令和4年6月第2週
6月6日(月曜)
先週も新規感染者数は減少傾向が続き、昨日の時点で政府の分科会が示す「対策を強化すべき水準」で医療が逼迫している都道府県無し。
本日は全国で9106人の新規感染を認めるも、一日の感染者が一万人を下回るのは今年1月11日以来。大阪府で5人、沖縄県で4人、埼玉県で3人、三重県で2人、広島県で2人、愛知県で2人、鹿児島県で2人、宮崎県で1人、岐阜県で1人、岩手県で1人、静岡県で1人の総計24人が死亡。人工呼吸器や集中治療室等を用いた治療を受ける重症者COVID患者は75人で、今月2日に行われたPCR等の検査数は自主検査を除いた速報値で5万7182件。東京都では新たに1013人の感染を確認先週月曜より300人余を減じ、24日連続で前日を下回った。神奈川県の新規感染746人も前週月曜日より157人少なく、感染者数が前週同曜を下回るのは13日連続。一日の感染者数が千人を下回るのも2日連続との事。
政府が本日に公表した最新状況に拠ると、国内で3回目のワクチン接種を受けた人は7568万7924人で、全人口の59.8%に到達。しかし、3回目接種率を年代別で見ると12歳から19歳は26.4%、20代は42.3%、30代は46.1%、40代は55.8%、50代は73.5%、60歳から64歳は81.5%、65歳から69歳は82.2%、70代は90.1%、80代は93.3%、90代は92.6%、100歳以上は89.5%。少なくとも1回の接種を受けた者は1億361万2193人で全人口の81.8%、2回目の接種を終えた者は1億212万3862人で全人口の80.6%。5歳から11歳を対象にした接種に限定すると、1回目は127万7914人で全体の17.3%、2回目は107万9700人で全体の14.6%。先月から始まった4回目接種を受けた者は全国で1万1045人となったそうだが、若年層接種率の低調は今年後半に如何なる影響を及ぼすか。
6月7日(火曜)
本日は全国で1万7039人、大阪府で1925人、東京都で1800人、沖縄県で1467人、愛知県で1290人の新規感染と26人の死亡を確認。
先週月曜の項で少し触れたが、厚生労働省は新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(Health Center Real-time Information-sharing System on COVID-19; HER-SYS)で新規感染者の情報を一元管理するに当たって、「人口10万人当たりのSARS-CoV2新規感染者数」をワクチンの接種回数毎に分類。其の基礎となる情報の入力は医療機関や保健所に依存して居り、入力が無い場合は「接種歴不明」でなく「未接種」に計上して来た。対して国立感染症研究所は、昨年12月から接種歴の入力が無い者を「未接種」では無く「接種歴不明」に計上する様に改め、厚生労働省も先月11日の公表分から感染症研究所と同じ集計方法に見直した結果、10万人当たりの新規感染者数は集計方法変更前の1週間に於いて全年代で「未接種」が「2回目接種済」を上回ったのに対し、変更直後の1週間では40代と60代、70代で「未接種」が「2回目接種済」を下回る結果となった。
此の件に関して、厚労省は「ワクチン接種の効果を高く見せようとしたり、未接種の感染者数を多く見せたりしようとする意図は無かった」と釈明。厚生労働大臣の後藤 茂之氏は、記者会見で「当初は接種者が非常に少なかった」事から「医療機関や保健所等、現場の入力負担を少しでも軽減する」観点から前述の場合は「未接種」と分類していた。軈て入力画面の初期設定が「未記入」と変更された後も「従来通りの取扱に則って発表していた」が、先月から国立感染症研究所に合わせる形で「接種歴不明」と分類する様に扱いを見直した事で「厚生労働省と感染研の数字の乖離」が時間経過と共に増大。「整合性を確保する」観点から「接種歴不明と取り扱う事にした」との状況説明を行うと同時に「同じ種類の数字に就いて厚生労働省と感染研の扱いが違い、統計数字が異なって来ると云うのは不適切だ」と認めた由。
持ち回りの臨時閣議で、政府は経済財政運営と改革の基本方針を決定。防衛費に就いては「北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty Organization; NATO)の加盟国が国内総生産(gross domestic product; GDP)の2%以上を目標としている」事を例示し、「5年以内に防衛力をに抜本的に強化する」と宣言。また本文の注釈に「日米首脳会談で、両首脳は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調すると共に、両岸問題の平和的解決を促した」との記載も入ったが、台湾に関する記述が盛り込まれるのは初で、元総理の安倍晋三氏の意向が影響した模様。また「財政健全化の旗を下ろさず、此迄の財政健全化目標に取り組む」と宣言する一方、「経済有っての財政」で「状況に応じ必要な検証」を行う旨も明記する事で、自民党内の積極財政派にも配慮。
少子化対策として「出産育児一時金の増額」を始めとして「妊娠・出産に伴う経済的負担の軽減」に向けた議論を進めると共に、英国のDisclosure and Barring Serviceに倣って「子供を性犯罪から守る目的で、性犯罪歴を有する者が保育や教育の仕事に就くのを制限する」制度、所謂「日本版DBS」の導入に取り組む等の条々が挙げられた。感染対策に関しては、「感染が拡大した時に病床を増やす」等で「確実に入院できる体制」を整備し、「都道府県が臨時に設ける医療施設に公立病院が医療人材を派遣する」等で医療提供体制の充実を図るとの事。
観光庁は本日、外国人観光客受入の指針を公表。先月下旬に実施された試験的な訪日団体旅行の成果も反映して、旅行会社が団体旅行を販売する際は「参加者に対してマスク着用を含めた感染防止対策を徹底」。日本国内で入院したり治療を受けたりする場合に備えて「民間の医療保険に加入して貰う」事等を「説明し、同意を得る」等が盛り込まれて居り、此等の手順に従わない場合は旅行参加が認められない可能性有り。旅行中は「添乗員が場面に応じて、感染対策の小老実な注意喚起を行う」。陽性者が出た場合に備えて、旅行会社は「予め自治体の相談窓口等を確認」して置き、更に「陽性者の医療機関への受診対応」を行いつつ「濃厚接触者の範囲を特定する」等の条件が求められるそうだが、斯様に厳しい条件が全ての業者に遵守されるか如何かは不明。COVID陽性と判定された者が発生した場合も、当人と濃厚接触者以外は旅行を続けられる事が可能で、参加人数の上限は設定されていない模様。
6月8日(水曜)
昨日に世界銀行/World Bankが世界経済の展望を公表するも、今年の成長率は2.9%と1月時点の予測より1.2ポイント下方修正。欧州圏が1.7ポイント、米国が1.2ポイントの低下で、何れも2.5%になり、感染拡大に関して厳しい規制を続ける中国は、0.8ポイント引き下げて4.3%。日本は1.2ポイント引き下げて1.7%と、去年と同じ1%台の成長と予想されている由。露西亜の烏克蘭侵攻、其れを契機とした勢力や穀物の価格高騰が成長率の下方修正に影響しており、厳しい制裁を受ける露西亜の成長率はマイナス8.9%、烏克蘭はマイナス45.1%に落ち込み、途上国の食糧不安や貧困の悪化も懸念される情勢。
本日は全国で1万8416人。東京都で1935人、大阪府で1644人、沖縄県で1557人、北海道で1221人、愛知県で1169人の新規感染。埼玉県で3人、大阪府で3人、神奈川県で3人、愛知県で2人、東京都で2人、三重県で1人、兵庫県で1人、北海道で1人、奈良県で1人、岩手県で1人、広島県で1人、熊本県で1人、福岡県で1人の合わせて21人の死亡が報告された由。人工呼吸器や集中治療室等を用いた治療を受ける重症COVID患者は79人で、一昨日に行われた自主検査を除くPCR検査などの数は速報値で5万5202。
東京大学大学院医学系研究科の研究者達は、一昨年6月に全国14都道府県の「48の学校・団体に所属する小中学生11958人」に対する横断調査を実施。学校や団体を通して児童・生徒に質問票を配布して「臨時休校中だった直近 1 ヶ月」に於ける睡眠時間と食事時間、生活習慣、食事摂取量を評価。調査票の回答から「必要な情報が揃っている8~15歳の子供、6220人」を分析し、「睡眠と食事の時刻定型」を特定。対象者が「身体活動水準が低い」「朝食欠食の頻度が多い」等の不健康な生活習慣を持つ危険性 を「Logistic 回帰を用いて検証」し、「食品及び栄養素の摂取量を睡眠と食事の時間的定型間で比較」。
分析の結果、参加者の 20%が「6時頃に起床、6~7時頃に朝食」の時間帯が「非常に早い」群。24%が「7 時頃に起床、7 時頃に朝食」の「早い」群で、30%は「7~8時頃に 起床、8時頃に朝食の「遅い」群。残る26%は「8~10時頃に起床、9~10時頃に朝食」の「非常に遅い」群に大別された。起床と朝食の時刻が早い群では、登校が続いていた平時と同様の時刻に起床して朝食を摂っているものと考えられたが、遅い群では早い群よりも1~2時間以上も起床や朝食、昼食の時間帯が遅延。起床と朝食の時刻が遅い群の小児は、起床と朝食の時刻が早い群よりも「身体活動が不活発」で「テレビなど何らかの画面を見ている時間」が1日に4時間以上と長いが、学習時間は2時間未満と短い傾向が認められた。遅い群に属する小児は朝昼の食事を欠く事が多く「維他命類、鉱物類、野菜、果物、魚介類、乳製品の接種率が少なく」「砂糖や菓子、清涼飲料水の摂取量が多い」傾向も指摘された由。
研究者達は「長期に学校が休校になった際」に「平時より著しく遅い時刻に起床し朝食を摂っている子供」には「不健康な生活習慣を持つ危険性が高い」傾向が示された事から、再び感染症、或いは災害等が原因で学校が長期休校になった際にも「平時と同様の時刻に睡眠と食事を取る習慣を保つ」事が重要と結論付けた模様。米国からは「長引くマスク着用や外出減少の結果、2021年調査で幼児の言語機能が低下した」との報告も有り、世界的大流行の被害は多岐に及ぶ。英国では「コロナ禍の子供達の発達を支援する」目的で「回線接続教室の開催」や「教師や保育士の能力開発」、長期休暇中の活動提供計画に加えて「一対一の個別指導を20週間行う」等で「政府が総額8000億円を拠出した」と聞く。日本政府には適切な対応を望むが、其の為の出費は未来への投資として国民も受け入れるべきだろう。
本日に第87回新型コロナウイルス感染症対策諮問委員会。所謂、厚生労働省の専門家会合が開催。昨今の感染状況に就いては「全国で減少傾向」が続き、首都圏や大阪府、愛知県、一部の地方都市でも昨夏に於ける第5波の頂点を下回り、人口当たりの感染者数が全国最多の沖縄県でも直近3週間は減少傾向が続いている」。全ての年代で感染者数は減少していて、長らく横這いの続いた死亡者数も減少に転じたが、今後は「3回目接種や既感染から獲得された免疫が徐々に低下する」「来月以降は夏季休暇の影響で対人接触機会が増える」「感染の主体がオミクロン株の新系統に置換される」等の要因が重なり、「夏頃に感染者数の増加」が懸念されるとの警告が出された由。
緩和が進む水際対策に就いては、海外からの訪問者に対して「日本に向けて出国する前の検査」を継続して求めつつ、変異株の状況を監視する為に「日本入国時の検査で陽性と判定された」者には「ウイルスの遺伝子解析を続ける」事が必要。3回目接種の推進と基本的感染対策の徹底、介護福祉施設では入所者への4回目接種が要請される一方、医療や介護の現場での感染対策に関しては、標準的な予防策の実施を前提にした上で「感染者への対応で体が密着せず、排泄物等に触れる可能性が低い」場合には感染防御用の前掛や寛服の着用は不要。医療機関で感染者を受け入れる場合でも「病棟全体をコロナ専用にするのではなく、病室単位で患者を受け入れる場所を設ける」等の対応も容認。高齢者施設での面会は可能とし、医療機関での面会に就いては「小児の入院患者」や「出産の立ち会い」、「患者の看取り」等の「必要性が高い場面から受け入れて行くべき」。換気の重要性は揺るがぬものの「接触による感染の広がりは当初考えられていたより少ない」との報告も有り、「何度も設備の消毒をする」等の過剰な対応は減らすべき、等の提言も出た模様。専門家会合の一員たる舘田一博氏曰く「施設に依って緩和に慎重に為らざるを得ない」所も有ろうが「今回、示した方向性を基に出来る対策を考えて欲しい」との事。
6月9日(木曜)
本日は全国で1万6813人の感染、23人の死亡。東京都では新規1876人の感染が発生。本日開催の都モニタリング会議は「新規陽性者の7日間平均は、昨日時点で前週比76%の1784人」となり「新規陽性者数は継続して減少している」と分析する一方、都内でもオミクロン株のBA.2.12.1が12件、BA.5が5件確認されて「今後の変異ウイルスの動向を注視する必要がある」と指摘。都内の感染状況に関しては4段階のうち第2位の警戒水準が維持され、医療提供体制に就いては下から2番目の警戒水準が維持された由。大阪府では1419人、沖縄県では1353人の新たな感染を確認。
明日からの外国人観光客受入再開に関し、本日午前の記者会見で官房長官の松野博一氏が「旅行者数や経済効果に就いて現時点で定量的には申し上げられない」ものの「訪日旅行の予約が順調」との海外報道も有り「再開が地域経済の活性化等につながる事を期待している」と発言。「98の国と地域」を対象に「添乗員付きの団体旅行客に限定」との条件付きながらも、久々の商機を掴むべく、列島各地で「語学力を備え日本の歴史や文化を学んだ国家資格、全国通訳案内士の需要が高まる」と見込んだ観光関連の人材派遣会社が、人材確保に奔走。大阪の串カツ店は「共用の容器で使用していた掛汁を個別に提供」「併せて献立表を変更」等の準備を進め、羽田空港では貸出用Wi-Fi routerに関して「今月は既に数百台の予約が入り、日に日に予約が増えている」等の動きが見られる一方、従来は必要とされなかった「現地での査証取得」等の手続きが煩わしいとの感想も有るらしく「本格的な観光需要の回復には時間が掛かる」との声有り。
AstraZeneca社が開発した「SARS-CoV-2に因る感染症の発症抑制および治療」を適応とした「長時間作用型抗体の併用療法」の開発暗号名“AZD7442”。所謂、抗体医薬の特例承認を厚生労働省に申請した旨を、本日に同社が発表。当該薬品は「SARS-CoV-2に感染し回復した患者」のB細胞に由来する2種類の長時間作用型抗体、TixagevimabとCilgavimabの併用療法で、治験に於いては「SARS-CoV-2に感染しておらず、且つ感染者との濃厚接触の無い集団」に於いて、偽薬と比較して「症候性COVID-19の発症リスクが統計的に有意に減少する」事が示された由。ゼネカ社に拠れば、AZD7442は「世界的に主流となっている感染力の高い変異株BA.2」に対して「中和活性を保持」している旨がWashington大学から報告され、Oxford大学が実施した非臨床試験では「BA.4およびBA.5(BA.4/5)に対して中和活性を保持している」事も示された由。米国に於いては「免疫不全患者のCOVID-19の曝露前予防を適応として使用許可された唯一の抗体医薬」との事で、我が国に於いても「癌治療で免疫の働きが低下し、ワクチンの効果が十分に得られない」患者の発症予防等への効果が期待されている模様。
6月10日(金曜)
今週も昨日迄に政府の分科会が示す「対策を強化すべき水準」の目安を上回っている自治体の報告は無く、医療逼迫は起こっていない模様。新規感染者数を1週間平均で比較すると、大型連休が明けた先月12日迄の1週間では前週に比して1.41倍と増加した後、先月19日は0.97倍、先月26日は0.87倍、今月2日は0.68倍、今月9日は0.75倍と四週連続で前週を下回った。徳島県のみは9日迄の1週間は前週の1.02倍と微増を認めたが、他は「一日当たりの新規感染者数が約1247人」「直近1週間に於ける人口10万当たりの感染者数は594.62人」と全国最多の患者数が続く沖縄県も先月26日迄の1週間は前週の0.84倍、今月2日は0.72倍、9日迄は0.97倍と三週連続で減少が続く等と、46の都道府県で感染の勢いは落ちている模様。追加接種率の上昇や基本的感染対策の徹底等が功を奏したものと見られるが、時間経過と共にワクチンの効果が低下し、新たな変異株も登場と情勢が変わる可能性大。
本日は全国で1万5600人の感染、21人の死亡。東京で1600人、沖縄で1440人、大阪で1192人の新規感染が確認される一方、二年程に渡って停止していた外国人観光客の受入が遂に再開。一日当たりの入国者数の上限は2万人で、対象は感染の危険性が最も低いとされる米国や韓国、中国等の98の国と地域だが、中国は現在も感染を徹底的に抑え込む所謂「ゼロコロナ」政策を堅持。「旅行会社が国外への団体旅行を手配する事は禁止」「国外への個人旅行をしない様に要請」「国外から帰国する際は一定期間、所定の施設で隔離が義務付けられる」等の状況が続いて居る故に、当面は「中国から959万人が日本を訪れて外国人旅行者全体の3割を占めた」コロナ禍以前2019年の様な光景が再現される事は起こり得ぬ模様。団体旅行の参加者募集、査証発給手続の所要時間も有り、他の対象国から観光客も到着迄に「早くても1ヶ月程度掛かる」と予想されている。
受入再開と同時に水際対策も緩和され、今回の受入対象となる「98の国と地域からの添乗員付き団体旅行客」に関しては「ワクチン接種を受けていなくても入国時の検査や待機措置を免除」。其の他は引き続き「商取引や留学」目的の入国に限定されるが、「印度や越南を含む99ヶ国」からの入国者は「3回のワクチン接種で検査や待機措置が免除」。従前も入国者を受け入れて来た成田、羽田、中部、関西、福岡の各空港に加えて、今月中に新千歳空港と那覇空港でも国際線再開の予定。円滑に手続が進められる様に各空港では要検査者と検査不要者の動線を分け、「事前に電網上で一部審査を済ませた検査不要者」ならば30分程度で検疫手続が完了する予定。何処からの入国で在ろうとも、入国時に体表面温度測定装置に依る検温で発熱が確認された場合等は「検査や宿泊施設での待機」が要請される由。また観光庁が事業者向けに作成した指針に於いては「団体旅行客に対してマスクの着用を始め感染防止対策を徹底する」「国内で入院したり治療を受けたりする場合に備え、民間の医療保険に加入する事に同意を得る必要が有る」等と規定されたとの事。
外国人観光客の受入再開に向けて、都内の旅行会社は「感染対策の指針に合わせて、自由行動が含まれる従前の旅行計画を大幅に修正」、「全行程で添乗員を同行させる新たな日程を急ぎ作成中」。大手百貨店の三越伊勢丹では「今春から主として中国人向けにSNSでの情報発信を強化」して「旅行の計画段階から選択肢に入れて貰う」事で売上の早期回復を目指し、感染拡大以前と比べて「売上が9割以上落ち込んでいた」成田空港内の免税店でも「本日から品の数を増やす」等の準備が進行。東京都江東区の屋形船運営会社、京都市下京区の旅舎、石川県金沢市の金箔製造会社が運営する施設へ、海外からの予約が徐々に入って来た旨も報じられた。
本日に閣議決定された観光白書に於いては「新型コロナの影響で昨年1年間の外国人を含めた国内の旅行消費額は、感染拡大前の2019年と比べて66.3%も減少」して「非常に厳しい状況が続いている」。外国人観光客の受入が再開されても「訪日旅行者が3000万人を超えていた感染拡大前の水準に回復するには時間が掛かる」と指摘。落ち込んだ観光産業の「V字回復」を達成するには「一人当たりの消費額を増やす」と同時に「富裕層の外国人観光客」誘致を強化すべきで、更に「地域の魅力的な観光資源を生かした付加価値の高い旅行商品を開発」して「自治体等が行う再生計画の作成」「観光地の顔となる宿泊施設の改修等」も支援すべきとされた模様。
国内に於いても、本日から東京都が所謂、都民割の「もっとTokyo」を試験的に再開。其れに合わせて文京区の旅舎、椿山荘東京では「通常、休憩室で提供される人気の紅茶や軽食を客室で楽しめる」専用の宿泊系計画が用意され、都民割再開の発表以降は一日40件以上の問い合わせが殺到。都民に対する1泊当たり5000円等の助成には「ワクチン3回接種の完了」等の条件が課される事から、本日会見で都知事の小池百合子氏は「ワクチンの接種と都内観光の促進の両面での効果を期待」すると発言。今後の事業拡充に関しては「国のGo Toトラベルの動きや感染状況」、今後に予想される海外からの観光客増加、「其等も見極めながら」判断すると述べた由。
また全国各地の38の夏祭りや花火大会の予定に関して日本放送協会(NHK)が取材した所、「三年振りに開催する」と回答した主催者が26箇所、即ち68%を占めた由。「青森ねぶた祭」や京都の「祇園祭」、福岡の「博多祇園山笠」等は感染拡大前と略同規模で開催される予定。新潟では「長岡まつり」の大花火大会、秋田の「大曲の花火」等も実行が予定されており、昨年も決行された「仙台七夕まつり」や徳島の「阿波おどり」を含む5つの祭典は、更なる規模の拡大を計画。一方で密集は不可避との判断から、東京の「隅田川花火大会」、岐阜の「長良川花火大会」を含む7つの花火大会は、今年も中止と決した模様。
夏季休暇も近付き、観光需要が高まる中で、国際医療福祉大学の主任教授、松本哲哉氏からは「感染力の強い変異株が国内に持ち込まれる危険性」も有り、「感染が世界的にも落ち着いていない」中で「何処迄、規則を緩和して受け入れても大丈夫かは不安」。「海外と日本ではコロナの受け止め方が違い」、「感染対策が緩い国も有る」ので「国内の規則を守る事が前提」の観光客も「言われた通り守ってくれるかが課題」。抵抗感を示す観光客も居るだろうし、何らかの支障が発生する事も想定すべきだが、受入再開から時間が経過しても大きな問題が生じなければ「外国の人が入っても感染拡大に繋がらない」と証明出来る「人が行き来して感染が如何なって行くか」は不明だが、「感染者数を増やさずに維持出来れば良い」と発言。
政府分科会の構成員たる舘田一博教授も「今回、入国時の検査無しで受け入れる対象」とされた国々ですら「日本に比べると人口当たりの感染者数は多い」。「ウイルスが持ち込まれる危険性は高い」と認識する事が重要で、外国からの観光客には「国内で遣っている対策を守って貰う」「少しでも体調がおかしいときは検査を受けて貰い、陽性になった場合は速やかに医療機関を受診して貰う」等の「啓発が大事」。「海外から如何云う変異ウイルスが持ち込まれているのか」を把握する体制を整える事も重要と説いた。御説御尤もなれども、罰則の伴わない「御願い」を如何にして異国の客人に守らせるかに関し、特に妙案は無い模様。個人的には「近い将来に次の感染拡大が起きる事は不可避」との前提に立ち、短期集中的に稼ぐ事を目指すと同時に「或る程度の感染状況でも臨機応変に対応し、持続可能な観光業を育てる」事こそが肝要と愚考。
本年3月から5歳から11歳の小児に対するPfizer製ワクチン接種が本格化し、昨日に公表された情報に拠ると2回目の接種率は14.9%に到達。厚生労働省の研究班が「5月24日迄にワクチンを接種した小児」106人を対象に「従来株に対する抗体の値や副反応」を分析し、本日に専門家部会で結果を発表。対象のうち38人は「2回目接種から1ヶ月後の抗体価」が平均1773となり、感染後の小児で抗体価が最大120だったのと比較しても凡そ15倍と高値を示した。副反応に関しては、「2回目接種後の小児62人」と「20歳以上成人」との比較で「小児の方が副反応が出る割合が低かった」との事。具体的には、38度以上の発熱は成人で21.3%だったのに対し、小児は4.8%。全身倦怠感は成人68.8%、小児22.6%。頭痛は成人53.1%、小児14.5%。
研究班の代表で順天堂大学医学部の特任教授、伊藤澄信氏は「小児のワクチンは有効成分の投与量が大人と比べて少ない」事から「副反応の割合が低く出る」ものと考えられるが「接種の意義は有る」。「此の情報を参考にして接種を検討して欲しい」と呼び掛けた由。成人の3回目接種、高齢者の4回目接種も同様だが、少なくとも当市では「希望者が少なく、小児の初回及び2回目接種が進展しない」状況が続いていると伝え聞く。「本年1月から3月に10都県の13医療機関で新型コロナウイルス検査を受けた患者情報」男女5169人分を分析した長崎大学等の研究では「16歳から64歳では2回目接種から90日以内では35.6%、180日迄は34.5%、181日以降は34.8%と低下した発症予防効果が3回目接種で68.7%に上昇」、65歳以上の高齢者では「3回目接種から2週間以降は80.5%有効」との報告も有る。斯様な知見が有効に活用され、接種率が上がる事を切に願う。
6月11日(土曜)
持続化給付金を詐取した容疑で45歳女性と息子2人が逮捕された事件に関して今週に動きが有り、指名手配されていた元夫の谷口光弘容疑者が印度尼西亜で逮捕。同日午後に首都の雅加達にて、同国の入国管理局が容疑者を同席させて記者会見。発表に拠れば現地時間の7日22時半、即ち日本時間の8日0時半頃にスマトラ島南部のランプン州カリレジョの民家で容疑者を逮捕。容疑者は投資を目的とした査証を取得し、「鯰養殖への投資」を行う目的で現地に会社を設立。雅加達とLampung州を往復していたと見られるも、記者会見の場で報道陣の問い掛けには一切答えず、俯いた儘で引き立てられて行った模様。容疑者は雅加達の入国管理局施設で拘束された後、日本大使が警視庁と共同で日本に移送すると報じられた。
事件自体に関しては、其の後の捜査で「虚偽申請の名義人に給付金が振り込まれた後、容疑者達が1人当たり15万円から40万円程度の手数料を現金で直接受け取り、口座記録等の証拠が残らない様にしていた」。谷口一家4人を含む集団が全国各地で名義人を集め、虚偽申請を代行する際に「名義人の個人情報以外は収入の額を含め、概ね同じ内容の書類を提出していた」疑いが有る等が判明。雑な遣り口が制度を所管する中小企業庁に気付かれて支給中止や不正発覚に繋がった反面、名義人に対して「確定申告を自ら行ったかと尋ねられた場合」は「はい」と答える等とSNSを通じて指南し、事件発覚を警戒していた事も窺える。
本件を含めた不正受給に関わったとして検挙された3700人余を警察庁が調べた所、年齢別では20代以下の若者が全体の7割近くを占め、「SNS等を通じて安易に不正に加担した」事例が多いのでは無いかとの事。詐取に関わり甘い汁を吸おうとした点に同情の余地は無いものの、若さ故に判断を誤り、首謀者に利用された部分も有ると云う事か。
今週6日に日本銀行の総裁、黒田東彦氏は都内の講演で、日本経済の現状について「感染症による落ち込みからの回復途上で、欧米とは異なり、感染拡大前の水準を回復出来ていない」「日本は資源輸入国で在り、最近の国際的な資源価格の上昇に依って所得面で下押し圧力を受けている」等の見解を語り、大規模な金融緩和を続ける姿勢を強調。また物価変動と関連して「家計の値上げ許容度も高まって来ている」のは「持続的な物価上昇の実現を目指す観点からは、重要な変化」で「日本の家計が値上げを受け入れている」間に「賃金の本格上昇に如何に繋げて行けるか」が当面の論点かと語ったが、此の発言に非難が集中。
翌7日夕方の時点で、黒田総裁は記者団に対して「家計が自主的に、値上げを受け入れているという趣旨では無く、寧ろ家計としては謂わば苦渋の選択として、已むを得ず値上げを受け入れていると云う状況」だが「誤解を生じる様な言い方は、表現は適切ではなかった」。更に「賃上げの必要性がより高まっていると云う文脈で申し上げた」ものの「家計が自主的に値上げを受け入れていると云う趣旨では無い」。「誤解を招いた表現だったと云う事で、申し訳無い」と述べて陳謝するに至り、立憲民主 (みんしゅ)党代表の泉健太氏から「全く生活実感が無く、無神経だ」。日本共産党書記局長の小池晃氏から「厚顔無恥と言う他無く、許し難い発言だ」と批判を浴びた。
叩かれて当然の失言なれども、黒田総裁が詫びた所で値上げの動きが止む訳では無く、同じく7日にFAST RETAILING社が、秋冬物のUNIQLO定番商品の値上げを発表。fleece素材の一部製品が従前の税込1990円から2990円、Ultra Light Down Jacketが5990円から6990円と千円も価格上昇。長袖の機能性肌着“HEATTECH”のうち2商品も、「極暖」が1500円から1990円に「超極暖」は1990円から2990円となるも、「化学繊維を始めとする素材の価格や物流費」等が「コロナ禍からの経済の回復」や「露西亜に依る烏克蘭侵攻等を背景に高騰し、企業努力だけでは吸収出来ない」事が値上げの理由との事。
今週の明るい便りと云えば「3月春場所の後から禁じられて来た出稽古に関し、日本相撲協会が感染症専門家と協議」「其の結果、PCR陰性の確認等を条件に約2年振りに出稽古を解禁」。8日夜には「札幌の初夏の風物詩、YOSAKOIソーラン祭りが3年振りの開幕」。今夏の羽田空港発着、国内線に関して全日空が「新型コロナの影響による減便を行わず、凡そ2年ぶりに通常運航に戻すと発表」「日本航空も来月からの2か月間、国内線全体の運航をほぼコロナ前の水準に戻す計画」。
飛沫感染への懸念から新型コロナウイルスへの飛沫感染の恐れ有りとして、J.Leagueは一昨年2月以降、競技場で声を出して応援することを禁止して来たが、調査に協力してきた産業技術総合研究所と慶応大学の奥田知明教授は先月下旬に「声出し応援による飛沫の飛び方」を調べた結果、「不織布のマスクを着用すれば96%から99%まで抑えられるとの結果を纏めた。更に政府の基本的対処方針変更で「会場の収容率を50%とすれば大声を出しての催事を実施する」事が認められ、段階的に再開して行く事が判明。そして11日、茨城県鹿嶋市のカシマスタジアムで行われたJリーグカップの鹿島アントラーズとアビスパ福岡との試合で、声を出しての応援を再開。会場を訪れた9085人の観客のうち、ホームとアウェーのサポーター、およそ1700人が声出し応援を認められた。野球やラグビー、バスケットボール等を含めて「国内の主なプロスポーツで声を出して応援が行われる」のはコロナ禍になって此れが初との事。
本来は食べられる物が廃棄される食品喪失について、国は2000年度の時点の年間およそ980万瓲を、2030年度までに半減させることを目標に掲げた。今週9日に最新の食品ロスの推計が発表されたが、2020年度は企業での売れ残り等が275万瓲、家庭での食べ残し等が247万瓲で、総計522万瓲は統計を取り始めてから最少。前年と比べて事業系は34万瓲、家庭系は14万瓲の減少となるも「食品ロス削減への意識向上」に加えて「営業時間短縮等で飲食店が外食を提供する機会自体が減った」等と感染状況が間接的に影響したか。因みに年間の目標達成には「更に30万瓲余の削減が必要」との事。
6月12日(日曜)
中国の北京/Beijingでは4月下旬以降に感染者が相次いで確認され、先月は一日当たり50人前後の日が続いた。此れを受けて北京市当局は、凡そ1ヶ月に渡って市内全域で飲食店での食事を禁止して来たが、感染者数が減少傾向に在る事から今週6日から一部地域を除いて解禁。
市内の多くの地域で在宅勤務では無く、通常通りの勤務が認められる様になり、観光施設や公園、映画館等も人数制限を残した上で再開。事務所や商業施設を含む公共の場所への出入りに於いて、従前は「48時間以内のPCR検査陰性証明」を要したが、此の有効期限も「72時間以内」に緩和。中国では、厳しい感染対策による消費の落ち込みが経済への打撃となっていて、市当局としては、制限の緩和に依って地域経済の回復を図りたい意向。回線接続に切り替えていた小中学校や幼稚園の授業に就いても、市当局は来週以降、段階的に対面の授業に戻す予定との事。
中国の税関当局から発表された先月の貿易統計に拠ると、輸出と輸入を合わせた貿易総額は5377億4000万弗で、前年同月と比べて11.1%のプラス。このうち輸出額は3082億5000万弗と16.9%のプラス。輸送用容器の取扱量で世界最大と称される上海港で長く続いた混雑の状況も「今月に入って外出制限が事実上解除された後は例年並みに戻って来た」との情報有り。上海でも厳しい外出制限が2ヶ月以上も続き、今月1日に制限が解除された後も散発的に感染者が発見されているが、今週10日にも16人の感染を確認。昨日は大規模な一斉PCR検査が決行され、2400万人を超える上海の住民の9割以上が今週末に検査を受ける事になった由。
同じく今週10日、米国政府の報道担当者は「外国から航空機で入国する際に義務付けていた出発前1日以内のCOVID検査の陰性証明を不要にする」旨をTwitterに投稿。CDCに拠ると「新たな措置は米国東部時間の12日から適用される」由。台湾では域内で感染が確認された者の濃厚接触者に就いて、「3回接種済」を条件に先月17日から隔離が免除された一方、「海外から到着する者には7日間の隔離」との対応を継続。しかし、欧米や亜細亜等で水際対策を緩和する国が増えている事を鑑み、台湾当局は「今月15日以降に海外から到着する全ての者に就いて隔離期間を3日間に短縮する」と発表。「4日目から7日目は不要な外出は禁じる」一方、「直近の2日以内に行った抗原検査で陰性」ならば「仕事に出る事等を認める」としています。「1週間当たりの入境者数の上限」の目安についても、最近の実績より5000人以上多い2万5000人とし、今後も感染状況の推移等を見ながら、更なる緩和を検討するとの事。