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令和コロナ騒動実録  作者: 澤村桐蜂
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令和5年6月第3週

6月12日(月曜)

 本日に院内を回って来た情報に()ると、コロナ()に継続されて来た「電話(でんわ)再診(さいしん)に関する特例(とくれい)の扱いが来月末で終了する」模様。(インター)(ネット)で確認した所、全国各地の医療機関が同様の通知を出して居り、また本年4月17日の時点で厚労省が「新型コロナウイルス感染症への対応について【第2報】」なる医療機関向けの小冊子(リーフレット)を発行していた事が判明。「オンライン診療について」の項目には、昨年1月以降は「初診から、指針のルールに沿ってオンライン診療を実施することが可能」とされて来た「新型コロナの時限的・特例的な取扱いに伴う診療報酬上の取扱い」が「令和5年7月31日をもって終了」。8月以降も「情報通信機器を用いた診療」を行い、算定を得たい医療機関は「7月31日までに施設基準を届け出て、指針に沿った診療を行う」事が求められるそうだが、対面診察より診療報酬は少なく、機器を揃えて職員に研修を受けさせて(まで)、継続しようと()う医療機関は多くないものと思われる。

 19世紀の南北戦争後に「奴隷から解放された黒人労働者を低賃金で雇う為に導入された仕組みが始まり」とされる心付(チップ)と云う制度の()(かげ)で、料理店(レストラン)や接客業の雇用主が「最低賃金未満で従業員を働かせ、差額は客からの心付で埋める」事が現代の米国でも認められている。しかし近年、紐育(ニューヨーク)はManhattanでは「連鎖(チェーン店)でcheeseburgerを持ち帰りで注文」するとCredit card払いの端末に「tipを選んでください」、次いで選択肢は「5%」から「20%」迄、若しくは「その他」、或いは「無し」と表示されるのを「勘定台(カウンター)越しに店員が見つめている」等の光景有り。

 斯様(かよう)な「積極的にtipを求める慣行」は現金(キャッシュ)不要(レス)決済の普及に加え、「COVIDの感染拡大で打撃を受けた飲食業界を支えよう」との機運を背景に浸透する一方、店員と接触しない自己(セルフ・)清算(チェックアウト)の店でも導入されているが、背景には「物価暴騰(インフレーション)が進む中で賃金上昇が追い付かず、其の不足分をtipが埋める事を企業側は期待している」。即ち「本来は雇用主が負担すべき人件費の一部を客が肩代わりさせられている」と分析する識者も居る模様。


6月13日(火曜)

 財務省と内閣府が3ヶ月ごとに行う法人(ほうじん)企業(きぎょう)景気(けいき)予測(よそく)調査(ちょうさ)に、約1万1000社が回答。自社の景気の受け止めに関し、先の3ヶ月に比して「上昇した」と答えた企業の割合から「下降した」と答えた企業の割合を差し引いた指数で表すと、本年4月から今月に於ける大企業の景況感は2期ぶりに(マイナス)を脱して(プラス)2.7ポイントとなり、財務省からは「景気の緩やかな回復」に「企業の間で人出の回復への期待は根強く」、「先行きもプラスの見通しを持つ企業が多い」との寸評有り。

 また本日に閣議決定された今年の観光(かんこう)白書(はくしょ)(いわ)く、昨年に於ける外国人も含めた「国内の旅行(りょこう)消費(しょうひ)(がく)」は18兆7000億円。コロナ禍前の2019年を基準とすると67%の水準となり、観光需要が回復に向かう一方、地域の経済や雇用の担い手となるべき観光産業では、生産性の低さや人材不足等の構造的課題が顕在化。

 同じく2019年の時点で就業者が生み出した1人当たりの付加(ふか)価値(かち)(がく)」は、全産業に於ける其れが806万円だったのに対し、観光関連の産業は491万円と相対的に低く、欧米の主要国と比較しても低水準の(うら)み有り。「今後は官民一体となって観光産業の付加価値を高め、“(きせ)げる産業(さんぎょう)”へと変革」、「地域と旅行者の双方が観光の利点(メリット)を実感できる“持続(じぞく)可能(かのう)観光(かんこう)”を目指すべき」等の声も聞かれるそうだが、美辞(びじ)麗句(れいく)流行(はや)り言葉が並ぶと(いささ)か現実味は欠ける。


6月14日(水曜)

 感染症法上に於けるCOVIDの分類が五類に移行して一ヶ月間で「全国の定点医療機関から報告された感染者数が2.5倍に増えた」等の情報を踏まえ、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会長を務めた尾身(おみ)(しげる)氏が、本日に「(だい)(きゅう)()(いり)(ぐち)に入ったのではないか」と発言。「専門家が入口云々と言い出した時は、既に感染拡大の(まっ)(ただ)(なか)」と云うのがコロナ禍に於ける通例で在り、今回も同様と思われる。

 更に氏は「第九波のコロナ感染による死亡者数を、(だい)(はっ)()より少なく」抑える事が出来たならば「其の後の流行に伴う被害も一定程度に抑えられる」可能性が有り、「高齢者のワクチン接種や介護施設での感染対策が重要」とも語ったそうだが、既に世界的大流行(パンデミック)が明けたかの如き生活を最大限に享受(きょうじゅ)している人々の耳には届くまい。

 一方、立憲(りっけん)民主(みんしゅ)(とう)は、COVID感染に()る後遺症への対策に関する法案を国会に提出。当該の法案に於いては「後遺症の実態が十分に解明されず、適切な医療を受けられない」現状が有るも、「対策の実施は国や地方自治体の責務」と明記。政府が必要な財政上の措置を講じて「後遺症の診断や治療方法に関する研究を推進し、医療提供体制や相談体制を整備する」とされている模様。COVID用ワクチンの接種に因るものと疑われる健康被害に関しても、「給付金を速やかに支給する」法案が提出され、同党で新型コロナ対策本部長を務める小川(おがわ)淳也(じゅんや)氏は「コロナは五類に移行したが油断できない」。「財政支援を含め、様々(さまざま)な体制の整備は()れからだ」と述べたとの事。


6月15日(木曜)

 世界保健機関(World Health Organization; WHO)の発表に()ると、本年5月15日から先週11日に至る28日間に於いて、世界では凡そ105万人近くの新規症例と7300の死亡が報告され、WHOが事務所を置く6地域の全てで症例と死亡の減少を認めた。一方、此の28日間で症例が報告されたのは234の国と地域のうち139、59%のみで、其の比率は2022年半ばから減少し続けている。先週11日の時点で7億6700万人以上の確定症例と690万人以上の死亡が報告されているものの、検査が行われる事が減り、世界的に報告が減り続けている以上、報告された症例数は感染率を正確に表現したものとは言い切れまい。

 米国では本日に食品医薬品局(Food and Drug Administration; FDA)が外部の専門家を招集し、会議を開いて「今秋以降に使用するCOVID用ワクチンの成分を如何(いか)にすべきか」を検討。米国内で「複数のオミクロン株が組み合わさり、免疫逃避の性質が指摘されているXBB系統が感染者の大多数を占めている」事が報告され、製薬会社からは「開発中のXBB系統に対応する成分を含むワクチンの有効性」関する説明が行われた後、全会一致で「XBB系統に対応する成分の1価ワクチンを推奨する」との見解が(まと)められた。更に「米国で現在、XBB系統のうちでも最も高い割合を占めるXBB.1.5を成分とするワクチンにするべきだ」との意見も多く上がり、近日中にFDAが判断を下すとの事。

 また本日に東京都がCOVIDの感染状に就いて発表。定点把握の対象になっている都内の医療機関419箇所のうち、415か所から得られた報告に拠ると、先週11日迄の一週間に於ける感染者数の合計は2486人。1医療機関当たり5.99人となったが、此れは前週5.29人の凡そ1.13倍に相当。五週続けて増加傾向となり、また今週12日時点の入院患者数は、前週より49人増えて1032人となる等、感染は拡大に向かっているが、都民の反応は鈍い。

 一昨年3月から昨年3月に近畿日本Touristが「(ひがし)大阪(おおさか)()から請け負った接種関連業務で詐欺行為を行い、凡そ5億8900万円の人件費や委託費を(だま)し取った」とされる問題で、警察は大阪(おおさか)()浪速(なにわ)()の支店長を含む3人を逮捕。「市の指定よりも少ない担当者数を再委託先に発注」「後日に支店長が勤務実績の改竄(かいざん)も依頼」「虚偽の書類を市に提出」等の所業が判明して居る上に、会社側の調査を通して「全国の自治体等に約14億7000万円を過大に請求していた」可能性が出て来た事から、警察は更に調査を進めて行く由。


6月16日(金曜)

 厚生労働省が「今月11日迄の1週間に全国の医療機関、凡そ5000箇所から報告されたCOVID患者数は2万5163人で前週から2731人増加」と発表。1医療機関当たりの平均患者数は5.11人で前週の1.12倍となり、前週から増加が続くのは十週連続。都道府県別では沖縄県が18.41人、鹿児島県が7.37人、石川県が6.58人、埼玉県が6.51人、北海道が6.47人の順で多く、36都府県で前週より増加。同じ1週間に於ける全国の新規入院は4330人で、前週と比べて208人の増加。

 COVID対策について助言する厚生労働省の専門家会合。第122回新型コロナウイルス感染症対策諮問(アドバイザリー)委員会(ボード)がCOVID五類移行後としては初めて開かれ、感染状況や医療提供体制の状況を分析。新規患者数は4月上旬以降緩やかな増加傾向で、5類移行後も4週連続で増加が続いていて、地域別では36都道府県で前週より増え、沖縄県で感染拡大の傾向有り。新規入院者数や重症者数も増え、全国的には医療提供体制の逼迫は見られないものの、沖縄県の状況には注意を要する。

 検出されるウイルスはXBB系統が大部分を占めるが、民間の検査会社で検出された結果に基づく分析では、今月下旬時点には「印度(インド)等で拡大し、免疫逃避の性質を持つXBB.1.16が49%になる」と推定される。過去の状況等を踏まえると、今後は「夏の間に一定の感染拡大が起き、医療提供体制への負荷が増大する」可能性も考えられ、「感染やワクチンで獲得された免疫が弱まる」「より免疫を逃れやすい可能性がある変異ウイルスの増加」「接触する機会の増加に依って感染状況に与える影響にも注意が必要」との事。

 また厚生労働省は「先月下旬に献血に訪れた16歳から69歳、1万8048人」に関して「献血時の検査用検体の残余血液」を調べ、COVIDに感染した場合にだけ作られる抗N抗体を持つ者の割合を分析。抗体の有率は全国で42.8%となり、本年2月時点の42.0%から(ほとん)ど変化無し。年代別では16歳から19歳が60.5%、20代が53.0%、30代が51.4%、40代は46.0%、50代は36.2%、60代は28.8%と年代と共に低くなる一方、沖縄県が63.0%、東京都と宮崎県で52.9%、大阪府で49.5%と高く、石川県で34.1%、青森県で34.9%と低い等の地域差有り。

 此等の結果に関し、専門家会合座長の脇田(わきた)隆字(たかじ)氏は「2月から先月に掛けて其れ程、感染が拡大しなかった事を示している」。「免疫に依って感染を防ぐ力は時間と共に下がる」故に「全体としてコロナに対する免疫が下がって来ている可能性が有る」と評したとの事。

 我が国に於いてCOVID用ワクチン接種は来年3月迄、無料接種が継続される予定で、先月から「高齢者」等を対象に接種が進められているが、9月からは「5歳以上の全員」を対象にした接種が始まる予定。現在は「従来株に対応する成分」と「オミクロン株BA.5系統等に対応する成分」を含んだ二価(にか)ワクチンで行われているのに対し、厚生労働省の専門家分科会は「9月から始まる接種では、現在流行の主流となっているXBB.1系統だけに対応する一価(いっか)ワクチンを使う」方針を決定。従前の2価ワクチンよりもXBB.1系統の働きを抑える効果が期待出来る事や、今後に従来株が流行する可能性は極めて低い事が理由として挙げられる一方、接種対象者に就いては「最新の知見や外国の状況等を踏まえ、9月の接種開始を前に改めて分科会で議論」した上で決定するとの事。


6月17日(土曜)

 感染状況の変化に伴い、米国ではCOVID用ワクチンの成分を如何にすべきかとの議論が重ねられて来たが、昨日になってFDAが「今秋以降に使用される分に関しては、XBB.1.5系統に対応する一価ワクチンの開発を製薬各社に推奨した」旨を発表。

 XBB.1.5は複数のオミクロン株が組み合わさり、免疫から逃れやすい性質が指摘される変異株にして、今月10日の時点で米国内の新規感染者中の最多、(およ)そ4割を占めると推定される。既に複数の製薬会社がXBB系統に対応するワクチンの開発を進めて居るとの事だが、今回の推奨を受けて更に開発が加速する見込み。日本も遠からず追随するものと予想される。


6月18日(日曜)

 喜多川(きたがわ)()(せい)加害(かがい)問題に対してジャニーズ事務所が設置した再発防止特別チームが今週12日に東京都内で会見を行い、元検事総長で弁護士の(はやし)眞琴(まこと)氏と飛鳥井(あすかい)(のぞむ)氏が出席。林氏は120人の報道陣人に「5月29日に第1回の会合を開催した」と語り、「今に至るも事務所は性加害を事実認定して居ないが、チーム名には再発の語が入っている」矛盾を指摘されると「事務所側が設定した名前だが問題は無い」。「検証する時々で事実認定するのが特別チームの専権」と述べ、「幹部への聞き取りは必要」だが、事務所所属経験者への調査は「網羅的にはしない」と消極的。此の日も登場せず、会見を避け続ける藤島(ふじしま)“Julie”景子(けいこ)社長に対し、飛鳥井氏が「いずれ再発防止の提言をした際には、事務所代表者としての考えを明らかにして」と語気を強める一方で、仮にチームが事実認定をしても「事務所側が認めるかは分からない」上に「法的責任を追及するチームではない」との説明有り。

 週刊(しゅうかん)文春(ぶんしゅん)が「(かつ)て同事務所に勤めていた男性職員も事務所所属の少年達に性加害」と報道した件に関しても、本チームの調査対象に為り得るとの事で、飛鳥井望氏は「此れだけの歴史と組織規模が有る事務所なので、色々なセクハラ行為が有ったとしても不思議ではない」。「性加害に甘い風土があったのかは此のチームが検討すべき事」だと主張したが調査や提言の日程、中間報告の有無は「全く決まっていない」との事。2時間の予定だった会見は何故か約1時間20分経過の時点で終了。司会から理由の説明も無い(まま)に「残りの質問は電子郵便(メール)で」と一方的に打ち切られた由。

 同日夜の日本テレビ系“news zero”も会見に就いて報道。月曜キャスターを務めるジャニーズ事務所所属の櫻井(さくらい)(しょう)氏は「先週も()(つた)えしました通り、此の様な事が二度と起こらない体制を整えないといけない」。「其の(ため)何処(どこ)如何(どう)問題で、如何変えればいいのか、きっちり検証する事が()ずは大事だと思います」等と神妙な面持ちで語り、続けて有働(うどう)由美子(ゆみこ)氏が「そして、其の検証の先にジャニーズ事務所が如何実行していくのか」「私達、“zero”も(しっか)り御伝えして行きたいと思います」と締めた模様。

 本年4月、5月に帝国(ていこく)劇場(げきじょう)で上演された堂本(どうもと)光一(こういち)氏主演の“Endless SHOCK”及び同時上演の“Endless SHOCK -Eternal-”は、実際の構成や演出は既に堂本氏が行うとされているにも関わらず、立ち上げ時に生前の喜多川氏が関わった事から、劇場の張紙(ポスター)等には今回もJOHNNY H. KITAGAWAが“Eternal Producer”で在る旨が麗麗(れいれい)と書き込まれていた。他の舞台でも続けられていた此の慣例に対し、同じく帝国劇場で今年9月から上演され、事務所の若手芸能人が多数出演する予定の舞台「ドリームボーイズ」に於いて「昨年まで“Eternal Producer”として刻まれていた喜多川氏の名前が外された」事が12日に判明。制作する東宝(とうほう)は、取材に対して「報道等の状況を見るに、被害を申し出ている方がいらっしゃる」事を(かんが)みて「当社と株式会社ジャニーズ事務所の総合的な判断」に基づいて「外す決断を致しました」と回答した由。

 署名活動を通して事務所批判の急先鋒となっていた「PENLIGHTペンライトジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」に関し、先月辺りから「其の実態は北朝鮮と関わりの有る慰安婦支援団体ではないか」と電網上で糾弾が激化。先月31日のtweetで高田代表が弁明するも批判は鎮静化せず、6月4日で“change.org”を介した署名を終了。今週13日の回線(オン)接続(ライン)会見で「7日付で新たに約2万5000人分の署名をジャニーズ事務所に送った」旨を公表。最終的に4万人超の賛同者を集めるも、署名を起点にした事務所批判の勢いは今後、減弱に向かうのか。或いは転がり出した石は止まらず、次の景色が見えて来るのか。

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