令和2年7月最終週~同年8月第1週
7月27日(月曜)
岡山県真庭市の岸本整形外科医院が、今月21日付で岡山地裁津山支部に自己破産を申請。民間信用調査会社・帝国データバンク岡山支店の調査に依れば、同院は1965年の開業以来、リウマチ科やリハビリテーション科も併設して外来と入院の診療に従事。2014年は1億8000万円の収入を稼ぎ出したが、以降は慢性的な看護師不足のため入院受入を停止。外来収入のみで運営されるも、昨年は収入1億円に減少し、今年3月以降は新型コロナウイルスの影響も重なって外来患者が減少。5月の患者数は前年同期の2割減となり、更に経営が悪化した由。負債総額は約3億3000万円。岡山県内の新型コロナ関連の倒産は七例目だが、医療機関としては全国初。ネット上では「まだ整形外科は患者の減り方がマシだと言われている」「更に医療機関の倒産が重なるか」等の声も聞かれた。
時を遡る事、30年前。1990年5月2日付の岐阜新聞朝刊に「2020年、人類の半数が伝染病に」との記事が掲載されていた旨のtweet有り。世界保健機関ことWHOが纏めた、地球温暖化の健康被害を予測する報告書に関する共同通信社からの配信らしいが、見出しは岐阜新聞社の整理記者が制作。記事は「地球温暖化がマラリア等、伝染病の大流行を齎し、世界人口の半数近くが伝染病に罹る恐れがある」事や「オゾン層破壊に依る紫外線量の増加が人間の免疫力を低下させる可能性がある」事を指摘。現状を正確に予知した内容と言う訳では無いが、「2020年」「伝染病」「免疫力低下」等のkeywordが昨今のコロナ禍を彷彿とさせると話題になった模様。
記事画像の情報源として使われたのは1993年の矢追純一著『カラスの死骸はなぜ見あたらないのか』だが、著者のtwitterは2012年から更新された様子が無く、今回は別人が発信した模様。氏自身は三年前に文春オンラインの取材で熱弁を振るい、以降も自身の公式サイトや少人数の講習会「宇宙塾」で隠された真実を伝える等、齢85歳にして益々盛んに活動されているが。件の宇宙塾でもマスク着用とアルコール消毒に換気が推奨され、今月26日の「矢追純一バースデーパーティー2020」も延期、とコロナ禍と無縁では居られぬ模様。
7月28日(火曜)
政府が全国に配布した布マスク、通称「アベノマスク」。国費を投じて全世帯に2枚ずつ、約1億3000万枚を6月までに配り終えるも、これとは別に介護施設や保育所への配布も決定。莫大な予算が計上され、1人7枚分の計1億4000万枚を目安として4月に2000万枚、6~7月に4000万枚を配布している最中との事だが、更に残り8000万枚の配布を今秋まで継続する予定との報道有り。
此の件に関し、本日午前の会見で記者から「市場のマスク流通も回復済で、現場からは必要ないとの声もあるが」「見直す考えはないか」との質問が出たのに対し、官房長官の菅義偉氏が回答。「関係者からは御礼の御連絡を頂いて」いる上に「布マスクは繰り返し利用出来る」ので「コスト面でも相対的に安価」、「今後の感染拡大への備え」の観点からも「継続配布は有意義」で「9月中旬までに配布して行く」と「聞いている」と語った由。苦しい言い訳だとは御本人も重々承知だろうが、これで一件落着とは行くまい。
7月29日(水曜)
査読前の科学論文を扱うウェブサイト"BioRxiv"に掲載された論文に依ると、新型コロナウイルスの感染流行地となったイタリア北部を中心に本年3~5月、ペットの犬540匹と猫277匹を調査。犬猫共にPCR陽性は皆無なれども、抗体検査では犬の3.4%、猫の3.9%が陽性を示した由。
飼主の感染が確認された家庭の犬は、飼主が感染していない家庭の犬よりも有意に陽性率が高く、猫も同様。1歳未満の仔犬・仔猫の感染無し。研究チームは「調査はペットの感染が珍しくは無い事を示唆している」と結論付けた。犬猫が飼主から感染した例は先に報告済ながらも不明な点は未だ多く、此の「世界的にも初の大規模調査」がpost-covidのペット飼育に一石を投じるかも知れぬ。
滋賀医大は本日、同大医学部病理学講座の伊藤靖教授らが「カニクイザルを新型コロナウイルスに感染させて症状等を再現」「ワクチンや治療薬の開発に繋げる手法を国内で初めて開発した」と発表。実験では、成獣に当たる10~15歳のカニクイザル3頭に新型コロナウイルスを投与した所、約1週間に渡って鼻や口からウイルスが検出され、発熱や肺炎等の症状を認めるも軽症に留まった模様。感染者の重症化リスクとなる肺血栓の形成も確認。
実験動物として汎用されるハムスターでは実現しなかった症状の再現に成功した伊藤教授は、「ワクチン開発に掛かる時間を数年単位で短縮出来る可能性」についても言及。遺伝的に人間に近いカニクイザルを用いた研究ならば安全性や有効性が判断し易く、臨床試験までの期間短縮が期待出来る由。再来月には、東京都医学総合研究所等が開発中のワクチンをカニクイザルに投与する実験を行う予定。
7月30日(木曜)
感染再拡大中の新型コロナウイルスを迎え撃つ当院の体制に関し、先日の医局会で協議されるも議論百出。今週中に結論を出すべく、本日夕方から延長戦と相成った。感染対策の領域で当方に何が出来る訳でも無いのは自他共に認める所だが、一人医長の精神科代表として一応出席。
議事は「患者本人と付添者とを問わず、入館時に熱発が確認された場合は医師が対応する形としたいが、其の診察は誰が担当するか」、「軽中等症者の入院主治医を如何に割り振るか」と云う辺りに絞って進行。それでも各人の認識の隔たりや医学的知見と実現可能性の兼ね合い、果ては自科の負担を極力減らしたい思惑も絡んで侃侃諤諤の論戦が展開されるも、何とか大枠は定まった模様。数ヶ月に渡って感染疑い患者へ対応して来た医師から語られた「味覚障害や嗅覚障害を自ら申告する患者は居ない」、「実は有ったと告白してくれるとすれば入院後」との経験則に納得。
7月31日(金曜)
昨日の新規感染者は全国で1266人。一昨日の1264人を上回り、一日の感染者数としては最多を更新。二日連続で1000人超を記録した。
そして東京都は本日、都内で新たに10歳未満から80代の男女463人の感染が確認された旨を発表。20代と30代の合計は332人で、289人は現時点で感染経路が不明。夜間に営業するホストクラブやキャバクラ等、所謂「接待を伴う飲食店」に於いて濃厚接触者の感染が多く、74人に上った由。
8月1日(土曜)
先月14日、米国の大手製薬会社モデルナが開発中の対新型コロナウイルスワクチンに関して、同国の研究者チームが「初期段階の研究で安全性が示され」「健康なボランティア45人全員に免疫反応が見られた」と報告。これを受けて翌15日、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が「米国は年末までに新型コロナウイルスワクチンを開発出来る」と発言。
取材に対して、ファウチ氏は「モデルナが開発中のワクチンは自然感染に似た免疫効果が得られるように見えるため、特に有望視されている」、「どの国も多かれ少なかれ同じ軌道に乗っている」ものの「中国が米国よりも早く達成することはないだろう」等と自信有り気に述べる反面、「ワクチンで免疫効果が得られたとしても、どの程度効果が継続するのか」等の疑問に関しては「感染拡大が始まってから6カ月しか経っていないため、まだ分からないことが多い」と指摘。「免疫を巡る疑問の解明には1年かかる可能性もある」と述べた由。モデルナはワクチンの後期治験を27日に開始。
更に昨日、米国議会の公聴会でファウチ所長が「ワクチンは今年の終わりから来年に掛けて完成するだろう」と発言。「夢ではなく、現実的な見通しだ」、「初めのうちは全てのアメリカ人にすぐに行き渡らない」ものの「2021年には必要な人にワクチンが届く」等と述べた模様。早い段階から米英は自国民向けの分量を確保すべく交渉を進めていたが、日本も昨日に米国のファイザーと6,000万人分の供給で基本合意に至った模様。
8月2日(日曜)
米国の調査会社IDCの報告に依れば、本年4~6月の3ヶ月間に世界で出荷されたスマートフォンの台数は2億7840万台で、前年の同時期と比べて16%の減少。新型コロナウイルスの感染拡大に依る世界的な経済悪化の影響かと思われたが、此の状況下で中国国内での販売を伸ばした華為/Huaweiが20%を占め、初の首位を獲得。韓国のサムスン電子が19.5%で2位、米国のアップルが13.5%で3位と続いた模様。
情報技術領域に於いて米国政府が中国への警戒を強める情勢を考慮し、IDCは「Huawei社の国際市場での不確実さは今後も続くだろう」と分析したが。更に昨夜、米国大統領のトランプ氏が「中国の北京字節跳動科技/ByteDanceの運営する動画投稿アプリ"TikTok"の米国事業を禁止する」方針を表明。フロリダ州からの機内で記者団に語り、禁止を命じる文書に「明日、署名する」とワシントンに到着する直前に述べた由。
一部で「トランプ大統領がByteDance社に対し"TikTok"の所有権売却を命じる決定の発表をする計画だ」と報じられていた件に関しては、「我々はM&A会社ではない」と否定。"TikTok"広報担当者から、ByteDance社は「今年、既に1000人近くを米国で採用」した上に「大きな報酬の仕事で更に10000人を全米で雇用する」予定で「"TikTok"USの利用者情報は米国に保管され、従業員の閲覧を厳しく管理している」、「"TikTok"への最大級の投資は米国からで、我々は利用者の機密と安全を守る」との弁明が為されるも、"TikTok"の米国事業を取得する可能性を探っていたとされるMicrosoft社は沈黙。21世紀の米中戦争、斯くの如し。