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令和コロナ騒動実録  作者: 澤村桐蜂
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令和4年3月最終週~4月第1週

3月28日(月曜)

 内閣官房は、先週27日時点の全国47都道府県の情報を発表。「医療提供体制等の負荷」と「感染の状況」に関して、政府の分科会が示す「対策を強化すべき水準(レベル)」の目安を上回る自治体は無かった由。本日は2万9881人の感染。兵庫県で12人、神奈川県で9人、埼玉県で7人、長野県で6人、京都府で4人、千葉県で4人、大分県で3人、愛知県で3人、鹿児島県で3人、岡山県で2人、茨城県で2人、佐賀県で1人、北海道で1人、大阪府で1人、宮城県で1人、広島県で1人、愛媛県で1人、栃木県で1人、熊本県で1人、香川県で1人、高知県で1人で総計65人の死亡。人工呼吸器や集中治療室等の治療を要する重症COVID患者は691人。今月24日に行われたPCR等の検査は自主検査を除いて7万3609件。東京都は4544人の新規感染を確認。先週月曜より700人程度の増加を認め、二日連続で前週同曜を上回った。28日までの7日間平均は6565.0人で、前週の88.1%。28日確認された4544人を年代別に見ると「10歳未満」が最も多く、全体の19.8%にあたる899人。65歳以上の高齢者は226人で全体の5.0%。感染経路が分かっているのは1607人のうち、最多の「家庭内」は1083人と67.4%を占めた。都の旧基準で集計した人工呼吸器か人工心肺装置を使っている重症COVID患者は、28日時点で昨日より1人増えて37人。

 本日に政府が公表した最新状況に()ると、国内で3回目接種を受けた人は4937万423人で全人口の39%。3回目を接種日別に見ると、一日の接種回数が最も多いのは今月5日の113万7713回。ワクチンを少なくとも1回接種した者は1億237万587人で全人口の80.8%、2回目迄の接種を終えた者は1億59万3847人で全人口の79.4%。このうち5歳から11歳の児を対象にした接種で1回目を受けたのが35万1314人、2回目の接種を受けた人は8337人。全人口にはワクチン接種の対象年齢に満たない小児も含む。

 参議院決算委員会で、立憲(りっけん)民主(みんしゅ)(とう)杉尾(すぎお)秀哉(ひでや)氏から「Putin大統領を増長させて、挙句(あげく)の果てに烏克蘭(ウクライナ)侵略を許した」「日本の経済協力は無駄(むだ)(がね)だった」。「安倍(あべ)政権(せいけん)の楽観的な見通しに基づく失敗としか言い様が無い」が「長く外務大臣を務めてきた岸田総理大臣にも責任が有る」と批判されたのに対し、内閣総理大臣の岸田(きしだ)文雄(ふみお)氏は「今の状況を(もっ)て、2014年以降の国際的な努力を全て無駄だと一概に切って捨てることは適切で無い」。共同経済活動では「戦後初めて日本人が、日本企業が北方四島で経済活動を行う事を確約」して居り「全て無駄だと云う事は乱暴な話ではないか」と反論。

 総理の言い分も分からぬでは無いが、抑々(そもそも)「北方領土が戻る見込みも無いまま、露西亜に利が流れるばかりの経済活動を始める事に意義は有ったか」との疑問が残る。少なくとも安部氏が「ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ている」等と(のたま)った事は当時の状況からしても噴飯(ふんぱん)(もの)だったが、其の様な詩的表現でPutin氏の対日姿勢が変わったとも思えぬ。他に「烏克蘭情勢に伴う物価の上昇を踏まえた新たな経済対策」「引金(トリガー)条項の凍結解除の是非」「年金生活者支援5000円給付」等の是非や要否が取り上げられた由。更に「来月から成人年齢が18歳に引き下げられる」事を受けて「新たに成人となる10代が成人(アダルト)動画(ビデオ)への出演を強要されても未成年者取消権が使えなくなる」件に関して、岸田総理は「民法、消費者契約法、刑法等、様々な法律を適用」「成人として扱われる方々の権利や立場を守って行く」と宣言したそうだが、18歳でも商取引の判断が十分可能と判断して法改正を行った事とは矛盾する気もする。


3月29日(火曜)

 内閣官房の発表に依ると、昨日も政府の分科会が示す「対策を強化すべき水準(レベル)」の目安を上回る都道府県無し。全国の新規感染者数は緩やかな減少傾向が続いているものの、昨日迄の一週間平均値は(いま)だに去年夏の第5波頂点(ピーク)の1.7倍に相当。今月21日に蔓延(まんえん)防止(ぼうし)(とう)重点(じゅうてん)措置(そち)が解除された18都道府県に於いて、一週間の新規感染者数を前週と比べると、首都圏の1都3県では東京都が0.88倍、神奈川県が0.73倍、埼玉県が0.93倍、千葉県が0.80倍。関西に行くと大阪府で0.78倍、京都府で0.82倍、兵庫県で0.81倍、東海を見ると愛知県で0.88倍等と微減。しかし、北海道では0.99倍と横這() いで、栃木県は1.03倍、岐阜県は1.07倍と前週より微増。重点措置が解除された他の地域や重点措置の適用が無かった地域に関しても秋田県1.07倍、鳥取県1.15倍、広島県1.06倍、佐賀県1.13倍、大分県1.20倍、鹿児島県1.33倍、沖縄県1.14倍等の増加を認めた。

 厚生労働省の専門家会合も先週に「夜間の繁華街の人出が重点措置の解除の直前から継続して増えている地域が有る」と指摘。今後は「花見や年度替わりの時期の歓送迎会」等で大勢が集まり接触する機会が増える事、オミクロン株のうち感染力がより高いとされるBA.2系統のウイルスに感染の主体が置換される事で「感染が再び増加に転じる」可能性が有る由。感染症の権威たる東京(とうきょう)医科(いか)大学(だいがく)特任教授の濱田(はまだ)篤郎(あつお)氏も「先日の三連休等の影響」を反映して「少しずつ感染が増える」傾向が見られ、感染第六波が続くも「此処(ここ)に来てワクチンの追加接種の進度(スピード)が落ちて来ている」が「()ずは接種率を英国や仏蘭西(フランス)等と同じ程度、5割を超える様にして行く事も必要」等と発言。

 そして本日は全国で4万4466人の感染、81人の死亡。東京都は7846人の感染を確認したと発表。先週火曜より4300人程度を加えて二倍余となって、三日連続で前週同曜を上回り、本日を含む7日間平均は7181.1人で前週の105.1%。先月11日以来の100%超だが、先週火曜は「検査数が少ない連休明け」故に比較的低値だったとの事情も有り、先々週火曜とは概ね同水準との事。都の旧基準で集計した人工呼吸器か人工心肺装置を要する重症COVID患者は昨日より4人減って33人。都内の患者用病床使用率は26.2%で、先月19日に約60%を記録した後は徐々に低下。オミクロン株の特性を踏まえた重症患者用の病床使用率も、先月22日に36%超と頂点を迎えた後は徐々に低下し、本日は更新された情報で12.9%。大阪府では新規4340人の感染が確認され、三連休明けの先週同曜と比べても三千人超の増加。府内の感染者累計は78万6559人となり、重症者は28日から2人減って84人。

 岸田総理大臣が指示した物価上昇に対する緊急対策の財源に関し、「新年度予算に盛り込まれた5000億円の予備費」や「新型コロナウイルスへの対応としての5兆円の予備費」の使用が検討される一方、「感染対策に用いるべき予備費を充てる事は目的外使用」との批判有り。対して経済再生担当大臣の山際(やまぎわ)大志郎(だいしろう)氏は、本日閣議後の記者会見で「此れ迄も直接コロナ関係に(こだわ)らず、コロナ禍で影響を受ける人に対して予備費を使った」先例も有り、「コロナ禍で(いた)んでいる経済」と「ウクライナ問題に端を発した勢力(エネルギー)の問題を中心にした影響」は不可分にして「或る程度、広く見て行くものだと思う」と主張。しかし、一方、財務大臣の鈴木(すずき)俊一(しゅんいち)氏は「コロナ予備費は()くまでコロナに関わりの有るものに就いて、緊急的に対応する(ため)の予備費」にして「各省からコロナ予備費を使いたいと申し出が有れば、政策目的等を判断をする」と語り、閣内でも意見が分かれている模様。

 10歳未満の感染者が多発する状況下で、今月から5歳から11歳の小児を対象にしたワクチン接種が本格化。本日公表されたワクチン接種記録システム(Vaccination Record System; VRS)の集計では、1回目接種を終えた小児は全国で総計39万4714人。対象となる約741万人のうち、接種率は5.3%となり、2回目の接種を受けた児は1万3774人で接種率は0.2%となった由。3回目接種を加速させる為に、東京は大手町の合同庁舎では、先月10日から1日当たり5040人分の接種枠を設けて、自衛隊の大規模接種が継続中。しかし、同月28日から予約枠が埋まらぬ状況が続き、防衛省は「予約が比較的多い金曜と土曜を除き、来月4日以降は接種枠を1日3000人分に縮小」する旨を決定。大型連休の期間中に希望者が増える可能性を考慮して「来月28日から5月8日は再び1日当たり5040人分の接種枠を設ける」、「仮に予約が急増した場合は速やかに必要な態勢を取る」との事だが、成人への3回目接種も進んでいない状況での蹉跌(さてつ)に先が(おも)()られる。

 与党が「5000円の給付金で年金生活者らを支援する」と提案するも野党側から「夏の参議院選挙目当てのバラマキだ」等と批判された件に関し、岸田総理大臣が28日の国会審議で「本当に必要なのか如何(どう)かを(しっか)りと検討したい」と発言。更に本日、自民党政務調査会長の高市(たかいち)早苗(さなえ) 氏は29日に開かれた政務調査会の幹部会合で「今年度予算の予備費を財源として活用する事を想定していたが年度末で使う事が出来なかった」「新年度予算での実施は白紙だ」等と白紙に戻して見直す意向を示し、「自公政権内で軋轢が生じている」とも囁かれている由。

 出入国在留管理庁に依ると、昨年末の時点で日本に在留する外国人は276万635人。コロナ禍の影響で新規入国者が減少した事から前年と比べて12万6481人少なくなり、2年連続で減少した由。在留資格別では「永住者」が83万1157人と最も多く、次いで「特別永住者」の地位を以て在留する人が29万6416人、「技能実習」が27万6123人。1年間のうちに「不法滞在等で国外退去等の処分を受けた外国人」は前年より2000人以上も多い1万8012人となり、1万3255人が農業や建設業等で不法に就労していた模様。強制送還された者は4122人で、世界的大流行(パンデミック)の影響で航空便が減少した事から前年より1300人余り減少。

 先月の東京人口の動向は転入が2万7767人、転出が2万7143人。「転入が転出を624人上回り、前月に続いて転入超過」となった旨、総務省から報告有り。転出超過だった昨年同月に比して、転入は335人の減少に留まる一方、東京から他の道府県に転出する人数が2797人減った事が転入超過に繋がった模様。感染が収束すれば東京への一極(いっきょく)集中(しゅうちゅう)は復活しそうだが、観光客も含めて「海外から日本へ」と()う人の流れが(よみがえ)るのか(いな)かは、国の浮沈(ふちん)にも関わる問題だろう。


3月30日(水曜)

 本日に開かれた厚生労働省の専門家会合に依ると、全国の感染状況に就いて「緩やかな減少が続いていたものの、直近の数日で増加傾向」となり「従前も感染拡大の初期に起きた20代の割合の増加が見られる」との事。特に増加傾向の目立つ鹿児島県や沖縄県では20代の増加も顕著で、東京都でも検査陽性率が増加する等は「反跳(リバウンド)の兆候」で在る可能性を考えねばならず、注意を要するとの事。感染増加の要因として挙げられたのは「措置解除後に夜間の繁華街の人出が全国で増加」「花見や謝恩会、歓送迎会の時期を迎えて接触機会が増える」「感染の主体がBA.2に置換される」等で、抑制の要因は「3回目接種の推進」「気温上昇で換気が容易になる」「不織布マスクの正しい着用、消毒や換気、密を避ける」等と再三聞いて来た話題ばかり。会合後の会見で座長の脇田(わきた)隆字(たかじ)氏は「今は感染の拡大期に入ったと迄は言える状況では無い」と述べる一方、「個人的な意見だが」と断った上で「今後感染が拡大して医療の逼迫が確実に起こる」事に成れば、改めて「感染を抑える対策が必要」とも語った由。

 本日は全国で5万3753人の感染と96人の死亡。重症患者は655人で、一昨日に行われたPCR等の検査数速報値は6万6665件。東京都では9520人の感染を確認されたが、先週水曜より3000人余の増加で凡そ1.5倍。4日連続で先週同曜を上回り、7日間平均7622.6人は前週の121.1%に相当。都の旧基準で集計した人工呼吸器か人工心肺装置を使っている重症の患者は30日時点で29日より1人減って32人。本日午後に東京都知事の小池(こいけ)百合子(ゆりこ)氏が岸田総理大臣と会談し、感染対策に関する要望書を提出。感染再拡大の懸念が強まり「予断を許さない状況」と断じる一方、「ワクチンの追加接種や経口薬の供給に向けた取り組みが進展している」として「感染拡大防止と社会経済活動の両立に向けた出口戦略」に就いての検討を求めた由。大阪府でも4517人の新規感染が確認されるたが、先週同曜より200人以上の減少。重症者も昨日より5人減って、79人となった由。

 横浜(よこはま)市立(しりつ)大学(だいがく)病院化学療法センターでセンター長を務める呼吸器内科医の堀田(ほりた)信之(のぶゆき)氏を含む研究者達が、2009年1月から2021年9月に於ける厚生労働省の死亡統計を用い、COVID-19蔓延前後の自殺による死亡者数の変化を調査。今月1日付のJAMA Network Open誌上に“Trends in Suicide in Japan Following the 2019 Coronavirus Pandemic”なる論文を発表した由。

 当該期間中の人口推移を見ると2009年の1億2800万人から漸減が続いて、昨年には1億2600万人となり、平均年齢は43歳から47歳へと上昇。COVID蔓延直前の2019年度に於ける人口10万人当たりの自殺件数は男性で20.9、女性で8.7。2020年度の人口10万人当たりの自殺による死亡率は、前年迄11年間の実測値を基に算出した推定値と比べ、男性で17%、女性で31%と有意に増加。蔓延初期の2020年4~6月における人口10万人当たりの自殺件数は推定値に比して顕著な増加を認めなかったが、2020年7月以降は大きく増加。女性では2020年4月の0.62に対し2021年4月には0.92と増加の幅が大きく、男性では1.65と元来の値が大きいものの、昨年も1.96と増加幅は小さいとの性差が指摘された。特に20歳代の女性の増加が顕著で、2020年4月の0.69に対し、2021年4月には1.10だったが、此の間の失業率も自殺件数の増加と同様の傾向を示した由。

 世界的大流行の発生以降、1年以上に渡って自殺件数が増加した事が確認され、「コロナ禍を原因とする失業率上昇」に因り、特に「社会経済基盤の弱い若年女性を中心に自殺が増加」している可能性が示唆された結果に関して、堀田氏は「コロナ禍で若い女性の自殺が増えたと言われて来たが、其れが学術的にも裏付けられた」「自殺防止の観点からは、感染対策と経済対策の均衡(バランス)が大切ではないか」と語った由。また警視庁の発表に拠ると、初回の緊急事態宣言から半年程が経過した一昨年秋以降、新宿や池袋の繁華街に於いて「路上で売春を目的に客待ちをする女性が急増」。売春防止法に基づいて検挙を続けるも、生活困窮等の理由で再び路上に立つ女性が後を絶たぬ状況が続き、警視庁は来月から「取締とは別に検挙した女性の支援を専門に行う担当者」を保安課に新たに配置。生活状況や希望等を聴取した上で担当者が自治体の相談窓口に同行し、就職や住居を探す等の支援を行う事となったそうだが、先の研究と併せて現代日本の実相(じっそう)(うかが)われる話だと感じる。


3月31日(木曜)

 本日は全国で5万1913人の新規感染、102人の死亡。人工呼吸器や集中治療室等を用いる治療を要する重症COVID患者は627人で、一昨日に行われたPCR等の検査は自主検査を除く速報値で8万1811件。東京都内では8226人の新規感染を認めるも、先週木曜より600人以上減り、五日振りに1日の感染者数が前週同曜を下回った。都の旧基準で集計した人工呼吸器や人工心肺装置を使用する重症COVID患者は、昨日と同じ32人。大阪府の新規感染も先週同曜より700人余を減じ、3734人と報告された。

 長崎(ながさき)大学(だいがく)等に所属する研究者達が「オミクロン株が広がった今年1月から2月」に「10都県の13医療機関」で「COVID疑いで検査を受けた16歳から64歳の男女2000人」の情報を基に、ワクチンの発症予防効果を分析。昨日の専門家会合で発表された調査結果に拠ると、検査で陽性だった者は758人、陰性は1242人。Pfizer製かModerna製のワクチンを2回接種した者に於ける発症予防効果は42.8%で、3回目接種を受けた者では68.7%。昨年7月から9月の2回接種で88.7%とされる発症予防効果は、オミクロン株の流行や接種後の時間経過に伴って低下するが、3回目の接種で有効性が上昇するとの事。専門家会合の脇田隆字座長からは「7割近い有効性が示され、3回目の接種で一定程度回復すると言える」「海外の資料からは入院や重症化の予防に就いては更に高い効果が見込まれる」との言有り。

 同じく昨日の会合で、日本循環器学会からも報告。「昨年8月から12月」に「東京都等の7医療機関」に「COVIDで入院した中等症以上の患者で心疾患の既往を持たない」数百名を対象とし、更に「血液検査で心臓病の危険性(リスク)が指摘された」31名を精査した所、退院から3ヶ月後の時点で「42%に当たる13人に心機能が低下する」等の症状が見られ、31人中8人には筋炎の症状が指摘された由。調査を担当した佐賀(さが)大学(だいがく)医学部の循環器内科教授の野出(ので)孝一(こういち)(いわ)く「新型コロナの急性期は心臓に問題が無くても其の後、心臓に症状が出て来る恐れが有る」「コロナが治っても長期的に様子を見て、何らかの症状が出た場合は()ぐに検査を受けて欲しい」との事。

 一昨日に米国の食品医薬品局(Food and Drug Administration; FDA)が、Pfizer製とModerna製のワクチンに関し、「最初の追加接種から4ヶ月以上が経過した50歳以上」を対象に2回目の追加接種、即ち通算4回目の接種を許可。昨日に早速、同国大統領のJoe Biden氏が4回目接種を受け、其の様子を報道陣に公開した由。バイデン政権は今月に「ワクチン接種率の向上や変異ウイルスへの備えを進める」事で経済や社会の活動を止めずに日常生活を取り戻して行く」新政策を発表して居り、大統領は「我々は新たな節目を迎えた」「コロナ禍が終息した訳では無いが、生活を支配される事はもう無くなった」と語り、国民にも追加接種を受ける様に呼び掛けたとの事。

 COVID用ワクチンや治療薬の承認が海外に比べて遅れる事が繰り返されていた状況に対し、本日の衆議院本会議で医薬(いやく)(ひん)医療(いりょう)機器(きき)(ほう)等の改正案が審議された由。医薬品医療機器法等の改正案には「感染症の流行」等の緊急時に「代替手段が無い」事を条件に、国内外で開発されたワクチンや治療薬等を迅速に薬事承認できる緊急(きんきゅう)承認(しょうにん)の制度を新設するとの内容が盛り込まれ、岸田総理大臣は「緊急承認制度は安全性の確認を前提に、有効性が推定された段階で迅速に薬事承認を与える仕組み」で「国民により早く必要な医薬品等を御届け出来る」と意義を強調。緊急承認された医薬品の安全対策に就いては「重大な副作用が判明した場合等は速やかに承認を取り消す」事が可能とし、市販後は「製造販売業者に依る医薬品安全性監視計画の策定」「患者自らが医薬品の副作用やワクチンの副反応が疑われる事例を報告できる仕組み」等を活用し、「確りと安全対策を行っていく」と述べた。同じく本会議で、立憲民主党が提出した「新型コロナ対応に当たる医師や病床が不足した場合に都道府県間の調整に当たれるよう、政府の司令塔機能の強化を盛り込んだ法案」等も議題に上がった由。

 一部で「COVIDにも有効なのではないか」との意見も有ったivermectinの治療効果に関して、伯剌西爾(ブラジル)の研究者集団が調査を行い、New England Journal of Medicine誌に発表。「昨年3月から8月」に肥満や糖尿病、高血圧等と「COVID重症化の危険因子を有する18歳以上の患者」1358人に対し、発症から7日以内にイベルメクチンを1日1回で3日間、実薬投与群と偽薬投与群に分けて経過観察。其の結果、「4週間以内に入院、若しくは救急外来を受診した患者」の比率はイベルメクチン投与群で14.7%、偽薬投与群で16.3%となり、統計学的な有意(ゆうい)()()し。「発症から7日目での体内のウイルス量の減少」や「回復に有する期間」、「死亡率」等に関しても、明らかな相違を認めなかったとの結果に終わった由。

 今回の臨床試験は「患者も投与する医師の側もイベルメクチンか偽薬かを知らぬ形で調査を進める」二重(にじゅう)盲検(もうけん)法を用いる等と厳密に行われたらしく、報告された結果は比較的信頼が於けるものと考えられる。イベルメクチンは北里(きたざと)大学(だいがく)特別栄誉教授の大村(おおむら)(さとし)氏の研究から開発された薬剤で在り、特に我が国では過度の期待を抱く者も多かった模様。「静岡(しずおか)伊東(いとう)川奈(かわな)の土壌から発見された微生物が製薬化された事で、阿弗利加(アフリカ)で多くの住民を失明させたオンコセルカ症 /Onchocerciasisが治療可能となった」「他にも様々な寄生虫感染症の特効薬となり、大村氏はNobel医学生理学賞を獲得した」等の逸話は日本人が誇って良い所だが、COVID特効薬の栄誉迄もを重ねようとするのは流石に無理が有った様だ。

 烏克蘭(ウクライナ)からの避難民受入を進めるため、岸田総理大臣の特使として4月1日から波蘭土(ポーランド)訪問を予定していた法務大臣、古川(ふるかわ)禎久(よしひさ)氏の家族がCOVID感染。古川大臣も濃厚接触の可能性が浮上し、訪問は急遽中止。今夕に開かれた衆議院議院運営委員会の理事会で木原官房副長官が「古川大臣に代わって林外務大臣を、予定どおり4月1日から岸田総理大臣の特使として波蘭土に派遣する」と説明し、各党が了承。

 先月20日の項に記した狂信的な反ワクチン、反マスクの団体、神真都(やまと)Qが東京円蓋(ドーム)球場や西(にし)早稲田(わせだ)、そして静岡(しずおか)焼津(やいづ)市のワクチン接種会場に乱入。問診医に「名前と所属を名乗れ」「君達は殺人を幇助(ほうじょ)している」等と詰め寄る事態が発生。当院の代表として市のワクチン接種会議に参加した医師に拠ると、当市内でも「同団体を名乗る者から小児科診療所に抗議文入り封筒が投函される」事態となり、医師会が警察と相談。「関係者以外立入禁止等の表示を無視した侵入者は拘束可能」との確約を得て、市職員が証拠の録画や録音を準備したとの事。集団接種に関しては、其の他に「1-2回目接種希望者が頭打ち」、「回目接種の予約枠も空き勝ちで、特にモデルナ接種日の人気が無い」。5-11歳の小児予約枠は「初回は数時間で定員が埋まり、成人の3回目枠を縮小して小児枠へ変更」されたが、以降は空き枠が発生。4回目接種の準備が始まり、「当院職員は6月下旬に施行予定」だが、医師会員の中には集団接種への協力を渋る者も出て来た等の報告有り。

 今月一杯で東京五輪・パラリンピック推進本部の設置期間が終了し、明日からは法で定められた閣僚の人数は現在の20人から一減。19人となるのに伴い、ワクチン接種担当大臣の堀内(ほりうち) 詔子(のりこ)氏が今夜に退任。先に内閣府で行われた退任式に於いて、堀内氏は「ワクチン接種は地方自治体、ワクチンを打つ国民一人一人、其れを支える医療従事者が息を合わせて一つになって進んで行く」、「(まさ)に国家事業だ」。氏が大臣職から退いた後も「ワクチン接種は続く」が、「皆さんの仕事に対する熱意と社会に対する奉仕の精神を(もっ)てすれば、必ずや成し遂げられる」。「日本はコロナ禍を克服出来ると確信している」と職員に語り掛けた由。

来月からはワクチン接種担当大臣を官房長官の松野(まつの)博一(ひろかず)氏が、五輪・パラリンピック担当大臣は文部科学大臣の末松(すえまつ)信介(しんすけ)氏が兼務。誰が大臣に為ろうと、何処へ派遣されようとも課せられた使命を果たして頂ければ文句は無い。しかし、重点措置が終わるも感染第六波は続き、3回目接種は終わらず4回目は如何なるやら不明。新年度もコロナ禍の諸問題に悩まされるものと覚悟せねばなるまい。


4月1日(金曜)

 3月の掉尾(とうび)たる昨日に於いても、医療提供体制等の負荷と感染の状況を示す合計10項目に関し、政府の分科会が示す「対策を強化すべき水準」を上回る都道府県は無かった由。全国の新規感染者数を一週間平均で比較すると、3月3日迄の期間は前週に比して0.92倍、3月10日は0.86倍、3月17日は0.90倍、3月24日は0.76倍と減少傾向が続いていたのに対し、昨日に至る期間は1.17倍と凡そ1か月半振りの増加傾向。3月最終週に於いては東京で1.19倍、埼玉県で1.23倍、千葉県で1.17倍、栃木県は1.25倍、山梨県1.40倍。大阪府で1.10倍、京都府で1.28倍。愛知県で1.14倍、岐阜県で1.24倍、三重県は1.45倍。北海道で1.20倍、沖縄県で1.32倍。広島県1.37倍、島根県は1.61倍。秋田県1.35倍、山形県1.47倍、新潟県1.34倍。福岡県1.25倍、佐賀県は1.66倍、宮崎県は1.47倍、鹿児島県は1.67倍等と44都道府県で前週より増加。

 直近の感染状況に関して、山際新型コロナ対策担当大臣も本日の閣議後会見で「反跳(リバウンド)と言うべきか如何(どう)か分からないが、特に若い方々の新規感染者数が増えて来ている」。「医療提供体制への負荷がどれ(ぐらい)かを見ながら、医療が逼迫しない様、制御(コントロール)しなければならない」が「其の上で社会経済活動を成長軌道に乗せて行く事が第7波への対策となる」と語った由。大臣が「未だ第六波が収束していない」事実を認識されているのか否かは不明。

 本日は全国で4万9266人の感染。大阪府で34人、兵庫県で9人、東京都で9人、埼玉県で8人、北海道で3人、京都府で2人、岐阜県で2人、新潟県で2人、福岡県で2人、香川県で2人、富山県で1人、愛知県で1人、栃木県で1人、青森県で1人、鳥取県で1人の合わせて78人の死亡。死亡者の累計は国内での感染確認が2万8202人、客船乗船者が13人の総計2万8215人。厚生労働省によりますと、新型コロナウイルスへの感染が確認された人で、人工呼吸器や集中治療室等の治療を要する重症患者は533人で、一昨日に行われたPCR等の検査は自主検査を除いた速報値で9万6263件。東京都内の新規感染は7982人で先週金曜より凡そ700人増加した由。

 旅行代金の(わり)(びき)を受けられる観光需要の喚起策、県民(けんみん)(わり)の対象地域が、本日から拡大。全国を「北海道と東北の6県」、「関東1都6県と山梨県」、「中部と北陸信越の9県」、「関西の2府4県」、「中国と四国の9県」に「九州の7県と沖縄県」の六領域に区分。支援対象となる為には「地域内の都道府県の同意」が必要となるが、観光庁の発表に拠ると、本日から北海道と14の県が域内の旅行者を対象とした拡大県民割の運用を開始。旅行者が割引を受ける為にも原則「ワクチン3回接種か検査の陰性証明」を要するが、居住する都道府県内の旅行に限っては「知事判断で2回のみ接種」でも割引を受けられる可能性有り。旅行業界では需要回復に期待が高まっているそうだが、院内規定が緩和されず県外への往来が許可されぬ当方は指を(くわ)えて見守るのみ。

 政府は先月14日から一日当たりの入国者数の上限を5000人から7000人に引き上げたが、本日午後に松野官房長官が更なる水際(みずぎわ)対策(たいさく)の緩和に就いて「今月10日より入国者数の上限を7000人から1万人に引き上げる」と発表。「今後も水際対策の在り方は新型コロナの内外の感染状況や主要国の水際対策の状況、日本人の帰国需要等を踏まえながら検討を進め、段階的に国際的な人の往来を増やしていきたい」と述べた。海外旅行の許可も得られぬ当方に直接の関係は無いが、担当している外国人患者にとっては嬉しい知らせかとも思う。

 今週29日の時点で、立憲(りっけん)民主(みんしゅ)(とう)が「高齢や基礎疾患を有する等で重症化危険性の高い者」が「事前に登録した医師から検査や薬の処方を受けられる制度を導入する」為の法案を衆議院に提出。此の所謂(いわゆる)「コロナ()かり()け医」が検査や薬の処方、他院入院を要する場合の保健所との調整に当たる事が出来る様に国へ制度の整備を義務付けるものらしく、法案提出後に同党議員の中島(なかじま)克仁(かつひと)氏が「変異株や第七波の懸念がある中、自宅で放置された(まま)、亡くなる人を二度と出さない為の法案だ」と語り、更に本日、同党代表の(いずみ)健太(けんた)氏が会見。感染状況について「高止まりから次第にぶり返し、第7波の可能性も有る」が、政府は「花見や歓送迎会等での注意喚起を行う」一方で「県民割の対象地域を拡大」する等と「政策の方向性がバラバラだ」と批判。改めて「掛かり付け医の活用」を政府に求める意向が語られた由。

 感染制御と経済活性化を同時に行おうとする政府の危うさに対する指摘には首肯出来るものの、彼らが唱える新制度の実情に就いては不明。元来の掛かり付け医を活用するのならば特に制度新設は不要と思われるし、感染する前から最寄(もより)の感染症科や呼吸器内科を頼ると云う意味ならば、特定の医療機関が疲弊する結果に繋がる事を危惧する。日本(にほん)共産(きょうさん)(とう)も物価上昇やコロナ禍を受けて、国会内で対策本部の初会合。対策本部長と同党中央委員会書記局長を務める小池(こいけ) (あきら)氏は「今年度予算の予備費5兆円の範囲に留める」とする政府の緊急対策案は「全く不十分」で「補正予算案の編成も含めた対策が必要」と批判。「消費税率を5%に引き下げる」「生活困窮者への支援の拡充」「公的年金支給額の(ひき)(さげ)中止」等を政府に求める意向を示した由。氏は(かつ)東北(とうほく)大学(だいがく)医学(いがく)()医学科を卒業した元医師だが、駿台(すんだい)予備(よび)(こう)時代に入党済みと云う筋金(すじがね)()りの共産党員で学生時代も政治活動に励み、平成十年以降は国会で活躍。昨今の臨床現場は()存知(ぞんじ)有るまい。

 少子化担当大臣の野田(のだ)聖子(せいこ)氏に関し、内閣府から「今朝、37度台前半の発熱を確認」「都内の医療機関でPCR検査を受け、COVID陽性を確認」「自宅療養を開始した」旨の発表有り。野田大臣の執務室等は消毒済で、岸田総理大臣や他の閣僚、内閣府職員に濃厚接触者は居ないとの事だが、感染が確認された閣僚は初。国会議員では45人目。野田大臣が所管する「こども家庭庁」設置に関する法案に就いて、与党側は「来週7日の衆議院本会議に於ける審議」を野党側に提案して来たが、今回の事態を受けて審議日程の延期も()()しと見られている由。

 安倍(あべ)政権(せいけん)時に約2億8700万枚が調達されるも、素材が不織布で無い為に無用の長物と化し、先月末時点で7800万枚余の大量在庫が問題になった布マスク。通称「アベノマスク」に関し、厚労省が昨年12月から希望者への無償配布を募集すると「掃除や野菜の栽培などに使いたい」等も含めて個人や自治体、介護施設等から約37万件の応募。計約2億8850万枚と希望が在庫を超過し、困惑した同省は自治体には原則希望通りに配布する一方、個人や団体に対しては配布枚数や使用目的を限定。約33万件に絞り込んだ上で、本日から7100万枚の配送を始めるも、5月末迄の配布に要する費用の総額は約5億円に上る模様。

 今後に在庫が解消されたとしても、先月迄に凡そ9億6000万円と莫大な保管費用が掛かって居り、今回の配送費も凡そ3億5000万円。希望者からの問い合わせに対応する電話(コール)窓口(センター)運営等の費用にも約1億4000万円と、無駄が無駄を生む構図。莫大な血税が浪費されたにも関わらず、張本人の安倍(あべ)晋三(しんぞう)氏からは一語の謝罪も無く、何の責任も取らぬ様子なのが実に不可思議(ふかしぎ)


4月2日(土曜)

 全国の新規感染者は今年2月上旬以降に減少傾向が続くも、厚生労働省が全国の自治体を通じて集計した新型コロナウイルス感染者等情報把握管理支援機構(システム)(Health Center Real-time Information-sharing System on COVID-19)、略称HER-SYSの速報値では先月29日迄の1週間で28万2853人と、前週に比して4万4052人増えた。増加した人数は20代が全体の26%に相当する1万1578人で最も多く、次いで10代が23%相当の9938人と、十代から二十代の若年者が半数近くを占めた。政府が昨日に公表した集計に於いて3回目のワクチン接種率は全人口の41.5%に達するも、接種率を年代別に公表している東京都の資料に依ると、先月31日時点で70代や80代以上は80%を超えたのに対し、20代は23.8%。12歳から19歳も5.8%と若年層の接種率が低い傾向は続いている由。

 東京医科大学の濱田篤郎特任教授曰く「日本全体で見ても反跳リバウンドの傾向が有る」ものの「特に20代など若者の感染が増えている」が、「新年度になり入学や就職で新生活を始める若者」にも「新しい場所でも感染のリスクが有る場所の点検や確認をして、飲食も感染対策をしながら行って欲しい」。若年層の接種率は低い件に就いては「若者は飲食の機会が多かったり活動範囲が広かったりして特に感染しやすい状況に在る」故に「接種を進めて欲しい」との事。

 本日は全国で4万8825人の感染。大阪府で13人、神奈川県で6人、東京都で4人、千葉県で3人、茨城県で3人、静岡県で3人、三重県で2人、京都府で2人、兵庫県で2人、奈良県で2人、愛知県で2人、栃木県で2人、群馬県で2人、埼玉県で1人、宮崎県で1人、滋賀県で1人、熊本県で1人、石川県で1人、福井県で1人、福島県で1人、秋田県で1人、青森県で1人、総計55人の死亡。東京都の新規感染は7395人で大阪は3666人、(いず)れも先週同曜より増している由。

 先月27日の項に「昨年11月から本年1月に(ぜん)日本(にほん)自治(じち)団体(だんたい)労働(ろうどう)組合(くみあい)が全国の公立病院で働く看護師や臨床検査技師等を対象に行った調査で、現在の職場を辞めたいと思っていると回答した者の総計は69.4%」「理由は業務が多忙、業務の責任が重い賃金に不満等で、医療従事者であることで差別や偏見を経験したと回答したのは22.7%だった」旨を記したが、日本(にほん)看護(かんご)協会(きょうかい)も「令和2年度に於ける新人(しんじん)看護(かんご)職員(しょくいん)離職(りしょく)(りつ)」に就いて調査。全国8200余の医療機関を対象に「昨年3月迄の1年間」に関して調査を行い、凡そ3割に相当する約2660施設から得られた回答を解析した由。

 結果は、新卒で採用された新人看護職員の離職率が8.2%に達し、前年度を0.4ポイント下回るも(ほぼ)横這い。関東の1都6県では栃木が15.0%、東京が10.6%、群馬が9.0%、埼玉が8.7%、神奈川が8.6%、茨城が7.8%、千葉が6.4%となった由。日本看護協会は「コロナ禍の新人看護師は、現場での実習を通じた学習の機会が不足」して居り、「(みずか)らが思い描く看護が実践できない無力感や不安を抱えている」。「()うしたReality Shockは離職の原因となっており、支援が必要だ」との声明を出した模様。

 Reality Shockは「高い期待と実際の職務での 失望させるような経験との衝突」或いは「個人が仕事に就く際の期待・ 現実感の乖離(ギャップ)」等と定義される概念。我が国では企業に於ける新入社員の不適応を説明する際に用いられる事も増えて来た様だが、看護師や幼稚園実習に関する報告は以前から多い。時に職員も受診する総合病院精神科外来で働く当方としても「此の数年で心身の不調を来たし、従前通りの勤務が困難となる看護師が著しく増えた」との印象有り。看護師不足が叫ばれる様になってから久しく、更に減れば各所で医療(いりょう)崩壊(ほうかい)常態(じょうたい)と化すかも知れぬ。


4月3日(日曜)

 本日は全国で4万7345人。東京都で7899人。神奈川県で4244人。大阪府で3760人。埼玉県で3702人、千葉県で3303人。福岡県で2093人、愛知県で2088人。沖縄県で1067人、五日連続の千人超。北海道で1845人、茨城県で1084人、静岡県と広島県で1071人の新規感染。対して死亡者は東京都で9人、兵庫県で6人、千葉県で3人、北海道で2人、神奈川県で2人、群馬県で2人、青森県で2人、三重県で1人、大阪府で1人、奈良県で1人、富山県で1人、広島県で1人、愛知県で1人、石川県で1人、福岡県で1人と比較的少ないものの、感染が再拡大に転じた事は火を見るよりも明らかな情勢となった。

 法務省の発表に拠ると「濃厚接触者として波蘭土(ポーランド)訪問を中止した古川法務大臣が本日午前に抗原検査を受け、結果は陽性」。現時点で発熱其の他の症状を認めず、体調は安定しているそうだが、閣僚の感染は野田少子化担当大臣に続いて2人目。本日に松野官房長官は沖縄県名護市を訪問。「増加傾向が反跳に繋がるか注視して行く必要が有る」と専門家が指摘している旨を語り、「(しばら)くは最大限の警戒を保ち、保健医療体制を確りと稼働させて行く事を基本に、自治体とも緊密に連携し適切に対応して行きたい」。「3回目のワクチン接種を推進し、国民にも感染リスクの高い行動を控え、マスクの着用等、基本的な感染防止策の徹底を御願いしたい」と呼び掛けたそうだが、(むし)ろ御自身が不要不急の遠出を避けるべきかとも思われる。

 烏克蘭(ウクライナ)情勢に関しては、先月29日の停戦協議で露西亜側が軍事作戦の縮小を表明するも、烏国大統領のVolodymyr Zelensky氏は、東部Donbas地域に於ける「新たな攻撃の前兆」だろうと懐疑的な見方を示すと共に「誰も信じない」。「美しい言葉は1つも信じない」、「言葉だけで、具体的なものはまだ何もない」と述べた由。先月31日、外務省は烏国首都Kievを露西亜語に由来する「キエフ」と呼称する事を止め、今後は烏克蘭語の発音に近い「キーウ」に変更する旨を発表。元外務大臣の河野(こうの)太郎(たろう)氏の発案だが、此の件に関しては「呼称変更に依って烏克蘭への連帯を示す」方向で与野党の足並みも揃い、近く在外公館に関する法律を改正。「キーウ」の呼称を法的に位置付けると共に、首都以外の地名も烏語に沿って変更される事となり、原発事故で知られるChernobyl は「チェルノブイリ」から「チョルノービリ」に改名予定との事。

 柔道とSamboの達人で元PRIDE重量(ヘビー)級王者として総合格闘技界で一時代を築き、世界中で「人類最強」や「60億分の1の男」、或いは"The Last Emperor"等の賞賛を(ほしいまま)にした偉大なる格闘家。姓が先、名が後に記載される旅券の表記に基づく誤解から我が国では「エメリヤーエンコ・ヒョードル」として知られる。Fedor Emelianenko氏は烏克蘭の地で、烏克蘭人の両親の下に生まれるも幼少期に露西亜へと移住。(ちょう)じて(のち)は自身を「露西亜人」と定義し、其の事に強い誇りを抱いていたらしく、2002年の“PRIDE.21”参戦時に大会小冊子(パンフレット)で「ウクライナ国籍」と紹介された事に対して「私の国籍は露西亜です」と悲しげに訴え、大会後に国籍や国旗の表記を訂正したものを渡されると「飛び上がる程の勢いで喜んだ」との逸話も残る。

 彼自身と弟の経営する企業の設立に米国の前大統領、Donald Trump氏が関わり、母国の大統領たるVladimir Putin氏とは互いに強さを(たた)え合い、2010年にはPutin氏の所属する政党の統一(とういつ)露西亜(ロシア)から地方議会へ出馬して当選。米露の権力者と極めて親しい関係に在ったEmelianenko氏だが、露西亜の烏克蘭侵攻に伴い、世界第二の総合格闘技団体、Bellator MMAが今年に「赤の広場」での開催を予定していた莫斯科(モスクワ)大会が中止。大会の一環として計画されていたEmelianenko氏の引退試合も消滅した後、氏は露西亜総合格闘技連合の幹部職を辞任。Emelianenko氏に「行動と政策を支持しない」と言われた同連合のRadmir Gabdullin会長は「ヒョードルの辞任は我々にとって損失だ」と遺憾(いかん)の意を示し、「彼は露西亜で総合格闘技の発展に多大な貢献をした」「偉大な選手であり、生きる伝説以上の存在」「常に共に居る同志だ」と褒め称える一方、露西亜総合格闘技連合に於いては「我々全員が露西亜連邦、Vladimir Putin大統領に従って行動する事を特に強調したい」と宣言。世界を騒がすも、現役時代と同様、多くを語らぬEmelianenko氏の真意は不明。

 露西亜連邦内で「第二の実力者」とも言われるChechnya共和国の首長、Ramzan Kadyrov氏は格闘技を好み、有り余る私財の一部を投じて総合格闘技団体を設立。2016年10月4日に首都に当時11歳、9歳、8歳だった自身の息子3人を防具無しの状態で戦わせた。息子達は同世代の男児を叩きのめして勝利を得たが、うち一試合はtechnical knockoutで終わり、満足したカディロフ氏は自身のinstagramに試合の画像を投稿した。

 此の一件は当時、 New York Times紙に"Ramzan Kadyrov, Chechen Strongman, Criticized Over Televised Child Fights"と題した記事が掲載される等と世界的に批判を浴びる事となったが、露連邦内に於いてもEmelianenko氏が「容認出来ず、正当化出来ない」と非難。自身の豊富な経験を踏まえて「21歳未満の格闘家は防具を着用すべきで、12歳未満の小児に試合をさせてはならない」との正論を語ったのに対し、Kadyrov氏自身を含むチェチェン関係者は侮辱と非難で応じた。露連邦内Dagestan共和国出身で、露西亜人としては史上初のUltimate Fighting Championship王者となったKhabib Nurmagomedov氏を含む現役格闘家数名もEmelianenko氏を批判したが、「彼等は皆、チェチェンの独裁者から資金援助を受けていた」とも言われる。やがてKadyrov氏はSNS上で「ヒョードルは間違いに気づいた」と語り、配下に誹謗中傷の書込を削除する様に指示した。

 しかし同月12日、露国内の報道機関が「Emelianenko氏の娘がモスクワの路上で何者かに胸部への打撃を加えられて胸部と腹部の挫傷を負い、病院に搬送された」旨を報道。上述の経緯から露国内では「Kadyrov一派の仕業」で在る事を疑う者は無かった由。此の件に関してPutin氏が如何(いか)なる態度を取ったかは判然としないが、少なくともKadyrov氏との同盟関係が崩れる事は無かった模様。6年前の事件だが、既にEmelianenko氏の政治的立場も盤石(ばんじゃく)とは言えなかったらしく、祖国と信じる露西亜が故郷の烏克蘭へ攻め込んだ事で更に窮地に追い込まれたのかも知れない。戦争が早く終わり、烏克蘭国民の命が守られる事と共に、(かつ)ての英雄が誇りと共に生きて行ける事を願う。

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