令和2年5月第2週
5月4日(月曜)
朝から嘔気を訴え、朝飯も喰えぬと言う妻を休ませて置き、看病の傍ら洗濯や風呂掃除に励む。消化器症状ばかりで咳も無く、熱は37℃前後。昼には幾らか回復し、素饂飩一杯を食べてくれたので胸を撫で下ろす。
世間の動きを確かめると、本日に政府の新型コロナウイルスの対策本部が「緊急事態宣言を全国一律で31日まで延期する」と決定。その一方で、特定警戒都道府県以外の県は「新しい生活様式」を徹底することを前提に制限の一部を緩和する方向で調整しているという話を、昨日に公共放送のWEB版が報じていた。特定警戒都道府県とは何ぞや。寡聞にして知らず。
検索してみた所、そもそも緊急事態宣言は4月7日の時点で東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡の7都府県に出された事に始まり、16日夜に全国へ拡大。同時に、先の7都府県へ北海・茨城・石川・岐阜・愛知・京都の6道府県を加えた13都道府県においては重点的に感染拡大防止の取り組みを進めていく必要があるとされ、これを特定警戒都道府県と定めた由。緊宣延長と同時に特定警戒都道府県の範囲を拡大する事も検討されたが、こちらは見送られたようだ。
5月5日(火曜)
妻の容態は昨日より回復したが、今朝も37.0℃と微熱あり。日中は起きたと思うと再び横になる有様だったが、夕には解熱。妻曰く、妊娠かとも思ったが、嘔気は最初だけだったので違うと気付いた由。
政府の専門家会議によると、「新たな生活様式」とは所謂social distance即ち身体的距離を極力2メートル、最低1メートルは確保する事、「3密」即ち密集・密接・密閉の回避、マスクの着用や手洗い、府県境を跨いだ移動を避ける事、テレワークやオンライン会議の活用等を指すらしい。
5月6日(水曜)
今日も妻は何度か検温。平熱を維持しており、呼吸器症状も味覚や嗅覚の障害も出なかったので、コロナウイルス感染は否定的だろうと診断した。
吉村府知事が発表した「大阪モデル」においては、感染経路不明の新規感染者が10人未満、PCR検査の陽性率が7%未満、重症病床の使用率が60%未満の三条件が7日間連続で満たされた場合に外出自粛や休業要請を解除。しかし、感染経路不明の新規感染者数が5~10人以上、陽性率が7%以上等の指標に基づき「感染爆発の兆候」が見られた場合は、段階的に自粛要請を再開する由。
アメリカの大手製薬会社ファイザーが、異例の早さで新型コロナウイルス感染症のワクチン候補の臨床試験を開始。抗インフルエンザウイルス剤のアビガン、一本鎖RNAウイルスに有効なレムデシビルについては早くから報道されて来たが、抗リウマチ薬のアクテムラや寄生虫治療に使われるイベルメクチンも治療薬の候補として期待される、と昼の情報番組で言っていた。自粛で始まり、自粛に終わった連休。
5月7日(木曜)
朝から外来。連休半ばに妻の体調不良で家事に励んだ結果、前半の朝寝坊や夜更かしから天然自然と離脱できたためか、五日振りの勤めも然程苦痛では無かった。禍福は糾える縄の如し。21時台の報道によると、国内初の新型コロナウイルスの治療薬として、厚生労働省がレムデシビルを承認。重症患者に限定して提供される由。
空き時間に女子高の性教育をネタにした漫画の無料公開部分を読み耽っていると、未知の単語「デンタルダム」に遭遇。本来は歯科治療に使われる極薄ラテックスの膜だが、口腔性交における感染予防に転用されて、昨今では専用の製品もネット通販にて入手できる模様。スーパーやコンビニでは張り巡らされたビニールのカーテン越しに会計を行い、マスクやゴム手袋、時にフェイスシールドまで市中の対コロナウイルス感染予防に活用される昨今。忌むべき濃厚接触の極北として性風俗業が槍玉に挙げられる状況も鑑みて、百尺竿頭に一歩を進めるならば。
コロナショックを通過した近未来の性交渉、特に婚前や婚外の性交においては、互いに全身を隈無く被膜で防御した形が主流となろう。NYC Health Department(ニューヨーク市保健局)の指針によると、感染者の精液や膣分泌液からコロナウイルスは検出されておらず、武漢の女性患者35例を対象とした別の報告でも同様の結果が出ているらしいので、コロナ対策の観点から言えば、性器自体は丸出しでも構わぬのかも知れぬが。
5月8日(金曜)
厚生労働省はPCR検査の相談や受診の目安から「37.5℃以上の発熱が4日以上」の項目を外した。急速に重症化する症例も有れば、無症状のまま経過するcarrierも居る事が判明して来て、強まる国民の要請に対しては必要な処置だろうが、保健所等への負担が一気に増加する事へ十分な手当てが為されているのかどうか。
日中に医局で「皆がマスクと手洗いをきちんとやってれば、インフルエンザも無くなるもんだね」という声を聞いた。救急当直を担当していない自分は知らなかったが、例年とは異なり、今春は時間外にインフルエンザ感染者が受診する事が殆ど無かったようだ。相違点は数有れども同じ飛沫感染の呼吸器感染症である事を鑑みれば、現行の対応が新型コロナウイルスの流行を抑えるのにも一定の効果を有する事を示唆する現象では無かろうか。
帰路を遠回りして外からジムの様子を窺った所、再開の兆しが有るようにも見えた。後で会長に訊いて見よう。23時台の報道によると、今日は東京都の新規感染者数が39人、全国で88人。東京の死亡者数が11人で、全国は16人。
5月9日(土曜)
アメリカでは先月の失業率が14.7%で、統計を取り始めた1948年以降で「最悪の水準」となった由。ペンス副大統領の側近がコロナウイルス陽性と判定され、2日連続でホワイトハウス職員の感染が見つかる一方で、31の州で一部業種の経済活動が再開され、感染拡大が懸念されているとの報道あり。
我が国に目を転じると、本日の感染者数は1万1434人で、前日より339人減。新規感染者数は前日より14人減の81人。行動制限が奏効したのか、湿度や気温が上がったせいかは不明だが、夏までに一旦は収束に向かうとの予測を支持する情勢か。
政府は新型コロナウイルスの抗原検査キットを13日に薬事承認、同時に保健適応とする方針を固めた由。PCRが数時間を要するのに対し、こちらは15~30分で判定可能だが、感度が低く偽陰性が増えるため、状況に応じてPCRも併用される事になるか。大阪モデルに続き、岐阜県も独自に5指標から成る出口戦略を発表。
5月10日(日曜)
今日は母の日。実家に赴く妻に同行すべき所だが、互いの感染リスクを下げるため、自分は留守番。後で聞いた所、義母は贈物を喜んでくれた由。
夕の報道番組で「コロナ差別」の問題を取り上げていた。欧米ではアジア人、我が国では感染者と医療者が対象とされやすく、県内でも事実無根の噂に悩まされた挙げ句、告訴に踏み切った例が有る模様。他人事では無い。