令和5年7月最終週~8月第1週
7月31日(月曜)
2020年以降に国内外の製薬会社がCOVID用ワクチンの開発に乗り出し、国内の製薬会社は政府の支援を受けながらもPfizerやModerna、AstraZeneca等の後塵を拝していたが、今年1月に第一三共が承認申請を行った国産ワクチンに関し、本日に厚生労働省の専門家部会が検討。有効性や安全性が確認されたと了承され、今後は厚生労働省の手続きを経て、国内の製薬会社としては初の正式承認となる模様。
当該ワクチンは変異株では無く従来型のSARS-CoV2に対応したもので、PfizerやModernaの製品と同様、接種するとmRNAを元に体内でスパイク蛋白が合成され、これに反応して免疫機構が抗体を作り出すものの、従前のmRNAワクチンとは異なり、スパイク蛋白の中でも特に感染に関係している部分のmRNAだけを使う等独自の技術が使われているとの事。通常は「5年から10年を要する」と言われるワクチン開発が「3年で承認に至るのは可成速い」と識者から評価され、今後も「再び世界的大流行が起こった場合にも、mRNA技術で次第速やかにワクチンを開発」「感染症のみならず癌を含む他の疾患の治療にも応用」等が期待されていて、更なる拡大が予想されるmRNA医薬品市場に独自技術を以て参入出来る事の意義は大きいとの声有り。
本日は塩野義製薬が開発したCOVID用ワクチンの検討も行われたが、有効性を評価する為の資料が不十分等の理由で継続審議。他に熊本県のKM Biologicsが不活化ワクチンの臨床試験を行う等と複数の企業が開発を進行中。同じく本日に小児を対象にしたCOVID用ワクチンの議論も行われ、「既に2回の接種を済ませた児」に於ける3回目の接種に就いて「オミクロン株対応型ワクチンの接種可能年齢」が拡大される事に決した由。従前はPfizerが5歳以上、Modernaが12歳以上とされて来たのに対し、前者は生後6ヶ月から4歳が、後者は6歳から11歳を新たに対象追加とする方針が了承された由。
8月1日(火曜)
COVID用ワクチンは「蔓延予防上、緊急の必要性有り」との見地から、接種費用を全額公費で負担する特例臨時接種の対象とされ、本年5月に感染症法上の位置付けが五類に変更された後も、今年度は無料で接種が受けられる事に変わり無し。
然れども来年度以降に関しては、特例臨時接種では無く「麻疹や季節性流行性感冒と同様の定期接種に変更」する案も含め、厚生労働省が本格的に検討を始めるとの事。定期接種に移行した場合は「費用を自治体が負担し実質無料」となる場合も有るが、「一部自己負担」となる状況も考えられる。厚生労働省は今月開催予定の専門家の会議で議論を始め、「定期接種として実施する場合の費用負担」「接種の対象者」等を検討するとの事。
8月2日(水曜)
先月の定例会見でCOVID用ワクチン接種に関して「65歳以上の人や基礎疾患がある人以外が重症になる割合はそれほど高くはない」。「全体の感染を抑えるために無理をして接種してもらうというよりも、個人で選択してもらう時期に入った」と云う趣旨の発言をした 日本医師会常任理事の釜萢敏氏が、本日会見で再びワクチンに関して言及。先ず昨今の感染状況について「全体として上がっている所が多く、今後の感染拡大には引き続き注意が必要だ」。「矢張り夏の時期に感染拡大が見られたと云う経験が有るので、注意して行かなければならない」と述べた後に「全ての年齢の方に対して有効性は直近の科学的根拠でも確り積み上がってきている」。「効果に対する信頼性は揺るぎないものが有る」と語り、其の上で「過去の接種で副反応が非常に強く出た方に就いては、其の経緯も踏まえワクチンを接種するか如何か慎重に選択して頂きたい」と語ったそうだが、前言の微修正と見たは僻目か。
本日午前に全国知事会の会長を務める鳥取県の平井 伸治氏が、新型コロナ対策担当大臣の後藤 茂之と面会。「COVID流行を客観的に判断出来るようにするため、季節性流行性感冒の警報や注意報と同様の全国統一基準を早急に設ける」「重症化リスクの高い高齢者が暮らす施設への支援の継続」等を求める提言書を手渡した由。昨年に東京で初演された舞台「千と千尋の神隠し」が英国は倫敦、West Endの劇場で上演される事が決定。主演の橋本環奈氏、上白石萌音氏を含め、全て日本人の俳優が日本語で演じる由。原作映画の余沢も有ろうが、快挙と評して良かろう。
8月3日(木曜)
本日に東京都庁で開催された対策会議の席上にて、都内のCOVID感染者数を公表。定点把握の対象たる都内419の医療機関のうち415箇所からの報告に拠れば、先月30日迄の1週間に於ける感染者数の総計は4613人で、1医療機関当たりでは11.12人。前週の1.19倍で六週連続の増加となり、60歳以上は1.82人で前週比1.36倍となった由。
東京感染症対策中心の所長、賀来満夫氏は「夏休みの旅行や帰省等で重症化リスクの高い高齢者と会う機会や、大人数で集まる場面が増えるため、感染対策を心がけてほしい」と呼び掛け、また気温と共に食中毒危険性が上昇する事に関しても「調理前に手指洗浄」「食肉の調理には専用の箸等を用意し、他の食材に触れぬ様に使い分ける」「食材は十分に加熱し早めに食べる」等が推奨されたとの事。
8月4日(金曜)
本日に第124回となる新型コロナウイルス感染症対策諮問委員会。7月7日以来、凡そ1ヶ月振りの専門家会合で示された最新の分析結果に曰く、全国の新規患者数は「4月上旬以降、緩やかな増加傾向」を保ち、五類移行後も11週連続で増加。地域別では「先行して感染が拡大した沖縄県で減少傾向」を認める反面、「42都府県で前週より増加」。医療提供体制の逼迫は見られていない様だが、救急搬送困難事例は増加中。検出されるSARS-CoV2はオミクロン株のXBB系統が大部分を占め、中でも「より感染を広げ易い」とされるEG5.1が増えている模様。
会合後の記者会見で、座長の脇田隆字氏から「感染が拡大している事は間違いない」。「夏休みで人出が増え普段、会わない人と接する機会が多くなる」事は「流行が広がる切っ掛けになる」。「免疫を逃れ易い新たな変異ウイルスの割合が増えて来ている」ものの、重症者数増加の原因は「ウイルスの型(タイプ」が変わったからなのか」「感染が拡大して入院者数自体が増えたからなのか」に関する「詳しい分析は出来ていない」。季節性流行性感冒に於ける注意報や警報の如き基準をCOVIDに設定するのかとの議論に就いて「基準を作る事には皆、賛成」したが「専門家向け」か「自治体向け」或いは「住民との意思疎通の為」か、「議論が必要だ」等の発言有り。
厚生労働省の発表を信ずれば、先月30日に至る1週間で全国の医療機関、凡そ5000箇所から報告されたCOVID患者数は、前週から9901人増えて7万8502人。また1医療機関当たりの平均患者数が15.91人、前週の1.14倍となり、17週連続で前週より増加。都道府県別では多い順に佐賀県が31.79人、長崎県が30.29人、宮崎県が27.21人、鳥取県が25.52人、熊本県が24.66人、大分県は24.33人、石川県は24.13人、鹿児島県は23.54人、福岡県は21.64人、愛媛県は21.11人、愛知県は20.82人、高知県は20.45人となり、前述の如く42都府県で前週より増加。同じ期間中に新たに入院した者は全国で1万1146人、前週に比して1751人の増加を示した。「夏の間、感染者が増え続ける」可能性も指摘されて居り、感染第九波の今後には引き続き警戒を要する。
国立社会保障・人口問題研究所が「令和3年度の社会保障給付費が138兆7433億円となり、前年度より6兆5283億円、率にして4.9%増えて過去最高を更新」と報告。国民1人当たりの給付費も110万5500円と過去最高となり、分野別では「年金」が55兆8151億円で最も多く、次いで「医療」が47兆4205億円、介護や育児を含む「福祉その他」が35兆5076億円で、何れも前年度より上昇。高齢化の侵攻に加えてCOVID対策費の増加も主たる要因と言われて居り、COVID対策の内訳は「子育て世帯への給付金」が2兆9106億円、「医療機関への補助金」等が2兆8998億円に及んだ由。
8月5日(土曜)
世界保健機関(World Health Organization; WHO)は「6月5日から7月2日に至る28日間」に関して「世界中から88万5000人を超える新規症例と4900人を超える死亡」。「6月12日から7月9日」に「79万4000人超の新規症例と4800人超の死亡」と「6月19日から7月16日」に「83万6000人超の新規症例と4500人超の死亡」、「6月26日から7月23日」に「86万8000人超の新規症例と3700人超の死亡」を報告。
そして今週3日の発表に拠れば、7月3日から30日に100万人を超える新規症例と3100人以上の死亡が報告された由。7月に感染者数が増すも死亡者数は減少傾向が維持される結果となったが、世界的に検査と報告が減少して居り、実際は更に多数と推定される。またWHOの統括する6地域のうち、5地域では症例数と死亡者数の両方の減少が報告されているのに対し、西太平洋地域のみ症例数が増加。しかし、死亡者数は減少したとの事。
一方、馬来西亜からは7月1日に171人、8日に139人、15日に173人、22日に129人、29日に130人の新規感染者が報告されていたが、本日は105人で総計は512万1276人。死亡は25人から6人、2人、3人、1人と来て、本日は1人、総計は3万7165人となった旨の報告有り。此方は月を跨いでも新規感染、死亡共に微減傾向が続いているか。
8月6日(日曜)
先月24日から日本を公式訪問していた国連人権理事会「商取引と人権」作業部会の専門家2名。作業部会議長のDamilola Olawuyi、委員のPichamon Yeophantongの両氏は東京や大阪、愛知、北海道、福島等を訪れて、省庁や地方自治体、市民団体、労働組合、人権活動家、企業、業界団体代表と会談。「企業に依る人権侵害を防ぐ為の国の法制化に向けた取り組み」「技能実習生を含む労働者全般の搾取の問題や救済の仕組み」等に就いて話を聞く傍ら、其の一部との扱いでJohnny Kitagawa/喜多川 擴氏の性加害問題に関し、被害を訴える退所者やジャニーズ事務所関係者等から聴取。
そして今週4日、東京都千代田区の日本記者倶楽部で喜多川氏に拠る性加害問題に就いて報告。曰く「ジャニーズ事務所の芸能人が絡むsexual harassment被害者との面談」を通して「同社のタレント数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれる」という「深く憂慮すべき疑惑が明らかになった」以外に、「日本の報道機関企業は数十年にも渡り、此の不祥事の揉み消しに加担した」と伝えられた。曰く、日本政府が「20年に渡り、子供の性的虐待防止に就き、幾つかの措置を講じて来た」事に留意しつつも、政府及び「此の件について私達が御会いした被害者達と関係した企業」が「対策を講じる気配が無かった」事は、政府が「主な義務を担う主体として、実行犯に対する透明な捜査を確保」し、更に「謝罪であれ金銭的な補償であれ、被害者の実効的救済を確保する必要性」が有る事を物語る。曰く、得られた証言に拠れば「ジャニーズ事務所の特別チーム」又は「独立チーム」の調査は「其の透明性と正当性に疑念」が残り、ジャニーズ事務所の「メンタルケア相談室による精神衛生相談を希望する被害者への対応は不十分」との情報有り。
此等の調査結果に関し、来年6月に作業部会から人権理事会へ報告書が提出されるとの事だが、此の会見と同日の同時刻、同じ日本記者倶楽部内の別室で「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の構成員7人が待機。国連作業部会の語る内容に耳を傾けた後、当事者の会も会見を行い、代表の平本淳也氏は「僕達の声明がすごく直截に伝わり、受け止めて貰えた」。「会見中に声明が頂けた様な印象で、とても感極まってしまった」が「逆にあそこまで語ってくれるとは思わなかったので吃驚」。「真摯に受け止めてくれて、勇気をくれた」と述べた。副代表の石丸志門氏は「この問題は現実に起こった事」で在り、国連は「記者会見の場で疑惑という言葉は使っていない筈」と指摘。「人類史上、最悪の性虐待事件が漸く明るみになった」と語り、会の発起人となった二本樹顕理氏は「人間は過去の反省が無ければ、未来に進んで行けない」が、「性加害の問題を無かった事にする」のでは無く「ちゃんと向き合って頂きたい」。「人類史に残る史上最強の性加害として、教訓として残して行かないとならない」と語った由。
国連が「深く憂慮すべき疑惑が明らかになった」との表現で喜多川氏に依る性加害を認定し、日本の報道機関を「揉み消しに加担した」と糾弾。謝罪や金銭的補償にも言及するに至った事態に対し、本日の日本テレビ系「真相報道 バンキシャ!」に出演した報道記者の池上彰氏は「私自身も男性が性被害を受けていると云う事が、長らくピンと来なかった」。海外でも「加特力神父に依る少年への大規模な性的虐待」の実態が明らかになり「性被害は男女を問わず起こる」と頭では理解していた筈なれども、「性被害の被害者は女性」或いは「小さな女の子」と云う「昔ながらの固定観念」に捕らわれ「深く考えられてはいなかった」との「個人的な反省」を語った。
しかし国連の作業部会が会見を行う直前、日本放送協会/NHKは「大河劇『どうする家康』に“HiHi Jets”の作間龍斗氏が出演」と発表。主演の松本潤氏の他に岡田准一氏、長尾謙杜氏が登場済で「ジャニーズ大河」「抱合出演が多すぎる」と批判されていた所に4人目が追加される事態となり「国連が来て会見してる最中、NHKは呑気だこと」「ジャニーズの性加害の問題を国連で記者会見しているのに、NHKは完全スルー」「国連にまで叩かれてんのにジャニーズ依存症のNHK」「会見の後だと、発表出来ないと思ったんでしょうね」等と批判を浴びた。同じく4日、テレビ朝日系「ミュージックステーション」には事務所所属のKis-My-Ft2、King&Prince、関ジャニ∞が揃って出演。此の問題に関する言及を続けて来た音楽製作者の松尾潔氏を「なんの声明もなく通常運転」「正直驚きました」「これがこの国のメディアの実態ですか」「信じたくないな」と嘆かせた。残念ながら公共と民間を問わず、日本のテレビ局は未だ此の問題と直面する事が出来ぬ模様。