくれた模様。幸甚(こうじん)の至り。

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