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令和コロナ騒動実録  作者: 澤村桐蜂
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令和2年6月第1週

6月1日(月曜)

 北九州市は本日、新たに16人の感染を確認。同市での感染確認は5月23日から10日連続で、5日連続の二桁。10日間の累計は113人になった。

 厚生労働省は人口10万人あたりの感染者数が多い地域である東京・大阪、少ない地域である宮城の3都府県を選び、そこで無作為に抽出した20歳以上の男女、約3000人ずつから血液提供を受けて抗体検査を行い、無症状の者を含めた感染者の割合を調べる由。合計で(およ)そ1万人の資料を検討すれば、それなりに実情が見えて来るか。


6月2日(火曜)

 東京都内で新規感染者34名を確認。一日当たりの感染者数が30人以上を超えるのは先月14日以来の事で、都民に警戒を呼びかける「東京アラート」が初めて発令された由。 

 小池都知事は本日の都議会で「他のモニタリング指標もこの数日、厳しくなっている」、「現在のステップを直ちに変更するものではない」としながらも外出の自粛、特に「夜の街へのお出かけを控えて頂く」事を要請する旨の発言あり。


6月3日(水曜)

 コロナに(おびや)かされながらも日常業務を(こな)す傍ら、今週は健康診断、2020年度人事評価に関する院長面接等の予定も入り、微妙に忙しい。日頃は此方の都合も構わず顔を出そうとする事も有る癖に、用が有る時は奥へ引き(こも)ってしまう。毎年の事ながら検便には苦労する。

 公立病院の経営も悠長な事を言って居られぬ御時世。周りの先生方は事前に提出した書面を基に「前年度より収入10%増が目標となっているが」「どのようにして実現するのか」等と院長から詰められたりもするそうだが。他とは違って何やら特殊な所だとの扱いを受けているため、当科は今年も近況報告程度で勘弁して貰った。そうは言っても自分の給料を超える位の外来収入を毎月稼いでは居るし、精神科常勤医を確保していないと貰えない診療報酬加算も有るので、合わせ技で考えると職場に損はさせていない。(はず)だ。

 読売巨人軍は一から三軍の選手や監督を含む計218人の職員に対し、5月29~31日の時点で新型コロナウイルス感染歴を調べる抗体検査を実施。そのうちの4人で感染後の回復を示すIgG抗体が認められ、続いて施行されたPCR検査でも坂本(さかもと)勇人(はやと)内野手と大城(おおしろ)卓三(たくみ)捕手が陽性と判定された旨、本日に発表有り。

 無症状の経過だとしても巨人の主力選手にまで感染が広がっていた事の衝撃に加えて、PCR結果を伝える報道で疑陽性ならぬ「微陽性」という謎の用語が飛び交った件でも多少の話題を呼んだ。19日に予定されている開幕戦に支障を来さないようにとの忖度(そんたく)かとも思われたが、今の所は明らかな集団感染も見付からず、大した追及もされぬままに終わりそうな情勢。


6月4日(木曜)

 財務大臣兼副総理の麻生(あそう)太郎(たろう)氏が、本日の参院財政金融委員会で日本に於ける新型コロナによる死者数が欧米より少ない事に言及。何処(どこ)から掛かって来る電話かは知らぬが「お前らだけ薬持ってんのか」と尋ねられる度に「お宅とウチの国とでは国民の民度のレベルが違うんだ」と「言ってやる」と相手は皆「絶句して黙る」と発言。これに対して、立憲民主党の蓮舫(れんほう)副代表が「貴方はどれだけ偉いのでしょう、麻生大臣」とTwitterへ投稿。双方が相応の話題を呼んだ模様。

 この(たぐい)の言い方を好む人物が(かつ)て総理大臣を務め、未だに政権の中枢に居座る国の文化や知性の水準は(はなは)心許(こころもと)ないが、眼前の事象は日本人の特質から起きたものだとの解釈ならば麻生氏に同意する。政府が他所様(よそさま)よりも優れた手を打った訳でも無し。(けが)れを嫌い、同調圧力に押されて相互に監視し合う人々が大勢を占める国で在るが故に、他国よりも多少はウイルスの蔓延(まんえん)を抑え込めたと考えるのが妥当だろう。()れども医療者の(はし)くれとして、取り敢えず今は一つでも多くの生命が護られる事を望む。

 また厚生労働委員会では、第二次補正予算案に盛り込まれた10兆円の予備費に関して、安倍首相がコロナ対策のため「臨機応変な対応が必要」と説明した事に対し、社民党の福島みずほ党首が「財政民主主義を踏みにじるものではないか」と批判した由。

 リーマンショック後の当初予算で予備費1兆円。東日本大震災後の第二次補正予算で予備費8000億円だったので、その十倍では如何にも高額過ぎるというのが根拠の一つのようだが。未曾有(みぞう)の天災に対し、これでも十分な手当なのかどうか解らず、余裕が有るに越した事は無いように思われる。適切に遣われるか否かの監視は非力な野党に任せて置けず、国民総出で取り組むべきである点に関しては論を()たない。


6月5日(金曜)

 東京都では今日も新型コロナウイルスの感染者が新たに20人確認され、こちらも5日連続の二桁。昨日までに都内で合計5323人となった由。

 本日の国対委員長会談で、自民・立憲民主の両党が新型コロナウイルス感染拡大に対応する2020年度第二次補正予算案を10日に衆院通過させる方向で合意。野党が要求した予備費10兆円使途の明確化に関して与党も譲歩し、5兆円分の使途を政府の財政演説に盛り込む事になった由。政治家は条件さえ合えば妥協するもので、それ自体は悪い事でも無い。習近平(シージンピン)とテドロスとトランプの三者が妥協する事も、階を()てて天に登ると言う程の不可能事とも思わないが。何処で妥協し、誰を喜ばせて誰を嘆かせる結果に終わるのかが問題となる。


6月6日(土曜)

 名古屋大学大学院で准教授を務める教育社会学者の内田(うちだ)(りょう)氏が現場の教師逹から聴取した所では、最長3ヶ月も続いた休校に対し、日本の教育現場は学習指導要領で定められた教育課程を今年度中に終わらせる事に腐心している模様。

 再開後も感染予防対策の分散登校や手洗い指導・消毒といった課題が加わる状況下で学業の遅れを取り戻す事ばかりを優先すると、夏季休暇が短縮されて土曜日の授業も増え、教員と児童生徒の双方で負担が増加。長期休暇明けに子供の自殺が増える傾向に関しては、以前から報告されている所。夏が近づけば感染予防と熱中症対策の兼ね合い、諸々が重なると教員の長時間労働が常態化して働き方改革が後退、と問題は山積。


6月7日(日曜)

 昨日に東京都で新規感染者26名が報告されるも、うち12人は新宿のホストクラブに勤める「20~30代の男性従業員」で、他の4人も「夜の繁華街」との関連が疑われる由。感染を広げたくない都政、自粛の間に失われた収入を少しでも取り戻したい業者との攻防は続く。

 (しばら)く前から妻に「スコーンが食べたい」と訴えて来たが。スーパーのパン売場で目当ての商品を見付けて、初めて「自分の心に在ったのはイングリッシュマフィン」だという事実が判明。何故の勘違いだったのか、スコーンは英国式Afternoon teaで供されるとの連想だろうか。解るようで良く解らぬ。疑問は残ったが、週末の朝食で久しぶりに食したマフィンには満足した。

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