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令和コロナ騒動実録  作者: 澤村桐蜂
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令和2年8月第4週

8月17日(月曜)

 今月5日の時点で、三重県津市の某内科医院に勤務する事務員の新型コロナウイルスが判明。更に同じ医院(クリニック)で看護師2人と事務員1人の感染も確認されたが、三重県は医療機関での感染を公表せず、一旦は全員を「会社員」と発表。

 更に12日、看護師1人の感染が新たに判明。同一診療所内での感染者数が5人となるに及んで、県は感染者集団(クラスター)が発生したと認定。先の4名も含めて、職業を「医療従事者」と訂正するに至った由。()の医院に今月5日に受診した80代女性が、12日の時点で発熱。感染が判明した看護師や医療事務員と受診時に接触した可能性がある事から検査を受け、陽性と判明。()の家族である50代の女性も、後に陽性と判定された。

 鈴木(すずき)英敬(えいけい)知事は「職業を公表する事に診療所や本人の同意を得られなかった」(ため)に「雇用関係を示す言葉」を用いたとの事情を説明しつつ、「県民の皆さんにリスク情報を正確に知って頂く」観点からは「適切では無かった」と(こうべ)を垂れて陳謝。15日の時点で、医院が職員達の感染をホームページで公表。当初は検査対象を有症状者に限定する方針だった三重県も、職員からの感染を否定できない今月3-5日に受診した121人全員を検査する方針に切り替えた模様。

 此の件に関しては、鈴木知事が会見で「感染者が医療機関勤務だと津市に伝えていた」との認識を語るも、実際は情報が共有されず、公表された内容以外は市に伝わって居なかったとの問題も重なった。コロナ()で医院経営が苦しい昨今、何とか公表せずに済ませたい気持ちも分からぬでは無いものの、結果的には傷を広げるばかりに終わってしまった感有り。


8月18日(火曜)

 昨日に内閣府が4~6月期の国内総生産(gross domestic product; GDP)の一次速報を公表。物価変動の影響を除いた実質は前期の1~3月より7.8%減少となり、この成長率が一年間続くと仮定した年率換算は27.8%減。比較可能な1980年以降では最大、東日本大震災やリーマン・ショック直後も超えて戦後最悪の落ち込みとなる由。昨年10月からの消費税増税等も(いく)らか影響したかも知れぬが、新型コロナウイルスの影響が最大の要因で在る事は論を()たない。

 GDPの減少は、本年1~3月期の年率2.5%減から一気に拡大。緊急事態宣言の発令で外出自粛や営業休止が広がり、娯楽や外食を含む幅広い分野で支出が抑えられた結果、「GDPの半分以上を占める個人消費が低下した」事が記録的減少の主たる要因との指摘有り。前期比8.2%減の下落幅は、消費税率が8%に上がった2014年4~6月期の4.8%減を上回り、過去最大。もう一つの内需の柱とされる企業の設備投資も1.5%減で、2四半期ぶりに減少。内需は総じて振るわず、世界的な景気後退により自動車等の日本製品の売れ行きが落ち込んだ影響で、輸出も18.5%減と急落。統計上は輸出に区分される「訪日外国人客の消費」が渡航制限により失われた事も響いた模様。

 状況を重く見た内閣府は「今年度のGDPの伸び率は、実質でマイナス4.5%程度」との先月試算を下方修正。「残りの9ヶ月間で四半期毎に年率で13.6%程度の成長が続かなければ、今年度の伸び率はマイナス4.5%にさえ届かない」という厳しい試算が示される一方で、7月から9月のGDPの伸び率に関して、民間調査会社は「緊急事態宣言が出ていた時期と比べれば経済が回復している」「プラスに転じる」と予測する所が多く、「年率10%を超える」との楽観的推測も出たそうだが、全ては感染の再拡大を抑えつつ経済活動を促進できるか否かに懸かっている。個人的には少々悲観的にならざるを得ない。


8月19日(水曜)

 本日に都内で始まった日本感染症学会の学術講演会で、同学会の舘田(たてだ)一博(かずひろ理事長が挨拶。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の構成員、厚生労働省の助言組織のメンバーも務める舘田氏から、国内に()ける新型コロナウイルスの流行状況に対し、「第一波は緊急事態宣言の後、何とか乗り越えられた」が「今、(まさ)に第二波の真っ只中に居る」と明言。

 取材に対して、舘田氏は「個人的見解」と断りつつも「大きな山」が到来して居り「其の大きさから見て、第二波と捉えるのが適切なのではないか」と話し、「ウイルスの遺伝子で見ると最初の武漢由来、欧州から来た大きなピーク、更に少し変異した今回の波があり、第三波と呼ぶのかもしれない」と指摘しつつも「第一波や二波と云う呼び方」に(こだわ)る事よりも「状況を理解して出来る対策を取る事」の重要性を強調した由。

 盆を過ぎても日本列島の各地で猛暑が続き、一昨日に浜松市で平成30年7月の埼玉県熊谷市と並ぶ国内史上最高の41.1℃を観測。偏西風の蛇行により、先々月はシベリア地域全体が「10万年に一度」の猛暑に襲われるとの椿事ちんじも発生したようだが、日本では来週にも暑さが和らぐ模様。


8月20日(木曜)

 衛生マスクやアルコール消毒製品の転売禁止の続く現状に対し、本日に国の消費者委員会で討論。国内の供給が回復した上に「今後も十分な供給量が確保出来る」見通しで「通販サイト等でも価格が高騰していない」と政府の担当者から説明を受け、委員会は規制の解除を了承した由。此れを機に、花粉症やインフルエンザ対策で不織布マスクやエタノールを楽天市場で仕入れて来た自らの体験を、購入履歴と共に(ひもと)いて見る。

 高騰以前の2017年2月に川本産業の「サージカルマスクER」50枚入り一箱で税別1221円で買い、2018年2月には同じ商品を別の業者から税別1091円で購入。(かつ)て職場で採用されて日々使用した品で、装着感が気に入っていた。2019年2月は同じ商品を、また別の業者で税込1295円で買っているが、先の二店で売り切れていたのか、送料他の事情で有利だったのかは記憶に無い。本年にコロナ禍が勃発(ぼっぱつ)。まず妻のマスクが残り少なくなって来た為、高値に舌打ちしながらも一定の信頼が置けそうな製品を探索する日々を経て、2月15日の時点で初取引の業者から「メジャーリーガー」を購入。50枚入り一箱で税込8000円だが、転売目的の買い占めが横行する当時の相場としては、比較的良心的な所を選んだと記憶している。同時期に勤務先でも、マスク及び消毒用エタノールの在庫が逼迫(ひっぱく)。感染対策上は大いに問題有りと皆が承知しつつも「マスクは一日一枚まで」との通達が出て、食事等で外した後も使い回す事になり、心細い想いをした。

 やがて(まと)まった量のエタノールを調達しては当院へ寄附して下さる篤志家の方々が現れ、マスクも何とか調達された。以前の採用品と比べると着け心地は今一つだが、贅沢は言えまい。其の後は3 月15日からマスクの転売が法で禁じられるも、値段は()ぐに下がらなかった。楽天がsaleを開く毎に各業者のマスクを比較した後、4月9日の時点で新たな業者から無銘のサージカルマスクを50枚入り一箱で税込4280円で購入。毎日の通勤は自家用車を短時間運転するだけで、ジムに寄る以外の外出も少ない。エタノールを時折噴霧しつつ勤務時間外は自前のマスクを短くて数日、長くて一週間、連続して使用。節約に努めても減る物は減るので、今月15日の時点で次に買うマスクを「お気に入り」に追加。全国マスク工業会に所属する会社の製品が50枚入り一箱で税込1375円とコロナ禍以前の相場に近づいたが、「サージカルマスクER」は未だ楽天市場には戻らぬ。

 アルコール消毒製品の転売禁止は5月26(にち)(まで)実行されず、マスク程では無いにせよ、エタノールも価格高騰や品切れが続いた。此方(こちら)は物が液体だけに、検索しても対ウイルス効果の怪しい低濃度の製品ばかりが並んだ事や、50-100mLと少量の無水エタノールしか入手出来ず、購入後に自ら80%に調整した事も有ったが、最近は比較的安価に落ち着いた。


8月21日(金曜)

 昨日に都内で日本感染症学会が、新型コロナウイルスに関するシンポジウムを開催。政府の対策分科会の会長を務める尾身(おみ)(しげる)氏が「全国的に見ると」感染拡大は「大体、ピークに達した」との認識を示し、同分科会の一員で東北大学教授の押谷(おしたに)(ひとし)氏も「大都市で数万人が死亡し、医療が崩壊するといった最悪のシナリオ」が起きる可能性は「低まって来た」と述べた由。

 更に尾身氏からは「接待を伴う飲食店」を中心とした危険因子は「更に低減させる」必要有り。感染者集団(クラスター)の発生が続く現状で「完全な感染予防は不可能」だが、「心の持ち様や対処方法」を考えて置いて「冷静に対応する」事が重要。「新型コロナの実態は、この半年でかなり分かって来た」為、感染者集団の発見は「不安では無く、制御できる機会の発見で安心に繋がる」と考えて欲しい等の提言有り。押谷氏は「全ての場でリスクゼロを求めると、社会や経済の活動を著しく制限せざるを得なくなる」「新型コロナを正しく評価し、何処(どこ)までリスクを許容するかについて社会の同意(コンセンサス)を得ていく事が必要だ」と指摘。正論だと思うが、諸説紛紛(しょせつふんぷん)の現状では、同意形成が成立するのは何時(いつ)になるやら知れぬ。

 今月15日時点の埼玉県に於ける医療現場の状況に関し、自治医科大学附属さいたま医療センターで副センター長を務める讃井(さぬい)將満(まさみつ)氏の報告を読む。「新規陽性者の中で重症化する患者は減少」して「其の重症度も相対的に低くなった」との世界的な傾向が、同県内でも認められる由。4月の第一波に比べると「新規陽性者に占める高齢者の割合が少ない」事に加えて、「有症状者に保険が適用される」「自前の検査体制を整えた病院が増えてPCRを含む検査が以前よりは受け易くなる」、「新型コロナウイルス感染症の専用病床が拡充される」「県の調整本部を司令塔にして患者受入を割り振る制度が整備される」等の変化に伴い、「患者を早く入院させる事が出来る」様になったのが主たる要因との考察有り。

 早期入院の効用として、氏は「自宅や宿泊施設での重症化を防げる」事や「デキサメタゾンやレムデシビル等の重症化を防ぐ薬を早期から投与出来る」事、更には「肺を痛めないで済む」事を挙げる。新型コロナウイルス感染症では「早期から肺炎を発症し、酸素飽和度が低下する」も「呼吸困難感を自覚しない」患者が比較的多いが、其処では「酸素を補うために激しい自発呼吸を行う」事で肺が損傷され、サイトカイン・ストームを介して最終的に「多臓器不全の危険性が上昇する」という事態が起こり得る。此の自発呼吸誘発性肺傷害(Patient Self-Inflicted Lung Injury; P-SILI)と呼ばれる現象が重症化にも関連するが、早期入院による介入はP-SILI予防にも繋がるとの事。秋冬以降の第三波が襲来する前に一息吐()けるのだろうか。


8月22日(土曜)

 昨日付で世界保健機関(World Health Organization; WHO)が、新型コロナウイルス感染抑制対策に関する文書を公開。「他者との間に1メートルの距離を確保出来ない場合」や「地域で感染が拡大している場合」に於いて、12歳以上の子供ならば成人と同様で「特にマスクを着用すべき」だが、6-11歳の子供に関しては「種々の要因によって判断すべき」で、5歳以下の場合は「安全性と総合的な有益性の観点」から「着用を求めるべきで無い」との見解を示した。「年齢の高い子供の方がウイルス拡散により大きな役割を果たしている」事を示唆する研究有りとも指摘する一方で、「其の役割について理解を深めるには更なる情報収集が必要」との事。

 Reuters通信が本日の集計を発表。新型コロナウイルスに依る全世界の死者数が80万人を突破した由。昨日まで2週間の資料から算出した所、24時間で平均5900人近くが新型コロナ感染症で死亡。一時間に246人、15秒あたり1人が死亡している計算となる。死者数が70万人から80万人に到達するのに要した日数は17日で、60万人から70万人までの増加速度と同等。今月16日に米国の死者数が17万人を突破して世界最多となり、翌17日には世界第2位の人口を抱えるインドが死者5万人に到達。ブラジルの死者数は今月8日に10万人を突破した後も増加を続けているが、大半の都市では小売店やレストランが再開している由。累計感染者数が200万人超となったのは以上の三国のみ。致死率はインドが1.9%と世界平均の3.5%より低いが、過少報告が原因かも知れず、米国とブラジルの致死率は約3%。世界的には未だ終息の兆し無し。


8月23日(日曜)

 一昨日の項に日本感染症学会の見解や埼玉県の情勢を記したが、新規患者数が減少傾向に入った事に加えて「新規陽性者における接触歴等不明者数」及び「検査陽性率」と云う二つの指標も低下。潜在的感染者の減少も示唆される状況だが、世間の「第2波はなんとか凌げそうだ」という雰囲気に対して、感染症専門医の忽那(くつな)賢志 (さとし)氏は「重症者数はまだピークを超えていない」「まだ安心できる状況ではありません」と釘を刺す。

 第一波が頂点に達した際の312名には未だ及ばぬものの、全国の重症者数は増加し続けて今月22日の時点で202名。今月18日の時点で東京都における重症者数は32人だったが、本日37名に増加。氏に依ると「東京都は此れまでは感染者数に比べて重症者数を低く抑えて」来たが「此処に来てジリジリと重症者数が増加して」居るらしく、日々の診療を通して「都内での重症患者を受け入れる余裕の有る医療機関が減って来ている」との印象が有るも、大阪府や沖縄県は更に深刻な状況に在る模様。「重症者数の増加は新規感染者数の増加から約2週間遅れる」事に加えて、「新規感染者のうち、高齢者の占める割合が漸増して来た」事を警戒すべきだ、と忽那氏は説く。東京都内の感染者における年齢層の変化を比較すると、6月下旬の1週間は40代未満が87%で50代以上が13%だったのに対し、直近の1週間は76%と24%で、50代以上の年齢層が倍増。若い世代から重症化し易い高齢者へと感染が広がったものと推測されるが、重症者が軽快するまでに中央値で7日、長い者では数週から一ヶ月以上を要するとの報告も有るため、重症者の増加が徐々に医療現場の逼迫(ひっぱく)に繋がる懸念は未だ消えず。

 そんな中で「昨日に全日空が成田-ホノルル線に導入した超大型旅客機、エアバスA380型機が約5か月振りに乗客を乗せて空を飛んだ」との見出しを目にする。大勢が海外旅行を楽しめるような状況では無い筈と(いぶか)しむも、「新型コロナウイルスの影響で観光需要が落ち込み」未だ「運休が続く」同機を活用した「遊覧飛行」が企画され、「約150倍の倍率から選ばれた乗客」が「束の間のハワイ気分を味わった」との本文を読んで納得。乗客達は「空飛ぶウミガメ」の意味を持つ「FLYING HONU」に搭乗すると"Aloha!"と云う機長の挨拶に迎えられ、音楽や映像、mojitoやpineapple juiceの饗応を受けた由。再びrainbow stateの旅を満喫出来る日は、何時来るのだろうか。

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