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復讐の下準備

 三途の川から逃れると境夜は幻想郷から一旦、外の世界へと出る。


「ほう。境界と境界の間にある溝から抜けるか……こんな方法もあったのかね?」

「ええ。どの様な技術だろうと必ず穴があります。

 妖怪だろうと人間だろうと作った者がいるのなら、システムと言うパズルを解くだけですよ」

「これを独学でか……君は本当に天才の様だね?」


 境夜に取り憑いたキトラはそう誉めるとキトラが束ねる会社へと向かう。


 勿論、これはダミーで裏ではキトラの配下達が活動している。


「当社に何か御用でしょうか?」

「社長に面会したい」


 受付まで来ると境夜に憑依したキトラがそう言うと受付嬢は無表情で頭を下げた。


「アポイントメントはおありでらっしゃいますか?」

「いや、ないな」

「申し訳ありませんが、アポイントメントのない方をお通しする事は出来ません」

「ふむ。確かにそうだな。

 ならば、こう伝えてくれ。

 "賢き者は忠を惜しまず、竜に尽くす"とな」

「かしこまりました。少々、お待ちを」


 受付嬢は無表情にそう言うと社長に連絡する。


 しばらくして受付嬢は営業スマイルで笑いながら一礼した。


「確認が取れました。社長がお会いになるそうです」

「そうかね。では、案内を頼む」

「かしこまりました」


 受付嬢は境夜の姿のキトラにそう告げると複数のスーツの男達と共にエレベーターに終始無言で乗る。


 そのエレベーターは屋上ではなく、地下へと向かっていた。


 それをキトラは気にする事もなく、地下へと降りると本来の社長室へと歩み寄り、ノックもせずに開く。


「■■■」

「……竜語を確認。承認しました。

 姿は異なりますが、キトラ様で間違いありませんね?」

「ああ。そうだ」


 社長ーー否、キトラの兵に肯定するとキトラは社長の椅子に座る。


「保険を使う」

「かしこまりました」


 キトラの兵は彼に一礼するとその場を後にした。


 そこで境夜がようやく、口を開く。


「成る程。肉体の再構築の為のクローン技術もあるので?」

「その通りだ、境夜君。まあ、これ位の保険はして当然だがね」


 キトラーー否、境夜が一人でブツブツと呟くと秘書らしき女性が彼に尋ねる。


「キトラ様。その依り代は如何しましょう?」

「ああ。そうだったな。

 彼には新たな独裁者になって貰う。

 私が肉体を取り戻した後も丁重にもてなしたまえ」

「かしこまりました」

「私が復活したあかつきには彼に私の秘蔵のボトルをお出ししろ。キャビアも添えてな」

「かしこまりました」


 秘書は事務的にキトラに頭を下げると彼の隣で何も言わずに佇む。


 忠実に命令だけ聞く。


 キトラの兵は表も裏も同じである。


「なかなか、教育が行き届いてますね?」

「無論だ。忠実かつ迅速にして的確に実行させる。それが私のやり方だ」

「では、俺の能力もお見せしましょう」


 境夜はそう告げると隣で佇む秘書に声を掛ける。


「そこの貴女、なんでも良いから資料を持って来なさい」

「……」

「聞こえないのですか!俺は持って来いとーー」

「私はキトラ様の僕です。貴方様の僕ではありません」


 秘書がそう言うと境夜が笑う。


「成る程。多重ロックですね?」

「そうだとも、境夜君。私は言葉を発すると同時に様々な用途を用いている」

「成る程。例えば、こんなですか?」


 境夜はコホンと咳払いすると秘書に言葉を発する。


「服を脱げ」

「「え?」」


 その言葉に女性と内なるキトラが驚く。


「もう私のロックを解除したのかね?」

「言ったでしょう。妖怪であれ、人間であれ、必ず、穴があると」


 そう言うと境夜は椅子に肘を掛け、女性に笑みを浮かべる。


「どうしました?俺は服を脱げと命令したんですよ?」


 ニヤニヤと笑う境夜に秘書は恥じらいながら衣服を脱ぎ始めようとする。


 それを止めたのは他ならぬキトラであった。


「賢帝が命ずる。それ以上は不要だ。出ていきたまえ」


 そこで内なるキトラがそう告げると秘書は一礼して部屋から出ていく。


「私の部下を弄ばないでくれたまえ、境夜君」

「申し訳ありません。ほんの戯れですよ」

「前にも言ったが、その趣味は好かん。

 肉体が仕上がるまでは君といるが、仕上がったら君から出ていかせて貰おう」

「ええ。その方がお互いの為ですからね?」


 境夜は内なるキトラにそう告げると椅子から立ち上がり、手頃な資料を手に取る。


「ほう。幻想郷の都市化計画ですか、面白いですね?」

「私が支配するのだから当然だろう。

 まさか、あんな豊富な地に何もしないなど、ありはしない」

「しかし、厄介な輩がいます。その者達をまず排除しなければ、なりませんね」

「そうだとも、まず手始めに兵をーー」

「……いえ、もっと確実な方法がありますよ」


 キトラの言葉を遮り、境夜はニヤリと笑うと会社を後にして自分のアジトへと向かって車を出させる。


「……なんだね、これは?」


 その境夜のアジトでキトラが見たのは図書館並みに本の並べられた部屋であった。


 それも多種多様で漫画から小説、図鑑などが豊富に存在した。


 中には同じ本が数冊あったりもする。


「俺の能力は本の内容を具現化する能力です」


 そう告げると境夜は内なるキトラにある漫画を見せる。


「これは……面白いな」

「そうでしょう?これを幻想郷中にバラ巻けば、どうなると思います?」


 境夜の言葉にキトラは彼の顔で笑った。


「良いだろう。君の計画に乗ろうじゃないか」

「ええ。ただ、このままでは紅白の巫女にバレてしまうでしょう」

「そこで私の能力か……」


 境夜は内なるキトラと共に笑うと幻想郷で起こる惨劇に想像を膨らませる。

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