令和5年4月第3週
4月10日(月曜)
本日の新たな感染者は空港検疫を含めて3290人、東京都内で458人。死亡は大阪府で4人、新潟県で2人、石川県で2人、京都府で1人、北海道で1人、宮城県で1人、愛知県で1人、青森県で1人、鹿児島県で1人の総計14人。新型コロナウイルスへの感染が確認され、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation; ECMO)、集中治療室を用いた治療を受ける重症者は58人で、9日と比べて2人増えた。
帝国Databankの発表に拠れば、昨年度に「全国で1000万円以上の負債を抱え、法的整理の手続きを執った」事業者の数は6799件で前年度に比して883件、14.9%増えた。増加は三年振りで、前年度からの増加が800件を超えたのはLehman Brothers破綻から世界金融危機に至った2008年度以来、14年振りで負債総額は2兆3385億9100万円。原材料や勢力価格の高騰を含む物価高に因る倒産が前年度の3.4倍に当たる463件、後継者不在に因る倒産が487件となり、いずれも過去最多。所謂、零零融資。即ち「新型コロナウイルス感染症特別貸付と特別利子補給制度、両方の要件を満たした場合」に「実質は無利子、無担保で融資を受けられる」制度の返済が本格化した所に、物価高や人手不足が追い討ちを掛けた事で中小企業が経営再建を断念する事例が多く、今後も倒産は増加傾向で推移すると予測される由。
4月11日(火曜)
本日の新たな感染者は9940人。東京都内では先週火曜より133人を加えた1490人の新規感染が報告され、前週同曜を上回るのは十一日連続。亡くなった人は22人。重症者は62人。
オミクロン株に対応したワクチンの接種は「感染拡大の当初に広がった従来のウイルスに対応したワクチンで初回と2回目の接種を済ませた」後、「5歳以上を対象とした追加接種」として行われて来た。Pfizerが「オミクロン株のBA.4やBA.5に対応する成分」と「従来株の新型コロナウイルスに対応する成分」が含まれるmessenger RNAワクチンに関し、「COVID用ワクチンを一度も接種していない者が初回の接種から使える」様に承認を申請した旨を発表。接種対象の年齢に関しても「生後6ヶ月以上」に対して「オミクロン株対応ワクチンを初回の接種から使える」様にとの拡大申請を行い、「生後6ヶ月から4歳の小児」に対して「追加接種としても使える」様にする事も申請したそうだが、オミクロン株対応ワクチンを初回接種から使える様に求める申請は国内で初との事。
嘗て毎年95万人が訪れた隅田川花火大会は「東京の夏の風物詩」として知られるも、コロナ禍に因り三年連続で中止されて来たが、本日に花火大会の実行委員会が会議を開き、「本年7月に四年振りの開催」を決定。開催を決めた理由に就いては「新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが本年5月に季節性流行性感冒等と同じ五類に移行する為」で、「7月29日土曜の19時から20時半迄」に「四年前と同規模、凡そ2万発の花火を打ち上げる」予定との事。
4月12日(水曜)
本日の新たな感染者は1万176人、死亡は32人、重症者は63人。東京都内で新たに1334人が感染。日本外国特派員協会で重要な記者会見が開かれた件に関しては、後日に詳述する予定。
厚生労働省は「COVID五類移行後に於ける流行状況の監視体制」案を提示し、専門家部会は此れを了承。このうち「流行状況の把握」に就いては現状「医療機関が全ての感染者を報告」「国が毎日公表する」全数把握の体制だが、移行後は季節性流行性感冒と同様に「凡そ5000の医療機関に週に1回、感染者数等を報告させる」定点把握に変更。医療機関の逼迫状況の目安となる入院者数や重症者数に関する医療機関からの報告は「五類移行後も一定期間、継続」される予定だが、軈て定点把握に変わるとの事。死亡者数に就いても「都道府県等による毎日の報告と公表」が終了し、今後は人口動態統計を基に「死者の総数を2ヶ月後」、「詳細な死因別は5ヶ月後」に推移を把握する方針だが、集計に時間を要する事から、此等とは別に「協力を得られた一部自治体に於ける死亡の総数」を「1ヶ月以内を目処に集計」して増減傾向を把握する予定との事。何時迄も最大限の警戒では割に合わぬ事は道理とは言え、感染拡大に対する感度が鈍るのは不可避で一抹の不安は残る。
COVID罹患時の療養期間に関しても現行の制度では感染症法に基づき、「症状を有する者は発症の翌日から7日が経過し、症状が軽くなって24時間経過したら解除可能」とされ、外出自粛が求められる。しかし、五類移行後は外出自粛を求める法的根拠が無くなり、療養期間は個人の自主的な判断に委ねられる。故に厚生労働省は「発症翌日から5日が経過した後は体内のウイルス量が大きく減少する」との分析結果や海外の事例を踏まえ、「発症翌日から5日が経過している」事を療養期間の目安として示す方針を検討。其の後も一定期間はマスク着用を呼び掛ける方針で、斯うした方針を近く公表し、周知していく予定との事。
近畿日本Tourist が「東大阪市から委託を受けたCOVID用ワクチン接種の関連業務」で「人件費を偽り、過大に請求していた」旨を本日の記者会見で公表。「一昨年に大阪府東大阪市から委託を受けて開設した「ワクチン接種の電話受付業務」に於いて、「浪速区に在る支店の50代男性社員」が「市の指定よりも少ない電話応対係の人数」を「再委託先の会社」に発注する一方、市には「元の人数の人件費」を請求。昨年3月の時点で当該社員が「不正請求の事実を上司たる支店長に打ち明ける」も「支店長は此れを黙認」。「再委託先に対して勤務実績の改竄を依頼する」も、後に東大阪市の要請を受けて社内調査が行われた結果、2億8800万円余に及ぶ不正請求が発覚した次第。同社社長の高浦雅彦氏が「信頼を裏切り、多大な御迷惑を掛けた事を厳粛に受け止め、心より御詫びします」と謝罪するに至り、過大に請求した費用は市に返還。同社が全国150の自治体から接種関連事業を請け負って来た事業の全てに関し、改めて調査する由。
東谷義和参議院議員が除名処分を受けた件を受けて党首を降り、事務局長となった立花孝志氏。幹事長の黒川敦彦氏。党名を政治家女子48党を改めたのを機に新党首に就任した大津綾香氏の3人が主導するとされた旧NHK党だったが、同月最終週には幹部3人が決裂。「立花、黒川の両氏が党を離れた」、「黒川氏と大津氏が計画した政治資金会合」で「債権者達が党に返済を迫る取り付け騒ぎに発展」等の報道が出る中、4月7日の会見で立花氏が「大津党首を除名処分にした」と発表するも、大津氏が「党首交代は承認して居ないし、一切同意をして居ない」と否定する等と状況は更に混迷。党是たるNHK打倒すら彼等が真剣に取り組んで来たのか疑問だが、全ての展開を娯楽として享受する者達に支えられて来たのだとすると、同党の悪運は未だ尽きぬかも知れぬ。
4月13日(木曜)
国内の新たな感染者は9128人。亡くなった者は18人、重症者は60人。東京では新たに1181人の感染が確認され、先週木曜日より72人増えて13日連続で前週同曜を超過。重症患者は昨日より2人増えて7人、感染が確認された1人が死亡した由。本日に都が専門家に依る経過観察項目の分析結果を公表。感染状況と医療提供体制は何れも4段階の警戒水準中、下から第2位を維持。昨日時点で新規感染者数7日間平均は1105人と前週の約118%と、三週連続で100%を上回り、千人超は本年2月下旬以来。入院患者数は前週より56人多い515人となり、専門家は「昨年12月中旬以来の増加傾向」に在り「感染の再拡大が始まっている」。今後は「新規感染者数の増加を出来る限り抑制する為、基本的な感染防止対策を継続する必要有り」と警告した由。
ワクチンの供給体制について日本政府と協議するため来日しているModernaの最高医療責任者、Paul Burton博士へ昨日、NHKが取材。バートンCMOは「今はXBB系統の変異ウイルスが拡大して」居り「今後、新たな流行の波が遣って来る」と考えられる。「50歳以上になると重症化危険性は高まり、若い人でも後遺症の危険性が有る」。故に「自らを守る為にワクチンの接種を考えて欲しい」と述べ、今秋以降のワクチン供給体制に就いて「新型コロナウイルスは変異し続けていて、日本で別の変異ウイルスが拡大する可能性も有る」。「日本政府が新たな変異ウイルスに対応した専用のワクチンを必要とした場合」に「我々は其れを提供する事が出来る」と語り、日本政府にも「流行している変異ウイルスに応じて柔軟にワクチンを製造出来ると伝えた」と説明。更に氏は、2025年迄に「新型コロナウイルスと季節性流行性感冒」等、「複数の感染症に対応する混合ワクチンの開発を目指す」意向も表明。
従前はSARS-CoV2に感染した場合に「65歳以上の高齢者」や「本来、入院が必要な患者」「妊婦」「新型コロナの治療薬や酸素の投与が必要な患者」等の重症化危険性が高い者に限り、自宅等で療養する見做し入院でも入院給付金が支払われて来た。しかし「見做し入院に対する給付を来月7日で終了する」旨を、本日迄に日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命が其々発表。給付終了の理由も五類移行との事。
4月14日(金曜)
全国に於ける新型コロナウイルス新規感染者数1週間平均は、3月30日迄の1週間で前週の1.12倍。1月中旬以来の増加に転じた後、4月6日は1.03倍、4月13日は1.10倍と3週連続で増加傾向が続いた。一日当たりの全国の平均の新規感染者数は先週の数値に700人余を加えて約8000人となり、32都道府県で前週より多く、増加の幅が大きい地域は山梨県1.44倍、茨城県1.43倍、沖縄県1.38倍、石川県1.29倍等。人口当たりの感染者数が最も多いのは山梨県で、人口10万人当たり90.50人。新規感染者数の1週間平均は3月30日までの1週間が前週の1.20倍、4月6日は1.12倍、4月13日は1.44倍となり、一日当たりの新規感染者数は凡そ105人。
政府分科会の構成員にして東邦大学教授を務める舘田一博氏は「全国的には下げ止まりから増加に転じつつ」在り、東京都で「前の週より多くなる日が3週間近く連続する」等と増加傾向を認める。「直近の東京都のデータ」で「XBB系統のウイルスに感染した人の割合が5割を超える」等と置換が進む一方、現時点では其れが「感染者の爆発的な増加には繋がっていない」ものの、今後は「大型連休を迎えて人の動きが増え、行動制限も緩和される」中で「感染者の数は来月中旬に掛けて増加し続ける」可能性大。感染者数が「前の週の1.5倍や2倍に近づかないか」等と推移を見守る必要有りと指摘した由。
そして本日の新たな感染者は8420人、東京で1215人。死亡者人は16人。重症者は63人。COVID罹患時の療養期間は現在、感染症法に基づいて「症状を有する者は発症の翌日から7日間が経過」し、「症状が軽くなって24時間経過」すれば解除可能とされ、外出自粛が求められて来たが、五類移行後は外出可否も個人の判断に委ねられる事になる。此の情勢を踏まえて、厚生労働省が「判断の参考にして貰う為の目安」を提示。「発症翌日から5日間が経過すると体内のウイルス量が大きく減少する」との分析結果や「5日間を隔離期間とする海外の事例」を踏まえて「発症の翌日から5日間は外出を控える」、「症状が軽くなってから24時間程度は外出を控える」事が推奨され、「10日間が経過する迄はウイルスを排出する」可能性が有る事から「マスク着用や高齢者との接触は控える」等と周囲の人への配慮が求められるとの事。此の目安に関して厚生労働省は周知を進める予定で、「特に重症化リスクの高い者が多い医療機関や高齢者施設等で就業制限を判断する際の参考にして欲しい」との事。
従前は「新型コロナウイルスに感染した際は学校保健安全法の施行規則に基づき、治癒する迄は出席停止」とされて来たが、此れも五類移行後は変更されるとの報道有り。施行規則を改正して「発症の翌日から5日間」、且つ「症状が軽くなってから1日経過する迄」とする新基準を設定する方針を固め、本日から文部科学省は14日から民間意見を募る一方、発症後の一定期間はマスク着用を呼びかける方針との事。首都で感染者が増えつつ在る中、感染対策緩和が吉と出るか、凶と出るか。
4月15日(土曜)
本日の新規感染は8596人。死亡は千葉県で2人、大阪府で2人、石川県で2人、茨城県で2人、京都府で1人、兵庫県で1人、北海道で1人、宮城県で1人、富山県で1人、山口県で1人、山梨県で1人、愛媛県で1人、愛知県で1人、東京都で1人、神奈川県で1人、青森県で1人、静岡県で1人、鳥取県で1人で総計22人。重症は53人。東京では新規感染1197人で先週土曜より66人減、死亡1名、重症患者は昨日より2人減って4人との報告有り。
安倍晋三元総理大臣の銃撃事件に関し、重大な結果を招いた最大の要因は「対象後方の警戒が不十分で、容疑者の接近を許した」事で、「演説の直前に警察官の配置が変更され、前方の警戒に重点が置かれる」点に関する情報が共有されなかった上に「手薄になった後方を警戒する警察官を補強する」等の指揮が執られなかった事が問題だった等を指摘する報告書が事後に纏められ、警察庁は要人警護の運用に関する「抜本的な見直し」を断行。警護警備計画の作成を地元警察に委ねる慣例も改め、警護の基本事項を定めた警護要則を凡そ30年ぶりに刷新して警護警備計画の基準を示し、「地元警察が新基準に従って計画を作成」、「警察庁が計画に関する報告を受け、修正点等を指摘出来る」仕組みを導入。
更に「無人機活用で上空から状況を把握」「要人周囲に防弾硝子を設置」等も計画される中で、衆議院補欠選挙応援の為に内閣総理大臣、岸田文雄氏が今朝、羽田空港を出発。10時過ぎに関西空港に到着した後、最初の会場とされた和歌山市内の雑賀崎漁港へと移動して魚の試食を済ませ、いざ演説を始めんとした11時半頃、氏を目掛けて「銀色で筒状の物体」が投げ込まれ、20秒程度が経過した後に爆発。白煙が垂れ込め、現場に悲鳴が響いた由。
NHKの取材に対し、現場に居合わせた人々は「聴衆から声が聞こえたので振り向いたら、20糎から30糎程の長さの鉄管の様な物が飛んで来て」「岸田総理大臣から1米程しか離れていない場所に落ちた」。「若い男が何かを投げると、周囲に居た人達はギャーと言って其の場から逃げました」「そして、ドーンと云う爆発音がしました」。「何かが背後から頭の上を飛んで来ていて」「初めはジュースの缶の様な物かなと思いましたが、筒の様な物の周辺がチカチカと光っていたので」「此れは爆発物だと思って逃げました」。「筒状の何かが岸田総理の左側に投げ込まれたと思って後ろを見たら」「近くに居た人が此の辺で見掛けない様な若い男を此奴だと叫びながら羽交い締めにして、警察官を呼んでいた」「男を取り押さえている間に1本目が爆発」「もう1本は男の足元に転がっていたので、怖くなり皆で後ろに下がった」。「投げ込まれたのは円柱状のもので、煙が出ていた」「20秒後くらい経って地響きする位の大きな音がした」。「筒が地面に落ちた後に白い煙が立ち、花火の様な火薬の匂いがして爆発物だと分かった」、「男が投げてから30秒ほど後にどーんと音がして爆発した」等と口々に証言。
岸田総理は警察官に警護され、無傷で現場から避難したが、30代の男性警察官1名が左腕に軽傷。威力業務妨害の疑いで其の場で逮捕された木村隆二容疑者は「現場で爆発した1本」と別に「もう一本の爆発物と見られる筒状の物体」も所持していた様だが、「全て弁護士が来てから話す」と供述。事件当時の警備は和歌山県警察本部、管轄する和歌山西警察署の警察官に加えて、警視庁のSecurity Policeも入っていた」との事。17時過ぎに和歌山県警察本部から、容疑者に関して「特段の情報は無く」「事前に警戒する対象では無かった」、「現場でも容疑者に注意が向いたのは爆発物が投げ込まれてからだった」。爆発物が投げ込まれた際、現場には「凡そ二百人の聴衆が居て、木村容疑者と岸田総理大臣との距離は10米程」だった等の説明有り。20時過ぎに、警察の爆発物処理班が現場に残された爆発物と見られるものを回収。21時頃から現場で鑑識活動が行われる一方、兵庫県内の容疑者自宅も捜索。事件で爆発物が使われた事から、警察は近隣に住む8世帯の住民に避難を呼び掛けると共に不測の事態に備えて規制線を張り、現場周辺に近づけない様にする対応を取った模様。
事件を経て雑賀崎漁港に於ける演説は中止となるも、岸田総理は12時半過ぎに次の会場たるJR和歌山駅前に到着。約20分間の演説を済ませた後は関空から羽田へ移動。14時20分頃、記者団の取材に応じた官房長官の松野博一氏は「岸田総理大臣や聴衆に怪我は無いと報告を受けている」が、「選挙は民主主義の根幹を為すもの」で「今回の様な暴力行為は断じて許されない」。応援演説を続けるとの総理判断に関しては「選挙は暴力に依って威嚇されたり阻害されたりする事が有ってはならない」「其の中での岸田総理大臣の判断だと思う」と述べた。衆議院千葉5区の補欠選挙の応援の為に千葉県に入った総理は浦安市と市川いちかわ)市で演説を行った後、20時半過ぎに総理大臣公邸に戻ったが、明日も補欠選挙の応援演説を行う模様で、今夜に「本日も最後まで演説に立つことができたこと、警備に当たって頂いた皆さん、関係者の皆さん、集まってくださった皆さん、そしてご心配と応援してくださいました全ての皆さんに感謝申し上げます」「この大切な選挙を皆さんとともに守って参ります」とTwitterに投稿。
今回の事件を受け、警察庁は全国の警察に対し、応援演説等の現場に於ける要人警護の態勢を強化する様に指示したそうだが、今更の感有り。英国の公共放送BBCは、現場からの映像と共に日本の報道を引用して「日本で暴力的な襲撃事件が起きるのは非常に稀」だが「安倍元総理が銃で撃たれて死亡して以降、政治家の身辺警護には神経を尖らせている」と速報。仏蘭西のAFP通信にも「日本中に衝撃を与え、要人の警備体制の見直しを迫った安倍元総理の暗殺事件から1年も経たないうちに事件は起きた」等と報道され、来月に迫った第49回先進国首脳会議。通称、G7広島summitに暗雲垂れ込める情勢か。
4月16日(日曜)
本日の新規感染7028人、東京都内は891人。死亡15人、重症58人。英国のBBCが制作した番組“Predator: The Secret Scandal of J-Pop”が先月7日に現地で、18及び19の両日には邦題「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」として字幕入りで日本でも放送された。
喜多川 擴、通称Johnny 喜多川氏の性的虐待疑惑を追うのは、著名な音楽家を取材して評伝“Prince 1958-2016”を著し、英国の回教徒が共同生活をする現実直視番組”Muslims Like Us”制作でBritish Academy of Film and Television Artsを受賞した実績を持つMobeen Azhar記者。過去にも性的搾取を取材したアザー氏は逆取材に対し、此の問題を「猥褻目的を隠して小児に接近して手懐ける」行動の“grooming”、「加害者と被害者の間の結び付き」を指す“trauma bond”、更に報道者達に於ける集団浅慮等の単語を用いて読み解き、「喜多川氏が亡くなったのに此の問題を報じる意味は有るのか」との問いに対して「事務所は今も大きな影響力を持っており、ジャニー喜多川氏が行った搾取から大いに利益を得ている」。故に「何が行われたのかを公に認める責任が有る」し、「過去に所属した芸能人達に連絡を取り、治療を受けられる様にする等の支援に動く責任が有る」と指摘している。
1999年から翌年に掛けて、週刊文春は喜多川氏の性的虐待疑惑を報道。連載継続中の1999年11月、喜多川氏とジャニーズ事務所は文藝春秋側を相手に名誉毀損で民事訴訟を起こす。2002年3月の時点で東京地裁は文藝春秋に880万円の損害賠償を命ずる判決を出すが、審理中に原告の喜多川氏から独特の表現ながらも「少年達は嘘の証言をした、と云う事は、僕には明確に言い難いです」との発言が聞かれ、2003年7月に東京高裁が言い渡した控訴審判決では喜多川氏の性的虐待。当時の判決文では「セクハラ行為」が事実認定され、賠償額は減額。そして翌2004年2月に最高裁が事務所側の上告を棄却して、二審の東京高裁判決が確定。氏が自らの権力を悪用し、少年達に性的虐待を加えた事実が認定されるも、多くの報道機関は沈黙。前半で斯様な経緯が再確認され、後半で被害者達が登場するものの、番組の内容は基本的に過去の文春報道や当該事務所を脱退した芸能人の出版物で語られて来た事と同様。
喜多川氏の死亡から8日後に公正取引委員会は「ジャニーズ事務所が元SMAPの3人を出演させない様に民放テレビ局に圧力を掛けた疑い有り」として注意処分を出した後も報道各社の忖度は続くも、封殺が略成功した2004年とは状況が異なり、昨今は電網を介した情報取得が一般化した。件の記録動画の配信は今後も視聴可能と考えられ、一般世論に比して反応が鈍いとは言え、今まで事務所を支持して来た支持者達もSNS等で此の問題を注視している。本件に向き合わなければ、K-POPの後追いで始めたばかりの海外展開の道も閉ざされようかとの情勢に於いて、今週12日に当該事務所に嘗て所属していた岡本Kauan氏が、東京は丸の内の日本外国特派員協会で記者会見。故喜多川氏から受けた性被害に就いて一時間以上に渡って告白した由。
週刊文春からも実名、顔出しで取材を受けた岡本氏だが、本件に関して「日本の報道機関は残念ながら極めて報じ難い状況」に在り「取り上げないだろうと覚悟して」いるが、外国人特派員諸氏ならば「BBCの様に報じてくれるかもと思い、此処で会見をする事にしました」と説明。今回の記者会見も国内外に向けてYouTubeで配信された模様。先月17日にBBC側が同協会で行った記者会見に来た動画撮影機は僅か3台だったが、この日の会場には10台以上が入り、日本テレビやテレビ朝日等の民放が複数台を持ち込む一方、NHKの取材班も出席。
今回の告白を信ずれば、岡本氏が「自身のCDが発売される前段階に在る所属芸能人の集団」、通称ジャニーズJr.としての活動を始めたのは2012年2月。当時は中学3年生の15歳で、入所前には喜多川氏のの行為に関する噂も知らず、中学を卒業する直前に喜多川氏の自宅で初回の性的被害を受けた。2016年に退所する迄に被害は合計15から20回に及んだが、事後に金銭を渡される時と渡されなかった時が有った由。同日会見では、性的搾取の現場とされる喜多川氏所有の分譲型共同住宅で岡本氏が撮影した動画も公開。気泡風呂やカラオケ施設、少年達を宿泊させる際に使う布団等が映し出された。岡本氏の在籍期間中に同様の被害を受けたと判明しているのは3人だが、被害はもっと多いのではないかと氏は推測。喜多川氏が性的関係を持つ事を「しないと売れないよ」等と明言する事は無かったものの、喜多川氏の事務所でに於いて「ジャニーさんが気に入っている子、推している子」のみが「基本的にデビュー」して行き、然うで無い者は飼い殺しにされる、と云う極めて「特殊」な体制が罷り通って来たのは周知の事実。事務所所属の少年達の中でも「マンション行かないと売れないよね」「むしろ自分から行かないといけないよね」との共通認識が有る一方、岡本氏は「寝たふりをしながら寝返りを打つ」等の抵抗で、喜多川氏に当夜の性的行為を諦めさせた事も有ったが、其の翌日は挨拶しても無視される等の態度を取られた由。
岡本氏は自らが主張する被害に関する法的な措置は検討していないが「事務所の今の上層部に認めて欲しい」と強調。今は日本と両親の出身地の伯剌西爾で音楽家として活動している、と語る岡本氏は「人生が変わったし、僕の芸能の世界はジャニーさんが育ててくれた」「ジャニーさんには個人的には感謝の気持ちを持っています」と感謝する一方、「行った性的行為は悪い事だと思います」と断言。他の被害者が名乗り出る事に期待しているとの事で、「皆が喋る事で、何かが変わるんじゃないか」と語った。
カウアン氏と同世代と云うNHKの報道局政策責任者が質問に立ち、「15歳頃の事を思い返す」と「確かに文春で追っていらっしゃったけど、子供達の世代には全く届く様な状況では無かったと思います」と前置きした後、「もし当時、大手報道機関が報じていたら、御自身の選択は変わったと思いますか」、「例えばジャニーズに入所する事自体、躊躇ったとか」。「また御家の方は今回の件をどの様に受け止めているのでしょうか」と問うた。岡本氏、答えて曰く「若しテレビが当時、取り上げていたら大問題になる筈なので多分、親も行かせない」、入所するとの判断は「無かったんじゃないかな」との事。今回は共同通信が記者会見の様子を速報した記事が Yahoo! JAPAN newsの接続順位1位となり、地方紙が電網上で記事にする等と当日の裡にも動き有り。
更に翌13日、NHKが16時台の番組で岡本氏会見の内容に関して一日遅れの詳報。同じく13日に吉本興業所属、「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳氏も、自身のYouTube channel で生配信。「吉本に相談すると、しない方が良いんじゃないって言われるのも嫌なんで」「相談も無しに僕は喋りますね」と前置きした後に、カウアン氏会見に就いて言及。以前から喜多川氏の性加害は噂として耳にして居て「其れって本当だったんだ、と云う感じ」だが「許される事じゃない」、「未だ右も左も分からない少年に対して然う云う行為で手懐けるって形で花形への道を約束する」等と云う事は「有っちゃいけない」等と語る一方、性加害について報じない報道機関への批判に関して「論点がずれている」「問題の本質に怒らなければいけない」等と主張。
事務所に忖度した報道機関の沈黙こそ本件を構成する重要な部分で在り、田村氏の発言こそ論点がずれている。或いは意図的にずらしている、と言わざるを得ないが、BBC番組の放送だけでは動かなかった情勢に変化有り。奇しくもCOVIDの五類移行と時を同じくして、我が国が長らく抱えて来た病巣に漸く正義の解剖刀が入ろうとしているのかも知れない。