令和2年6月第2週
6月8日(月曜)
前夜が蒸し暑くて寝不足だった上に、本日は「或る患者さんの経過が厳しく、当科外来での対応が限界と判断」「他院精神科へ入院をお願いする」、「書面と電話で何度か情報が往復」「下げられるだけ頭も下げた後に入院受入を断られる」、「徒労感を抱えつつ御家族と善後策を協議する」等が重なり疲労困憊。何とか今日出来る事は終わらせて帰宅。
新型コロナウイルスが流行して以来、新たな撮影が困難な関係でテレビ番組は各局とも再放送やら再編集、総集編だの名場面集の類が多い。今夜はTBS系で「筋肉番付」関連の「令和に蘇る! スポーツマンNo.1決定戦」を観ながら、妻の作った夕食を摂る。
2002年大会を中心にケイン・コスギや池谷直樹、アメフトの全身ゴンブトさん(河口正史)、松井稼頭央にタフィ・ローズ、モンスターボックスやらパワーフォースにバク転50メートル走、何故か王と長嶋のメンコ対決も見た。全てが懐かしいが、改めて室伏広治の身体能力に瞠目。
6月9日(火曜)
鳥取県で初めて確認された新型コロナウイルス感染者が4月10日に県立中央病院へ入院した際、職務や研修を目的とした閲覧権限を持たない多くの職員が、無断で診療録を閲覧していた事が今週に判明。男性患者の個人情報や病状が約200人に閲覧されており、院外への情報流出は確認されていないものの、病院は興味本位の不適切な閲覧だったと判断し、県民や病院利用者に謝罪した由。
先に青森県でも似たような事件が発生しており、4月21日に「つがる西北五広域連合」が記者会見。同連合の運営する感染症指定医療機関の看護師がLINEで情報を流出させていたとする内部調査の結果を発表。続報によると、翌日に勤務する看護師への業務引き継ぎ、親の世話を任せる親族へ暫く帰宅できぬ事情の説明等が発端で、興味本意では無かったそうだが、携帯カメラで個人情報を撮影する時点で許される筈も無し。
平成11年に当時の厚生省が出した通達により、真正性・見読性・保存性の三条件を満たせば診療録を電子媒体で保存しても構わぬ事になって以降、我が国でも電子カルテの導入が進んだ。個人の診療所は兎も角、相当規模の総合病院では平成20年代のうちに標準装備と化した感も有るが。紙カルテだと病棟や外来まで出向かなければ見られなかった情報を院内各所の端末から入手可能となった事は非常に便利な反面、機密保持を困難にもした。更にSNSの普及で、情報流出の危険度は格段に上昇。
今回のように何らかの話題性が有る患者の情報は、無断閲覧の対象となりやすい。医療機関の職員が自らの勤める院内で診療を受けた場合に同僚等が治療の状況を知りたがり、人目を忍んでカルテを開いてしまうような例も耳にする。当院では専用の診療録を新たに作成し、日替わりでpasswordを設定する等と鉄壁の陣が敷かれた事も有ったが。どうにも煩雑で不便だと関係者一同が感じたらしく、いつの間にか廃れた。紙の診療録が懐かしくなる事も時に有るが、実際に戻したら推敲が面倒で、また電子が恋しくなる事は必定かとも思う。
6月10日(水曜)
5月12日から6月8日にソフトバンクグループが社員と家族、取引先や医療関係者を含む4万4066人に対し、新型コロナウイルスの抗体検査を実施。6月10日に陽性は合計191人、即ち陽性率0.43%との速報結果が発表された模様。
ソフトバンクグループの陽性率は0.23%で若干低く、ソフトバンクやY!mobileの店舗で働く従業員の陽性率が0.04%と更に低かったのに対し、オフィスやコールセンターで働く人の陽性率は幾らか上がり、医療従事者の陽性率は1.79%で更に高かった由。
この調査の限界としては使用された中国産検査キットの信頼性、「任意でご提出いただいた回答」という情報源の偏り等が考えられるが、概ね現状を反映した結果だとすれば、無症状の感染者は意外に少ないのかも知れぬ。その一方で集団免疫の成立には程遠く、真の第二波に引き続き警戒を要する。
6月11日(木曜)
直近1週間で新規感染者数の平均が20人以下だった事等を踏まえ、東京都が「東京アラート」を解除。レインボーブリッジや都庁の照明も23時に赤から虹色に戻る由。
感染経路不明率、週単位の感染者増加比といった他の要件も勘案した上で、明日0時から休業要請解除に関する行程表、即ち「ロードマップ」のステップ3に移行。感染状況が一定数に抑えられているとの判断に基づき、飲食店の営業は夜0時まで延長可能となり、カラオケ店の営業も許可される模様。赤信号が変われば次は青信号、と順調に進むかどうか。
6月12日(金曜)
今年は5月10日に鹿児島の奄美地方、11日に沖縄が例年より早い梅雨入り。30日に九州南部、31日に四国が続くも一旦は梅雨前線が南下し、暫く本州は五月雨の侵攻を許さなかったが。6月10日から11日に掛けて再び梅雨前線が北上し、東北南部までの広い範囲で入梅が宣告されるに至った。
駐車場から歩いて職場へ辿り着くと、空調が回り切らない朝の医局が蒸し暑い。帷幕で仕切られた更衣室は更に風が通らず、総身に発汗しながら着替える羽目となる。短いケーシー型の白衣だと冷房が寒いし、長い回診衣を羽織ると病棟往診時の移動が暑くて堪らない。今年の状況ではマスクも外せず、盛夏の折が思い遣られる。
6月13日(土曜)
専門誌の報じる所によると、6月10日にタイ国スポーツ庁でラジャダムナン及びルンピニー両スタジアムの首脳、レフェリーやプロモーター、ジム関係者等の関係者が一堂に会し、興行再開後の指針について議論。“zoom”を用いた一般視聴も可能な公開形式で提案されたムエタイ新様式とは。
スタジアムは「全入場者の出入管理や入場者の検温を行う」「リングサイドは50名まで」「グローブ等の使い回しを禁じる」「試合毎にリングを消毒する」。選手は「試合前の2週間にジム以外の外出禁止」、セコンドは「試合中にフェイスシールドやマスク、手袋を着用する」。観客は「5試合以上の観戦を避ける」等の指標が検討されており、更にはムエタイの特色である首相撲の練習禁止、試合中に首相撲を含むクリンチ絡みの攻防が制限される可能性も有る模様。
ムエタイは観光スポーツ省に監督されているため、迅速に指針を定めてタイ国全土で遵守させる事も比較的容易であり、早ければ今月下旬にもムエタイ興行が再開される見込みとの事。
6月14日(日曜)
この小文には故有って記さなかったが、先日の外来でCOVID-19感染の可能性を否定できない患者さんに遭遇。診察の途中で「緊急事態宣言の解除前に県外に赴いた」が「その後に微熱その他の症状が遷延している」旨が語られたため、即座に院内の感染症外来へ紹介。専門医が症状や経過、現地の状況を詳細に検討してくれた結果、感染の可能性は否定的と判断され、念のためPCRを施行するも陰性。
常時換気の診察室で互いにマスク着用、L字型の机を挟み、直面せず90度で向き合う精神科診察。仮に相手が陽性だとしても当方に感染した可能性は低い。と頭では解っていても、検査結果が出るまで安心できなかったというのが正直な所。偽陰性の可能性や潜伏期間も考慮し、以降も暫くは外食等を控えていたが、もう大丈夫だろう。