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令和コロナ騒動実録  作者: 澤村桐蜂
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令和5年3月最終週~4月第1週

3月27日(月曜)

 厚生労働省が発表した本日の新たな感染者は空港検疫を含めて2887人。東京都内で新たに355人、大阪府内で新たに161人がSARS-CoV2に感染。国内で亡くなった者は神奈川県で5人、東京都で3人、大阪府で2人、広島県で2人、兵庫県で1人、宮城県で1人、山形県で1人、岐阜県で1人、徳島県で1人の総計17人。新型コロナウイルスへの感染が確認された後に人工呼吸器や体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation; ECMO)、集中治療室等を用いた治療を受ける重症者は63人で、昨日と比べて4人増えた。


3月28日(火曜)

 本日の新たな感染者は8045人、死亡は27人、重症者は67人。東京都内で新たに1001人、大阪府内で新たに475人が感染。本日に観光庁は「地方の各地から募集した全国11か所をモデル観光地に選定」した旨を発表。即ち北海道の(ひがし)北海(ほっかい)(どう)地区(エリア)。岩手県の八幡(はちまん)(たい)地区。栃木県の那須(なす)及び周辺の地区。長野県と岐阜県の松本(まつもと)高山(たかやま)地区。石川、富山、福井の北陸(ほくりく)三県(さんけん)に岐阜県を加えた北陸(ほくりく)地区。三重県の伊勢(いせ)志摩(しま)及び周辺の地区。奈良県と和歌山県で奈良南部、和歌山那智勝浦地区。広島県、山口県、岡山県、香川県と愛媛県が瀬戸内(せとうち)地区。鳥取県と島根県は()(まま)、鳥取・島根地区。長崎県、鹿児島県、熊本県の鹿児島・阿蘇・雲仙地区。そして沖縄、鹿児島両県に(またが)る沖縄・奄美地区。

 (これ)()の地域に対し、今後は複数年かけて「地域の広報宣伝(プロモーション)商標(ブランド)力の強化を(にな)う専門人材の派遣」「外国人向けの観光案内人(ガイド)の育成」を進める等で集中的に観光戦略を支援する事が計画されており、日本政府観光局を通じて、海外の旅行会社への売り込みも行う由。コロナ禍以前は「1回の旅行で百万円以上を消費する外国人富裕層」の訪問先が東京、大阪等の大都市に集中し易く、訪問先を広げて地域経済の活性化に繋げる事が課題とされて来たが、閣議後会見で斉藤国土交通大臣は「外国人富裕層の地方への誘客を促進し、消費額の拡大と地方創生に取り組み、観光の質の向上を実現して参りたい」と述べたとの事。

 来年4月から小学校で使われる教科書に関して小学校149点、高校78点のあわせて227点の教科書が申請され、文部科学省の検定意見による修正を経て、高校の「外国語」の不合格1点、「数学」の取り下げ1点を除いた225点が教科書検定に合格。WEB上の動画を活用する等の意図から「全ての小学校用教科書にQR code掲載」。「LGBTQを含む性の多様性」に関する記述を載せた小学校用教科書が増え、昨年度に全国の学校が把握した(いじ)めが61万件を超えて過去最多となる中、「国語や道徳、保健を含む小学校用教科書48点」へ虐めに関する記述が盛り込まれた。Major League Baseball、Los Angeles Angelsの大谷(おおたに)翔平(しょうへい)選手や将棋の藤井(ふじい)聡太(そうた)(ろっ)(かん)、宇宙飛行士の若田(わかた)光一(こういち)氏、国民栄誉賞が授与された(くるま)椅子(いす)庭球(テニス)国枝(くにえだ)慎吾(しんご)氏の登場が報じられる一方、今回は小学校の検定としては初めて、新型コロナウイルスに就いて記載された教科書が申請され、検定にも合格。

 保健の教科書に「2019年12月に中国で初めて発生が確認された後、国境を越えてアッと言う間に各地に広がり、世界中で大流行した」。新聞記事の一部引用しつつ「新しい感染症が現れると、不安を(あお)るデマや(うわさ)(インター)(ネット)に流れる事がある」。道徳の教科書では「新型コロナの感染者が出る中、防護服を着て風邪(かぜ)の症状が有る患者への診察を続ける開業医」の話が紹介され、「小さな診療所(クリニック)でも風邪と新型コロナウイルス感染症の見分けが付かない中、(いのち)()けで見えないウイルスと戦っている」。理科の教科書では体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation; ECMO)を紹介し、COVID治療でも使用されて「多くの命が救われた」等の記述を認めた由。

 中国の上海/Shanghaiでは、COVID対策で1年前の3月28日から厳しい外出制限が2ヶ月余に渡って続けられ、経済への影響は深刻。昨年の上海市に於ける域内総生産の伸び率は前年より0.2%減って、1978年以降で初めて下向き成長。中国経済の牽引役を務めて来た上海の今後の動向は中国経済全体にも大きな影響を与えると見られ、消費動向を示す統計に()ると、本年1月と2月の上海市では去年の同じ時期と比べて2.7%の減少と飲食業等での消費が落ち込んで居て、今後、経済の持ち直しが進むかが課題となる由。


3月29日(水曜)

 本日は新規感染8327人と死亡34人、重症68人。東京で新規感染1002人、大阪で492人が発生した旨の報告有り。

 日本政府観光局に拠ると、先月に日本を訪れた外国人旅行者数はコロナ禍前の2019年同月に比して56%迄に増える一方で、出国する日本人は2019年の35%と回復が進まぬ状況有り。一方、昨年に於ける日本人の旅券保有率は約17%と、2019年から6ポイント減少。「コロナ禍で海外旅行の機会が大きく減る」「旅券(パスポート)を更新せず、()(まま)失効」となる者が多い事が出国者数の回復を遅らせる元凶なりと見た業界団体の日本(にほん)旅行(りょこう)(ぎょう)協会(きょうかい)()(たび)、旅券の取得や更新を促す新たな事業に着手。「5月から9月の期間に旅券の取得や更新を行う」と共に「7月から9月の期間に海外へ行った」者を対象とし、抽選で最大3000人程度に1人8000円相当の電子贈答(ギフト)券が提供される模様。

 新型コロナウイルス用ワクチンは、厚生労働省が複数のワクチン製造販売会社と契約を結び、接種の実施費用を含め、令和2年度と3年度の2年間で(およ)そ4兆2000億円が支出された。ワクチンの契約数は最大で8億8200万回分に(のぼ)るも、会計検査院が調査した結果、当時の厚生労働省資料には確保を決めたワクチンの量の算定根拠が十分に記載されて居らず、会計検査院は「必ずしも適切とは認められない」と指摘し、今後は「緊急時でも事後に判断の妥当性を検証可能」とする事を要求。納入前に契約取消(キャンセル)したワクチンのうち「AstraZeneca製6225万回分の返金額に就いて算定根拠の確認をしていなかった」事も判明し、別の製造販売会社の製品を含めると契約取消済のワクチンは合わせて2億回余。今後に行われる各社との返金交渉で「金額の妥当性を確認する」事を求められたのに対し、厚生労働省は「開発の失敗等の危険性(リスク)も考えた上で確実に接種出来る量を確保」したが「算定の根拠は資料だけでは()かり(にく)い所が有った」。「今後は事後に分かり(やす)い資料を適切に作成したい」。契約取消に就いては「現在、企業と協議中」で「妥当性を確認しながら対応していきたい」と応じた由。

 昨日に世界保健機関(World Health Organization; WHO)は「多くの人がワクチン接種や感染で免疫を獲得した」現状を踏まえて、新型コロナウイルスのワクチン接種の優先度に関する新たな指針(ガイドライン)を公表。「医療従事者」の他に「高齢者」「糖尿病や心疾患等の基礎疾患を持つ者」「免疫不全の者」や「妊婦」は「最も優先度が高い」として、「半年、又は1年毎の定期接種」を推奨。60歳未満の健常成人や「基礎疾患を有する小児、若年者」に関しては「追加接種は1回迄に留める」事を推奨する一方、其れ以上の接種も安全だが「公衆衛生上の効果は比較的低い」として、定期的接種に就いては推奨せず。健常な小児や若年者にも接種は安全、()つ有効では在るが、感染時に重症化し難い事から「麻疹(はしか)等の従来に使用されて来た小児用ワクチンと比べ、接種に()る公衆衛生上の効果は(はる)かに低い」として、接種の要否は各国の判断に委ねられた。指針をまとめた諮問委員会は「優先度の高い対象への定期接種は妥協してはいけない」と呼び掛けており、世界各国が今回の新たな指針を参考に接種方針を策定する模様。


3月30日(木曜)

 本日の新たな感染者は空港の検疫等を含め7207人。国内で亡くなった人は40人。重症者数68人は昨日と増減無し。東京都内では新たに956人の感染が確認され、都のモニタリング会議にて「新規感染者数の七日間平均が29日時点で812人」「前週の142%となった」旨の報告有り。七日間平均が前週を上回るのは本年1月中旬以来だが、入院患者数は483人と前週より140人前後の減少。ゲノム解析の最新結果ではオミクロン株XBB.1.5系統の増加傾向が続き、先月は全体の3.2%だったのに対し、今月は21.1%と凡そ7倍。感染者数が増加に転じた原因としては「変異株への置換」や「年度末で接触機会が増えた」等が想定されている模様。更にモニタリング会議では、東京iCDC(Tokyo Center for Infectious Disease Control and Prevention)が都民を対象に行った、二つの質問紙調査(アンケート)の結果も公表。

 先月15日から21日に至る一週間に、「東京都に住所を有する20代から70代までの者」を対象として、(インター)(ネット)を介して行われた調査では、性別や年齢構成、居住地を東京都の人口比率に合わせて抽出した10429名にCOVID陽性と診断された事が有るか否かを尋ねた所、有ると回答したのは全体の19.6%に相当する2040人。彼等に「感染してから2ヶ月以上の間、後遺症を疑う症状が有った」か否かを尋ねた所、25.8%に当たる527人が「有った」と回答。症状としては「疲労感、倦怠感」51.6%と最多、「咳」35.1%、「発熱、微熱」や「痰が出る」が各19.9%、「味覚障害」16.9%と続き、後遺症が⽇常生活に及ぼした支障に関しては、85%が「後遺症に因る⽇常生活への支障が非常に有った」又は「(やや)有った」と回答し、其の中で半数超に仕事や学業を休まねばなる事有り。本年5月8⽇以降の状況に関する質問に対し、「医療費がどれ位(くらい」、自己負担になるか」に6割強、「何処(どこ)の医療機関でも診療して(もら)えるか」 と「入院先を探すのに混乱しないか」に就いても5割強が不安を訴えた。COVID関連で今後に欲しい情報は何かと複数回答可で尋ねた所、「医療機関を受診する方法」 と「医療費がいくらかかるか」 が最多で各々33%、「体調を相談出来る窓口」 29.2%、「治療薬の効果」 26.1%と続いたとの事。

 更に東京iCDCは今月8日から11日、「東京都に住所を有する20代から70代迄」の 6名ずつ6集団、1名が欠席して総計35名に聴取。問いて曰く「SARS-CoV2の流行が経済面や生活、社会活動、教育に如何なる影響を及ぼしたか」。答えて曰く「旅行や遊びに行けなくなった」、「人との交流が減った」、或いは「遠隔(テレ)勤務(ワーク)で勤務環境が良くなった」等。今後も或る程度続いて行くと思われる感染に対し、「如何なる状況となれば収束した」と思えるか、「コロナと共生」に抱く印象(イメージ)は如何かとの設問も有ったが、収束や共生の語に対して抱く印象は人によって異なり、「既に収束している」と考える者も居た模様。「コロナ禍に依って、都民の生活には陰性(ネガティブ)陽性(ポジティブ)の両面で様々な影響有り。「収束に就いての捉え方は様々」だが、医療提供体制の進展のみならず「人々の精神が平穏を取り戻す事に因って(もたら)される」との見解も有る等と総括された。大阪府内では新たに395人が感染、3人の死亡が発表され、重症者は6人は昨日から不変。

 4兆円余に上ったCOVID用ワクチンの接種事業に就いて、会計検査院は29日、国が確保する事にしたワクチンの量の算定根拠が十分に確認出来ず「必ずしも適切とは認められない」と指摘。対して、松野官房長官は「迅速にワクチン確保を進める必要が有る中、当時、購入数量の資料は作成していたものの、一部は口頭で補足的な説明を要する事項が有った」。「今後の購入にあたっては事後的、客観的に妥当性を検証出来る(よう)な形で資料を作成する等、指摘を踏まえた対応を実施する」と述べた。其の一方で「世界各国でワクチンの獲得競争が継続する中、希望する全ての国民にワクチンを届けられる様、様々な可能性を視野に入れた上で着実な確保に取り組んで来た」が「確保の取り組みは必要なもので在った」と述べ、政府の()(まで)の対応に理解を求めた。

 本日に日本相撲協会が都内の旅舎(ホテル)で理事会を開き、「5月4日に両国の国技館に在る相撲教習所にて横綱(よこづな)審議(しんぎ)委員(いいん)(かい)稽古(けいこ)総見(そうけん)を行う」も「一般には公開しない」旨を決定。3年前の1月の初場所前に実施して以来、COVIDの影響で中止となっていた稽古総見が、(およ)そ三年振りの再開となる模様。新型コロナの指針(ガイドライン)の一部変更が承認された後も協会員には基本的感染対策を求めるが、5月のCOVID五類移行に伴い、協会は指針を原則撤廃とする方針。来月2日から始まる春の巡業に関しては大関の(たか)景勝(けいしょう)や春場所で初優勝を果たした関脇の(きり)()(やま)を含む8人が休場するとの事だが、4場所連続で休場していた横綱の(てる)富士(ふじ)や大関経験者で十両の(あさ)()(やま)が参加する模様。


3月31日(金曜)

 全国の新規感染者数を1週間平均で比較すると、3月16日(まで)が前週比0.82倍、23日は0.80倍と十週連続で減少傾向が続いたが、3月30日は1.12倍と本年1月中旬以来、およそ2か月半ぶりに増加に転じた由。一日当たりの全国の平均の新規感染者数は、先週よりおよそ750人多い7080人余で、31都道府県が前週より多く、増加の幅が大きい地域は福井県で1.67倍、広島県で1.39倍、茨城県で1.36倍、東京都で1.35倍等。

 政府分科会の構成員(メンバー)東邦(とうほう)大学(だいがく)教授の舘田(たてだ)一博(かずひろ)氏は、現在の感染状況に就いて「増加の兆しが見られる」と()うよりも「下げ止まりを示す様子がはっきりしてきた状況」だが、東京都では「全体の凡そ30%」が「感染力が高く、免疫から(のが)(やす)いとされるXBB系統のオミクロン株に感染している」との報告有り。当該変異株への置換が進み、「更に年度替わりで飲食の機会等が増え、人と人との接触が増える」事で「感染者の数が再び増加する危険性(リスク)が高まっている」と指摘した由。そして本日は新規感染6730人、死亡43人、重症67人。東京都内で新たに854人、大阪府内で新たに316人が新型コロナウイルスに感染した模様。

 感染症法上に於けるCOVIDの位置付けが5月8日で五類へ移行した後の感染対策に就いては、政府が法律に基づいて一律に求める現在の仕組みから、個人や事業者等による自主的な判断に委ねる仕組みに変更される予定。此の件に関し、本日に厚生労働省が示した「基本的な考え方」に拠ると、「手洗い等の手指衛生と換気」は「引き続き有効」。所謂(いわゆる)三密の回避や人と人との距離の確保は「流行期には重症化危険性の高い人にとって有効」。一方、事業者等が行っている入場時の検温、入口での消毒液の設置、隔壁(パーティション)の設置等の感染対策に就いては「効果や費用(コスト)等を踏まえ判断して欲しい」との事。

 横浜市金沢区の関東(かんとう)学院(がくいん)大学(だいがく)では、玄関の体温測定用thermal cameraを撤去する予定で、「新入生を含む多くの学生で食堂が混雑」と予想される4月は学生食堂の食卓(テーブル)や教室に於けるアクリル板設置を継続するがマスク着用は求めず、5月以降はアクリル板も順次、撤去する方針との事。高齢者や基礎疾患の有る者も含む市民が訪れる東京都狛江市の市役所でも窓口でのアクリル板の使用を当面継続するが、職員が業務にあたる机の隔壁は撤去。先にも登場した舘田一博教授は「事業所等での隔壁の設置や体温測定等は感染対策として過剰に行われて来た」部分があり、「必要ないと判断される対策は少しずつ減らしていく取り組み」が重要。隔壁の設置は互いにマスク着用の場面に於ける重要性は低いものの、役所窓口の(ごと)くマスクを外している不特定多数と担当者が接する状況では「直接、飛沫を浴びる事を防ぐ」(ため)に設置の意義有り。「緩急を付けて感染対策を(おこな)って行く事が重要だ」と語っている由。

 厚生労働省は感染症法に基づく水際(みずぎわ)措置(そち)として、日本への入国者に「ワクチンを3回接種した証明書の提出」等を求めて来たが、五類移行で法律に基づいた措置をとる事が出来なくなった後も「水際での感染症の監視は必要」と判断。入国時に発熱や咳等の症状が有る者には任意でPCR検査を行い、ウイルス遺伝子を解析する方向で調整しているとの事。成田、羽田、中部、関西、福岡の5空港で、五類移行となる5月8日から実施の予定。中国を対象に昨年12月から続けている臨時の水際措置に就いては、陰性証明の提出を求める措置を4月上旬にも緩和する方向で調整。他国と同様に「ワクチン接種3回の証明書」か「出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書」を提出すれば入国可能とするも、入国時に行っているPCR検査の抽出標本(サンプル)調査は継続する方向と報じられた。

 政府は観光(かんこう)立国(りっこく)推進(すいしん)基本(きほん)計画(けいかく)を六年振りに改定し、31日の閣議で決定。2025年には「訪日外国人旅行者を過去最多の2019年、3188万人を上回る水準まで増やす」事を目標としつつも、「訪日外国人旅行者の人数はCOVID感染状況によっては影響を受けやすい状況が続く」と判断。「日本を訪れる外国人旅行者1人当たりの消費額」を新たな目標として位置付け、「2025年には20万円に引き上げる」との事だが、此れはコロナ禍以前、2019年の実績を凡そ4万円、率にして25%上回る水準。目標の実現に向けて「地方を周遊する団体旅行(ツアー)で滞在日数を増やす」「地域ならではの食事や自然といった特色を生かした団体旅行を充実させ、旅行の付加価値を高める」、「免税品を店舗から自宅に直送する事業(サービス)」の拡充で「免税店の利用拡大を促す」等を実行して1人当たりの消費額を重視する事で、(イン)(バウンド)需要の経済効果を高める戦略との事。

 所謂(いわゆる)()()もりの実態を把握する目的で、昨年11月に内閣府が「全国の10歳から69歳、総計3万人」を対象に質問紙調査(アンケート)を行い、1万3769人から回答を得た。このうち生産年齢人口に相当する15歳から64歳の年齢層では、広義の引き篭もりと定義される「趣味の用事の時だけ外出する」や「自室から(ほとん)ど出ない」等の状態が6ヶ月以上続いている者が2%余。全国では約146万人に上ると推定された。年齢層別に見れば、15歳から39歳の小児や若年層では「七年前に公表された調査の1.57%」から2.05%に、40歳から64歳の中高年層では「四年前に公表された調査の1.45%」から2.02%に増加。引き篭もりになった主な理由の一つとして、凡そ5人に1人が「新型コロナウイルスの流行」をあげ、コロナ禍の影響を窺わせる結果が示された模様。

 従前、内閣府では小児や若年者の層と中高年層とで別々に調査を行って来たが、今回は対象の年齢や人数を大幅に拡大して同時に調査し、引き篭もりの多様な実態が確認された。性別に関しては、四年前に公表された40歳から64歳までの調査では「男性が4分の3以上」を占めていたが、今回調査では「同じ年代で女性が52.3%」と半数を上回り、「15歳から39歳でも45.1%」で、主に男性の問題と解釈される事も多かった引き篭もりが女性に広く存在している事が示唆された。安心出来る「今の居場所」を尋ねる質問では、15歳から39歳の引き篭もりは、家庭や学校、職場を含む現実の場を自らの居場所と思う割合が、引き籠って居ない者に比べて低く、SNS等の(インター)(ネット)空間を居場所と捉える割合が高かった。「どのような人や場所なら相談したいと思うか」を尋ねても「誰にも相談したくない」と答えた引き篭もりは5歳から39歳で22.9%、40歳から64歳で23.3%に上り、理由を尋ねられると「相談しても解決出来ないと思うから」と答える人がいずれの年齢層でも半数を超えて最多だった由。

 今回の調査結果に関し、唯一の全国組織のひきこもり当事者家族会を名乗るKHJ全国ひきこもり家族会連合会の理事、池上(いけがみ)正樹(まさき)氏は、「50人に1人が引き篭もり状態」との推計よりも「実態はもっと多い」と思われる。「コロナ禍の影響が初めて情報(データ)で示された」結果となるも「元々、()(づら)さを感じていた人達が、より一層、精神的に不安定になった」事や「弱い立場にいる人が雇用を切られる等して諦めてしまった」等の状況が想定される。女性にも引き篭もりが広がる事に就いて「日本の伝統的な価値観」の中で「夢や希望を追い求めようとしても、家事や育児等で男性よりも高い障害(ハードル)を課せられて、諦めて来た」女性人が多く、「()うした人達が自分の状況を認識し、存在が顕在化してきたのではないか」。現行の支援には限界が有り「自宅以外に安心して声を上げられる場」を如何(いか)にして電網上へ構築するかが重要となるが、「引き篭もりは遠い世界の問題では無く、自分や家族も為るかも知れない自分事と受け止めて欲しい」等と訴えたとの事。


4月1日(土曜)

 今年度初日の本日に発表された新規感染者数は7478人で、うち東京991人。国内で亡くなった人は千葉県で3人、埼玉県で3人、大阪府で3人、奈良県で3人、栃木県で3人、兵庫県で2人、広島県で2人、北海道で1人、富山県で1人、山梨県で1人、徳島県で1人、愛知県で1人、東京都で1人、神奈川県で1人、福岡県で1人、福島県で1人、秋田県で1人、青森県で1人、鹿児島県で1人の総計31人。重症者は63人。

 文部科学省が示す新方針に於いては、授業や行事等の教育活動で「児童や生徒、教職員に対してマスクの着用を求めない」事が基本とされ、学校が「マスク着脱を強制しない」事が求められる由。一方で「登下校時に混雑した電車等に乗る」場合や「校外学習で医療機関、高齢者施設等を訪問する」場合はマスクの着用が推奨される。学習や部活動で「対面形式の集団(グループ)作業(ワーク)」や「一斉に大きな声で話す活動」、「実験や観察」、「合唱や調理実習」を行う場合は感染危険性が比較的高く、十分な換気等の感染対策を実行する事が望ましい。入学式や運動会、文化祭等の行事で参加人数の制限、時間の短縮は不要となり、適切な対策を行えば給食の時間も(もく)(しょく)は必要無し。五類移行後、5月8日以降の感染対策に就いては文部科学省が改めて検討し、4月中にも示される模様。

 流通大手のイオンが例年4月1日に行う企業集団で合同の入社式は世界的大流行後、三年前に中止。一昨年は回線(オン)接続(ライン)開催となるも今年は昨年に続いて対面で開催。本社を擁する千葉市内の会場から会長の岡田元也に依る「変化を先取りし、より便利で快適な生活をお客様にお届け出来るよう努めてもらいたい」との挨拶が、全国7会場に集まった約3500人の新入社員へと中継されたとの事。「妻に気の利いた冗句(ジョーク)でも飛ばそうか」と土曜の一日を使って考えるも浮かばず、本年の四月(エイプリル)馬鹿(・フール)は不発。


4月2日(日曜)

 総務省消防庁が(まと)めた情報に拠ると、昨年中に全国で救急車が出動した件数は722万9838件。前年より103万件以上を加え、初の700万件超で過去最多を更新した由。搬送された人数も621万6909人と最も多くなり、このうち65歳以上の高齢者の割合が62.1%と半数以上を占めたとの事。搬送された者の内訳は「急病」が最も多く418万9220人、不慮の事故等の「一般負傷」が98万2901人、「交通事故」が34万7214人等。出動件数大幅増加の原因に関し、各地の消防本部からは「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で感染者や感染疑いの患者の搬送が増えた」「高齢化が進んだことによりお年寄りの搬送が増えた」等の回答有り。

 本日の新たな感染者は6290人、うち東京都が789人。国内で亡くなった人は、大阪府で4人、熊本県で2人、兵庫県で1人、千葉県で1人、宮城県で1人、広島県で1人、愛知県で1人、福岡県で1人、群馬県で1人、高知県で1人の合わせて14人、累計で7万3953人。重症者は52人。

 英名John Hiromu Kitagawaこと、喜多川(きたがわ)(ひろむ)氏。Johnny 喜多川の通称で知られ、男性のみの芸能事務所を経営して稀有(けう)の成功を得た氏は週刊文春との裁判合戦を経て、2003年の時点で東京高等裁判所から「少年達にsexual harassmentを行っていた」と認定されるも刑事裁判には繋がらず、大半の報道機関は訴訟自体を黙殺。以降も喜多川氏は事務所の社長を務め続け、2019年7月に87歳で死去した際は(とき)宰相(さいしょう)安倍(あべ)晋三(しんぞう)氏からも弔電(ちょうでん)が届く程に栄華(えいが)を極めた。彼の死から四年が過ぎようかと()う2023年3月7日の夜、日本時間では8日の朝に英国の国営放送たるBBCが“Predator: The Secret Scandal of J-Pop”と題した番組を放送。

 芸能界に於ける成功を左右するに足る権力を最大限に濫用(らんよう)し、少年達を毒牙に掛け続けたとされる喜多川氏の存在を、番組は捕食者(プレデター)に例える。「喜多川氏の事務所に所属し、氏から性的(せいてき)搾取(さくしゅ)を受けた」と語る男性3名が仮名ながらも顔出しで出演して、氏から受けた被害の詳細を生々しく証言。(かつ)て喜多川氏の(もたら)した性被害に就いて報道するも「自分達の記事が潰された」と(いきどお)る文春記者も登場して「23年間、私はずっと絶望した(まま)です」と語り、最後に「此れだけの性的虐待が目に見える形で行われても、沈黙が続いている」「其れでも会社はジャニーの名前を掲げて、如何(いか)なる意味の有る形でも此の虐待を認めていない」「喜多川氏は死んでも守られている」等と痛烈に糾弾した番組が電網上で相応の話題を巻き起こすも、(おおやけ)に報じたのは週刊文春の他に講談社のFRIDAY電子版、日刊ゲンダイ等に限られ、大手新聞やテレビは完全に沈黙。

 3月9日の参院総務委員会でNHK党から改称したばかりの政治家女子48党所属、浜田聡参院議員が此の問題を取り上げたものの「民放が報じない内容を伝える心算(つもり)は有るのか」をNHKに問うに留まり、性的加害自体は追及される事が無かった模様。3月18日に「BBCが渦中の番組を日本を含めた全世界向けの番組枠で放送」。週刊文春が過去の報道を再掲載するのみならず、新たな証言を加えて氏の性犯罪を告発するも、日本社会は動かず。同月中も喜多川氏の愛称を冠した事務所に所属する男性芸能人達がテレビ出演を控える事は無く、一部からは氏の遺徳を忍ぶ声さえも聞かれたのが現実で、COVIDより恐るべき我が国の病理と言えよう。

 此の問題が嘗て闇に葬られ、今再び同じ(てつ)を踏もうとしているのは「男性芸能人を使って売上や視聴率を稼ぎたい新聞や雑誌、テレビ局が報道機関の本分も忘れて事務所に忖度(そんたく)している」事が最大の要因と考えられるが、他に若年女性を主体とする支持者(ファン)は男性芸能人に夢を見させてくれる事だけを望み、現実との直面は拒む。世の女性にチヤホヤされている男性芸能人を、世間の男性達は特に救いたいとは思って居ない。男女を問わず、余りに醜い物は見なかった事にする。斯様(かよう)な日本人の心理が絡み合っている(ゆえ)かと愚考。喜多川氏に就いては、小児性愛の傾向から「Michael Jacksonの性加害疑惑」との類似性も指摘された様だが、問題の構造を考えると、(むし)ろ氏は「日本のHarvey Weinstein」と称されるべきだろう。ワインスタインが“#MeToo”運動の波に沈んだのに対し、喜多川氏は断罪される事も無く長寿を(まっと)うする事となったが、此れも現時点では埋められぬ日米の相違と見る。

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