令和4年4月第4週
4月17日(月曜)
厚生労働省が発表した本日に於ける国内の新たな感染者は空港検疫を含め3499人。東京都内では474人で、先週月曜より16人増。国内で亡くなった者は大阪府で2人、香川県で2人、佐賀県で1人、兵庫県で1人、宮城県で1人、山口県で1人、東京都で1人の合わせて9人。新型コロナウイルスへの感染が確認され、人工呼吸器やECMO、或いは集中治療室等を用いた治療を受ける重症者は、昨日より1人減って57人。
一昨日に初代国家主席、金日成氏の誕生日を迎えた北朝鮮に於いて、国を挙げて祝賀気分が演出される中、朝鮮労働党機関紙の労働新聞が、本日付で「首都、平壌中心部に新たな市街地が完成し、16日夜に記念式典が開かれた」旨を報道。紙面には「北朝鮮の総書記、金 正恩氏が和製英語のtape cut、標準英語で言う所のtape cutting若しくはribbon-cutting ceremonyを行う」様子、「花火が打ち上げられる中、集まった群衆が街路を埋め尽くす」様子の写真も掲載。当該の市街地は昨年2月に着工、合わせて1万世帯が暮らす高層住宅や公共施設などが整備され、金総書記は「首都での現代的な住宅の建設は市民に対して、より文明的な生活環境を提供する為の我が国の宿願事業だ」と語り、「経済制裁や新型コロナ対策などで経済が打撃を受けるなか、国民生活に配慮する姿勢を強調した」との事。
一方、米国首都の紐育、Broadwayでは最長記録を更新し続けてきた音楽劇、「歌劇座の怪人」の最終公演。1988年1月から公演が始まり、同地に数有る音楽劇の中で最長記録を更新し続けて来た本作なれども、世界的大流行に因り凡よそ1年半に渡って休演した後、再開となるも集客数が伸びず終演が決定。昨日公演を最後に35年余の歴史が一先ず幕を下ろす事となり、観客は総立ちで何度も大きな拍手を送った由。
4月18日(火曜)
本日は新規感染1万1589人、死亡20人、重症55人。東京都では新規感染1696人で先週火曜より206人増、重症は昨日より1人増の6人で方、1人が死亡した由。
COVID用ワクチン接種の接種後の死亡に関し、国が「因果関係を否定出来ぬ」と認定した場合には予防接種法に基づき、死亡一時金などが支給される。既に「20代から90代までの男女41人」が認定済だったが、昨日に生労働省が「23歳から93歳の男女12人」も新たに救済の対象と判定。うち11人は高血圧症や糖尿病などの基礎疾患を有し、死亡診断書や診療録の記載などを踏まえて因果関係が否定出来ないとの判断に至った模様。ワクチンの種別、接種回数などの詳細は不明なれども、此れで死亡一時金支給等が認められたのは総計53人。今回発表された12人のうち1人は葬祭料のみの申請だったとの事。
慶応大学教授の岡野栄之氏を含む研究者集団が、Experimental Neurology誌5月号に“The original strain of SARS-CoV-2, the Delta variant, and the Omicron variant infect microglia efficiently, in contrast to their inability to infect neurons: Analysis using 2D and 3D cultures”と題した論文を発表。
COVID-19は神経の損傷、全身性の炎症、免疫細胞の異常を引き起こすが、このうち神経の損傷は「SARS-CoV2が中枢神経系(Central Nervous System/CNS)の細胞に直接感染し、毒性作用を発揮する」事に起因すると思われる。一方でSARS-CoV2には絶えず変異が生じているが、ウイルス変異と中枢神経系細胞に対する感染力との相関を調べた研究は殆ど無く、其の詳細は未だ不明とされる。岡野氏達は今回、中枢神経系の細胞、即ち「神経幹細胞や神経 前駆細胞、神経細胞、星状細胞、および小膠細胞」に対する「感染力がSARS-CoV2変異株間で異なるか如何か」を調査したとの事。
具体的には、ヒト人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell/iPS細胞)から大脳皮質の神経細胞、星状細胞、小膠細胞、及び脳の一部を再現した類器官を作製。此等に従来型とデルタ株、オミクロン株の特徴を人工的に再現したウイルスを添加した所、神経細胞、星状細胞、神経幹細胞や神経前駆細胞にはウイルスが感染しなかったのに対し、小膠細胞は従来株とデルタ、オミクロン株の何れにも感染した。小膠細胞は脳内で免疫細胞としての役割を果たすと考えられているが、或いはCOVID患者に於いて記憶障害、頭に靄が掛かるかの如く思考力が落ちる“brain fog”が見られる事と何らかの関連が有るのかも知れぬ。岡野教授は「今回の結果とブレインフォグ等の症状が具体的に如何、繋がるのか、更に研究を進めたい」と語っている由。
4月19日(水曜)
本日の新たな感染者は1万2094人、東京で1514人。国内で亡くなった者は新潟県で3人、京都府で2人、北海道で2人、東京都で2人、香川県で2人、三重県で1人、兵庫県で1人、千葉県で1人、和歌山県で1人、大阪府で1人、宮城県で1人、山口県で1人、広島県で1人、愛知県で1人、神奈川県で1人、長野県で1人の総計22人。重症者は62人。
第121回となる新型コロナウイルス感染症対策諮問委員会。所謂、専門家会合が本日に開催。提示された資料に曰く、昨日迄の1週間に於ける全国の新規感染者数は前週と比べて1.06倍と増加。首都圏の1都3県では東京都が1.05倍、神奈川県が1.02倍、埼玉県が1.11倍、千葉県が1.03倍。関西では大阪府が1.14倍、京都府が1.24倍と多いが、兵庫県が0.97倍と微減。東海では愛知県が0.98倍と減るも岐阜県が1.01倍、三重県が1.05倍。沖縄県で1.64倍、石川県で1.34倍、愛媛県で1.31倍等と33都道府県で前週より増加。直近1週間に於ける人口10万人当たりの感染者数は石川県が74.17人と全国で最も多く、次いで福井県が72.63人、山形県が71.16人、鳥取県が68.67人、沖縄県が68.21人となり、東京都は56.89人、大阪府は46.58人、全国では46.33人との事。
総評として、現在の感染状況は「下げ止まった後、全国的に緩やかな増加傾向」を認め、「特に大都市部で20代や10代以下の増加が見られる」。重症者や死亡者の数も「昨冬の第8波から大きく減った後、横這い」。今後も「横ばいから緩やかな増加傾向」で感染が続く可能性が有り、従前の傾向を踏まえると「接触機会が多くなる大型連休が明けた後で感染が拡大」「一旦、減少するも夏に向けて感染再拡大」となる可能性大か等の報告有り。
また専門家会合の座長たる脇田隆字氏や東北大学教授の押谷仁氏を含む4人の専門家が纏めた文書に拠ると「対策緩和が進む中で現感染者数が増加に転じる地域が多くなり、今後に感染第九波が起きる可能性が高い」。日本国内でSARS-CoV2感染で免疫を獲得した者が「本年2月から3月に行われた抗体調査で32.1%」と少ない事等から「第9波は第八波より大きな規模になる」可能性有り。高齢化率が高い我が国に於いて「ワクチンの接種率が上がらない儘、感染規模が増大する」と仮定した場合、「死亡者数は高齢者を中心に海外より多い状況で推移する」可能性有り等の警告と共に、感染対策継続の重要性が指摘されたが、諮問委員会自体は五類移行に伴い「次回以降は感染者数急増等の状況に応じて不定期開催」となる模様。
専門家会合の構成員達は、会合が開かれない間も必要に応じて「感染状況や医療の状況、新たな変異ウイルスの動向」等を確認して分析。感染者数は全数報告から定点把握に移行。医療体制について、専門家は今後、「保健所に報告される病床使用率」、当面は現行の方法で報告が続けられる「入院患者数や重症者数」等に基づく分析から「通常の医療が提供できず、医療逼迫に陥る事は無いか」の観点で経過観察を継続。変異株に対しては「海外に於ける出現、感染時の症状に関する情報収集」を続け、国立感染症研究所等は「今後もウイルスの遺伝子解析を行う」ものの「規模は縮小」。
脇田隆字座長は「感染状況は定点把握に依る情報を基に、資料が十分に集まった所で評価する必要が有る」と語ったそうだが、例えば印度尼西亜では「移動制限の終了に回教の断食月明けの連休が重なり、帰省目的で約1億2000万人が移動する」見込みだと報じられる等と、国内外で官民挙げて緩めた警戒は容易に戻せまい。若し第九波が襲来すれば、悲惨な状況を招く事も懸念される情勢か。
4月20日(木曜)
本日の新たな感染者は1万543人で、都道府県別では東京都1449人、神奈川県769人、大阪府691人、北海道644人、愛知県501人。死亡は大阪府4人、愛知県4人、京都府2人、北海道2人、神奈川県2人、鹿児島県2人、千葉県1人、大分県1人、奈良県1人、富山県1人、山口県1人、山梨県1人、広島県1人、東京都1人、沖縄県1人、福井県1人、福岡県1人、秋田県1人の総計28人。重症者は57人。
東京都はCOVID感染状況と医療提供体制について、専門家による経過観察項目の分析結果を公表。何れも4段階で設定される警戒水準のうち、下から第2位が維持されるも、新規感染者数7日間平均は昨日時点で1166人で前週の凡そ105%に相当。四週連続の百%超となり、入院患者数も前週に38人を加えた553人となり二週連続で前週より増加。専門家は、「現時点では感染拡大の速度は速くない」が「動向を注視する必要が有る」と警戒を呼び掛けた由。
4月21日(金曜)
本日の新たな感染者は1万74人、死亡は24人、重症者は59人。本日の新規感染513人、累計180万6107人が報告された埼玉県では本日に感染対策の専門家会議が開かれ、五類移行後の対応に就いて検討。会合後の会見で同県知事の大野元裕氏は「全ての医療機関で入院依頼を断らない仕組みの構築」を目指すと宣言。具体的には「多くの医療機関でCOVID患者を受け入れられる様、医療機関への説明会や研修を実施」すると共に「防護具や設備整備への支援」を行い、入院調整を促す為に「医療機関同士で患者の受入が可能な病床の確認を進める」一方、「重症患者の入院調整は県が支援する」との事。軽症、及び中等症患者向けの病床は6月末迄、重症患者向けは9月末迄、県が確保するとの事で、大野知事は「5類への移行後も安心して療養できるよう、体制をしっかり構築することを目指したい」と語った由。
先月13日から国会で「マスク着用が個人の判断に委ねられる」事になった後も、衆議院では2020年4月以来の感染対策として「本会議に於ける密集を避けるべく、採決以外の質疑等が行われている際に半数程度の議員が議場の外に出る」措置を執って来たが、21日午前の議院運営委員会の理事会で与野党が対応を協議。感染症法に於けるCOVIDの位置が季節性流行性感冒等と同等の5類に移行する5月8日以降は従前の措置を終了とし、「全議員が出席可能とする」旨を確認。本会議場の演壇に設置されたアクリル板の撤去も最終決定となり、此れで国会に於ける特別なCOVID対策は全て終了となる模様。
我が国にコロナ禍の幕開けを告げた豪華客船、Diamond Princess号の運航も再開。米国や欧州、亜細亜諸国から乗り込んだ旅客を乗せた船は昨夕に横浜港を出発し、本日18時台に茨城港常陸那珂港区へ寄港。埠頭では地元の保存会が太鼓を演奏して出迎え、各国の乗客は乗合自動車に分譲するとNemophilaが見頃の国営ひたち海浜公園、青銅製立像としては世界最高の牛久大仏等の県内の観光地、或いは栃木県の日光へと出発。茨城県としては富裕層の外国人を呼び込んで地域経済活性化に繋げるべく、今後も客船誘致に力を入れて行く意向で、Princess号は今後、岩手県や青森県、韓国の釜山等を周遊する予定との事。
凡そ千三百年前の創建時から残る国宝、薬師寺の東塔は2009年から塔を解体して組み直す大規模な修理が行われた。修理完了を祝う2020年の落慶法要はコロナ禍で延期となるも、本日から25日まで催される事となった由。本日の法要には修理が無事に終わる事を願って写経を納めた者等、凡そ2000人が参列。通常は閉じられている東塔の扉が開かれた後、塔の前に設けられた舞台で同寺の管主、加藤朝胤氏等が「修理に合わせて作られた本尊に魂を入れる」開眼の儀を行い、参列者も読経で修理の完了を寿いだ由。
近畿日本Tourist が「東大阪市から委託を受けたCOVID用ワクチン接種の電話受付業務」で「人件費を偽り、約3億円を過大に請求していた」件に関しては、先週12日の項に記した通りだが、以降の調査から「静岡県内の2つの自治体で7000万円近い過大請求が存在した」事も判明。税金を活用した事業に於ける一連の不正に関して同社の社長、高浦雅彦氏は観光庁の和田浩一長官に報告を行い、長官から「他にも同様の事案が無いか調査を徹底」「不正の原因を究明し、再発防止に取り組む様に」と口頭での注意を受けた由。
4月22日(土曜)
本日の新たな感染者は1万660人。東京都は1477人で先週土曜より280人増え、六日連続で前週同曜を上回った。死亡者は埼玉県で2人、岩手県で2人、愛知県で2人、青森県で2人、京都府で1人、佐賀県で1人、北海道で1人、千葉県で1人、大阪府で1人、奈良県で1人、東京都で1人、熊本県で1人、福岡県で1人、群馬県で1人の総計18人。重症者は56人。
4月21日から23日に東京国際Forumを中心に、日本医学会総会の開催。22日に開かれたシンポジウムの中では、世界保健機関(World Health Organization; WHO)で事務局長補としてCOVID対応にあたった国際医療福祉大学大学院教授の山本尚子氏が発言。感染が広がり始めた直後の2020年1月にウイルスの遺伝情報が登録され、ワクチンの開発が始まるなど、素早い対応が行われた一方、ワクチンの接種率については「2022年半ば迄に全ての国で70%以上」としたものの所得の低い国々では行き渡らず、低い接種率に留まったと回想。そのうえで、山本教授はワクチンや治療薬を公平に利用出来る仕組みを作るために「G7の議長国としての日本の統率力に期待したい」と述べた。また米国政府の首席医療顧問として対策を主導したAnthony Fauci博士は動画声明を寄せ、今後もCOVIDの根絶や排除は出来ぬが「最善の対応は社会を混乱させない程度に抑える事」で「流行性感冒と同様のワクチンの追加接種やマスクの着用と云った常識的な感染対策、換気を続ける事で達成出来ると信じている」と語った由。
4月23日(日曜)
厚生労働省が発表した本日の新規感は8694人。死亡は20人で、重症者は59人。今月12日の日本外国特派員協会に於ける岡本Kauan氏の会見に関し、関連する内容の記録番組“Predator: The Secret Scandal of J-Pop”を放送したBBCは「氏は東京都内の喜多川氏宅で15から20回に渡り性的虐待を受けたと述べた」と報じた。CNNも岡本氏の主張や「他の被害者が名乗り出る事を期待」との発言を取り上げ、AP通信は「通常、性的暴行を受けた疑いの有る被害者を特定して報道しない」姿勢を再確認した上で「氏は報道で身元を明かし、自身が特定される事を選択した」と説明し、記者会見での発言を詳細に報道。英国のGuardian紙もジャニーズ事務所との癒着から沈黙を続けた日本の大手報道機関に対して「娯楽業界の頂点に立つ者に依る性的虐待を調査せずに居たと批判されている」と指摘。米国の業界誌The Varietyもsite上に記事を掲載し、岡本氏が歌手として活動する伯剌西爾でも、同国版のRolling Stone誌が報道。
嘗て1974年10月22日に特派員協会が時の内閣総理大臣、田中角栄氏を招いて開いた報道昼食会で金脈問題が追及された後に日本の報道機関も後追いで報道を始め、田中氏失脚を加速させた故事と同様、今回も外圧に突き動かされると黙って居られなくなったのか、13日朝刊で扱いは小さいながらも、朝日新聞「ジャニー喜多川氏から性被害」「元ジャニーズJr.の男性会見」。読売新聞「ジャニー氏から『性的行為』公表」「当時10代の男性」。毎日新聞「『前社長から性被害』元ジャニーズ歌手記者会見」。産経新聞「ジャニー氏から『性的被害受けた』元所属歌手会見」。東京新聞「元ジャニーズ所属歌手が会見」「前社長から性的被害」。日経新聞「ジャニー氏から性的被害と主張」「元ジャニーズ所属歌手」等と報道。
弁護士ドットコムニュースが公開した岡本さんの会見動画は、1週間で260万回も再生される一方、NHKは13日夕の報道番組で岡本氏や事務所側の主張を簡潔に報じ、websiteに簡潔な記事を掲載したものの看板の報道番組、“NEWS WATCH 9”や“Close-up 現代”で取り扱う事は無かった。各局で「きちんと報じよう」と云う報道部門と「他の番組に影響させたくない」制作や編成の側とで鬩ぎ合いの状況か。との声も聞かれるが、此の状況下でも日本テレビは「昨年迄と同様、8月下旬に放送が予定される24時間テレビの司会進行にジャニーズ所属の芸能集団を起用する」旨を「同じ事務所に所属する芸能人が出演する報道番組内で発表」と癒着を通り越し、事務所との一体化を疑う。Reporters Without Borders/国境無き記者団が毎年発表する報道自由指数。所謂、世界報道自由度順位表に於いて、日本は昨年に180箇国中71位の成績だったが、今年は更に順位を落とす事は必定。
今週19日水曜配信の文春ONLINEにて「7週間で9人目」の被害者が「高校1年生、16歳」時の喜多川宅訪問に於ける被害を告白。「その日、家にいたのは7人」だったが、喜多川氏に「洗濯するから脱いじゃって」の言葉と共に入浴を指示され、躊躇するも催促に抗えず、言われる儘に脱衣、入浴して風呂から上がった所に渡されたのが「浴衣と緩々の白いブリーフ」だったのは喜多川氏の性的嗜好か。氏に指定された場所に寝た所、「ジャニーさんが僕の足元に来て、足のマッサージを始め」た後に「股間の周りを触り始め」たが、「襲われるのは嫌だった」証言者は「誰かが起きたら居なくなる」との防衛策を頼り、下着の中に手が入って来た所で隣に寝ていた友人を起こすと、喜多川氏は退却。生々しいと同時に、呪的逃走に因り鬼の餌食になる事を免れる昔話の如き体験談に続き、週刊文春4月27日号では「性加害を放置したジャニーズの大罪」「2人の元ジュニアが新告白」との記事が掲載されたそうだが、其方は未見。
そして20日早朝、NHK総合televisionの画面右上に「元ジャニーズ カウアン・オカモトが明かす故ジャニー喜多川氏の“素顔”」との題名が表示され、喜多川氏に依る性加害問題が報道番組の如き体裁で10分間の放送。岡本氏が受けた被害が淡々と説明された事が視聴者を驚かせるも、実際は政治家女子48党所属の織田三江氏が衆議院千葉5区の補欠選挙に立候補した事に伴って放送された同党の政見放送。公職選挙法150条「日本放送協会及び基幹放送事業者は、その録音し若しくは録画した政見又は次に掲げるものが録音し若しくは録画した政見をそのまま放送しなければならない」の規定を利用したもので、喜多川氏に関する民事訴訟に関して「有罪判決」を受けた等、厳密には事実と異なる部分も見受けられた由。
大手報道各社の取材に対し、ジャニーズ事務所は「経営陣、従業員による聖域なきコンプライアンス順守の徹底、偏りのない中立的な専門家の協力を得てのガバナンス体制の強化等への取り組みを、引き続き全社一丸となって進めてまいる所存です」と当たり障りの無い声明を出す一方、今週21日の時点で取引先企業に現状を報告。喜多川氏の姪で通称 Julieこと藤島景子氏の名義で出された文書には、今回の性被害の疑惑について、喜多川氏が故人であることから事実確認は困難だとしつつ「問題がなかったなどと考えているわけではございません」。「メディアでの報道、告発等については真摯に受け止め」た上で「社員や所属タレント向けの相談窓口」を設け、「ヒアリング及び面談」を実施。今後は嘗て事務所に所属した者に関しても「外部専門家の相談窓口」を設け、「特定の個人に情報や権限が集中する」事態を防ぐ目的で社外から取締役を招き、芸能人育成の現場でも「専門家や中立性のある窓口」への相談が可能な体制・制度を準備中と記されていたそうだが、文書を入手した朝日新聞が事務所に確認を求めるも「現時点ではお答えできない」「近々発表する」としか答えなかった由。
対して女性セブン誌の5月4日号では、BBCの告発番組に顔出しで出演した一人、仮名「リュウ」氏が、BBC側を批判。被害者の大半が喜多川氏への感謝の言葉を口にした事が青少年に対する性被害に於ける所謂“grooming”だと指摘された事に関し、リュウ氏は「自分は其れに当たらない」。「僕は今でもJohnnyさんを演出家として尊敬しています」。「洗脳や刷り込みではなく、Johnnyさんの特別な才能や審美眼は結果が全てを物語っているし、Johnnyさんが見出した集団で人気が出なかった事が有りますか」。「BBCにgroomingと決めつけられ、反論の機会も与えられない儘、放送された事には強い憤りを覚えます」等と語ったそうだが、現在も洗脳が解けて居なければ「自身は洗脳されていない」と考えるのは当然。結果的に芸能界で成功したか否かを基準にするのも不適切と思われる反面、groomingの語は加害者の人格を全面的に否定する文脈で登場する事が多く、客観性評価を欠く印象も受ける。前掲の事務所発表に沿った内容が並んだ後に「被害の性質上、当事者への聞き取りにも限界がある」、必要なのは調査だけでなく「ファンや共に仕事をしてくれているかたがたへの説明やフォロー」や「タレントたちの名誉回復」だと記事は続くが、総じて事務所を擁護する論調。
また告発者たる岡本Kauan氏に関しては、2022年11月の時点で「後に国際手配を受ける東谷義和氏と対談」「喜多川氏の性虐待を告発すると共に、他の被害者に関しても実名を挙げたが真偽は不明」、先月11日は「ジャニーズに訴えられてしまいました」とのTwitter投稿を行うも事実では無く「併記されたURLは募金を促す東日本大震災復興支援のサイトに繋がっていた」との行動に関する疑念も早くから報じられていた。先述の記事で、女性セブン誌は「ここ数年は拠点を日本に置いていた」岡本氏に関し、「元同居人でミュージシャン」の男性が「一緒に音楽をやろう」との誘いに応じて上京するも「200万円以上の損失を出し、借りてないお金の借用書を書かされ」、他の仕事もさせられたが正当な報酬が払われる事は無かった等とも報道。氏は必ずしも聖人君子では無く、他者に対しては加害者で在る可能性も否定出来ぬが、其の事と氏の告発した性被害の真偽は別個の問題として論じられるべきだろう。
一部識者からは「ジャニーズという特別な価値観を共有することが大前提」で、事務所を脱退した者は「条件を満たさない欠陥品と感じてしまう」と云う、常人と異なる思考を有する支援者達も「共犯関係組織の一員」との厳しい見解も聞かれる。「権力者、タレント、ファンの三位一体」で喜多川氏の帝国を成立させて来た支援者の中には以前から喜多川氏の所業に就いて察していた者も多く、此の期に及んでも「性的加害の告発会見で蝶ネクタイしているのが違和感でしかない」。或いは「もし自分が売れていたら、会見なんか開かなかっただろう」。「売名行為にしか思えなかった」、自分の応援する芸能人の事を優先して「今頑張っている人たちもいるのに、妨害でしかない」等と岡本氏を鞭打つ者も絶えぬが、今回の一件が憂うべき我が国の状況が多少なりとも好転させる契機となるのか。感染状況と共に見守りたい。